346:調べもの、より深みへ
歩いて五分、中華屋ののれんをくぐる。
「飯食いに来たよー」
いつもの人入り、いつもの爺さん、日替わり定食は五目そばと中華スープか。それでいこう。後いつもの餃子。唐揚げは今日は無しでいこう。
「おう、今日も稼いできた帰りか? どうよ儲けのほうは」
爺さんが調理の真っ最中だ。いつもより忙しそうに働いている。
「バッチリよ。日替わりと餃子よろしく」
「私は半チャン餃子定食に小籠包で」
「日替わり半チャン餃子定食に餃子小籠包だな。いつも通り待っててくれ」
大分餃子が被ったがまぁいいか。勝手に席に座り水を汲み、軽く雑談しているとしばらくして料理が運ばれてくる。今日はウルフ料理でもボア料理でもないらしく、普通の食材の様だ。運んできた爺さんが俺に質問を投げかけてくる。
「そういえば肉は良く手に入れてくるが、他の食材は無いのか? たとえばネギとか」
「んー……今のところ見たことは無いな。それにダンジョンの植物は根っこから引き抜こうとしても無理なんだ。特殊なスキルが必要らしくて」
「そうか……ダンジョン産の野菜なんかが有ったら面白いとは思ったんだがな。まぁ、見つけたらまた教えてくれ」
「そうするよ」
ダンジョン産の野菜か……たしかにあっても良い気がするな。【採掘】スキルがあればダンジョンを耕してそこに作物を植え、収穫して食べる事も出来るだろう。スライムが居ないセーフエリアに畑を作ってそこで作物を作り、ダンジョン野菜としてブランド化。それはそれで面白いかもしれない。
何時もの味、何時もの料理、そして腹が六分まで満たされたところで満足しておこう。またベルトの穴が一つ遠くなるといけない。
「さて、お腹も満たされましたし帰りますか。洋一さんこの後予定は? 」
「ない、帰って家事して調べものして寝る。夕飯も……確かはんぺんが冷蔵庫にあったからそれと冷蔵庫の残り物を炒めて終わりだな。今日はシンプルに生きるぞ」
「私はレポートまとめて講義の準備ですかね。最近ダンジョン通ってると運動してるおかげか、それともステータスのおかげか、いつもよりスッキリ学習できてる気がするんですよ」
「それはダンジョン様様だな。そのまま是非本業を全うして頂きたい」
特にこれと言った事も無い食事を終えて会計を済ませ、バスを待つ。バスが来たら乗って軽く仮眠。いつも通り運転手に揺り起こされて駅で目覚める。運転手さんいつもありがとう。
駅から最寄り駅まで戻って家に着く。ゴミの片づけと部屋の掃除を一気に終わらせると、暫く暇な時間が出来る。昼食は……いいや、夕食とまとめて食べよう。食べて来たばっかりだし、三食きっちり食べなきゃいけない理由もない。今はそれより疲れを取っておきたい気分だ。シャワー浴びて昼寝しよう。昼寝した後……冷蔵庫の中身の掃除ついでの夕食作りだな。
◇◆◇◆◇◆◇
四時間ほど仮眠を取った。目覚めは気持ちいいんだが、やはり暑い。昼寝だからこそ猶更暑い。枕だけでも充分だったかもしれない。これは早めに夏布団を作るために奔走しなければならないな。本格的な夏が来る前にぜひ欲しい。そしてこの寝心地を一年間味わい尽くすのだ。効力が実感できている以上金に糸目は付けないぞ。
だが焦って今からダンジョンに潜る……ということはない。仮眠をとって疲れが取れたら腹が空いてきた。今日ははんぺん入りの野菜炒めだ。冷蔵庫の中を綺麗にするため野菜を多めにして……味付けは中華出汁にするかな。
野菜がしんなりしたところではんぺんを投入。手軽で栄養も取れて今日こそはバランスのいい食事だ。炊くための米の在庫が無いのでご飯はいつものパックライスだがそれは仕方ない。シンプルだが悪くない食事が出来上がった。ちゃんと味も付けた。よし食べよう。
もうちょっとはんぺんを焼いておくべきだったか、と思う程度だが、後は大体美味しくできている。量は野菜でカバーだ。もうちょっと頑張れば腹筋が浮いてくるようなそんな気がする。その為にはもうちょっと食事の量とバランスをカバーしつつ減量に励んでいこう。しばらくはんぺんをおかずのメインにしていこうか。
食べ終わったら早速はんぺんレシピを色々調べてみようかな。野菜炒め以外にレパートリーを増やしていこう。ただ焼くだけでもいいし、鍋も良い。はんぺんと卵と白菜とネギの白湯鍋あたりを想像しながら
野菜炒めを味わう。たかがはんぺん、されどはんぺん。
食事を終えて片づけをしたら調べものだ。はんぺんとちくわのダイエット向けのブログやレシピを思う存分調べた。次に活かそう。さて、そろそろ真面目に本業のほうへ移ろう。
迷宮マップでドロップしたスキルオーブや、十七層について調べよう。まだどこの階層で何がドロップするかなんかの情報は集まってないだろうが、現状で得られるだけの情報は得たい。
どうやら十一層より下の層でドロップされたスキルオーブの情報は一般にはほぼ出回ってないようだ。Cランク以上ネットワークのほうで調べてみると、【魔法耐性】や【物理耐性】なんかのドロップ報告がちらちらと見える。【生活魔法】はもっと浅い層でも出るらしい。現状お目にかかる事は無いだろうが、出るならこの辺だろう、という感じで当たりをつけておく。
ボス戦前に【魔法耐性】があれば服が焦げる事も無かったのだろうか。いやしかし、服の買いなおし代金とオーブの価値を見比べたら服が焦げるプラスポーションの代金なんて屁のようなものだ。もうちょっとマクロな視点を持とう。
