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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第四章:中年三日通わざれば腹肉も増える

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299/1221

299:休みとスレと布団屋

二千三百万PV、四百十万ユニークアクセスありがとうございます。

あと一ヶ月分ぐらいは頑張った分を見せられると思います。


 朝だ。おはようございます、安村です。昨日はいつもの布団ではなく枕だけの寝袋宿泊でした。やはり眠った感はいつもの布団のほうが強い。体をあちこち動かすが、やはりいつもの快眠とはいかなかったようだ。


 しかし、寝不足でもなければ疲れが残っている訳でもない。ダンジョンでの仮眠ならこれぐらいのクオリティを維持できるなら大丈夫だろう。試験はクリアという事だな。とりあえず使ったには使ったので、インナーシュラフは洗濯を、そして寝袋は干しておく。


 朝食の食パンを保管庫から取り出す。卵も取り出す。冷蔵庫を開けなくて良いのは便利だな。あ、でもサラダは冷蔵庫の中か。結局開けることにはなった。でも賞味期限を気にしなくてよくなったのは良い事か。


 いつも通りの朝食にサラダを添えて。これもダンジョンで気軽に出来るようになるってのは今更過ぎるが進歩だ。悪い事じゃない。目玉焼きに食パンを軽くトーストしてそこに味付けしたボア肉を挟んでサンドイッチとしゃれこむ。悪くない選択肢だ。メニューの予定が一つ増えたな。


 さて、布団屋に連絡を入れる前に一昨日遭遇した検証スレの人の事を思い出し、掲示板へと赴く。進行状況はどうなっているのかなっと。


 どうやら各地のダンジョンから続々とスキルオーブのドロップ状況が集まって、それが纏められて一つのファイルとして共有されている。このスレの住人が一丸となってこういった作業に没頭するのはスライムドロップ確定以来だと書き込まれている。つまり、最近だ。割とノリのいい連中のようだ。


 平均すると一つのダンジョンでは年間四個ほどのスキルオーブのドロップが確認されているらしく、最短でも同じ階層からは三ヶ月から四か月ほどの空き時間があるらしい。この間にどれだけの狩りがされたかによるんじゃないかな。それにドロップ報告をせずに自分で使ってスレには居ない探索者も居るだろう。そう考えると実際に世界に出回っているスキルオーブは結構あるんじゃないだろうか。


 つまり探索者が大量にうろうろしている階層でも少ない階層でも同じようにドロップ間隔が空く、という結論が出せるだけの情報が集まれば俺の仮説に近いものになるって事だ。


 実際はもっと単純にドロップ判定が為されているのかもしれないが、同じ階層で一日に二つ出たり三つ出たり、同時に二個出たりするというケースが見当たらない事から、固有ドロップテーブルという仮説は当たっている気がしてきた。


 探索者の中にはデータ集めだけじゃなく、ドロップ報告の無いダンジョンの階層に自ら向かって探索に行き、スキルオーブを拾ってきた探索者も居たらしい。フィールドワークまでこなすのは良い根性だと思う。これぞ探索者って感じだ。


 結論が出るまでにはまだまだ時間がかかるだろう。もしかしたら、「結局ドロップ狙いなんて効率が悪い、いつも通りの探索をして出たらラッキーぐらいにしたほうがいい」なんて結論に至るかもしれない。これはあくまで隣で聞いていた男が勝手に言いふらして拡大解釈されて行った結果だ。言い出しっぺの俺が言うのもなんだが、俺のせいじゃない。みんなが勝手にやっている事だ。


 だが、これで専業探索者があちこち行ったり来たりしてそれぞれのダンジョンで探索をして楽しめるきっかけになれば良いなとは思っている。俺も清州と小西ダンジョン以外のダンジョンにも潜ってみるべき……か?


 もしかしたら見たことのない動きをするスライムが居るかもしれない。それは是非見てみたい。ダンジョン毎の特色なんかを探して巡ってみるのも面白いだろう。だが、目下の目標は十五層、鬼退治だ。鬼というぐらいだからきっと強いのだろう。


 何処まで自分の力が通じるのか楽しみではあるが、今のところ不安のほうが大きい。力不足で挑んで返り討ちにあいそこで力尽きるのではないか。文月さんと二人でダンジョンで力尽き、スライムに溶かされ、ダンジョンと一体になるのだ。そして探索者証が赤く光るんだ。


 鬼退治に挑むためには十四層を巡って十五層の階段を見つけなければならないし、そのためには十三層で十四層への階段を見つける必要がある。ボス戦を考えるとスケルトンと骨ネクロと戦い慣れる必要もでてくるかもしれない。ダンジョンの傾向を考えると、十六層までは骨ネクロとスケルトン、出てきたとしてあと一種類ぐらいモンスターが出てくるだろう。


 十五層のボスに挑まなくてもその下には行けるらしいし、先にもっと下へ潜って自信をつけてからボスへ挑んでも良い。選択肢は色々ある。が、目下の課題は地図作りだな。方眼紙にかかれた十三層の地図を見ながら考える。


 小西ダンジョンのこれまでのダンジョンの作りから考えて、階段のすぐ近くに次への階段を作るようなセンスの持ち主ではないだろう。つまり完全に踏み入ってない場所に十四層への階段があると考えていい。動く範囲がちょっと狭まったな。もう一時間半ぐらいかけてやれば完全に埋めることも不可能ではないだろう。せっかく未踏破ダンジョン探索を楽しむ機会なんだ、埋められるところは埋めてしまいたい。


