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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第五章:自由を求めて深層へ

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360/1226

360:休憩のアヒージョキノコ無し~だから脱ぐなと言ったのに~

どこのどの商品とはいいませんがフルーツ味再販するそうです、良かったね。

 戻ってきた十四層に人影はない。自分たち以外にテントはあるが、その持ち主である小寺さんたちは潜っているわけではなく、テントの設営のためにいったんここまで来たのだろうか。なら会うのはまた数日先になりそうだ。もしくは潜り始めるときに一緒に潜る事になるだろう。


 エレベーターの事はまだ明かせないので、その時は遠回りになるが一層から十五層まで久々に歩きで向かう事になる。たまにはそうしてやらないとダーククロウの羽根も集まらないが……撃ち落とすのは良いとして保管庫に収納しておくことはできないから狩る理由も小さくなるな。


 どっちにせよ悩み事だな。こればっかりは俺の独力でどうにかなるような事じゃない。運が良いか悪いかを考えるしかなさそうだ。


 テントまで帰ってきた。さて、カロリー補給の時間だ。何を作ろうかな……


「リクエストある? 」

「確実にカロリーを摂取したいのでお米と……できればボア肉が恋しいですね」

「なるほど。じゃあこの中から選んでみて」


 シーズニングシリーズを全部取り出してリクエストに応えてみる。芽生さんはしばらく悩んだ後、アヒージョ風の奴を選んだ。油分が取りたいらしい。


「野菜はさっき食べちゃったから肉だけになるけど、その分肉を多めにしよう。お腹は膨れるはずだ。後若干冷めてるだろうからパックライスを先に温めるね」

「おま~かせ~」


 こっちに完全に丸投げしながら寝る準備をいそいそと始めていた。放っておいていいか。少量の水を垂らしパックライスを再度温める。若干冷たく硬くなってしまっているパックライスだが、フライパンで程よく温める事で元のアチアチの状態に戻すことが出来た。次はメインディッシュの肉だ。


 オリーブオイルはちゃんと今回は持ってきているので、前よりもさらに美味しくできると思う。やはりオイルにまみれてこそだな。魚介もキノコも無いが贅沢に肉の脂とオリーブオイルだけをまみれさせたボア肉のアヒージョだ。これをアヒージョと呼んでいいかどうかは難しいところだが、アヒージョだと思えばアヒージョだ。


 やはり賞味期限が遠くない食材……冷温保存しない乾物やキノコなんかは保管庫に常備しておいても良いんじゃないかと思い始める。何でもとは言いたくないし、保管庫の中でうっかり液状化現象が始まったりするようなものは精神衛生的にも入れたくない。程よいところを今度あたってみよう。メモる。


 飯の準備が出来たので芽生さんに声をかける。空いてるバーナーでお湯を沸かす。


「俺はコーヒー飲むけどカップスープとか飲む? 」

「飲む。温まりたい」


 二杯分の水を沸かすことになった。その間に食事を進める。ボア肉よりウルフ肉のほうが油まみれにさせるには適切だったんじゃないだろうかとも思うが、口の中を脂で満たしたかったのだろう、芽生さんは喜んでいるように見える。ならばよし。


 湯が沸いてコーヒーとカップスープをそれぞれ飲みつつ食は進む。俺もお腹が空いていたらしく、一口大に切ってあるボア肉を次々と胃へ流し込む。


「ふぅ……温まりますねえ」

「温まるといえば、インナーシュラフを一度持ち帰って洗濯しようと思うので、今回帰る際に忘れていたら指摘して欲しい」

「わかりました。ここんとこ置きっぱなしですもんねこれ」

「ちゃんと暖かく寝られてる? 寒くない? 」

「おかげ様で。途中で変に目が覚める事もありませんしばっちりです」


 ならばよし。選択した甲斐もあろうというもの。寝ている間に体を冷やして動きが鈍くなるのでは休憩仮眠の意味がないからな。


 アヒージョはいつもより油分多めって感じだが、味わいとしては充分ダンジョン飯として豪勢な物の内に入るだろう。量としては問題ないんだがやはり二回目以降の食事の食材の種類も充分なものを用意したい。次に活かそう。