それと【物理耐性】はおそらく万能選手だろう。魔法ばかり使ってくるようなモンスターが出てくるエリアは二十一層までには存在しないと考える。なら【物理耐性】の有用性は大きい。スケルトンの剣撃すら弾き返せるかもしれない。
十六層に出てくるスケルトンアーチャー、骨弓の矢は物理攻撃ではなく魔法的な何かだ、と調べた覚えがある。それを軽減するのが【魔法耐性】なら、骨弓がこれを落としてくれる可能性は大いにあるな。思えば九層以来スキルオーブにお目にかかっていない。
そもそもドロップが稀という事が解っているスキルオーブだが、そろそろ十層か十一層でドロップするという情報か、実際にドロップするという可能性は大いにあるわけで、そういう意味では十一層十二層に自分を鍛えるためも含めて籠るという選択肢もある。十六層へ行くのが第一目標なのにその手前にやりたいことが有るというのは非常に困ったもんだな。
さて、スキルオーブはさておき、十六層は傾向として十三層よりもより迷宮っぽくなっているらしい。曲がり角が多く、小部屋が増え、モンスター密度も高め。エンカウント当たりのモンスター数も増えるようだ。厄介だな。
ある探索者チームが十六層のマップを埋め終わるまでにかけた時間は延べ時間で十時間ほどだったらしい。これが小西ダンジョンぐらいの広さだと仮定すると、重複部分を含めながらの探索だろうから同じだけの時間がかかるだろう。
安全率を取って、休憩を挟みながら三時間ずつトライするとして四回の探索に分けて挑むことになるな。無理すれば一日で回れる範囲ではある。しかし迷宮だ、地図を見ながらの移動はそれなりに移動が遅くなる。他のマップと比べて視界が開けないという事もあるし、モンスター密度はかなりのものだろう。まず一回試しに潜って見て、広さと感触を味わい、その後行けたら行く。これで行ってみるか。後は……
◇◆◇◆◇◆◇
十七層から二十層までは広大な草原地が広がっているらしい。サバンナマップと比べると木や石などのオブジェクトや高低差があり、何より一面に広がる草という感じで見た目的装飾はかなりマシになっているらしい。草原と言われるとパソコンの起動画面に出てくるアレがまず浮かぶが、一面がアレだったら本格的に迷って帰ってこれない事だろう。
出現するモンスターはガラッと一新され、以前も調べたようにバトルゴートと呼ばれているヤギとレッドカウと呼ばれている二足歩行の牛。二足歩行の時点で牛ではなくミノタウロスではないのか? という疑問がわくが、ミノタウロスと名付けられなかったのには事情があるんだろう。きっと小さいんだな。
動画があるか調べてみよう……あるな。ミノタウロスと言われると二メートルや三メートルある巨漢というイメージだが、レッドカウは二メートル無いぐらいの大きさの赤牛だ。手に金棒を持ち、歩き回っている。こいつの一撃は相当重いらしい。動画によると探索者が両手で受けて何とかこらえきるという感じの戦闘をしている。こいつが高級牛肉をくれるらしい。楽しみだな。
バトルゴートのほうは通常温厚なヤギとは違い鋭くとがった大きな角を持ち、頭を振り回しながら襲ってくるようだ。体長は百五十センチほどもあり、かなり大きい。角は戦利品にはならないのか。角が落ちるんだったらこれもまた何かの素材だったろうに、そうではないようだ。
体当たり時に角に巻き込まれると体に刺さるほどの強さを持つようだ。刺さっている動画があるわけではないが、簡単な木の盾ぐらいなら貫通する威力を持っている。ワイルドボアの強化版って感じだ。体毛は長く、切りつけようとしても毛で滑ってダメージを与えられない事があるようだ。切りより突きが大事だなこれは。
ただ例によって階段がある大岩を探す、という点については同じらしい。そういえばエレベーターについて知らなかったし、もしかしたらダンジョンマスターの認識範囲においてはエレベーターという機構か概念が存在しなかった可能性があるな。もしあったならすべての階段はエレベーターとして出現していただろう。
階段を通り抜けて大きな岩に出たり、突然森の中の崖に階段が添えられていたり……いやそういう意味では今のほうが次元をまたいでる感はあるな。ただ情緒は無い。問題はどうやって階段を探すかだが……動画を見る限り目視で探して回るのは限界があるようだ。せめて空中から撮影……そうか、空中から撮影すればいいんだ。現代科学にはドローンという高性能な機械があるではないか。
なんで今まで思いつかなかったんだろう。早速ドローンについて色々調べ始める。GPSは使えないので自分を中心として追尾してくれるような奴。バッテリーや大きさはこの際考えなくていい。それなりに高く上がってスマホと連携できればそれでいい。
色々調べた結果、結構お手ごろな価格でも使えるドローンはあるみたいだ。いくつか機種を見繕って、適してそうなものを一つ購入することにした。二日後届くらしいので、家に居そうな時間帯を設定。明日一晩小西ダンジョンに泊まって帰ってきて……というあたりの時間だ。届いたら試しに飛ばしてみよう。後バッテリーも予備で二つほど買っておこう。これは探索用品だから経費で落ちるな。
色々手配を済ませるともういい時間だったので風呂に入って寝る。十六層も突破してないのに気が早いとは思うが、準備は早めに済ませておくに限る。試運転もしなきゃいけないからな。明日は小西ダンジョンで一日茂君をひたすら狩り続けよう。
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