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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第四章:中年三日通わざれば腹肉も増える

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330/1252

330:延長二時間大爆破、そして呼び出し


 二層へ向かう。道中のスライムには声をかけつつもそのまま二層へ下り、二人とも骨を手にして二層を三層に向かう。道中出てくるグレイウルフにはみんなスケルトンの骨を与えて、骨に夢中になってる間に黒い粒子に還ってもらう。


 これでほぼ百パーセントの確率でグレイウルフの肉をくれる。骨はそのまま手元に返ってくる。四十回繰り返せば元が取れてその後は全部自分の儲けになる。骨のほうも四十回そこそこでは壊れてくれないので、それなりの儲けが出る。肉も取れて偶に魔結晶も取れる。グレイウルフの価値が一気に三倍に跳ね上がった。


「これはこれで美味しいとは思うんですが、スケルトン一体で肉七つ分ですか。効率悪すぎますね」

「二層までしか来れない探索者にとっては貴重な骨だと思うよ。骨の耐久度によっては二万出してでも買いたい人は居るんじゃないかな」

「う~ん、やっぱり私、金銭感覚がおかしくなってきている気がします」

「大丈夫、俺もだ」


 道中のグレイウルフを狩っているだけなので三十個ほどの肉と十個の魔結晶が集まっただけに留まる。金額からすれば安いものに見えてしまっているが、ざっくり計算して一万円。一万円は安い金額ではない。だが最近ダンジョン深く潜って両手一杯にドロップ品を確保する事が日常化しているので、一万円では驚かない事態が生まれている。


 何せランク2のヒールポーション一本で四万の収入。そしてこんな小粒の真珠一つで五千円だ。五十メートルほどダッシュして倒して五千円稼げると考えると、ダッシュして五千円のほうが一パックに百五十円のウルフ肉をちまちま二十匹倒すより割が良いのは誰にでもわかる。


 もやもやとしたものを抱えながら三層へ下りた。ここでのゴブリンは一匹に五百円ほどの価値を有している。低確率でランク1ヒールポーションを落としてそれが一万円で買い取られるからだ。


 どうせならゴブリンも何か夢中になるものを与えたらヒールポーションを落とすようにならないものか。いや、それでもまだ深く潜っているほうが金になるな。


「せっかくだし、スキルだけで倒していくか。訓練と思って」

「十六層以降の事を考えて、ですか? 」

「スケルトンゾーンではあまり出番が無かったが、【雷魔法】もより効率よく、より強くするためには大事だからな。四層で肩ポン爆破しながら鍛えてきたが、それでも今回は途中で息切れしてゴブリンキングに試す余裕すらなかった。そうならないためにもまだ強くならないといけない」

「頑張りますねえ。まぁ、私もあまり人のことは言えませんから強くなるための努力として、使い続ければ使い続けるほど体に馴染んでいくならそれに越したことは無いです」


 グレイウルフは骨を転がしてから、ゴブリンはそのままスキルで倒す、という流れになった。文月さんとこんな浅い階層で狩りをするのも久しぶりのような気がする。絶対ダメージを受けないような安全圏での狩りなんてものは探索とはおおよそ呼べない物ではあるが、どうせ開場まで暇なのだ。小銭を稼ぐつもりでガンガン狩っていってしまって良いだろう。


「おっと、今の内に荷物を整理しておかないとな。今回は急な移動があったおかげで荷物がエコバッグに整理できていない」

「じゃあ私周り見てますからその間にやっちゃってください」

「頼んだ」


 保管庫の中からエコバッグを取り出し、保管庫の中のドロップ品を整理していく。へそくり分とエレベーター往復分のスケルトンの魔結晶以外を全て詰め替える作業だ。ウルフ肉とオーク肉とボア肉を分けて入れ、魔結晶は……今回は一袋で済んだな。後はボア革と骨とポーション類を背中のバッグに背負いなおし、準備完了だ。


「終わったよ」

「あいよ。残念ながらなにも現れませんでしたね」

「今日こそはリヤカーを使ってあげないとな。せっかく用意してくれたんだし使わない量しか持ち帰らないんじゃギルドに文句を言われそうだ」

「今日は肉類が三種類あるのでたくさん持ち帰った感じが出ていいんじゃないですかね」

「そうだろう? やっぱり栄養はバランスよく取らないとな」


 早速三層をグルグル回り、ゴブリンとウルフを爆破していく。美味しそうな骨を咥えたと思ったらすぐに倒され肉をボトボトと落とし次々消えていくグレイウルフと、出会った瞬間切り刻まれるか爆破されていくゴブリン。モンスター側から見れば地獄絵図であろう光景がそこに生まれていた。


 最初はあまり乗り気ではなかった文月さんも段々気持ちよくなってきたのか、笑顔でモンスター相手に向かって行っている。俺は冷静にドロップ品を回収しながらいくらになるかを計算しつつ爆破。二時間あれば十五万ぐらいにはなるか。ウルフ肉は三桁を突破している。もう一袋必要だろうな。