「さて、お腹も膨れたところで一眠りして次の探索に行きますか」


 グッと伸びをしながら次の打ち合わせを始める。


「どうせダンジョンも閉まってますし、歩きながら帰るというのも選択肢にありますが……やっぱり地図埋めを先にしたいところですね」

「ならもう一回十六層だな。そろそろ階段を見つけたいところだが……できれば十七層もちらッと覗きたいなーと思っている。どんなマップか気になるし」


 一応草原だという事は解っているが、実際目で見て見ない事にはどういう草原なのか実感しづらい。


「確か草原マップって話でしたよね。やっぱり昼夜は無いんでしょうか」

「無いとありがたいな。明かりが必要だとヘルメットにライトつけるなりしないといけなくなるし、そのバッテリーも用意しないといけない。視野も狭くなってしまう。入ったところが偶々日が昇っていてその内日暮れになるって可能性もあるんだ。それを確かめるためにも一旦階段を下りる必要はある」


 芽生さんはほうほうなるほどという感じだ。多分半分ぐらいは理解しているな。


「荷物を増やすために一度階段を下りて、周りをパッと見てそれで帰る感じですか」

「大体あってる。階段見つけた時の対処はそういうことで。とりあえず休んで、もう一回トライするだけの体力の回復をしよう」

「りょーかい。じゃあおやすみ~」


 芽生さんはいそいそと自分のテントへ帰ると、すぐに身動きらしきものは無くなった。割と疲れていたのかもしれない。俺も寝るか。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 また四時間仮眠を取った。おはようございます。現在午前一時半。枕のおかげで疲れらしきものは取れている。布団も持ち込んで万全な体調を期する事も出来るが、せっかくのお高級な布団をここで汚したりしたくない。ちゃんとシャワーを浴びて服も綺麗にして、その上で使うほうが精神的にも清潔感的にも完璧な眠りを取れようというもの。


 そういう意味では七層の布団をよく使いまわしているな、という感想がでる。たまには二人そろって七層に顔を出しておかないと探索者を止めたんじゃないかと思われるかもしれないな。洗濯もしたいし。


 階段探しが終わったらアリバイ作りのための一層から十四層まで行き来して帰るだけの探索も必要になってくる。自分のせいとは言え、中々面倒くさいものだ。羽根集めのついでと思って諦めるか。


 隣のテントをガサガサと揺すり、芽生さんを起こす。ふぁい……という寝ぼけた返事を受ける。まだ疲れが取れ切ってないのか、それとも純粋に睡眠不足なのか。それとも俺のお手製枕の賞味期限が切れてきたのか。確かに四時間おきに四時間寝るというのはあまり体にいいとは言えないか。


 コーヒーを沸かして準備していると、のそのそと芽生さんが起きて来た。服も着ずに。これはだいぶ重症だな。薄いグリーンの上下揃いの下着が丸見えのままこっちへのそのそと近寄ってくる。


「おはようございましゅ……タオルください」

「タオルは良いけど服は良いのか? 全部見えてるぞ」

「へ? ……ぁあああああああ」


 これで目は覚めただろうな。タオルを放ってやると受け取って急いで自分のテントに戻っていく。芽生さん、結構なものをお持ちだな。眼福眼福。朝からいいものを見れた、これは心のフォルダに名前を付けて保存しておこう。


 しばらくして湯が沸いたころ、再びきちんと着込んで出て来た。タオルを投げてきたので受け取って保管庫に放り込む。


「……見ましたよね? バッチリ見ましたよね? 」

「寝起きからごちそうさまでした。だから服を着て寝る習慣をつけなさいと言ったんだ」

「忘れてください」

「今後、脱いだまま寝る事の無いように俺の心に深く刻みつけておく」

「忘れろ~忘れるんだ~」


 顔を赤くしつつ俺の頭をグラングラン揺するがすまんな、俺の思い出画像フォルダは頭じゃなく股間にあるんだ。悪いがそれでは忘れることはできないぞ。


 しばらくして気が済んだのか、俺の頭を振る事は止めた。コーヒーを渡すと黙って飲み始める。


「睡眠が足りないならもうちょっと休憩してから行くけど、どうする? もうちょい寝る? 」

「いいえ、今ので完全に目が覚めました。この鬱憤はモンスターにぶつけることにします。そして今日もガッツリ稼いで帰ります。でないと気が収まりません」


 ヘイトは俺からモンスターに移ったらしい。目も覚めたようだしこれで問題なく次の探索へいけるな。こういう時ははっきり見たかどうか伝えてその場でお互い引き摺らないようにするに限る。


 コーヒーを飲み終えストレッチを終えたところで一帯を綺麗にし、出立だ。芽生さんなどは気合が十分にみなぎっている。これで階段まで見つかればいう事は無いな。

良ければ評価お願いします。

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― 新着の感想 ―
ビキニアーマーなんやで
[良い点] 素晴らしい飯テロだった 御飯食べれるぞオイ
[一言] これで少しは危機感持つかにゃぁ?
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