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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第五章:自由を求めて深層へ

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399:ゴブリンキング再び

 さて、ボス戦である。全員自分の様子を再確認して、ベストコンディションとは言わないまでもコンディションが充分であることを確認する。俺はいつも通りなので大丈夫だ。


「じゃ、行きますか。肩の力抜いて気軽に行こう。一回やった戦闘だし、前回の戦い方を思い出しながら行けば被弾もせずに済む。たかだか弱い敵が五十強とでかいのが一体だ。でかいのは弱い敵を倒すまで動かない。安心して周りの確保に集中できる」


 結衣さんがリラックスするために話す。全員目はまじめだが緊張はしていない様子だ。


「それに、外に出ようと思ったらすぐに出れますしね」

「え、そうなの? 」

「はい、部屋に入ってから開閉を試してみたんですけどなんか普通に出れるみたいですよ」

「……というわけで出ようと思えばいつでも出れる。より安心して戦えるね」


 少し気が抜けてしまったようだが、まぁ逃げ道は無いよりあるほうが安心できる。俺も一応いるしな。


 扉を開け、中へ入る。ボス部屋に明かりが点き、相変わらずの大広間、そして玉座には……おっす久しぶり。ゴブリンキングがいつもの右ほおに拳を当て、例によって聖帝ポーズで座っている。前回より余裕があるので色々見直す所があるな。


 周りにはこれも見覚えのあるゴブリンシャーマンとゴブリン達。やぁ君たちも久しぶり。


 聖帝様がゆるりと左手を上げ、前へ掲げた。戦闘開始の合図だ。とりあえず戦闘に参加する意思はあるんだぞというアピールは必要だろう。


「とりあえず、援護一発、チェインライトニング! 」


 バチチチチチチィッという音と主に先頭から十匹ほどが順番に感電し、そして黒い粒子へ還る。以前は最大威力で撃ったが、六、七匹程度にしか効果が無かった。しかし前より成長している事は確かだ。成長の実感を得たぞ。


「ナイス援護、ではこっちも隠し玉、エアスラスト! 」


 結衣さんが何やら唱えると次に先頭に立ったソードゴブリンから三匹、スッパリと斬れる。これは……名前からして【風魔法】か? いつの間に覚えたんだろう。今度はこっちが驚かされる番になったな。


 驚かされつつ、俺はもうやる事はやった。ボス戦は観戦に回るとしよう。出番が有るとすれば出血なり負傷なりが始まった時だ。それまでは座り込んで観戦しよう。


 結衣さん達はそれぞれ散らばり、自分の持ち場の範囲みたいなものを意識しているのか、ある程度の距離を保ってフレンドリファイアを避けている。向かってくるゴブリンを倒しつつゴブリンシャーマンの【火魔法】を避ける。


 皆それぞれの体で【火魔法】を避け、その後すぐにゴブリンを倒しに行く。蝶のように舞い蜂のように刺す、といった表現に近いだろう。ひらひらと避けてはゴブリンの数が確実に減っていく。


「ゴブリン終わり! 残りシャーマン各自一! 」

「「「「了解! 」」」」


 ものの三分もしない間にゴブリンは片付き、残るはゴブリンシャーマンだけとなった。おっと、火魔法がこっちにも飛んできているぞ。これは【魔法耐性】を試す絶好のチャンスじゃないか。


 試しに盾で受けてみる。前ほどの感触はないし、ストーブに当たったぐらいの温かさだ。どうやら間違いなく【魔法耐性】は作用しているな。そのまま盾に受け止めていたファイアボール的なアレを天井方向へはじき返す。火魔法は天井に当たった後消えた。


 三千万円の価値があったかどうかは解らないが、【魔法耐性】は確実に作用している。今後何かに使うだろう、次に活かせるかどうかは解らないが試験は出来た。今はそれでよしとしとこう。


 ゴブリンシャーマンと皆の戦いが続いている。ファイアボールを避けつつ徐々に距離を詰めながらの戦闘だ。アレを目の前で避けながら、場合によっては二発連続で飛んでいっている。


