301:グレイウルフのドロップ検証(前編)
タイトルでオーク肉ってしてたのに全力で豚肉と書いてました。
反省してます。
今日も気持ちいい朝だ。昨日一日休日を満喫して美味い飯を食った。その分更にみなぎっている感じがする。ありがとうダーククロウ。
何時ものトーストと目玉焼きと昨日使い切らなかったサラダを軽く焼いてしんなりさせる。たまには少し趣向を凝らしても良い。塩胡椒で味を調えてあさからガツガツと喰らう。
食事が終われば片づけをして着替えていつもの服装。いつもの装備。そしていつもの指さし確認。時々やってないな。
保管庫でコッソリ仕込んでおくようなものを入れたら冷えた水とコーラを補充。最近コーラもそれほど飲んでないな。これも嗜好品といえば嗜好品だろうが、今回はチョコレートがある。探索の合間に食べる事でやる気も上がるだろう。さて……
万能熊手二つ、ヨシ!
マチェット、ヨシ!
グラディウス、ヨシ!
直刀、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
防刃ツナギ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
新しい手袋、ヨシ!
枕、ヨシ!
嗜好品、ヨシ!
冷えた水、コーラ、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。今日は小西ダンジョンへ日帰りで行く。さすがに十三層十四層に潜る予定は無いので荷物は最低限で良い。メインミッションはグレイウルフがどこまで骨が好きかを確かめる事だ。なので六層半分まで潜ったら引き返すコースになる。ダンジョンへ来た以上は茂君に挨拶をしていかないとな。
今までそこまで嗜好品にこだわる事が無かったことを考える。もっと遊びがあっても良かったはずだ。きっと仕事の延長上として探索者をやっているという意識が自分の中のどこかにあるのだろうか。それともよほど集中していたのか。
まあ、今後も気が付いたらそういう遊び要素というか、ストレスを溜めない方法を模索していこう。さて、早速出かけよう。
◇◆◇◆◇◆◇
開場前に小西ダンジョンへ着いた。文月さんにはグレイウルフのドロップ調査してくると伝えておいた。講義だろうから来ないだろうけど、一人で狡いと言われないための保険だ。とりあえず開場前の列に並ぶ。何人ぐらいライバルがいるかは解らないが、多すぎてグレイウルフが狩れない、という事は無いだろう。
開場前にそこそこ人が並ぶぐらいに小西ダンジョンも人が増えてきた。いいことだ。……あ、ついでにタイヤとスパナ置いていかないとな。そうなると行きはマラソンだな。手早く下りて手早く茂君して、タイヤを置いて帰ってこよう。少し早めのお昼になるがそこはまぁいいか。よし、七層に行き先を変更だ。
やがて九時になりダンジョンが開く。ダンジョンが開く、という表現は適切であって適切ではない。ギルドが勝手にダンジョンの前に開閉式の扉をつけて、カギをかけているだけだ。探索者がその気になればぶち壊して中に入る事も可能だろう。誰もそれをやらないあたり治安は良い。
閉場に間に合わずに扉の前で呆けてしまっている探索者だっておそらく過去には居たんだろうな。そういう場合朝までどうやって過ごすんだろう。スライムと戯れながら時間を過ごすか、ダンジョンと地上の隙間に挟まって仮眠して時間を潰すのか。EランクやFランクでは七層で一泊という訳にも行くまい。
まぁ、そういう話を聞かないあたりみんな時間は守っているんだろう。そんな考え事をしながら入ダン手続きをしていると受付嬢に声を掛けられた。
「あ、安村さん。ギルマスから伝言です。そこに置いといたから気張って稼いできて。だそうです。後そのタイヤは……なんです? 」
ふとダンジョンの横を見るとリヤカーが置かれている。本当に一日二日で用意してくれたんだな。今日は使わないけど今後有り難く使わせてもらおう。
「七層にある自転車の代えタイヤです。オフロード仕様のほうが移動しやすいと思って」
「はぁ……自転車……何が起きているんでしょう」
受付嬢が混乱しているがまぁ七層まで降りてくることはまず無いだろう。とりあえずそういうものなんだと納得してもらった。
早速ダンジョンに入るとスライムにすら目もくれず軽いマラソンの開始だ。一層を全力で駆け抜けると二層でグレイウルフが出てくるまで走る。
グレイウルフ出てきた。二匹いるので骨も二本出す。スケルトンの骨をコロッと転がすと、二匹とも俺には目もくれず骨にガブッとかぶりついていく。きっと、こいつらも骨にかじりついている間に倒さなければいけないんだろう。スライムも食事中がトリガーだった。
骨に夢中になっているうちにガッと頭を押さえつけてスパッと首を落とす。ウルフ肉が落ちた。もう一匹にも同じ動作でグッと頭を抑えてスパッと行く。ウルフ肉が落ちた。
今のところ合計五回やって五回ともウルフ肉をくれた。骨の買い取り価格から考えるに、四十回骨が噛みつきに耐えてくれるならそこから先は完全な黒字になる。二層ではあえて走らず、骨を片手にグレイウルフが出てくるまで走り、グレイウルフが出たら骨を転がし食わせ、頭を抑えて首を落とす。
コロッ、ガブッ、グッ、スパッ。
