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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第五章:自由を求めて深層へ

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405/1242

405:楽しい時間がすぐ過ぎるのは相対性理論って話をどこかで聞いた

 エレベーターで一層に上がる。ここは人通りが少ないのでエレベーターのドアが開いた瞬間からスライムのお出迎えだ。ここ最近雷撃で塩対応しかしていなかったからか、スライム達からちゃんと己と向き合えと言われているような罪悪感を感じる。


 みんな、忙しくしててごめんな。今日はゆっくり一匹ずつちゃんと応対するからな。直刀を鞘に仕舞い、腰の熊手を手に取る。何時から潮干狩りをしていないのか。ずいぶん時間が開いた気がするが、もしかしたら案外最近やっていたかもしれない。まぁ細かい事は良い。いまからはスライム達と俺だけの楽しい空間、楽しい時間、楽しいパーリータイムだ。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 さすがにそろそろ結衣さんも合流している頃かな。これから夕食を楽しみながら軽く潜った報告と検証をしつつ、夜間の内に十五層まで潜って七層へ帰ってきて、朝一で一回目の納品、という形になりそうだ。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 何時ものリズムが静かに一層に響く。まずはこのエレベーターの前から順番にだ。奥まったところにあるためスライムも集まりやすく、数十匹のスライムが見える。一匹ずつ丁寧に、しかし滑らかに素早く潮干狩りしていく。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 次は二日後、十七層へ潜る予定だ。今度こそ階段を見つける。その為にドローンのバッテリーもスマホのバッテリーも買い足した。もし可能なら十九層への階段まで見つけてしまいたい。時間を区切って下手に往復するよりも、見つけるまで帰らないというつもりで探索したほうが良いだろう。戻る分には地図はあるのだ。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 牛肉が取れたら今度はしゃぶしゃぶをやりたい。中華風だがステーキはやった。後はすき焼きとしゃぶしゃぶだ。すき焼きは色々と下準備がかかる。その点しゃぶしゃぶは最低でも湯と肉とポン酢とごまだれさえあればできるお手軽食事だ。十四層でスキレットに水張ってしゃぶしゃぶ風を演出しても良い。夢が広がるな。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 そういえばエレベーターの燃料は他の魔結晶でも代用できるのだろうか。今度いろんな魔結晶を入れて見て、スケルトンならいくつ、ジャイアントアントならいくつ、オークならいくつ、と試してみるのもいいかもしれない。手始めはワイルドボアの魔結晶か。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 お、どうしたんだいそんな隅っこでプルプル震えて。怖くないよこっちにおいで、そうそう、こっちこっち、いいこだねー。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 ポン酢は……保管庫にあるな。ごまだれもある。後は肉だけだな。あー楽しみだなぁ。


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 周辺は綺麗になった。なんだか久しぶりにやってとてもスッキリした気持ちになっている、もう少し頑張ってみるか。


 移動しながら多く湧いてそうなエリアへ。まだ人が居るのでスライムはそれほど湧いていない。エレベーターホールの前は一層の一番奥みたいなところなのでここまでわざわざ回る人が居ないんだろう。


 何時もの小部屋に立ち寄ったが人が居た。会釈をしながら邪魔にならない程度に離れて潮干狩りを始める。あからさまに狩る速度が違うのでどうやら向こうはちらちらとこちらを見ながらスライムを倒している。


 これが本家本元のスライム潮干狩りだ。どうだ早かろう?


 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。

 グップツッコロンパン。グップツッコロンパン。


 あっという間に部屋の三分の一ほどのスライムが消えていく。これ以上はあちらさんの邪魔になるだろうから退散する。しっかり稼いで帰ってくれよ。


 そのままもう一つの小部屋へ向かう。小部屋までは徒歩十分ぐらい。道中のスライムも丁寧に一匹ずつ潮干狩りしていく。小部屋に誰も居なかったらまとめてスライムを処理しよう。こっちの湧き具合からすると百匹ぐらいはまとまって湧いてそうだ。ウキウキするな。どのくらいのスライムが俺を待ち受けてくれるんだろう。


 丁寧に潮干狩りをして行ったおかげで思ったより時間がかかったが小部屋に到着した。スライムは……うん、一杯いるぞ。潮干狩りも良いがたまには使わないとスキルも錆びる。小部屋の中のスライムをまとめて倒す事にする。これが終わったら帰ろう。