 楽しいパーティーをしていると時間は早く過ぎるもので、早くも八時半になった。


「そろそろ帰ろうか。これ以上狩ってると開場ダッシュしてくる人の分がなくなる」

「そうですね、荷物も中々のものになりましたし、時給換算でも悪い収入じゃなかったんじゃないですか」

「んー……七万ぐらい? 結構な金額になったよ」


 帰り道楽してきた分実入りはそう多くないが、ここでこれだけ稼げれば御の字だろう。帰ろうと決めたらさっさと帰る。二層に上がったところで午前九時、開場の時間だ。保管庫から荷物を出すと両手に持つ。やはり肉が多めだな。グレイウルフの肉だけで二袋パンパンだぜ。


「ちょっと時間オーバーでしたかね」

「まぁ、時間丁度に帰らなきゃいけないルールは無いしいいんじゃないかな」

「後、一応報告しなければいけないと思うんですよ。ダンジョンマスターの件はともかくボスを倒したかどうかは」

「そうだな、鬼殺しって名乗るからには必要だな」


 道中のグレイウルフもきっちり肉を回収しながら進むと、開場ダッシュ組とすれ違う。何やってんだろ? という顔をしながら通り過ぎていく。倒した瞬間を見れなかったのは彼にとって幸か不幸か。


 開場ダッシュ組とすれ違った後はリポップもせず、そのまま一層へ上がる。スライムとはもう対話を終えた。今日はこのまま真っ直ぐ地上へ戻ろう。


 スライムを脇目に見ながら両手いっぱいの手荷物とバッグにかかる重さを軽く感じながら一層を出入口に向かって進む。今日は晴れの予報らしいがちゃんと晴れていてくれるのか。


 三十分ほど歩いて何事も無く出入口までたどり着いた。空は梅雨晴れといった所か太陽が見えている。まるで鬼殺しおめでとうと言わんばかりである。ありがとうおひさま。


 出入口を出たとたんに両腕にかなりの重量がかかる。やはり来たか、と言わんばかりである。文月さんにリヤカーをここまで持ってくるよう頼むと、急いで持ってきてくれた。一つずつ荷物を乗せ、これで楽に荷物が運べる。人間の技術は偉大だな。


 退ダン手続きをする。


「お帰りなさい。ようやくリヤカーの出番ですね」

「えぇ、お陰様で両手が軽いです」

「嬉しそうですが良い事でもあったんですか? 」

「十五層まで潜って帰ってきましたよ。ついでにボスも倒してきました」

「そうですか、中で詳しく話されると良いと思います。後、出来ればですが地図の提出もお願いします」

「今回は十六層の階段までバッチリ記載してきたんでまとめて提出しますよ」

「手間でしょうがお願いしますね」


 受付で念入りに地図の提出を迫られた。元から提出するつもりだったからいいが、この熱い地図推しは何なのだろう。


 ギルドの建物へリヤカーごと突入する。ちょうど空いてて暇そうにしている査定嬢がこちらを目ざとく見つけると、ちょいちょいっと手招きをする。


「そのまま入ってください。第一号到着ですね」

「若干お待たせしました感がありますがようやく出番が出来ました」

「この大量のウルフ肉は何ですか?二層か三層で狩りを? 」

「ちょっと上がってくる時間を間違えまして。仕方なく三層でモリモリッと」

「まぁいいです。ちゃちゃっとやってしまいますんで背中のバッグの中身も出してくださいね」


 言われるまま出すものを全部出してしまう。カバンの中にはへそくりのお肉とスケルトンの魔結晶が十二個と骨十本、それから何となくで持っている真珠二粒がある。あ、ボスドロップも一応見せないとな。


「それと、査定にかけるつもりは無いんですがこういうものもありまして……」


 バッグからゴブリンキングの角とゴブリンキングの魔結晶を見せる。査定嬢が一瞬固まる。


「えーと……私の間違いでなければそれ、ゴブリンキングの? 」

「はい、魔結晶と角です。記念品としてもらっておこうと思います」

「そうですか。鬼殺しおめでとうございます。安村さんにはこれから鬼殺しと名乗って良い許可が下ります。ギルマスにも報告しておきますね」

「もしかして、今まで名乗ってたらまずかったとかなんですか? 」

「えーと……たしか厳重注意になってたかと」


 そんなに重い二つ名だったのか、鬼殺し。あんな手段で倒して良かったのか、鬼殺し。とりあえず喜んでおこう、鬼殺し。


 程なくして本日の収穫が出て来た。六十五万飛んで二円。往復してたら百万超えてたかもしれないのか。それはそれで見たかったがまぁいい。片道六十万稼げるという事が解っただけでも収穫だ。


 文月さんにレシートを渡し、支払いを受けて帰ろう。


「安村さん、文月さん、ちょっと二階までお願いします。ギルマスがお呼びです」


 帰れなかった。情報が早い。そのまま無かったことにして帰りたい。今日は疲れてるんだよこれでも。


「今度じゃダメ? 」

「至急だそうです」


 ダメらしい。リヤカーを元の場所に戻すと、諦めて二階へ向かう事にした。


作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] リアカー戻すのって暇な時間に職員がやってくれないんだ(笑) 鬼殺し報告と十五層までのマップ提供までは開示したけど、骨とウルフ肉の関係とかエレベーターは開示しないんだよね。 ゴブリンキングを…
[気になる点] 鬼の潮干狩りおじさんになっちゃう?!
[一言] ギルマス専用のコンソールがあってダンジョン内の出来事が文字ログで流れていて全てバレてるとか?
2023/05/26 17:46 退会済み
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