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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第五章:自由を求めて深層へ

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350:夏布団とドローン

 バスと電車に揺られながら帰る。バスではいつも通り爆睡して運転手に起こされ、電車では眠気を堪えて立ったまま揺られ、最寄り駅で降りて途中のコンビニで軽食を買いあさり昼飯とする。今日はもう何でもいい、サラダチキンとおにぎりでいいだろう。


 そういえばコンビニおにぎりもいろんな種類出ているが、ここ二十年ぐらいで定番商品になったのはツナマヨと唐揚げマヨぐらいだなぁなどと考える。昔からある鮭や梅や明太子や昆布などは除外するとして、コンビニおにぎりというジャンルはああ見えて実はかなり難しい商品なのかもしれないな。


 後はまんまるおむすびの鶏五目や巻き寿司みたいな感じでいくつかあるが、大抵ツナマヨが同形状で商品棚に並んでるものを見ると、やはりツナマヨという勢力はかなり強い商品であると言えるだろう。市民権を得たという奴だ。


 後はチャーハンを海苔無しで握ってあったり、マグロのヅケなんかもラインナップに上って入るが、いついかなる時でも棚に並んでいるかと言われるとそうでもない気がする。おにぎりとて奥は深いな。そんなわけで定番となったツナマヨと鶏五目、銀シャリを買って帰ることにする。おにぎり三つもあれば十分だろう。


 会計を済ませて家に戻る。まずシャワーを浴びて、体の汚れを落とした後普段着に着替える。時間的には後一時間ぐらいでドローンが到着するはずだ。十七層以降で使うために気が早いと言えばそうだが、使ってみるのが初めてなので練習も兼ねて早めに発注しておいた。とりあえず家の掃除やダンジョンで出たごみ処理なんかを済ませて寝て時間を潰しているとインターホンが鳴る。到着したかな? 到着した。早速使い方を調べる。


 自分の頭の上に飛ばして周囲をカメラ撮影し、スマホの画面で確認する事が出来るらしい。技術の進歩を感じる。おじさんは最先端に取り残されている自覚はあるのでちょっとでも追いつけるよう努力はしてみよう。


 試しに庭に出てドローンを飛ばす。操作方法は……スマホをコントローラに接続して……これで出来るらしい。試しに家の上に飛ばして周囲を確認、そして画面をスマホで確認する。結構綺麗に撮れるな。これなら十七層でも操縦をミスらない限りは視界を広げることができるだろう。しばらく飛ばして遊んで、良い感じに操縦が出来るようになった。


 出番はしばらくないだろうが、いざとなったらよろしく頼むぞ。スマホの予備バッテリーもドローンの予備バッテリーも用意はしてある。途中で力尽きて迷うことが無いように短時間でこまかく使って行こうと考えている。


 さて、荷物が届いたことで暇になった。疲れを取るために昼まで寝よう。動き始めるのはそれからだ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 二時間ほど仮眠して疲れを取った。さっき買った昼食を食べて胃に詰め込んだ後、布団屋に電話。今から多めに素材納品しますけど大丈夫かどうかを確認を取る。


 向こう曰く大歓迎らしい。いくら持ってきてもらっても全部買い取りますよ、という意気込みをスマホ越しに感じる。


 早速布団の山本に向かうために羽根をエコバッグに詰め替える。手持ちのエコバッグを全て使い切ってなんとか車に積むことが出来た。早速出かける。勿論安全運転だ。


 三十分ほど運転して布団の山本に到着。店長がニコニコ笑顔で出迎えてくれた。待ってましたと言わんばかりだ。


「ご無沙汰してます。今日は大量に持ってきたので選別と品質確認大変でしょうが一つ宜しくお願いしますよ」

「ご無沙汰してます安村様。こちらは準備万端です。早速搬入いたしましょう。車のほうに行かせてもらってよろしいですか? 」


 電話の時点で人員をあらかじめ都合していたのだろう。中から人がぞろぞろと出てくる。


「えぇ、搬入の手伝いをお願いしますよ」


 車から次々とエコバッグを運び入れていく。全部運び終わった後店内でボーっとしていると、お茶とお茶菓子が出た。どうやら量によってお茶菓子が出るかどうかが決まるらしい。ここのお茶菓子は美味しい。何処で買ってきてるんだろう。店を知りたいところだが、ここへ来て食べる羊羹もまた格別だ。


 十五分ほどして計り終わったのか、店長が書類と共に帰ってきた。


「今回は十キロと四百グラムほどございました。品質も変わらずとてもいいものでした、で、お支払いのほうですかこちらになります」


 二十七万四百円。百グラムあたりは二千六百円。前回と同じ単価の様だ。つまり今日の稼ぎは六十万ほどになったことになる。


「今回は大量に納品して頂きましたが、もしかしてご無理をさせてしまってはいないでしょうか? 」


 店長は俺の心配をしてくれているようだ。心遣いが有り難い。


「まぁ、多少体にきてますが……強行軍で一晩ため込んでそのぐらいはできる感じですね。ただ他の探索者との取り合いになると毎回お約束できる量ではありません。それだけは了解して頂きたいですね。普段はダンジョンに潜って五分の一ぐらいでしょうか」

