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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第四章:中年三日通わざれば腹肉も増える

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323:意趣返し


 前との間隔が十分に空いたので行動を開始する。まだギリギリ目に見える範囲にいる相沢パーティーだが、どうせモンスターは前から来るわけじゃない、横の森から来るんだ。


 イメージとしてだが、モンスターは森の中に薄いカードのように配置されていてそれがスライドして一パーティーとしてエンカウントする。なので前には基本的に何もいない。逆側は崖になっていてモンスターが湧くスペースは無い。


 なので前を向いて歩いて、モンスターの気配がしたら横を見る。そういう感じで対応する。それでも普段に比べたら少なく、下手すると清州ダンジョンよりも少ないが、モンスターは来る。そういった形で戦うため戦闘回数が少なくてストレスが溜まるという状態になっている。いつもより時間当たりの儲けが減る。


「戦闘出来ないストレスというのもあるんだな」

「後ろを歩くって選択した以上しょうがないですねえ」

「ぐぬぬ……もうちょい戦って収益を得たい、出来れば非課税が良い」

「十三層まで我慢です。ほら、もうすぐ着きますよ」


 遅れて進む事十分ほど。十三層にたどり着いた。さてここからようやくまともに狩りが出来るぞ。体が疼いて仕方ない。が、まずは地図埋めすることが主目的だ。十四層への階段を探さなければな。前回通ったルートを通りつつ、曲がらなかった道、通らなかった通路、怪しい袋小路なんかを重点的に回るぞ。


 早速、最初の曲がり角でスケルトン三体と出会う。出遅れた時間とリポップ速度を考えると、やはりこちら側には来なかったらしいな。賭けに勝った。喜びの攻撃をスケルトンにぶつける。熊手を構えて肋骨を剥がし核を貫く。魔結晶が落ちた。養殖物ではないらしいな。近くに骨ネクロは居ないらしい。そのまま二体目に襲い掛かり、さっきまでの鬱憤を晴らす。


「あー気持ちいい。ストレスも吹き飛んだ。さぁ地図を埋めていくぞ」

「急に元気になりましたねえ、良い事です」

「あいつらより十四層に早く到達できれば意趣返しが出来る。それで今回の目的は達成できる」

「目標が一つ増えてますが、やる気に満ち溢れてる事は良い事です」

「さぁどんどん行くぞ……ダッシュ! 」


 奥に骨ネクロを確認した。気づかれる前に全力で近寄って全力で殴る。骨ネクロは黒い粒子に還し真珠と骨を落とす。ドロップも良い感じだ。この調子でどんどん行こう。


 曲がり角ごとに襲ってくるスケルトンを難なく倒しつつ、行き止まりに階段があるかどうか確認し、小部屋があればそっと覗いてモンスターが駐留してないかをそっと確認し、居たらスピード勝負であっさり黒い粒子に還す。どんどんドロップが溜まっていく。


 十三層はいい稼ぎ場所だな。同じ一時間を過ごすのでも独占できる十二層と同じぐらいの戦果が期待できる。四時間ぐらいとどまってひたすら狩りに興じたいところだが、そのためには十四層で小休止できる場所を探さなければいけない。


 その為の探索、その為の地図埋め。どんどん未踏破エリアが踏破済みになっていく。三十分ほどかけて今まで通った道を歩きとおし、怪しいと睨んでいた場所へ踏み込む。


 スケルトンが三体なら余裕で戦うことが出来るようになった。何なら四体来ても良いぐらいだ。どんどん魔結晶が溜まっていき、骨ネクロを見つけたらダッシュで近寄りあっさり倒す。真珠は美味しい。革袋に溜まっていく真珠を見ながらニヤリとする。どうやら骨ネクロは多くても二体までだ。清州ダンジョンで見たような小部屋でカタカタと世間話をしている事が時々ある。


 会話中は相手も油断しているのだろう。素早く近寄ると頭から肩にかけて全力で直刀を差し込み、その勢いで核まで破壊することが出来ることも確認できた。個人的には走るという行為を除けばオークより戦いやすい相手でもある。何よりオークより期待値が高い。未踏破エリアをどんどん進んでいく。


