312:清州ダンジョンデート~ホネホネロック~
なろうの予約投稿って124日が限界なんですね。
休憩を終えて十三層に入った。相変わらず肌寒いとは言わなくとも、前のマップと比べると湿度が下がった分ひんやりするのは間違いない。十三層に入るのは二回目だ。地図は……あるな。
「これ、一応最新のマップだよね? 」
「十五層までは自衛隊員……ダンジョン庁所属の人たちだっけ、その人らが網羅して帰って行ってるから、ダンジョンに仕様変更とか地殻変動がない限りは正しく描かれてるはずよ」
「そういえばそういう話だったと調べた覚えあるな……小西ダンジョンとはえらい待遇の違いだ」
「小西ダンジョン最深部探索中の人としてはどう? 小西ダンジョンと大分違う感じ? 」
結衣さんが十三層の様子の違いを確認しようとする。別に隠すような事でもないのでバッグの中に入れてあるフリをして方眼紙を取り出し結衣さんに見せる。
「こんな感じ。何処まで広がるか解らないけど四割ぐらいは埋められたと思ってる。肝心の階段がまだみつけられてないんだけどね」
「へぇ~こういう風にマップって描くんだ」
「似たゲームを前にやったことがあるので。地図作りは慣れてるっちゃ慣れてるんだが」
「ゲームと一緒にされても……まぁこのダンジョンもゲームみたいな出来ですし似たようなものかもしれないけど」
それで良いのか悪いのか判断が付きかねるといった風の様だ。実際この階層はもっともゲーム的な階層だと思っている。四角い道に連なった道。時々ある小部屋に行き止まり。そしてそういう所に限って何故か溜まっているモンスター。
「十二層の地図書いたときはもっと適当だったな。一辺徒歩何十分みたいな書き方で正方形に階段の位置描くだけだったし」
「いいのかなぁそれで」
「地図において大事なことは目標物とそこまで迷わず行けるかだからいいんだよきっと。さて……お薦めの狩場はどっち? 」
「いつもはこっちに真っ直ぐ行ってから右折すると大体スケルトンが居る感じかな。十四層へ行く気は無いんだよね? 」
「今のところはない。よっぽど近いとかなら覗いてみたくはある」
「じゃー今日のところは無しね。ここからだと結構距離あるのよ。歩く分だけで片道四十分ぐらい」
「荷物の具合もあるし骨五本拾えたら帰ろう。それが目標で」
「おっけー。たまたま近くに寄ったらその時は寄るって感じで」
地図で居場所を見失わない様にしつつ、適当に巡る事になった。迷宮を適当に巡るなんて死亡フラグにしか聞こえないが、一応ここは結衣さんの庭みたいなものだ。信用して良いだろう。
さっき言った曲がり角を右折すると、確かにスケルトンが二体居た。一体ずつ相手することになるな。腰から熊手を取り外し手に装着する。
「なんで熊手を? 」
「まぁ見てて」
軽い足取りでスケルトンに素早く近づく。足音でこっちに気づいたか、スケルトンはこちらを向く。一応耳ついてるんだな。近いほうのスケルトンが剣を振りかぶるより先に接近すると、熊手で肋骨をはいで直刀で核を貫く。多分これが一番早いと思います。
あっという間にスケルトンを一体たおすと、まだ動いてない結衣さんを見て、これは両方俺が倒す流れか? と気づく。仕方ないので両方とも熊手で対応する事になった。もう一体のスケルトンは俺の動きに対応し、こちらに大振りの一撃を加えてくる。大振りで助かる、避けやすい。
そのまま剣を持った手を切り飛ばしてどこかにやってしまうと、がら空きになった胴に再び熊手を掻きたてて核を露出させ、そのまま熊手で掻き切る。核の耐久力はそう強くない。当てられるかどうかだ。熊手により掻き切られた核は破壊され、スケルトン二体は続けざまに黒い粒子へ還った。
「……そんな戦い方するの多分世界に安村さんぐらいだと思う」
「褒め言葉と受け取っておこう」
実際の所直刀で二回突いて核を露出させてから倒すより、両手を使って一度の動作で倒すほうが楽だ。スケルトンの攻撃は大体大振りなので剣先からどこに向かって攻撃を仕掛けられるかを見切ることが出来る。
後は盾の出番が無いことを祈る事も有るが、盾のバッシュは多少の距離が無いと当てるだけで終わってしまう威力の低いものだ。頭で受けて大丈夫なことも確認したし、何なら直刀で真っ二つに切ってしまう事も出来るだろう。まだ十三層に来るのは二回目だが、パターンは徐々に確立しつつある。後は数をこなして体になじませるだけだな。
スケルトンは養殖物のスケルトンではなかったらしく、魔結晶を両方とも落とした。近くに骨ネクロが居ない証明でもある。骨ネクロが出たらダッシュで駆け寄って始末しないとどんどん何もくれない養殖スケルトンが増えていく。それは避けたいし、何より骨ネクロはドロップの真珠が美味しい。小さくて高額で、持ち運びしやすい。何ならすべて真珠でもいいぐらいだ。骨も欲しいけど。
