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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第五章:自由を求めて深層へ

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338:早起きは一キログラムの得

 おはようございます、安村です。ダンジョンに遅れて入り時間を取り戻し何時ものペースに戻れるように進んだところ、現在午後四時。いつもよりちょっと早起きだけど体に違和感はない。ここまで来た疲れはすべて枕が吸い上げてくれたようだ。


 ありがとうダーククロウ。毎回言ってるからありがたみが無いかもしれないが、三万回も唱えれば極楽へ行けるだろう。あっちでも素晴らしい眠りを提供してもらいたい。


 ちょっと早めに起きたが今から行動するわけではない。寝起きの運動がてら茂君(しげるくん)へ通う。茂君成分を補充してちょっと多めにダーククロウの羽根を回収しておいて、夏羽毛布団を作る相談をしに行かなくてはいけない都合上、保管庫にそれなりの数を蓄えておきたいからだ。


 自分の分だけ持って行って作ってくれ、ではちょっと厚かましさが勝る気がするので、いつも通りの量を納品しつつこの中から布団をもう一枚……という流れに持っていきたい。その為にも茂君にはそこそこの回数通いたい。


 一晩かけて茂君に足繁く通いひたすら狩り尽くすという作業を一回やるのも良いな。即金としては心許ないだろうが、ボア肉もついでに取れるしそう儲からない作業でもないだろう。


 田中君は多分こんな感じでボア肉を集めてるんだろうなぁ。きっと彼もライン工としての才能はあるんだろう。なんだか田中君への親近感が一ポイントアップした。


 シェルターに残っていた自転車で六層へ戻ると、そこは完全に湧きなおした六層が俺を待ってくれていた。そうそう、こういうので良いんだよこういうので。喜び勇んで湧きなおしたワイルドボアに駆け寄るとハグ、アンド、感電。茂らない君は相変わらず茂っていないが、茂君のほうを向くときっちり元通りになっていた。ベネ。


 道中のワイルドボアをひきつけて雷を纏って小走りに茂君に駆け寄って倒していくと、周囲確認、サンダーウェブ! 回収! 撤収! 早起きしたおかげで一キログラムほど羽根を回収することが出来た。早起きして二万五千円ほど。悪くない収穫だ。


 さて、戻りの道には何もいない。走って帰ろう。誰も通らないとして二時間おきぐらいだろうか。その度にワイルドボア二十体そこそことダーククロウ五十羽そこそこを狩れる。時給換算すると……羽根込みで四万ぐらいになるな。作業感が半端ないが二時間おきに寝て起きてダーククロウを狩るソロ狩り。悪くはないかもしれない。


 ランニングで六層から戻った後再び七層へ戻り、自転車でシェルターまで帰ってくる。寝起きの運動としてはそこそこだった。疲れは……ほぼないな。コーヒー淹れて芽生さん起こすか。


 いつも通りテントをガサガサと揺らし、テントの中にタオルを放り込む。既に軽く運動を終えてしまっているが、ストレッチは欠かさず行う。ここからは真面目に戦闘をする場が増えていくからな。いろんなところを伸び縮みさせておいて損は無いだろう。


 コーヒーが沸いたころ、芽生さんが顔を出す。タオルを回収すると軽く伸びをしている。軽くで良いのは若さの証拠か。


「どうでした? 早朝狩りは。ちゃんと茂君居ましたか」

「きっちり回収してきた。後四往復ぐらいしたいところだがそれは一人でもできるからな。また今度だ」

「寝起きの運動はばっちりじゃないですか。何故ストレッチを? 」

「念のため。十層あたりで突然足がつったりしないために」


 大丈夫だと思って動き始めたところで突然体にガタが来ることはよくある。そうならないためにもしっかりやっておかないとな。


 十分体をほぐした後テント周りを片付け、出立の準備は終わった。芽生さんも俺を真似て色々と解したり伸ばしたり縮めたりしていたようだが、若さと性別にはかなわないらしい。ぐぬぬ……


