402:荷物持ちも視点を変えればデート
買い物に付き合う事になった。つまり買い物デートなのか? と思ったが他のメンバーもぞろぞろと付いてくるらしく、お嬢様とその従者といった感じになった。
ちなみに既婚者である約二名はたまには早く帰って家族サービスをすると言って先に帰っていった。残りの三名と俺一人で合計四人の買い物だ。
一旦小西ダンジョンを離れ、各自車で集合しての買い物だ。なので実際にはぞろぞろと付いていくというよりも一回家に帰って再集合というほうが実態に当てはまる。なんか小学生の頃を思い出すな。
集合場所は俺がいつも使うホームセンターの別の店舗だ。探索者は大体このチェーン店を使っているらしい。確かにここなら探索者割引も利く。キャンプ用品も豊富に扱っているしそれ以外の物についても色々と便利にご利用可能だ。
買うものはキャンプ用具……テントから何からの設営準備に出来るものを一通り。それと小物入れ、これは食品を小分けにするために……俺がやってるように調味料やなんやかんやを入れておくためのものらしい。つまり本格的に小西ダンジョンの七層へ住み込む準備である。清洲ダンジョンの七層に出来るだけ近い環境を整える気でいるんだろう。
「これはどっちかというと引っ越しの準備に近いですね。ほとんど丸ごと買いなおしじゃないんですか? 」
「どうせなら両方で活動できるようにしてしまっても問題ないでしょう? 置きっぱなしにしても良い広さもありますし、治安を気にするほどまだ人は居ませんし。安村さんがひょっこり現れてもおもてなしできるようにしておきますよ」
頼もしい一言だが、保管庫の中に似たようなものを準備している俺にとっては心意気だけ受け取っておこうと思う。
せっかく買い物に付き合っているのだし他のパーティーがどんなものを用意してそれによって何をするのか、そこを知識として蓄えさせてもらおう。保管庫頼りになりつつある俺にはきっと大事なものになるだろう。
必要なものはあらかじめ考えてきてあるらしく、次々に商品をカートに入れてはチェックリストを消化していく。きっと清州ダンジョンに居住スペースを確保した際にも似たような事をしたんだろうなという事が伝わってくる。この辺は横田さんがいい仕事をしたのかな。
平田さんは純粋にカート押しの役に回っている。時々買い物の提案をしては却下されたり、入口の食べ物屋で匂いに釣られて早速買い食いを敢行したりとフリーダムにしていたが、ちゃんと荷物持ちの仕事は忘れてないらしい。
横田さんはあちこちを飛び回っては必要なものを手に入れてきて自分のカートに積み込んでいる。必要な物がどこにあるか把握して一直線に向かっては寄り道をしない。オープンワールドゲーでも隅々までは回らない俺と同じタイプだろう。
そんな中俺はカートをもう一台押して荷物の積み込みの手伝いというわけだ。この買い物とは別で自分の買い物をする必要があるかどうかを考えながらなので、少し歩みはゆっくりになっている。
流石に人数が多いと結構な量になるな。二人分なら俺一人でもなんとかなったが五人分フルに買いなおしともなるとカート三台分ぐらいにはなった。
大き目の自立式テントが二つ、中くらいの自立式テントが一つ……これは多分結衣さんのだろう。おそらく料理道具なんかを放り込んでいくようにあえて少し大きいテントを選んだ可能性がある。
それから水タンクと机、使い捨ての食器、エアマットを人数分、それからまだまだ細かいものを色々と。清州ダンジョンの七層でも同じぐらいのものを持ち込んでいるんだろう。値段を見ずに性能と扱いやすさで選んでいる辺り手慣れたものなのか。
水タンクはあったほうが良い物ではあるが、基本的に【水魔法】が使える芽生さんがそばに居るし保管庫にも水は入っている。タンクに入れて保管する必要はないだろう。横田さんも【水魔法】が使えるが、本人がヘトヘトだと使えない可能性があるのでそれを見越してなんだろう。
ついでに食料品……どっちかというと嗜好品に近いものか。酒のあてやクーラーボックスもそろえ始めた。七層を拠点にするだけなら、往復一時間ちょいで地上まで荷物だけを持って積み込むことができる。
十四層ではなく七層に拠点を置くというのが明確に決まっている以上、持ち込みにかかる重量や幅の制限はエレベーターの広さとほぼ一致する。一気にまとめて積み込んで……という形で持ってくるんだろうな。誰かが来るまで荷物をまとめて持ち込んで、後で合流する、という感じか。
移動の楽さを考えたらもう一本ゴブリンキングの角を所持しておいて、二パーティーに分かれて探索と補充に分かれる……という選択肢も取れる。やはり数は力か。
「後は……うん、これで終わりですね。まとめて割引で全部経費で落としますから全部お会計通しちゃってください。今のところは私がまとめて払っておきますので」
