369:鬼殺し、鬼ころしへ行く
双眼鏡の倍率、ご指摘を受けて二十五倍→十倍に修正いたしました。
車を走らせ、安全運転で鬼ころしへ向かう。場所はナビが覚えているので従い、安全運転で向かう。いいか、安全運転だ。俺が危険にならない運転が安全運転だ。
四十分ほどで鬼ころしに到着。早速スリングショットを買い求める。偽装用とはいえ立派に武器だから経費だ。価格を見てみると……意外と安いな。大事なのはきちんと引けるかどうかと持ち運びに便利かどうか。
なので銃型のスリングショットはまず選択肢から外す。パっと頭に思い浮かぶような形の、Y字のスリングショットから選んでいこう。どうやら意外とお安くお買い求めになれるらしく、予算を大幅に下回る結果になった。
ゴムは別売りらしい。つまり本体とゴムでワンセット。ゴムの強さを確かめたいところだが……店員に聞いてみよう。
「すいません、スリングショットの試射って出来ますか」
「実際に飛ばすのでなければ、サンプルがありますので引っ張って見てもらって構いませんよ」
大事なのはゴムの強さと自分の腕の引きの強さらしい。弓と一緒か。いくら強いゴムを装着してもゴムを引っ張れなければ意味がない。俺の肩と背中の強さが試されるって訳だ。
試しに一番手近で売れてそうな、残り数の少ない奴を選んでみる。ゴムを引っ張ってみたが手ごたえはあまりない。もっと強いのでも行けるな。徐々に強そうな奴を選んでいく。
全力でなんとか引っ張れる強さのところまで試してみたが、そこに己の限界を試しに行くわけじゃない事を思い出す。あくまで誤魔化し用の形だけのものだ。そこそこの力で引けて威力が出て、それを【雷魔法】で補填するわけだからポーズとして打ち込んで問題の無さそうな奴を選ぶ。ゴムとセットで七千円なり。
弾のほうはまだ在庫が二千発近く残っている。補充する必要はないだろう。そこまで連発して使うものでもない。四桁切ったときに考えよう。
他になんか面白いものは無いかと店内を物色する。ツナギ……そういえば俺はいつまでツナギなんだろう。小盾もそうだが、防具をそろそろ変えてもいいのではないか。頭はそもそも金をかけているのでいい。手袋はより邪魔な物じゃないモノに変えた。靴は……下手に履き替えて靴擦れを起こすと困る、そのままでいいだろう。
大事なのは胴体だ。一応防刃仕様になっているとはいえ、そろそろもうワンランク上のものに変えてもいいのではないだろうか。もしくは一枚余分に着るとか。
いくらステータスブーストで回避や相手の攻撃を往なすことに専念しているとはいえ、不意の一撃を喰らう可能性はあるし、それが元で致命打を喰らう事だってある。試しにいくつか見回ってみるか。
回避に専念を置くという今のスタイルを変更するつもりはないので、あまり重たい防具は着けたくない。そうなると、正面からの斬撃や体当たりにきっちり対応できるものが欲しい。胸当てとか、着込みとかそういうのだ。バトルゴートと戦って分かったが、正面から刺しに来られたら多分この服を破いてくるだろう。
そうなると……やはりワンクッション分体を守ってくれる装備が有っても良い。体の内側に着こむTシャツ代わりになりそうなもので何かないかな……
肌着コーナーに来た。すると、中々のお値段のするインナースーツが出て来た。材質は薄いが店の説明を読む限り、この薄さで刺突耐性抜群という触れ込みで動画付きのプロモーションが為されている。
この肌着を着込んだ男が肌着一枚で短剣を持った人に刺されている。短剣で横薙ぎに切られたり刺突されたりしているが、肌着にダメージは見受けられない。最後に男が肌着を脱いで、体に傷がついてない事をアピール。肌着のほうにもほとんどダメージが無い事を目視で確認。それだけの防刃性能を持っているという事だろう。
これいいな。Tシャツ代わりに着ていても良いデザインをしているし、街中で刃物を持った男が暴れていてもある程度安心感を持てる。長袖上下で……十二万。やはりこれもあの毛で出来ているんだろうか。だとしたら凄い性能だ。例のスーツの内側にこれを着込んでいたらたいがいの攻撃はやり過ごせるだろう。
どうやら難燃素材でもあるらしい。ますます面白い。早速店員に聞き、サイズを試してみる。最近肩回りもスッキリしてきたし、体にぴっちり着込む形になっても問題ない。可動域があればそれでいい。試着用のものがあったのでそれを試しに着させてもらう。サイズもピッタリのものがあった、これを……とりあえず二セットでいいか。
防具も仕入れたことでより探索の安全性が向上した。後は盾だが……これ以上重いのはかえって動きを阻害するし、そのままでまだいいだろう。見回ってみたがこれと言って興味を引くようなものは無かった。やはり俺の使っているスタイルがニッチすぎるのだろうか。いやでも同じタイプの盾は存在するにはするんだから清州ダンジョンには愛好家はそれなりに居るはずだ。