これがグレイウルフのリズムだ。コロッと骨を転がすとガブッとグレイウルフが噛みついて夢中になる。その間にグッと頭に柔らかく手を添えてスパッと首を落とす。
今日はこのリズムでグレイウルフをひたすら狩ろう。だがまずは七層まで行く。あくまで道中のグレイウルフを狩っていくだけだ。収入的にはそう美味しい話でもない。だが探索者としての探求心が、この行為が収入として確立できるものになるかをはっきりさせるためには必要な行為だ。
他人に見られても構わない。聞かれても構わない。素直に答えて今実験中だと言ってしまおう。秘密にしておくほどのものでもない。探索者みんなで共有しようじゃないか。
◇◆◇◆◇◆◇
二層から三層にかけて合計二十三匹のグレイウルフと遭遇したが、全て骨を使って倒したところ、みんなウルフ肉をくれた。これは確定という事で良いだろう。後はくれないパターンが出てこないかをひたすら調査する事と、グレイウルフの噛みつきに骨が何回まで耐えてくれるかの耐久試験だ。
流石に十三層のモンスターのドロップ品であり建築素材でもあるドロップ品だ、そうそう簡単に壊れてくれてはあまり意味がない。もし長い間骨を使い続けることが出来るならば、今後は片手に骨、片手に剣、腰に熊手というのがFランク探索者の基本スタイルになるかもしれない。珍妙な格好だな。
三層を過ぎ去り四層にたどり着いた。ここまで一時間半。そこそこの時間を消費したのは朝一でモンスターが詰まっているからだ。そして四層もそれは同じことだが、四層はゴブリンしか出てこない。つまり、戦う際にあまり腰の位置を考えて座り込んだりしなくても良い。最小限の動作で戦闘が出来る。これは楽ちんで良い。
肩ポン爆破でゴブリンを殲滅しつつ五層へむけて走る。中々の混み具合だが元々こっちはマラソンスタイル。ステータスブーストを効かせて次々と流れるようにゴブリンを倒していく。きっとゴブリンの中には何をされたか解らないまま撃破されて行った奴も少なくないだろう。すまんな、そこは俺の通り道なんだ。
四層も三十分ほどで走り切る。後一時間ぐらいで七層までたどり着けるかどうかだな。五層をいかに早く走り抜けるかがポイントだ。
五層はもはや走るだけ。ワイルドボアが俺の後ろを追いかけてくるが追いつけないらしい。俺も中々スピードが出ているな。ちょっと息が切れ始めたので少しスピードを落として後ろを振り向く。全力疾走してくるワイルドボア。お前ら中々体力と根性があるな。
足にぶつかるワイルドボア。スピードが乗っていてもその体当たりにはもはや威力を感じられず、自分のステータスの恩恵の大きさを再認識する。足元に転がったワイルドボアをまとめて処理するとドロップを拾いまた先へ走る。ダーククロウも処理していこうか。数匹だがかき集めればそれなりの量になる。
まだ誰も追いついてきてない、先に誰も居ない事を確認してサンダーウェブで一網打尽にし、ドロップを範囲回収する。今のところはこれの往復だけが収入とみていいな。
颯爽と駆け抜けつつワイルドボアを足元に集め、ダーククロウを狩り、二十分ほどで五層を走り抜け六層に下りる。ここからもワイルドボア地帯は走り抜けても問題なさそうだ。
ワイルドボアは今日も元気に走り回っていた。元気があるのは良い事だ。早速俺も元気に駆け寄ろう。後ろを追いかけてくるワイルドボアが全員一列になったところで強めのチェインライトニング。雷撃で数珠繋ぎになったワイルドボアが次々に黒い粒子に還っていく。そして点々と落ちているドロップの肉と魔結晶と革。もっと近寄らせてからやるべきだったな。次に活かそう。
一本目の木もサンダーウェブできれいに掃除し範囲収納。そういえば、この六層のワイルドボアのドロップテーブルは今どのぐらいを回っているんだろう。一度も出たことが無いならそろそろドロップ判定が出ても良いんじゃないか?
さぁメインディッシュの茂君だ。茂君の手前にはワイルドボアも茂っている。ワイルドボアの真ん中らへんに向かって再びランニング。ワイルドボアがすべてこちらにリンクすると、面倒くさいが一匹ずつハグしていく。多分こっちのほうが時間的に早い。
茂君までマラソンするとサンダーウェブ。茂君を全て処理すると範囲収納。これで一キログラム分ぐらいのダーククロウの羽根は溜まった。後は帰りに茂り切らない奴を処理してその後は二層でひたすらグレイウルフだな。
残り二回のワイルドボアハグ会を終わらせ、七層へ着くと自転車が一台。借りていこう。五分ほどで中央にたどり着いた。ちょうど自転車は三台ある。ここにタイヤを放置していくか。ノートにも一筆書いておこう。
「予備のタイヤです。タイヤ交換できる人、交換してくれると嬉しいです。多分こっちのほうが早く走れるようになります 安村」
自転車が一台だけ六層側にあったという事は田中君が地上に戻っているか、ソロ探索者が七層を覗きに来た可能性が高い。ノートを確認するとどうやら小西ダンジョン七層踏破記念なのか、一筆書いて帰った探索者が居るようだ。せっかくならそのまま小西ダンジョンに住み着いてくれると嬉しい。
自分のテントに帰り、休憩にする。まずコーヒーを淹れよう。その後で胃に詰めるものを何にするか考えるんだ。今日は何喰おうかな。
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