 全員身軽に回避できているのは荷物が最低限だからもあるんじゃないかな。きっと清州ダンジョンで戦った時よりも楽に戦えているはずだ。


 弾幕が薄くなっていく。どうやら各自一ずつのシャーマンノルマはこなしたようだ。


「残り三、近い順担当! 」

「ワシとリーダーと多村さんですな」

「了解、もうちょっとだけ待ってて」


 話しつつ自分の担当をこなしていく。これがちゃんとした鬼殺しの連携か、勉強になるなぁ。残りの二人は呼吸を整えつつ、ゴブリンキングのほうへ目をやりながら流れ弾が飛んでこないよう注意している。おっと、俺に流れ弾。弾いてまた天井へ。ここの天井は高いなあ。


 残りの三匹も危なげなく処理した結衣さん達はそれぞれ散らばって、誰にターゲットが来ても良いようにしているようだ。どうやらこの後の相手の動きを見てからそれぞれ動くらしい。


 ゴブリンキングが剣を片手にゆらりと立ち上がる。前も見た通り、背景に揺らめきが立ち上がっているように見える。うん、ボスっぽい。前回はここから瞬殺したからこの後の動きは一切解らない。しっかり観察させてもらって次に活かそう。


 ゴブリンキングが吠える。その声には表現が難しいプレッシャーが込められているようで、少ししり込みする。いわゆるウォークライという奴だろう。これもスキルなんだろうか。スキル名を予想するなら【威圧】というあたりかな。


 精神的な重圧が俺のところまで届いてくる。近いみんなはもっとだろう。しかし、一度受けてるのか、精神的に強いのか、動きにそれほど影響は見られない。


 ゴブリンキングが剣を振るう。ターゲットは村田さんだ。剣を受けるが、かなりの体格差がある。ギリギリ受け止めているといった感じだ。ステータスブーストも使っているだろうが、それでもその力の差は中々のものらしい。


 村田さんが剣を受け止めている間に他の四人がゴブリンキングを囲んで各々の武器で傷をつけ始める。が、表面もかなりの硬さを有しているようで切り傷程度のものが蓄積されて行くが、ゴブリンキング自身の回復能力があるらしく、切り口から出血の代わりに黒い粒子を流しては傷が消えていく。どういう仕組みなんだろう。自然回復力の高さの表現という奴なのかもしれない。


 結衣さんがエアスラストで牽制を行ってはいるが、防がれるか避けられるかしている。まだ【風魔法】の使いこなしに日が経ってないんだろう。


「硬いな……清州ダンジョンだともうちょっと柔らかかったけど」


 横田さんが感想を漏らす。どうやら難易度に差はあるらしい。


「蓄積させていくしかないね。とにかく囲んで棒で叩こう。それ以外にちょっと思い付きはない」


 結構苦戦しているようだ。助けは必要かな。とりあえず雷撃でも……いやでもあの感じだと大したダメージにはならないかも。ただ一瞬足止めが出来れば勝ち目はあるか。


「横田さん、【水魔法】でゴブリンキングを濡らすことは出来ますか」

「やってみますが……あぁ、一発強いのを頼めますか」

「タイミングはそちらに合わせます」


 もう一手援護する事にした。考えれば結衣さん達だけで攻略するという意味はあまり無い。俺が二回鬼殺しの一団になるというぐらいのもので、ここまで戦ってきた結衣さん達に戦歴を譲る意味でも支援ぐらいはしても問題はないだろう。


 横田さんが【水魔法】でウォーターボールと形容しても良い水の塊をゴブリンキングにぶつける。当然ダメージは無い。ただ水に濡らすだけだからな。


「足元に気を付けて。水から離れてください」


 結局手を貸すことになるがまぁ良いだろう。観戦料を支払うという意味では十分な気がするし。全員がいったん離れたタイミングでびしょぬれになったゴブリンキングに対して最大出力で雷撃を加える。


 水で濡らした後雷撃で感電。さすがにこれのダメージは入るだろう。物理攻撃には強くてもスキル攻撃にまで強いとは限らない。俺の最大出力の雷撃を受けたゴブリンキングは一瞬、膝をつく。


