359:どんとこい十六層 3/5
十六層の階段を下り、すぐの小部屋に湧いているスケルトン二、骨ネクロ一、骨弓一のグループを難なく乗り切ると、また迷宮に来たなという手ごたえを感じる。今度は小部屋から出て左へ。曲がりくねっているから後回しにしようと言っていた方向へ向かう。
曲がって、すぐ曲がって……その先はまた曲がった。まるで前進中の蛇のようだ。これ、ひたすら曲がりくねって行き止まりなんて事は無かろうな。それは勘弁してほしい。せめて横道一本ぐらいは出て欲しいところ。ついでに言えば曲がるたびにスケルトンが居るので戦闘が連続している。ここ全て固定リポップじゃないだろうな。だったらさすがに面倒くさいぞ。
小部屋を出てから十回ほど曲がりくねった先、漸く三叉路が現れた。それぞれの道を確認してモンスターが居ないかどうかを確認する。よし、居ないな。前の地図と照らし合わせると……
「ここは左に折れよう。なんか前に通った道と接続するような気がする」
「どれどれ……そうですね、行ってみますか」
「小部屋の可能性もあるが、小部屋を経由して繋がっているかもしれないし」
前回はまず真っ直ぐ行って全体の広さを感じ取る地図巡りだったが、今回は繋がっていそうなところは確認しながら進む。というわけで早速小部屋で骨グループと戦闘、難なく撃破。芽生さんの殲滅力が上がったおかげで骨ネクロが召喚を終える前に倒すことが出来た。俺ももう少し強くなりたいな。
その先は前回巡った道に続いていた。これで地図が一つ解りやすくなったな。さて、とりあえずさっきの三叉路まで戻って、今度は右折する。地図の東西の広さを確認しておきたい。東西南北が明確に決まっているわけではないので、階段を下りて正面を南側とみて、それを東西南北の基準としておく。
ここからさきはまた未知のゾーンが広がるので、出来るだけ直線の道を行く。道沿いにいる骨グループを確実に倒しつつ進む。するとフォークのように四本の横道が連なっている場所があった。ゲームだったら行く先のどれかに階段か宝箱があるような感じだ。しかしこのダンジョンのここまでで宝箱の類を見たことはないので、おそらくここにも無いだろう。
とりあえずフォークの手前に居るスケルトン四体を倒し、周りの安全を確保。その後でフォークの行く先を一つずつ調べる。さて、まずは目で見える範囲で奥があるかどうかを確認していく。どうやら二本については行き止まりで終わるようだ。残りの二本は曲がって更にその奥があるらしい。
「これはどれに行くか迷いますねえ」
「行かずに他へ行くという選択肢もある。他の道を埋めたらこれが行き止まりなのかを確認できる可能性もあるし」
「行くも行かぬも自由ですか、選択の自由があっていいですね」
「この際不自由かもしれないけどな。悩んだ時は……できるだけ真っ直ぐな道を選ぶ」
一番奥側の道を選んだ。結果、曲がってすぐに行き止まりになった。……まぁそういうこともあるさ。戻ってもう一本のほうを伝っていくと、曲がり角が少なめで真っ直ぐな道になった。このままいくと……お、前回回った回廊部分につながってきたぞ。
「ここから先は前回来たな。つまり一回りする道が出来たという事と、この左右の回廊へつながる道の内側は行き止まりか階段があるかの二択に絞る事が出来た」
「これで半分……ぐらいは歩けましたかね」
「半分だと良いけどな。とりあえず、細かいところを潰していこうか。もしかしたら案外近いところに階段が有ったりするかもしれないし」
二回目の探索を開始して四十分ほどで以前通った道へのルートが二つ発見できた。小部屋があればそこをよく観察して、階段がないかどうか調べてみる必要があるな。
「数時間前通ったとはいえモンスターは湧き直している。同じ道を通ってモンスターを倒して向かうのは稼ぎとしては有りだが地図埋めとしては非効率だ。とりあえず見えているモンスターを忘れることにして、さっきのフォーク状の所まで戻ろう」
「そうですねえ、早く埋めきって次への階段を見つけたいところです」
さっきのフォーク状の道へ戻ったらもうモンスターが湧きなおしていた。結構早いな、十層といい勝負かもしれない。十六層もこの迷路を踏破できるかどうかが関門みたいな所だろうか。ダンジョンマスターに会ったら文句を言わないとな。いやしかしこのマップで罠を仕掛けてないだけ有情かもしれん。
更に三叉路まで戻って一度通った道の中で折れ曲がらなかったほうへ順番に地図を埋めていく。細やかな作業だが、やる事は方眼紙を埋めながら戦闘してモンスターをぶったおす事なので道を埋めていく以外は結局ほかの階層とやる事は変わらない。
小部屋に着いたら骨グループが会話をしていた。相変わらずカタカタと何を言っているか解らないのが、なんだか楽しそうではある。水を差して悪いが虐殺者のエントリーだ。今回はパチンコ玉でスケルトンの頭部を全て打ち抜いてから襲い掛かる事にした。
スケルトンと骨ネクロはオロオロ頭を探し、骨弓は天井に向けて誤射している。これは楽な戦闘方法を見つけたぞ、しばらくは使えるな。芽生さんとにっこりし合うと混乱の間に片づけてしまう。
「こいつはらくちんですね。次も是非この手で行きましょう」
「それが一番楽そうだ。久しぶりのまともな出番に保管庫も大喜びだろう」
骨グループを見つけたらこの手で行こうという事になった。多分何処かへ行ってしまったパチンコ玉はスライムが溶かして回収してくれるはずだ。もし誰かに見つかったら……その時のためにスリングショットでも持ち込んでおくか。鬼ころしに弾があったんだから本体もあるはずだ。もっと早めに偽装処置を施すべきだったな。次に活かそ……次あるのかな。
気を取り直して空白地を虱潰しにする様に歩き回る。横道、曲がり角、小部屋。それぞれモンスターが湧いていたり湧いていなかったりを繰り返しながら徐々に地図が埋まっていく。これで半分ぐらいは埋めることが出来たのだろうか?
