407:十七層リベンジ 2/3
エレベーターが止まり、十五層の光景が目に入る。スケルトンはちゃんと居た。とりあえずあいさつ代わりに核を割ってエレベーター用の燃料として魔結晶を補充する。
「ところで今日の予定はどうなっているんですか? 」
「そのまま十七層まで潜って探索。十八層の階段を見つけたらそのまま下りて十八層の探索。ただし二時間探して十八層への階段が見つからなかったら帰る。十八層の階段見つけた時点で二時間経ってたら、地図だけまとめて戻る。そこで休憩してから二回目かな」
「二時間で区切る理由は何です? 疲れ対策とか? 」
「ただ歩くだけって結構精神的に消耗するからな。勿論モンスターを相手にしないという意味ではないけど、十六層十五層を抜けて十四層まで戻ってくる時間と体力を考えると、使える時間はそのぐらいだという見込みだ」
そう、歩くだけというのは体だけ疲れるように感じるが、今回は地図を作りながらの探索だ。階段が見つかっているならまだしも、見つかっていない段階であっちへこっちへ歩きまわる事は終わりが見えないという不安感も付き従ってくる。その不安感からのストレスで体の動きが悪くなる可能性は低くない。
「十三層や十六層を巡った時も似たような感じだった気がします。無理をせず行く事は良い事ですね」
「俺も若くないからな。無理してぎっくり腰でも起こした日にゃ……ぎっくり腰ってヒールポーションで治るのかな」
「神経だからキュアポーションじゃないですかね? 両方一気に飲めばどうです」
「お腹が減って更に倒れそうだなぁそれ。なった時に順番に確かめるしかないか」
ぎっくり腰はどっちなんだろう。筋肉のような気もするし神経のような気もする。場合によって違うんじゃなかろうか。
「まぁぎっくり腰はどうでもいい。とりあえず進もう」
「そうですね、試しにぎっくり腰になってみるわけでもないですし、向かいますか十七層」
歩き慣れ、モンスターのリポップ場所も解っている道を二人歩く。スケルトンがどこまで近づいたら反応するか、どう行動するのかも解っているならその先を読んで行動できる。そうなればもうスケルトンとて物の数ではない。
スケルトンがこちらに反応し戦闘態勢に入る前に肩からバッサリと斬りつけ核ごと断ち切る。そのままの勢いで突進し、更に次のスケルトンが攻撃態勢に入る前にもう一度。これで四体相手でも常に先制を取れる。必勝法の確立だ。
「よし、スケルトン完全攻略だな。これで十五層までに敵は数の暴力以外に居なくなったと思うぞ」
範囲収納で集めた魔結晶を指の上に出しクルクルッと回す。魔結晶はクルクルと回って床に落ちた。
「恰好つけようとしたみたいですが残念でしたねえ」
代わりに拾ってくれた芽生さんから魔結晶を受け取ると改めて保管庫へ。ゴホン、と咳をしてごまかしながら次のスケルトンへ行く。
「でも完全攻略は間違ってないかもしれませんよ。十六層で骨弓が増えてももう物の数ではないですし、しいて言うならその間に骨ネクロ~が召喚してくることぐらいですから」
「それも全力で走れば防げるからなんとかなっていると言える。もっと他に攻略方法があれば別だろうけど、今のところそれが一番早く倒せると思いますがその辺どうですか芽生さん」
「う~ん……そうですねえ。召喚時間を伸ばさせる方法があるならそれが一番ですが、試している間に何体倒せるかを考えたらやっぱり今のままで良いんじゃないですかねえ」
「同じ結論だな。今まで通り行こう。楽する方法はおいおい考えていくという事……でっ!」
骨ネクロダッシュをキメて四つ真珠を拾う。やはり十五層はここが一番緊張感が漂う。そのままボス前のスケルトン四体をさきほどの手はず通りに倒し、スマートにボス部屋前を制圧する。そのまま十六層方面へ向かう。スケルトン三体が三連続。乗り越えれば十六層への階段。最短最速、十五層抜け道ガイドの出来上がりだ。
「準備運動代わりにはなったな。さぁ十六層をサクッと抜けていこう。出来るだけ寄り道せずに、まっすぐにだ」