「今です」


 こっちの声のタイミングで五人揃ってゴブリンキングにそれぞれ全力で攻撃を加える。どうやら中々のダメージを与えたようだ。攻撃された傷跡がまだ塞がっていない。ダメージをうまく蓄積できている証拠だ。これ、俺と文月さんならどう対応するんだろう。自分たちで出来そうな範囲で戦術を組み立てていく事が出来るかどうか。


 この濡らして感電させて相手の動きを鈍らせるというのはゴブリンキング以外にも効果的だろう。【水魔法】に慣れた芽生さんならもっと効率的に……そもそもゴブリンの大群をまとめて殲滅するためにも効果的かもしれないな。覚えておこう。ボス戦ぐらいにしか使いどころは無いかもしれないが。でも、気になることが一つ増えたな。また検証が必要になるだろう。その場のノリで試しにやってみただけだが、以前の予想を覆す結果になった。


 ゴブリンキングはまだしばらく痺れているようで、よろよろと立ち上がる、その間にゴブリンキングの胴体に一斉に攻撃を加える結衣さん達。段々傷口が広がっていく。これは大きい支援になったな。


 立ち上がったゴブリンキングは再び雄たけびを上げる。ダメージに対する怒りなのか、それともパターン化されたウォークライなのかは解らないが、再び精神的な重圧を受けるが、二回目ともなるとさっきほどのプレッシャーは感じない。消耗させることには成功しているらしいな。


 ゴブリンキングはまだ感電しているらしいが、力を込めた一撃を放つ。受け止めた平田さんが後ろに吹き飛ばされる。あのガントレット、剣を受け止めて無事なのか。結構金かかってそうだな。きっとあれもダンジョン素材が配合されているんだろう。


「まだ大丈夫、それより自然回復されるまでにもう一度! 」

「皆行くよ。次で決めたい」


 全員が頷くとステータスブーストを全力で掛けているのだろう、かなりの速度でゴブリンキングに肉薄すると全力でそれぞれの武器をゴブリンキングに切り込む。


 ゴブリンキングは二回目の総攻撃でかなりダメージを受けたようだ。そうとう膝に来ているようでガクガクと体を揺らし始める。そして村田さんがついにゴブリンキングの腕を斬り落とす。切り落とした腕からは黒い粒子が噴出し始めた。


 腕ごと剣を無くしたゴブリンキングは切られてないほうの拳で反撃に出ようとするが、村田さんはそこをバックステップで回避、回避の姿勢から逆突出してそのままもう一方の腕も切り落とす。


 どうやらゴブリンキングも回復が追い付かないらしい。あちこちから黒い粒子を吹き出し始めている。もう間もなくかという感じではある。深手を負わせていると言っていいだろう。もう少しで戦闘が終わりそうな予感がしてくる。


 五人で囲んでゴブリンキングをボコボコにし始める。あちこちを斬られ殴られ、反撃が上手くできないでいる。もう一手だな。最後に結衣さんが首筋を槍で突き切る。


 ゴブリンキングは首への一撃が致命傷になったのだろう。首から他の部位よりもさらに大量の黒い粒子を噴き出した後、ついに倒れる。全身が黒い粒子に還りながら徐々に消えていく。


 どうやら小西ダンジョンボス戦は無事に終了したようだった。後は落ちているドロップ品の確保と、一番大事なゴブリンキングの角と魔結晶の回収だ。前は範囲回収で手軽に回収していたが、今はそういう訳にもいかない。

さくしゃからのおねがい



みなさんのごいけん、ごかんそう、いいね、ひょうか、ぶっくまーくなどから、ねんりょうがあふれでてきます。


つづきをがんばってかくためにも、みなさんひょうかよろしくおねがいします


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― 新着の感想 ―
楽しく読ませて頂いてます。 水魔法は純水なので絶縁で雷魔法で通電しないのでは?
[良い点] 飛ばされたゴブリンキングきちんとボスとして戦ったのがみれてよかったw
[一言] 目とか狙って金属製の矢を射かけてそこに雷落とした方が早いんじゃ?
2023/08/04 20:04 退会済み
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