まだまだ埋める所はたくさんある気がするこの十六層、二回のトライで階段が見つかるほど簡単ではないだろうし、そこまで狭いならもう見つけているだろう。そのぐらいの気持ちで向かったほうが楽ではある。
またグネグネと曲がり角を経由しつつ分かれ道に差し掛かればどちらに行くかを芽生さんと相談し、たまに参考にしながらまた迷宮を巡りつつ、スケルトン四体を相手にしたあと行き止まりだったり、小部屋に乱入して骨達の集いを台無しにしたりした。
「もう少しで回廊の内側は埋め尽くせるな。二回目にして成果ありか」
「そろそろ時間じゃないですか? 良い感じに歩き回った気がしますけど」
ふと時計を見る。午後七時。確か潜り始めたのが五時半ぐらいだったから……ちょうど折り返しの時間か。今回は戦闘が少し少なめだったから少し物足りない気もするが油断するわけにはいかないからな。
「この通路を行ききるか分かれ道に来たら戻るか。道は解ってるし多少ショートカットも出来るから帰りは気持ち楽だな」
「次のトライがまた大変そうですね。また完全に未知の場所を歩くことになるんですから」
「まあ、未知と言えど出てくる敵はだいたい同じ。ここまで通りの用心で丁度いいさ」
無事行き止まりに行きついたところで帰りの行程に入る。若干階段に近い位置なので行きほど時間はかからないだろう。モンスターは元通り湧き直しているだろうが、骨グループにも慣れた。ここでの戦闘のパターンは確立できたと思う。イレギュラーが発生した時はその時でまた考えよう。
まず回廊に出て、そこから前に歩いてきたルートを経由して帰るほうが早く帰れそうだ。小部屋を多めに経由する事になるが、骨グループを数多く殲滅できればキュアポーションのランク2も手に入れやすくなる。アレ一本で美味しいかどうかが変わるからな。さっき一本手に入れられたができればもう一本欲しいところ。
期待すると出てこなくなるのが物欲センサーというものだが……運よく帰りの道中で二本目、合計で四本目を手に入れる事が出来た。物欲センサーは今日はサボっているらしい。これで二本は予備に、残りは査定に回せる。
後査定に回してないのはスケルトンの剣だが、こっちはゴブリンソードより数が上回った時点で切り替えていこうと思う。今のところ……十六本ある。中々の本数になったな。
帰り道を間違えないように注意しつつ、そういえばここ通ったな……と思い出しながら無事に十六層の階段のある所まで戻ってこれた。骨グループもきっちり処理し、十五層への階段を上がる。
そして十四層までの道をこなしていく。骨弓が居ない分やはり楽だな……階段を上がった所でスケルトンが三体。ボス部屋前までに骨ネクロが二体とスケルトンが合計四体。ボス部屋前の四体をきっちり倒すとそのまま道沿いに計十二体のスケルトンを丁寧に破壊。横道への小部屋に入る。
小部屋に居る骨ネクロ二体とその先に居る骨ネクロとスケルトンのグループを倒すと、十四層までもう少し。最後の階段の前の三体のスケルトンを倒すと十四層への階段をゆっくり上がる。
行きよりスケルトンが少し多かったかな? まぁ些細な差だ。その分収入が多くなったのだから良かった事としておこう。
次回ちょっと飯テロ
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