ここのパーティーは必要経費は一人にまとめて後で個々に支払う形態をとっているらしい。……そういえば最近、俺芽生さんに経費貰ったり貰わなかったりしてないような気がするな。帰ったらレシート確認するか。
さて……身近なパーティーが一つ小西ダンジョンに増えたところで問題が発生しつつある。これだけ間近に他のパーティーが居るような環境におかれた場合、俺はうまく保管庫を隠し通せるのだろうか。今うちのテントの中身ほとんど空っぽだぞ。以前考えていた調理器具の偽装設置、真剣に考える必要があるな。
七層は空っぽでもいいので十四層のほうには仕掛けておく必要があるな。明日また別口で買い物に行くか。今買うと怪しまれるしな。後日適度に使った風体を装った新品を十四層に置いておくとしよう。
「さて、お付き合いありがとうございました。おかげで一回で買い物を終える事が出来ました」
結衣さんからお礼を言われる。
「半ば無理やりだったような気もしますが、お役に立てたなら結構ですよ」
「お礼にたい焼きを奢りますよ。あんことカスタードどちらが良いですか? 」
「あんこでお願いします」
買い物付き合いの報酬がたい焼きか……今日一番安い報酬だが、その分勉強させてもらったから良しとしよう。
「じゃあ今度こそお疲れ様ですね。次は何処かでまたデートしましょう。今度は二人で」
今回は顔を赤くせずに言えたらしい。無意識に言ったのかどうかは解らないが、とりあえず約束はさせられるようだ。
「解りました。暇な日を探してどこか行きましょう。と言ってもダンジョンに居ない日は暇と言えば暇なんですが……まあお互い連絡方法はありますし、メッセージ投げておいて予定があえば、ですが」
「ダンジョン内でも通信できると良いんですけど、そこまでは贅沢言えないですね」
「今のところはエレベーターで我慢して……いや、エレベーターなんて贅沢が出来る分だけ予定も合わせやすくなったと考えましょう。その分地上で色々できる時間が増えますから」
「そうですね、そういう事にしておきます。じゃ、また」
荷物を全部一台に積み込むとみんなそれぞれの家へ帰っていった。さて、俺は俺の買い物をするか。事態が多少進んだ以上七層と保管庫それぞれに同じような品物をそろえておかなければならない。
椅子、小机、スキレット、バーナーぐらいは揃えておいて良いだろう。バーナー燃料の予備は……そろそろ心許ないな、これも追加で買っておこう。それから多少冷えたものを取り扱っていても怪しまれないようにクーラーボックスは十四層で必要だと判断。これも買う。保冷剤もしっかり入れておいて冷やすことも忘れない。
自分の買い物を一通り終わらせて、俺もついでに夕飯買っていくか。経費で落とす分の買い物は三万円ほどになった。たかが三万円されど三万円。経費を使えば使うほど最終的な収入は減るが気にするほどそこまで高いものは無いので気にせずに行こう。
さて今日は何を食べようかなー。昼はひたすら肉を食べたからな。サラダ系を攻めて行こう。まずはシーザーサラダドレッシングを買っておいて、切ればそのまま食べれる野菜を何品かピックアップ。それから……明日の朝もサラダだ。
料理の元になる肉は色々あるがじっくり蒸して一から作って食べるという時間はちょっと取れないので蒸し鶏の総菜をそのまま使おう。と、蒸し鶏にも味付きと味無しがあるのか。ここは味付きを買っておいて足りなければ追いドレッシングといこう。野菜を切って蒸し鶏を乗せて、パックライスで今日の夕飯はそれで終わりだ。
明後日の探索の分の食糧もついでに買っておくか。シーズニングとチーズと……それから野菜を色々。出かける直前に仕込んで中で仕上げる形のものを何品か見繕っておく。なんか主夫みたいになってきたな。
明日ぐらいは米を炊こうか、それとも外食としゃれこむか……そもそも明日もダンジョンの予定だったんだからダンジョンでもいいな。だとすると七層で昼食という事になる。昼食は……カレーにするか。コンビニで良さそうなカレーを見繕っておいて明日出かけるまえにちんちこちんに温めて七層で食事。よし決めた。
明日はいつも通り茂君祭りだ。何故だろう、一日暇を持て余すよりもダンジョン潜っているほうが気が楽になる。よほど俺は暇というものが嫌いらしい。何かしていないと落ち着かないというのは一種の病気かもしれないが、時間を無駄にしたくないという思いのほうが強い。明日は茂君。そういうことになった。
さくしゃからのおねがい
みなさんのごいけん、ごかんそう、いいね、ひょうか、ぶっくまーくなどから、ねんりょうがあふれでてきます。
つづきをがんばってかくためにも、みなさんひょうかよろしくおねがいします