十三層を巡る。同じような道が続くため、どこを歩いているか時々迷いそうになりそうだが、結衣さんは地図を大まかに記憶しているらしく、あまり迷わずに適切適量のモンスターが湧くところが解っているようである。
やはり先行探索者は頼もしいな。地図片手にあっちでもないこっちでもないと迷う事が無い。曲がり角でスケルトンとこんにちは。早速退治する。魔結晶を落とす。この辺りにアクティブ化した骨ネクロはまだ居ないようだ。
ここでは視力が大事になる。骨ネクロがこちらに気づく前に走り出すことが出来るかで楽が出来るかどうかは決まる。骨ネクロと出会って十秒。その間に倒すことが出来れば上々。スケルトンが一体召喚されてしまったら収入は半額。ちょっと悲しいが、それでもオーク肉と同じ価格のドロップ品が小さくて持ち運びできるのは僥倖だろう。
そのまま結衣さんの先導で十三層を巡っていると結衣さんの足が止まる。こっちに静かにするように指示を送ってきた。そっと曲がり角を確認すると、骨ネクロがスケルトン二体と共に居る。この二体は召喚されたものなのか、それともたまたまパーティーを組んでいるかは解らない。
とりあえず骨ネクロを優先的に倒したいところだが、スケルトンの奥にいるため真っ直ぐ駆けよって倒すという手段は使えないだろう。
「あれ、【雷魔法】で倒すことは出来ますか? 」
「どうもスケルトンには【雷魔法】が通じにくいらしい。骨で覆われてるから骨を伝って地面に流れてしまうのかな。それとも強電圧をかければ骨ごと溶かせるかはまだ試してないな。後者だと助かる。いっちょやってみるか」
スケルトンの前に出て、最大出力で雷撃を浴びせてみる。スケルトンは溶けるとまでは行かないが、全身から熱気を発しているように見える。どうやら耐久限界はあるらしいが、核にダメージが入っている様子は無い。これはやっぱり殴り倒す必要があるんだろうな。
雷撃の影響か、スケルトンの動きが鈍くなる。これはこれで良い傾向だ。最大出力で撃たなければならないのであまり戦闘の助けにはなりそうにないな。スケルトンが鈍っている間に肉薄し、今度は熊手を使わず真っ直ぐに核へ向かって直刀を突き切る。どうやら雷撃の影響で防御力が落ちているらしく、肋骨ごと核を貫くことには成功した。
しかしドロップは無かった。これは召喚されたスケルトンだったのだな。何も出ないのは悲しいが、これもダンジョンの仕様、仕方ないところではある。結衣さんはもう一匹のほうへ立ち向かい、文月さんと同じく射程の差を使って全力で頭からぶん殴りそのまま核まで槍で斬り落として一撃でスケルトンを処理する。やっぱりそのほうが早いのかな。
さて、後は骨ネクロだが、もう次のスケルトンを召喚する準備に入っている。急いで骨ネクロに駆け寄ると肋骨をすっ飛ばし核を潰す。骨ネクロは召喚中は無防備だ。武器も何も持っておらず衣のようなものを着ているが、これはドロップ品にはならないらしい。でも急いで倒して五千円確定だ。逃す理由も全力を出さない理由も無い。ただし連続で出会う事は避けたい。
骨ネクロのドロップ品を拾うと、この間買ったばかりの革袋に仕舞っていく。
「なんかそれ、雰囲気出ていいね。小袋から宝石なり金貨なりをころころっと出すって感じがいい」
「そう思ってわざわざ鬼ころしで革製品の小袋を買っておいた。早速出番があったな」
「じゃあこの調子で一杯になるまで頑張りますか」
やはり雰囲気アイテムは大事だ、精神的にも安寧をもたらせてくれるし、何より探索っぽい。
「いつかやりたいな。査定カウンターでザラザラと袋から真珠を出すんだ」
「いいですね、探索者っぽいですね。その袋鬼ころしにまだあるかな」
「結構な数あったから加工職人の手習いとか雰囲気アイテムとしてそこそこ需要あるんじゃないかな。ネクロ真珠はこの小ささで五千円は荷物として非常に助かる。何なら十三層と十五層でひたすら骨ネクロを狩っていたいところだ」
「でもダッシュしなきゃいけないのはしんどくない? 四回連続骨ネクロと戦ったことはあるけどみんな最後には息切れしてた」
「スケルトンに十分対処できるなら走らなくても良いとは思うけど、確定ドロップのはずの魔結晶が出ないのはちょっとしんみりするかな。やはり骨ネクロは見つけ次第ダッシュで何もさせずに倒すに限る」
「同感。ステータスブースト使ってれば間に合うと言えば間に合うんですがスケルトンと一緒に行動してる事も有るから難しいところもあるのよね」
お互い情報交換しつつ迷宮を迷わず進む。どうやら溜まりやすい場所溜まりにくい場所、というのはあるようで、二人で無理しない範囲でモンスターが溜まっているところを巡る事にした。十三層はもうしばらく駐留する事になるかな。何時間ほどかかるか解らないが、小西ダンジョンで巡った時は一時間ぐらいだった。途中で休憩を挟みつつ無理せず進もう。十三層はまだ俺にとっては広い。
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