とりあえずまだそのままでいいだろう。割れたときに考えよう。そんな事態になったら探索は一時中断せざるを得ないだろうし、そこまで転ばぬ先の杖を期待してもかえって探索の進捗を損なうものになってしまうかもしれない。ここは現状維持だ。
後は十七層以降で活躍しそうなもの……双眼鏡だ。あるかなーと店内を物色していた所、手ごろな値段で買えるものを見つけた。やはり需要はあるっちゃあるらしい。一万円から二万円前後のものが主流商品として並べられている。あんまり高倍率のものは必要ないだろう。
遠すぎるならドローンで撮影すればいいからな。とりあえず十倍ぐらいのものを二つ買っておいた。これで二万円ほど。使うかどうか解らないが、あって困るものでもないだろう。
買い物は合計で二十八万円ほどになった。全部経費で落ちるよな? 支払いを終えてから一旦荷物を車に乗せ、もう一度店内へ。二階の雑貨品コーナーへ向かう。
どうやらバニラバーは今日も売り切れらしい。落ち着くまでにはもう少し時間がかかるだろうな。小西ダンジョンみたいに骨ウルフ狩りがこっちでも流行る様になればバニラバー需要も落ち着いていくんだろうか。何せ骨ウルフ狩りはバニラバーと違って初期投資さえすれば後は骨が折れるまでは効果が続く。
スライムにせよグレイウルフにせよ、ここ清州ダンジョンは過剰人口気味だが、骨ウルフ狩りが浸透すればスライムだけで稼ごうとする探索者は減る。その分二、三層の人口密度がやばい事になりそうだが……まぁその時はその時でどうにかなるだろう。もうどうにでもなれ。
ウルフ味噌カツというおそらく東海地方限定の可能性が高いレトルト食品を見つけた。これは購入しておこう。そういえば最近カツ食ってねえな。お昼は適当なチェーン店でカツ丼を食べて帰ろう。他に何点か気になるダンジョンのお供を購入すると店を出る。これは食品だから経費では落ちないな。レシートは一応取っておくが期待はせずに行こう。
鬼ころしでの買い物を終え、帰り道に全国チェーンのカツ丼メインのお店に寄るとスタイリッシュにカツ丼を注文しそのまま食べて帰る。感想は……美味かったよ。ただそれだけだ。チェーン店に特別な感情をもたらす食事はあまり求めていない。腹が減ったからたまたま食べたかったものを喰う。それだけでも十分美味しいではないか。
後は細々とした買い物を済ませるためになじみのスーパーへ寄る。探索用品の買い足しと大分在庫の減ってきた水とコーラの補充、そしてメモ帳にあった物の補充だ。
目薬……水……コーラ……それから使った分のシーズニングの補充、そして夕食……何食べようかなぁ。あ、キノコ類だ。常温でも保管庫放置しておいても問題なさそうなキノコ的な何かを保管庫に放り込んでおこうという話だった。
適当に種類を選んでキノコを買い求める。キノコならなんでも……という訳ではないが、マッシュルーム、シイタケ、マイタケ、エリンギ、シメジ……とにかくいろいろだ。キノコ鍋でもするのかという感じに積み上げると、朝食用、ダンジョン用の野菜も含めて会計へ。あ、パックライスも買い足しておかないと。三箱買い足してコーラや水と共に会計へ。
……と、そうだ。コーラ以外にも何か飲み物を複数種類追加しようと思っていたんだった。適当に飲みそうなものを追加していこう。甘めのコーヒーやビタミンドリンク、冷えてなくてもそれなりに美味しく飲めるものを何点か追加する。
さて、夕食は……夕食か。確かそうめんがまだ残っていたような気がする。と、すると揚げ物がいくつか欲しいな。いくつかチョイスした。
これでまたしばらくは買い出しに出る事も……あぁ、野菜は買い足す必要があるか。まぁいい。そのほかのダンジョン物資についてはこれで良いだろう。後は薬局で目薬と……お、ここの薬局にはバニラバーがある。よく残ってるな。
さて、高年齢層向けの目薬……色々あるな。やっぱり歳のせいで目にクる人は多いのか、需要がそれだけあるんだろう。同じ効能らしいもので同じメーカーですら複数種ある。ここは構わず一番成分の多そうな高い奴を買っていこう。きっと効き目はある。
メモ帳を見返して、保管庫に入れておくものや消耗品の買い出しについて一通り見て、思いつくことやメモ帳に書いてあるものを全部補充したはずだ。後は実際に動いてみて足りないと感じるものを増やしていこう。
よし、帰ろう。たい焼きを一つ買って。
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