「小部屋とかは覗いていかない方向ですか」
「稼ぎに来たなら覗いていくけど今日は通るだけだしなぁ。その分収入は少なくなるけど変な消耗は避けたい。帰りに体力に余裕が有ったら気にしていく感じでいこう」
ちょっとご無沙汰気味な十六層だが正直やる事はあんまり変わらない。下りてすぐの小部屋で骨グループとご対面するが、骨弓の攻撃は【魔法耐性】スキルでほぼ無効化されている。なので二発後で余分に殴る相手が居るというだけだ。気にするのは骨ネクロとスケルトンだけでいい。
実質二対三。心配する事も起きず骨ネクロに召喚させる手間もかけさせず、ものの数秒で戦闘は終わる。可哀想なのはダメージも与えられず最後まで放置されあっけなく倒された骨弓。もののあわれを感じるなぁ。
「ちょっと可哀想ですよね、骨弓」
「弓で殴りかかってくるぐらいはするかもしれないが、それでもあまりダメージに期待は出来そうにないな」
「だいぶ可哀想ですね、骨弓……そういえばボス戦したんですよね。参加しましたか、それとも見学しましたか」
「二回ほどちょっかいかけたかな。最初の数減らしと途中で雷撃一発。連携のいい勉強になったよ。ゴブリンシャーマン程度の【火魔法】なら弾き飛ばせることも解ったし、あと水で濡らしてから雷撃というコンビネーションがちゃんと効果がある事も解った」
「なるほど……機会が有ったらやってみますか、それ」
「今度またボス戦しなきゃいけない時は特大の水を頼むわ。うまくいけばお互いスキル一発でほとんどのゴブリンを消し飛ばせると思う」
十六層を地図に従って真っ直ぐ十七層に向かう。モンスター発生地点に着くたびに戦闘をこなしていくが、十六層から十七層へ通うのは地図作りの時間を抜けば三度目になるかな。変な奇襲をされる可能性は非常に低い。いきなり視界外から矢が飛んできたりしないための地図作りを心掛けているのでモンスター発生地点は網羅済みだ。
解っているところで解っている戦闘をする。これほど気楽な戦いも無いだろう。小部屋や曲がり角のクリアリングを省略しながら進んでいるのでいつもより足早に十七層へたどり着ける予定だ。
スケルトン四、スケルトン三、スケルトン二骨ネクロ一骨弓一、スケルトン三骨ネクロ一、スケルトン四、スケルトン二骨ネクロ一、スケルトン二骨ネクロ一骨弓一。
地図上に記されているモンスターを種類ごとに記号付けして記号ごとに描き分けてある。ここのモンスターは五体以上まとめてかかってくることはない。四体なら一対二。確実にとまでは言わないが余裕をもって対処できる。
何度か目の曲がり角を曲がり、三叉路を抜けて北側(仮)へ。そこから北側回廊に抜けて、北側回廊から横道に入り、また何度か曲がった先に十七層への階段がある。階段前にはやはり骨グループが居る。
「これで十六層最後……っと」
「結構あっさり来れましたね。問題はここからですが」
「大丈夫、途中で帰る時間が長くなるようにバッテリーもほれ」
保管庫からどっさりとバッテリー類を取り出す。ドローンもバッチリ、スマホもバッチリだ。
「これだけあればぶっ続けで飛ばしてもそれなりの時間は持つ。実際は飛ばして確認して戻して……と細かく操縦していくつもりだから順調に行きすぎたら二十一層まで行けちゃうかもしれないぞ」
「あーそれは上手くいかないフラグですね。多分十八層の途中ぐらいで引き返す奴ですよ」
「できれば十九層の階段までは見つけたいなぁ。十九層のほうがレッドカウは多いらしいし、戦利品を持ち帰って十四層でしゃぶしゃぶと行きたい」
しゃぶしゃぶのしゃぶ、のあたりで芽生さんの目が超反応で輝きだしやる気が満ちはじめたらしい。
「十八層でしっかり頑張りましょう。そして戦果をきっちり持って帰るんです」
堂々と言いのけて見せた。期待しよう。まぁその前に階段見つけるのが先なんだが。
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