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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第五章:自由を求めて深層へ

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368:夏の羽毛布団欲しい……欲しい……

日刊ランキング十位、ありがとうございます。

この時期は布団って薄いのが欲しいですけど、ある程度重さがあったほうが眠った感ありますよね。

 二人分のレシートを受け取ると、待合室でだらけている芽生さんにレシートを渡す。


「どれどれ……二十四時間、その内十二時間寝ててもこの金額ですか。十六層儲かりますね」


 芽生さんの目がまた¥になっている。本当解りやすいなこの子は。


「先行者利益って奴だな。もっと十四層に人が増えれば広々とモンスターを狩る機会も減るだろうし、徐々に少なくはなっていくと思う。十七層以降に期待だな」

「何にせよ今日は頑張りましたね」

「明日は講義だっけ? 今日半日ゆっくり休んで明日は茂君狩りに行ってくるよ」

「日帰りですよね。二回分ぐらいしか手に入らないのでは? 」

「それでも夏布団を一枚作れるぐらいにはなるから、体調が良ければ三回ぐらいはやってみようかなと」

「前みたいに三十分寝て起きて……なんてことは止めてくださいね。歳を考えないと体壊しますよ」


 芽生さんに釘を刺される。


「あれはもう……よほどのことがない限りやらない。二人交代で交互に狩りに行く、という手もあるが人が見てない事前提だし、保管庫に放り込まないと品質が維持できないからな。できるだけ優しく扱ってやらないと信用にもかかわる」

「何にせよ無理はしない事です。七層もちょっとずつ人が増え始めてますし、荷物をどう運ぶかもちょっと考えないといけない段階に入りつつあるかもしれませんね」

「その時は小脇に羽根抱えて優しく扱いながら帰るさ……そういえば夏布団はどうなっているだろう」


 スマホを保管庫から取り出して確認する。布団屋から留守電が入っていた。


「お世話になっております、布団の山本です。ご注文されていた夏布団が出来ましたので都合のいい時にご連絡ください。お待ち申し上げております」


 布団が出来たらしい。今回は持っていくダーククロウの羽根は無いので布団を受け取りに行くだけにしよう。


「布団が出来上がったらしい。この後取りに行く」

「探索者で寝具だけに四十万ぐらい使ってるの、多分洋一さんぐらいだと思いますよ」

「そのうち需要は爆発するさ。日本人には睡眠不足が多い。それを吹き飛ばしてくれるなら多少のお値段は吹き飛ぶんじゃないかな。枕だけでもとか」

「とりあえず帰りましょうか。私もマイ羽毛布団を手に入れたくなるかもしれません。一度で良いから布団使わせてもらっていいですか? 」


 芽生さんがそれほどまでの効果なら一度試してみたいらしい。


「まぁ良いけど。ただ、値段が値段なので体を綺麗にして寝巻でぜひ使ってほしい。いくら疲れているからって汗かいたまま布団を使うのはさすがに俺でも気が引ける」

「わかりました。体を綺麗にして是非使わせてもらおうと思います……その前に洋一さんの家知りませんね」


 そういえば自宅の場所とか話したことなかったな。


「駅から五分、割と便利な場所にあるぞ。部屋もいくつか余ってるし適当に部屋を使ってくれればいい」

「部屋を適当に使っていい……もしかして、洋一さん結構いい所に住んでます? 」

「いんや、親から受け継いだ一戸建てに住んでるだけよ」

「マンションじゃないんですね……意外です」

「その分古いからな。大地震でも来たら倒壊するかもしれんが、その時はその時だ」

「昭和の家って感じがひしひしと伝わってくるんですが」


 確かに外観は昭和の家そのものだと思う。ただ一人者には広すぎる家ではある。保管庫が無ければ掃除一つにもかなりの労力を使う。


「家の中は一応新しくして有るぞ、キッチンもIHだし。色々手を入れてはいる」

「何かますます気になってきましたね。今度洋一さんの生活事情というものを見たくなりました」

「そんなに他の家と変わらないとは思うけどなぁ」


 そもそも他人の家にお邪魔するというイベントが人生においてそんなになかった。他人の家か……言われてみればちょっと気になるな。俺は小奇麗にしてるつもりなので家に入って見て落胆される事は無いと思うが。


「ま、その内気が向いたらおいで。別に取って喰ったりしないから」

「はーい、考えときます」


 支払いカウンターで振り込みを済ませると、ギルドを出てバス停に向かう。バスはちょうど来ていた。二人乗り込んで爆睡……はしなかった。仮眠取ってそのまま真っ直ぐ上がってきたからだろう。運転手のほうをチラッと見てみると「お、今日は寝てないな」という視線をミラー越しに感じる。今日はしっかり睡眠をとってきたのだよ、悪いな。