 自転車は二台空いていたので二台とも使って行く。やはりこの十五分はとても貴重だ。どうせモンスターが少ないんだしこのまま八層も自転車で駆け下りたいところだが我慢。みんなのものはきちんと使おう。


 八層をランニングで駆け抜け、道中のワイルドボアとダーククロウと全て蹴散らすと九層に入る。ここからは真面目な狩りのお時間だ。


「さーて、どのルートで行くかな。時間はあるからグルグル回る階層をいくつか設けないといけないな」

「九層でグルグル回るぐらいなら十一層でグルグル回るほうが効率的かもしれません」

「そうだな、ボア肉を集める理由があるという訳でもないから十一層までまず真っ直ぐ行くか。その後オーク狩りして下層へ行って休む。休んだら……それはその後時間を見ながら考えて帰ろう。が、肩の力を抜いて戦う気も無いし、ここはウォーミングアップを兼ねてきつめの道で行こう」


 方針を決めたので九層はちょっときつめの森に近いほうの道を歩く。三分に一回ほど、三から五ほどのワイルドボアかジャイアントアントとエンカウントする。つまり十層ほどではない、お気楽な道筋ということだ。今更六匹相手に後れを取るでもなし、気楽な形で次々来るモンスターを倒してはドロップ品に変えていく。


 親指、六、三。親指、四、二。人差し指、五、二。親指、六、三。


 森の中からモンスターは次々出てくるがそれらをものともせず、ただ無言でひたすらに体の動きを確かめるような形で対処していく。あっという間に四十分過ぎ去り、十層への階段へたどり着いた。


「一応休憩入れとこう。苦戦はしないだろうけどウォーミングアップが済んだ後の一呼吸は大事だ」

「おっけー。コーラコーラ」


 まだ冷えたコーラを渡し、念のためのカロリーバーを胃に入れるともう一度よく伸びをして今からの濃密な四十分ほどの時間に備える。十層の物量に耐えうる実力があると確信を持てているとはいえ、油断して良い階層ではないからな。安全率は常に多めにとる。


 五分ほど休憩した後十層へ早速向かう。階段を下りて耳を澄ますと聞こえるカサカサ……というジャイアントアントの足音。よし、来たな。という感覚を全身が支配して身が入る。階段のほうに向かおうとすれば早速寄ってくる。


 親指、十、六。保管庫の出番は無い。雷撃を封じ込めた雷玉をぼんやりと体の周辺に三つ発生させ、順番に相手にぶつけていく。雷撃に比べればゆっくりのスピードだが、威力は雷撃と同じで複数同時に攻撃できるメリットを見出すことが出来るようになった。サンダーボールと名付けようとしたが、雷玉と書いて「らいたま」にした。そのほうがかわいい。


 修錬の結果、今のところ三つまでは同時に打ち込むことが出来る。もっと弱くても良いから複数攻撃したいときはチェインライトニングのほうを使って行く。こっちのほうが威力は落ちるが複数の敵……中途半端な数のダーククロウやゴブリンなんかには効果がある。


 さっさとジャイアントアントを片付けるとドロップを拾い、階段へ急ぐ。急ぐ必要は正直無いのだけれど、ここに長々と居座るメリットもそんなにないし今日は十一層で稼ごうという話になっている。


 人さし指、八、四。肉薄して切る、以上。ワイルドボアに使ってやる時間はそんなにない。寄ってくるのを待つぐらいならこっちから接近して切ってドロップ拾って戻る。そのほうが早いと思います。


 親指、八、四。酸が飛んできたので保管庫経由でそのまま返してさしあげる。これはこっちに余裕がある時の行動だ。自分の酸を浴びたジャイアントアントはお肌が大変よろしくない事になっているのでこっちを攻撃するどころではないらしい。苦しめても良い事は特にないし時間の無駄なので早めにお還り頂く。