「それはそれは……なんだか無理をさせてしまっているようで申し訳ありません」


 さて……この辺で切り出すか。こっちからのお願い事をしよう。


「実は、大量に納品したのには理由がありまして、夏用の羽毛布団を一枚作ってもらおうと思ってまして」

「なるほど、さすがにあれでは暑くなってきましたか。夏布団、お作り出来ますよ。せっかく素材を納品して頂いたことですし、優先してお作りさせてもらおうと思いますが」


 店長はすぐさま前向きに考えてくれたようだ。これも素材の取引先としての供給特典みたいなものかな。多めに納品した分の価値はあったって事だな。


「予算のほうはどのくらいを見込んでおけばいいですか……」

「そうですね……十万でいかがでしょう。質のいい品を提供していただいてますし、それも安村様のおかげですから、精一杯勉強させていただこうと思います」


 十万か。かなりお安いな。枕と布団で三十万という最初のセットに比べれば格安だ。おそらく身内価格という奴だろう。


「十万ですか。わかりました。いま支払えばいいですかね。先払いという事で」


 今受け取った金がある。そこからそのまま十万ポンと渡す。芽生さんには八万千百二十円の分配が行くが、それでもまだ手持ちの金が余る。手持ちにあるうちに支払って契約を結んでおくことのほうがお互いにスムーズな取引になるだろう。


「では、夏布団のほうは間違いなく製作させていただきます。受け取りのほうはダンジョンに入る都合もあるでしょうから、留守電に一報を入れておくという形でよろしいでしょうか」

「えぇ、それでお願いします。これで朝汗だくで起きる事も少なくなりそうです」


 契約書類を取り交わし、問題が無さそうなことを確認すると、適当な布団カバーを選びそれも費用に込みという事にしてもらった。ちょっと儲けた。


「枕のほうの売り上げが好調でして。さすがに布団を豪快に購入するお客様はそうそう現れないのですが、枕ぐらいなら……と枕を購入して、いずれ羽毛布団のほうもよろしくお願いしますと言ったリピーターも増えてきまして。安村様以外からも供給元の手を広げてはいるのですが……正直安村様ほどの品質と量を持ってきてくれる探索者やギルド経由の流通はなかなか居ないところでして」


 どうやら完全に大口の供給元だと思われているらしい。みんなそんなにダーククロウを狩っていないのか。狩ってないんだろうな。あれは手間もかかるし嵩も大きい。わざわざ五層六層まで潜っていって両手いっぱいに抱えて行ったとしても精々一万円という所。その為だけに潜るにはあまりに安すぎる。


 それに倒し方だ。スキルがまだ充分に行きわたっていない以上、あっさり倒してたっぷり持って帰るということ自体が難しい。その点でこちらは大きなアドバンテージを得ている事にはなるが、それだけのことができるならもっと稼げる階層はある。わざわざダーククロウに執心になる理由は無い。


 ダンジョン産ドロップ品の中で二番目に需要と供給が完全に釣り合ってない品物ではないかと思われる。一番はポーション類だと推測しておく。


 小西ダンジョン産のダーククロウは実質俺だけ。他のダンジョンで狩っている探索者がいるとしても供給量は遠く及ばないんじゃないかと思われる。そりゃ品不足にもなるよな。


「まぁ……そうかもしれません。私の通っているダンジョンでもダーククロウを狩りにわざわざ出かける……という探索者は見かけたことありませんから」

「では安村様は……いや、詮索はしない約束でしたね。また手に入り次第今後もよろしくお願いいたします。こちらとしては現状安村様あってのダーククロウ製品の商売ですから」


 店長は何か言いそうになったがそれを堪えて約束の事を思い出す。やはりどのようにすればダーククロウの羽根を集めることができるのかが気になっているのだろう。おそらく、専属探索者を雇ってでも入手したいところなんだろう。その辺のヒントを俺からもらおうとしているのかもしれないな。


「わかりました。また集まったらご連絡させていただきますよ。あまり期待せずに待っててください。ちょっと厄介な依頼をこなさなければならない都合上ダーククロウの生息するエリアに行きづらくなってますので」

「わかりました。首を長くして待つことにいたします。本日はお取引ありがとうございました」

「こちらこそ、またお願いします」


 無事取引も発注も終わり、家に帰る。出来上がりが非常に楽しみだ。それまでは暑いがこの羽毛布団を使いこんでいこう。汗取りシートを敷いておけば多少はマシになるはずだ。


 さて……やることはやった。今日の疲れを明日に残さないように寝て暮らすか。夕食は……ウルフ肉野菜炒めでいいな。ダンジョンでは手間がかかるからやらないが、今日は細切れ肉にして食べよう。そのほうが火も通りやすいしワシワシと食べて行けるはずだ。今のうちに作ってしまって夕食の時間まで仮眠しよう。


 まず肉に軽く下味をつけて火を通し、その後で硬い野菜から順番に入れて行って炒める。ある程度炒めたら調味してそのまま火を通し続けて出来上がったらラップして冷蔵庫へ。味付けは割と適当だが、どっちかというと薄味に仕上げたはずなので食べるときに追加すればいいだろう。


 さて、寝るか。少しだけ暑いから冷房を入れながら羽毛布団をかぶって寝る。目覚めるのは何時になるかは解らないが、眠気と疲れが取れるまでグッスリいってしまおう。

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで読んで気が付いた。 安村さん家持ちだ、アパートとかじゃなかった。
[良い点] ダンジョン出た後までエコバッグ! 運搬手段をエコバッグにこだわっているのが 発達障害っぽい主人公の性格描写としていいですね
[一言] えーなんで汗かきながら羽毛布団使うのか理解出来ないです。夏なら蚊帳に羽を織り込んで貰えば暑くないし羽少なくて済むしアロマだけ楽しめるのに。
2023/06/16 18:38 退会済み
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