 サンダーフィールド! と叫びたいのは山々だが他の探索者が居る。恥ずかしいので無言でバリッと一発部屋全体に対して雷の膜を広げる。スライムやダーククロウぐらいならこれで一撃だ。


 部屋全体からザラっとドロップが降ってくる。この瞬間も割と気持ちいい。範囲収納で集めると、金額的にはそこそこだが量としては中々の物になった。時計を見るといい時間だ。楽しい時間はすぐ過ぎるな。よし、今日はこのぐらいで帰るか。誰も見ていない内に荷物を仕分けてエコバッグにまとめる。


 帰る準備は整った。後は帰り道にスライムをスライムしつつ出入口に向かう事にした。まだ帰らない人がいるおかげでスライムをそれほどスライム出来ず、二十分ほどでたどり着いた。


 荷物を持ち直し退ダン手続きをする。


「あの方たちはご一緒ではないのですね」

「出入りが一緒だっただけでずっと別行動でしたよ。私は宿泊申請してませんし」

「そういえばそうでしたね。お疲れ様でした」


 そのまま査定カウンターへ。今日の収入は……八万九千四百六十円。十万へはいかなかったがそこそこだ。ダーククロウの羽根を込みにしたら二十万ちょい。充分とは言わないが満足はした。金額を競う事も大事だが、仕事に対する満足感もそれなりに大事だろう。


 羽根の在庫は五キログラムほどになったのでこれでしばらく深い階層の探索に集中できる。急ぐつもりはないが頑張って十七層十八層、そしてレッドカウの肉を集める旅に出かける意気は充分ため込むことができたんじゃないか。


 そういえば最近一人の時あんまり稼いでないな。稼ぎはモチベーションにつながるからせめて芽生さんと二人の時は一杯稼いで帰ろう。一人の間は満足感を重視だ。この方針でいい。


 バスと電車を乗り継ぎ自宅へ。自宅に着く前にコンビニでカレーを買って帰るのを忘れない。偉いぞ俺。コーヒーも買い、カレーの温めは家で……いや、電気代節約だここで温めて行こう。


 夕飯がカレー。昼食もカレー。今日はカレーばかりでとても気分がいい。また今度インドカレーも食べに行こう。明日の朝食はいつものご機嫌な奴だろうが、それでも二回カレーが続くと三回続くのではないかと錯覚してしまうほどに嬉しい。


 家に着き、すべての後片付けを後回しにしてカレーの味わいに全集中する。うん、焼きカレーにした分味わいきれずに飛んでしまったスパイスの香りが舞い戻ってきたようだ。鼻に抜ける爽やかさも若干割増しでとてもいい。ダンジョンでは感じなかったが仄かに汗も出ている。汗をかきながら食べるカレーも美味しい。


 ダンジョン内では緊張していたのかそれとも焼いたせいか、気づかなかった舌への味わいが戻ってきたようだ。あっという間に食べ終わる。二皿目に行きたいところだが、コンビニには一つしかなかった。少々残念だが食べ過ぎの気もするし、悩ましいところだ。


 しばらくの間、他の店を回ってでももう一皿食べるかどうか悩んだ結果、諦めて今日のご飯はこれまでとする。この後ろ髪を引かれる様は次の一皿に取っておこう。まだ次回はある。


 食べ終わった後でゴミの片づけ、洗濯、風呂、風呂掃除、そして明日の準備。明日は何を作ろうか。手持ちの食材で出来るだけ美味しくを念頭に置きつつ、何かしら準備しておこう。最悪シーズニング肉でなんとかなる。チーズの在庫も充分だ。チーズをスキレットで溶かしてサラダに和えてもいいしいくらかのレシピを思い出す。忘れた時はレシピ本を読もう。


 一通り明日の準備を終えたところで就寝。今日はいい夢が見られると良いな。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。


続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします



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― 新着の感想 ―
[一言] スライム潮干狩りはプチプチ潰しのようなものでしょうか。 プチプチも心がなごむ人がけっこういますし。
[良い点] 毎日の更新に感謝します (*´∀`*) [気になる点] 「よしだれも見ていない」 今回の潮干狩りのセリフだけど 前回のエレベーター検証の時の 茂る君狩りの時。結衣さんメンバーが 隠れて見て…
[一言] ステータスブーストオンだと味覚もブーストされるのかしらん? もしそうなら、うっかり刺激物食べたら悶絶しそうですなw
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