 親指、九、四。ただひたすらに無言で戦い続ける四十分間なので今更感想みたいなものはもう無い。ただ単に密度の濃いところを切り抜ける。密度が濃ければ濃いほど収入になるが、息継ぎぐらいの時間は欲しい。まぁワイルドボアがくるパターンが息抜きと言えばそうか。


 人さし指、六、三。ただひたすらに癒し。この間に軽く呼吸を整えて次のエンカウントへの心構えを再びもつ。


 親指、八、三。芽生さんに近いほうが密度が高いので任せることにする。無難に戦えているようだしきついなら援護要請が来るだろう。十匹で五ずつ相手にして戦う事もあるのだし、無理な戦闘はしてないと信用しての事だ。


 五匹相手でも問題なく戦闘を終える芽生さんを横目にドロップを拾い前へ。その後もお互い多かったり少なかったりを担当しながら十層を巡る。この調子で一時間回れるようになればベストだろうが、スキルの使用頻度を考えるとまだ難しいだろうし、そこまで根を詰めて十層を巡る理由は無い。


 人さし指、六、三。やはり数少ないワイルドボアは癒し。でも個人的にはジャイアントアントばかり来てくれるほうが荷物の都合上嬉しかったりする。ワイルドボアの革は嵩張る。その点ジャイアントアントは牙と魔結晶とキュアポーションとスキが無い。


 何十回かの戦闘を終えて十一層への階段へ無事たどり着く。いつもより楽な気持ちで通り抜けられたことを感じる。やはり慣れは大事だな。十一層へ入ってから休憩を取る。ぶっ続けで狩りをするにしても相手の数が多ければその分手数が増えて体を酷使する。その分見えない疲れは溜まっているだろう。


「Bランクにもなるとこれを一人で通り抜けられたりするんでしょうかね? 」


 コーラ片手に一息つきつつ、芽生さんが訊ねてくる。


「どうだろう? まだBランクの探索者というモノにお目にかかったことが無いからな。それにパーティーでランクが決まるようなところもあるだろうし……そもそもソロでCランクという人にもまだ出会ったことが無い。ここで探索する限りは出会う事?も無いだろうな」

「そういう見聞を広める旅とかも良いかもしれませんね」


 小西ダンジョンで鬼殺しが出たのが初めてってぐらいなんだ、ソロでCランクだのBランクパーティーだのにこの場でお目にかかる機会は無いだろう。せめて清州ダンジョンへ行かないとな。


「長期休みの時期になったらダンジョン巡りでもするか? 車に適当に荷物詰めて宿を探していろんな場所で鬼殺しになるとか」

「鬼殺しツアーですか……それも味があっていいでしょうね。でも良いんですか、ギルマスの依頼は」

「優先探索権までもらってるってことは今日明日の事ではないと解ってるんだと思うし、それまでに二十一層まで辿りつけれればいいさ」


 正直ギルマスの圧はそれほど高くは無かった。行けそうになったらしてみたい質問リストをまとめておく、とまで言われたという事は現状すぐに二十一層までたどり着くとは思われていないのだろう。


「とりあえず今日、それから明日。ゆっくり自分のペースで探索をする。その方針を変えるつもりはないよ。だからあまり気にせず行こう」

「そうですね。特別ボーナスが貰えるわけでも無さそうですし」


 あ。


「しまったな」

「どうしました? 」

「二十一層行きの依頼の報酬について何も話さなかった。ちゃんと受ける前に確認するべきだった」

作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 持ち込んだオフロード用のタイヤ、まだ置いてあるのでしょうか。
[良い点] 清洲(清須)、鬼ころし… 豊橋、黒い稲妻… ブラックサンダーあんまきが好きです。 豊橋、いま大変みたいですが… [気になる点] >優先権を与えたのが報酬代わりだ、とかケチ臭い事言われた…
[一言] ギルマスからは知らんがダンマスから別途なんか貰えるよ(笑)
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