 やがて、一本の行き止まりルートを見つけ、そこに階段がある事を確認できた。十二層への階段からまっすぐきて五十分というところだろう。戦闘込みなので最短時間ではないが、その間に十分な収入も得ることが出来た。


 さて、相沢君達は階段を見つけられて先に進んで居るのだろうか。楽しみだ。


「ようやく十四層への階段を見つけられましたね。相沢さん……でしたっけ。先に居るんでしょうか」

「彼の事だから階段下りた先に何か書き残しみたいなものを置いて行ってるんじゃないか? 」

「例えばどんな? 」

「相沢パーティー十四層一番乗り! みたいな」

「じゃぁ意趣返しにこちらも何か残していきますか。セーフエリアならスライムも居ないのでその場に残り続けるでしょうし」

「そりゃいいな。安村参上、一番乗り! とでもメモに書いて見やすいところに置いておくか」

「それで良いと思います。悔しがる顔が目に浮かびますね」


 文月さんもやはりおまけ扱いには少し思う事があるんだろう。ノリノリでいたずらに参加していく。


「さて、十四層への地図も出来たことだし、十三層の地図はここで一旦ギルドに提出するか。十四層も回ってついでに十五層の階段を見つけて、その後でゆっくり出来るところを探そうか」

「さすがに休憩が欲しいところですねえ。スケルトンも五十体ぐらい吹き飛ばしましたし、収入もそれなりになったんじゃないですか? 」

「休むか。十四層の探索はそれからでもいい。その後で仮眠取って十五層かな」


 ようやく見つけた十四層。同じ迷宮構成だろうけど十三層と比べて何が違うのか。果たしてこっちも迷路なのか。その辺は見回って見なければ解らないが、とにかく下りてからだ。


 降り立った十四層は見た目は十三層と大して変わらない。道の広さも同じ構成の様だ。ただ、いきなり二択を迫られる事なく通路の先に何かあるらしい。とりあえず歩いて通路を抜ける。通路を抜けた先は広間があった。ここが十四層休憩所である、とでも看板を立てることが出来るような広さだ。テントを張ったとして、俺の大きさのテントが三十ぐらいは立てられるだろうか。


「広間か。これは十三層では見覚え無いな。もしかしたらまだ巡ってない所にあるのかもしれないが」

「第一休憩ポイントって感じですね。広さは……何マス分ぐらいになるんでしょう?」

「戻ってこれないほど複雑な形はしてないだろうし、モンスターも出ないだろうし、ちょっと気を抜いて散歩としゃれこもうぜ」


 精神的に完全に休憩モードに入った俺はまずマップを埋めようと提案する。休むのは後で出来る。とりあえず十五層への階段を先に見つけて、それからでも良いだろうという考えだ。そのほうが休んだ後効率的に狩りと探索が出来る。


「そうですね。相沢君たちのおかげで十二層では楽をさせてもらってますし、マップを埋めるまで行かなくとも階段ぐらいは先に見つけておいたほうが良いでしょうし」

「そういうこと。さぁ行こうか」


 文月さんと十四層をひたすら歩く。モンスターに警戒する必要が無いのはメリットだ。しかし俺はマップを書き記しながらの行動なのでやる事はあるのだが、文月さんは完全に暇そうにぶらついている。


「暇ならこれでも読みながら行く? 」


 保管庫から探索・オブ・ジ・イヤーを取り出し渡す。


「もう一セットペンと方眼紙を用意するべきでしたね。それなら二手に分かれて階段を探せてより効率のいい探索が出来たかもしれません」

「次に活かす。それとも戻って先に休んでるか? 」

「う~ん、休んでる間に相沢君達が追い付いてまたひと悶着有ると面倒ですし、大人しく周りを見渡して、見落としが無いか確認してるほうが良いと思います」

「じゃあ、悪いがそうしてくれ。と、言ってもこの階層はそんなに迷わない構成なのかもしれない。また広間だ」


 二つ目の広間を見つけた。広さはさっきのところと同じぐらいだ。どうやら縦長のマップなのだろうか。二つの広場を縦に貫く道……まるで串の字みたいだ。十四層を拠点として奥へ行くものは奥側へ、帰るだけのものは手前に陣取るような形になるかもしれないな。


 それ以外に小部屋とも大部屋とも言えない、中部屋ぐらいの部屋がいくつか周りにある。階段はこの調子だとまっすぐ先にあるのだろう。狭いが解りやすい構成だ。十三層に比べたらとても分かりやすく、迷いにくい。セーフエリアだから手抜きなのだろうか?


