30:本日の収穫と夕食
二十八万PVありがとうございます。
ダンジョンで潮干狩りを
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特に何事も無く、スライムを狩りながら帰路につく。その道すがら、そういえば小盾使う事は無かったなと思いだしカバンをポンポンと叩く。そこに小盾は入ってないが、なんとなく労わってやらないといけない気がしたんだ。転ばぬ先の杖とも言うし、本当にいざという時にいつでも取り出せるようにしておかなきゃいけないな。
俺は周りを見回し誰も見てないことを確認すると、保管庫から瞬時に小盾を出し腕に装着する練習を始める。頭の中で装着状態をイメージしながら保管庫から小盾を取り出すと、腕の前にぴったり出る形で取り出すことが出来た。人目が無ければこの手もありだが、緊急時にそんなことは言ってられないかもしれないな。
保管庫がばれるのと自分の命、天秤にかけてどっちが大事だといわれるとまだ首をひねってひねってひねり倒してもまだ結論が出せない。生き残ったにしても見られたからには口を封じなければならない。
全く知らない人の前でそうならないよう祈ろう。
◇◆◇◆◇◆◇
ダンジョンを出ると、ワクワクの査定タイムだ。
「お疲れ様ですスライムのおじさん」
スライムおじさん呼びは確定なのか。まぁいいや。
「お疲れ様です。今日は二層にも行ってきましたよ」
「あぁ、じゃあこの少し大きい魔結晶はグレイウルフのものですね。こっちは重さで価格が決まるんですがそれでよろしいですか?」
「それと肉がそれなりに出たんですが、このお肉ってギルドで買い取らずに他所へもっていっても良いんですかね?」
「別にかまいませんよ。初お肉は自分で調理して食べたいって人も居ますから」
お、じゃあこの間の中華屋にでも持って行ってみるか。爺さん喜ぶかしら。
「ちょっと持って行ってみたいところがあるので、そっちで買い取ってもらおうかと思います」
「解りました。グレイウルフの肉の査定は一パックあたり二百五十円だって覚えておいてくださいね」
「安いのか高いのかちょっとわかりづらいですねこれ」
「開けるまで腐らないし常温保存ができるので、一般的なお肉とはちょっと違ったイメージですよね」
「焼肉用カルビよりは高い、と考えると頑張った気がしないでもないですね」
「そうですね……と、今日も結構スライム狩りましたね。魔結晶もそれなりにあります」
「一目見てスライムのとそれ以外のって見分けつくんですか?」
「それがお仕事ですから」
彼女はにっこり笑うと、査定料金の示されたレシートを発行してくれた。肉抜きで一万円とちょっとだった。肉込みならもうちょっとばかり多かったことになる。
早速支払いカウンターに向かうと精算してもらう。一万円札が不足しているとかで千円札十枚で支払いを受けた以外は特に問題は無かった。
そういえばあの中華屋まだやってるのかな。ちょっと怪しいから急いで向かうか。
◇◆◇◆◇◆◇
小西ダンジョンから歩いて五分ほど、【小西ダンジョン前】バス停のすぐ近くにある、この間行ってみた中華屋へ再び来訪する。
「こんばんはー、まだやってます?」
中華屋ののれんをくぐるとこの間の爺さんが夕食の掻き入れ時か、忙しそうに厨房に立っているのが見える。タイミングが不味かっただろうかな。
「おぉ、あんたこの間の探索者の兄ちゃんか。夕食か?」
「それもあるんですが、これ見てください」
「それは……グレイウルフの肉じゃな?」
「えぇ、前に買い取りもするって言ってたのを思い出しまして」
爺さんの前にウルフ肉のパックを差し出す。爺さんは嬉しそうにしながらこっちへ寄ってくる。
「おう、一パック三百円でいいなら買い取るぞ。どれだけある?」
「八パックほど手に入れたんですが、ちょっと多いですかね?」
「かまわんよ。意外と人気あってすぐ掃けちまうんだ。ついでに食ってくかね?」
「良いんですか?こんな予定外で」
「飯作って出すのが俺の仕事だからな。飯代は買い取り料金から引いとくよ。どうやって食いたい?」
「お薦めで」
「良い選択だ」
爺さんは早速厨房に引っ込んでいった。水とおしぼりを受け取ると顔と首筋を丁寧に拭く。今日はいつもより汗かいて仕事したからな、より気持ちいい心地にさせてくれる。
十分ほどして料理が出てきた。生肉の刺身みたいなものと揚げ物が出てきた。
「グレイウルフの肉は生でもいけるでな。へんな寄生虫も居ないし、刺しで食うのが一番うまいと俺は思ってるぜ」
早速いただいてみる。食感は完全な生だ。刺しなんだから当たり前であるが、馬刺しに似た食感が口の中に広がる。そして獣の割にジビエによくある獣臭い風味がしない。ジビエ料理を生で食うのは寄生虫や細菌の問題から禁忌扱いされているが、似たような食感と臭みの無い味。これは人気があるわけだ。
「どうだい」
「美味い、ただただ美味い」
「新鮮なウルフ肉ってのはそういうもんだ。揚げ物のほうも試してみてほしい。ウルフカツって奴だな」
俺は勧められるままにウルフカツにも手を出す。グレイウルフの肉は脂身が少ない。その分シンプルにカツの味が決まる。油を吸いきっていないウルフカツは口の中を脂で満たすことがない。しかしこのサクサク感は紛れもなくカツだ。
ウルフ肉、というか獣肉の獣臭さはやはりないが、内側から肉汁がにじみ出してくる。アッサリとしているな。そして思ったより柔らかい。もうちょっと筋張ったものが出てくると思っていた俺には予想外の展開だ。揚げ物はこの年に来ると徐々にきつくなってくるが、腹に溜まらずにどんどんイケる。
気が付くとウルフ刺しもウルフカツもすべて胃の中に納まってしまっていた。大満足だ。
「美味かったよ。自分で仕留めたせいもあるかもしれないが、毎日これが食えるなら頑張ろうという気になってくるな」
「また持ってくるといい。ただ、あんまり多くは持ってこないでくれよ。今日ぐらいの量がちょうどいいんだ。田舎なんでね、そんなにお客さんが来ない」
「わかったよ、またしばらくしたら持ってくることにするよ」
「なぁ爺さん、俺にもそれ出してくんねーか?」
横から常連さんなのか、俺より少し年上ぐらいのおじさんが声をかけていた。
「おう、カツと刺しどっちで行く?」
「俺は刺しで食べようかな。酢味噌もつけてくれ。久々に食いたくなってきた」
「あいよ。じゃあ兄ちゃんまたよろしくな!」
どうやら俺の食いっぷりを見て追加注文が入ったようだ。準備を始めた爺さんを横目に店を出る。
飯を食いに来て金をもらうという貴重な体験をした俺は上機嫌で家に帰る。飯代抜いて千八百円ほどが俺の手元に入った。
今日は一日で一万四千円ほど稼いだことになるから、時給換算で千六百円ほどになったはずだ。またウルフには俺の飯になってもらう事にしよう。腹も満たされ財布も満たされた俺は上機嫌で家に帰る。
明日はどうしようかな。筋肉痛に悩まされる可能性があるが、そうなったらスライムをまたひたすら狩ろう。あれは安定した貴重な収入源だ。やっておいて損はない。
家に帰ってシャワーを浴びると、明日は筋肉痛であることを覚悟しつつ眠りについた。
夢の中でスライムにタコ殴りにされるという光景を見たが、明日返り討ちにしろというお告げだろうか。それともお祓いにでも行って来いという話なのか。
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