 無事駅に着き、普通にバスを降りる。運転手に「今日は寝ませんでしたね」と一言添えられていた。


「ダンジョン内で仮眠取ってきたんで今日は目がさえているんですよ」

「なるほど、朝帰りでしたか。お仕事お疲れ様でした」

「こちらこそ、安全運転ありがとうございます」

「お礼は結構です、仕事ですから」


 相変わらず出来た運転手だ。この路線はずっと使い続けよう。さてバスを降りたら次は電車だ。電車内は遅れて出勤するようなサラリーマンと何処かへ出かけるオバチャンで占められている。オバチャンと言っても俺と同じぐらいの年齢に見えるのでお姉さんというほうが近い気がする。


 電車に揺られて家に帰るのをひたすら待つ。この待ち時間が苛立たしい。俺は早く新しい布団を手に入れたいんだ。この普通列車が突然快速になったりしないものか。タイムイズマネー。いらだつ心を抑えながら電車のつく時間をじっと待つ。そして最寄り駅に着くとダッシュで自宅へ。


 自宅へ着いたら洗濯物やらなんやらを一通り片付けて着替えた後、早速布団屋に電話。店長が出た。


「お世話になってます、安村です。布団が出来たと聞いたので早速取りに行きたいと思うのですが」

「かしこまりました……たしかご自宅から三十分ほどでしたか。今はご自宅ですか? 」

「えぇ、すぐ出かけるのでそのぐらいで到着すると思います。後、今回は納品無しで商品受け取りだけ、という形になりますがよろしいですか? 」


 念のため、今回は羽根の納品が無い事を確認しておく。向こうで受け入れ準備をしてて納品が無かった、なんて歯車の狂いは生じさせたくないからな。


「えぇ、仕入れに関しましては安村様に一任させていただいておりますので、また入手された時にまとめてでも少しずつでも持ってきていただければそれで構いません。それではお待ち申し上げております」


 電話を切り、早速ツナギを普段着に着替えると洗濯機を回したまま早速布団の山本まで向かう。気分はウキウキだ。なんせ夏でも暑くないダーククロウの布団が俺を待っている。出来立てだからきっと誘眠成分もたっぷり詰め込まれているはずだ。楽しみである。


 浮かれている時ほど車の事故を起こしやすい。浮かれた気分をぐっと抑えて車を走らせる。いつもよりアクセルを踏み込んでいたようで、五分ほど早く布団の山本に着いた。


「こんにちは、安村です。布団の引き取りに来ました」

「お待ちしておりました。布団はこちらになります。効果のほどは使っていただいてから感想を頂くことになりますが、もしかしたら使っている羽根の量の関係で効果も薄く感じるかもしれませんが、暑さを感じない程度に詰め込ませていただきました」


 見せてもらった布団は布団というより肌掛けという感じだった。羽毛の量は確かに少なそうだ。羽毛の一部屋……でいいのか? 一マス当たりの量も確かに少なそうに見える。しかしその分涼しさは感じられるだろう。鼻を近づけてスッと香りを確かめてみる。ダーククロウの香りがほのかに漂う。これはいけそうだ。


「確認させていただきました。後はこの布団のサイズに合うカバーがあれば二、三枚都合させていただきたいのですが」

「そのぐらいでしたらこちらからお付けさせていただきます。いつもお世話になっている御礼でございます」


 カバーもセットにしてくれるらしい。有り難い。汗をかいたら多分カバーを洗う事になるので替えのカバーも含めて売ってくれるのは有り難い。お言葉に甘えることにしよう。


「お心遣いありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます。できるだけ薄そうなカバーでお願いします。そのほうがダーククロウの香りを遮らずに済みそうなので」

「かしこまりました。そのようにさせていただきます。しばしお待ちください」


 いつも通りお茶が出て来た。今日は納品ではないけどいいお茶を頂く。ちょうど喉が渇いていたので有り難い……ちゃんと冷えたお茶が出て来た。暑い季節には冷茶だな。


「では、また納品のほうをお待ちしております。本日はお買い上げありがとうございました」

「またお世話になります。ではこれで」


 色々とおまけしてくれて布団を無事に入手した。今日はメモ帳に書き込んだ物を買い足して早速新布団の威力を試す。そのまま買い物を終えて家に帰る事にする。メモ帳に買うものは……スリングショットか。鬼ころしへ……このまま行ってしまうか。車でもそれほど遠い場所ではない。路線変更、鬼ころしへ向かう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] あんまり重いのもあれですけど程よく布団の重みがあると気持ちよく寝れますよねえ まだ枕パワーしか知らない芽生さんが布団の力を知ってしまって帰ってこれるだろうか……
[一言] そう言えば洋一愛のあの方 どうしてるのかなぁー
[気になる点] 「探索者で寝具だけで四十万ぐらい使ってるの多分洋一さんぐらいだと思いますよ」 [一言] 収入が増えても庶民感覚を無くさずに話が進むのは好感覚です。ですがさすがにこれは言い過ぎかなぁと。…
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