 総延長は五百メートルぐらいかな。真っ直ぐ串の棒を進んでいくと、階段があった。思わぬ早さで見つかってしまった。十三層とは違いが大きすぎるな。


「探索終了だな。簡単だが地図は出来た。仮眠した後で細かいところを潰してそれで良しとしておくべきだな。とりあえず十五層側にテントを立てておくか。ど真ん中に立てるのはなんか目立つからそばにある中部屋のどこかに立てておこう」


 一度立てたことのあるテントなのである程度手順は覚えている。十分ほどかけてテントを立て終わると、「十四層一番乗り 安村」 と煽り文を書いたメモを十三層側の階段から下りて来た目立ちそうなところに置いて設営完了だ。ついでに文月さんの小さいテントとエアマットも置いておこう。既に休憩してそれから探索してる感を出すのだ。


「さて、夕食を食べて少し仮眠して、十五層も回ってみるか。レシピは思い浮かばないので適当に何か作るが……どれがいい? 」


 保管庫からシーズニングを色々出して文月さんに選んでもらう。文月さんが選んだのはさっきと同じタンドリーチキンだった。


「脂身多くなるけどいいかな? かなり食感も味わいも変わると思うぞ」

「その変化を楽しむのも一興かなと」

「なるほど、じゃあ早速作ろうか。パックライスを先に温めるからお水ちょっと頂戴」


 スキレットに少し水を出してもらい、パックライスをぶちまけて軽く焼く。水分を吸ってふっくらし始めたところで火から下し、二人分それを繰り返す。その後でシーズニングで味付けした厚切りのオーク肉を焼く。スパイスの香りが周辺に広がり食欲をそそる。


「いい匂い~」

「俺も急に腹減ってきたな。やはりオーク肉には魔力がある。しかし、この脂をなにかこう、うまく利用できない物か……」

「食パンに沁みさせてトーストするのでは勿体ないと」

「それでもうま味は十分あるんだが何か無駄にしてしまっているような気がしてならない。かといって米に混ぜると脂が多すぎていまいちな出来になってしまう。下手に価格が高いからいけないんだな」


 肉を焼き終わって食パンで脂を拭ってトーストにすると半分こする。いただきます。うむ、やはり肉が良いとシーズニングの効果もより美味しく感じるのか。さっき食べたのより柔らかく、肉の旨味が十分に中に詰め込まれている気がする。


 刻み野菜がもう一パックあったのを食パンをトーストしてから思い出す。でもこの脂で野菜炒めをすると脂が絡みすぎていまいちになってしまっていただろう。良いタイミングで思い出してくれた。


 刻み野菜を取り出し、皿に盛る。やはり肉には野菜が無いとな。美味い美味いと言いながら二人あっという間に食べ終わると食事の片づけをし、いつものコーヒーを一杯飲む。ここで仮眠をとって十四層の残りと十五層探索だ。今の疲れからして五時間ぐらい眠れば良いだろうか。


 インナーシュラフと寝袋を取り出し文月さんに渡す。


「これは暖かそうですね。ゆっくり暖を取れそうで……これなら脱いでも寒く無さそう」

「その寝るとき脱ぐ癖直したら? せめてダンジョンの中だけでも」

「う~ん……そのほうがリラックスできるんですよねえ。でもそうか、安村さんに襲われた時に対処できませんね」

「俺は襲う時は正面から襲うから心配しなくていい。俺以外を相手にする時に考えておいてくれ」

「じゃあ今日から早速練習していきましょう。慣れは大事ですから」


 二人それぞれのテントに入ってエアマットの上に寝袋を置く。インナーシュラフは……うん、俺は要らないな。これで十分暖かい。枕を取り出しアラームを五時間後にセット。おやすみなさい。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] オークの脂で油をとって、残った脂カスも美味しく食べましょう。カスうどんは愛知県でも食べますかね… ラードを使うシンレンスウというクッキーを調理実習で作った記憶… 日本だとチンスコウ?
[一言] 襲うときは正面から!
[良い点] フルオープンバッチコイノーガード文月
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