 十四層もどんなマッピングが必要かは解らないが、セーフエリアとして全体が機能しているなら、二人で別々に回ったほうがダンジョンを埋めるのは早そうだ。トランシーバーで連絡も取れる。ペンと方眼紙を余分に……そうだな、テントのところにノートを置いて、地図を描き写して託しておくのも後から来た探索者には助けになるかもしれない。


 さすがに十四層までシェルターを持っていくのは難しいだろう。物理的に難しくは無いが、スキルがばれるのを防ぐためにもテント周り以外のものを持ち込むのはアウトだな。そこの自制はしよう。十層をテント背負ったまま通り抜けるだけでも小西ダンジョンでは一苦労なんだ、十四層行ってまでそんな設備を導入するのは犯人は私ですと言うに等しい。


 そうだ、ゆっくりでいい、探索を楽しもう。焦ってミスをするより着実に足元を踏み固めていく。別に急いで二十一層まで行く必要もない。俺はそこまで探索に熱中する人間だったか? そうじゃないはずだ。たまたま流れで気が付けば小西ダンジョンで一番深く潜ってしまっている状態になってるだけで、それは本筋じゃないはずだ。


 自分のペースで行こう。それが一番いい。無理をせず稼げるだけ稼いで、そしてその先で何が起こるかは解らないが、流れに乗って適当に泳ぐのが俺流だ。そうとなれば今日は休み。休みのうちにやる事をやってしまおう。


 とはいえ、今日やる事は布団屋への連絡ぐらいのもので、それ以外は大体やってしまった。後はゆっくり昼寝でも楽しむか。先に羽根をエコバッグに詰め替えてしまおう。今回もそこそこの量が溜まっている。これで昨日買った分以上の利益は出ているだろう。


 良い時間になったので布団屋へ連絡をする。また素材が溜まったので連絡をしたと伝えると、ぜひ持ってきてくれと返答があった。どうやら引き続きダーククロウ素材は好評らしい。こっちも納入のし甲斐があるってもんだ。


 早速時間を伝えると車を出し、布団の山本へ向かう。三十分ほど運転し到着すると、入口で待っていてくれたようだ。店長がすでにお目見えしている。


「お待ちしておりました安村様。今回の納品はどのぐらいで? 」

「はっきり計量してはいませんが量からして六キロほどだと思います。どうやらそちらのご商売も好評のようで何よりです。いつも通り車に積み込んでありますのでお願いします」

「お任せください。今回も前回と同じお取引でよろしゅうございますか? 」

「品質のほうは前回とほぼ変わらないと思いますので一つ検品のほうを宜しくお願いします」


 店の中から職人さんたちが姿を見せ始めた。早速計量と品質検査を始めるらしい。仕事が順調なのか皆目にやる気が満ち溢れている。俺がしたことが無いような表情をしている。過去に俺がここまで仕事に熱心になっていたことは果たしてあっただろうか。


 積み下ろしが終わり、いつも通り店内で待たせてもらう間にお茶が来た。今日はお茶請けは無いらしい。うん、良いお茶だ。ズズズッとわざとらしく啜って香りも楽しむ。自分でお茶を淹れることは滅多にないのでこういう時に味わっておかないとな。


 奥の職人の声に耳を澄ませてみる。ステータスが多少伸びているなら奥のほうの声が少しぐらい聞こえても良いはずだ。


「……良い……して……ね」

「企業秘密……だって……」


 仄かにだが聞こえる。これもステータスの恩恵だろうか。それとも、本来聞こえるのだが年齢のせいで遠くなった耳が元に戻りつつあるのか。どっちにしろ、聞こえる限りでは悪い評価をされている訳ではないようだ。


「前回……同じ……」

「……文句……これでまた……」


 どうやら前回と同じぐらいの品質だとでも話しているんだろうか。摘み立てをそのまま保管庫に入れて持ってきたからこれ以上の品質は無いはずだぞ。もしくは、少し寝かせたほうがよりいい香りを引き立てたりするんだろうか。


 まぁ、判断するのは俺ではなく店側だ。俺は出来る限りいい状態だと思える範囲で素材を納入し、向こうが判断して値段をつける。ダンジョンのドロップはある程度規格化されたものがドロップされるおかげで、ここまで運んでくる際にどれだけ揉みくちゃにされたかどうか、濡れたり乾いたりしてないか、あたりが素材を買い取る際のポイントになるんだろうな。


「お待たせしました安村様。前回とほぼ変わらない状態での納品ありがとうございます。こちらとしても大助かりです。お値段は前回と同じだけつけさせていただきます。で、こちらが金額となりますが、よろしいでしょうか? 」


 重量は六キログラム、合計十五万六千円。前回と同じ百グラム当たり二千六百円ということだろう。


「了解しました。これでお願いします。今回の品質はどうでしたか、前と同じように丁寧にここまで持ってきたつもりですが」

「正直言ってこれ以上の品質は無いと思っております。折れたり曲がったり、濡れたりした羽根も無く、どうやったらこの品質のままダンジョンから持ち帰られたのか不思議……と、詮索はしないんでしたね。うっかりしておりました」

「えぇ、そこは企業秘密という事でお願いしますよ」

「では、これで契約成立という事で。納品ありがとうございました」


 お互い握手し、無事に取引を交わし代金を受け取る。今回もうまくいって良かった。また茂君にはお世話になろう。店員一同のお見送りをされながら車を出す。そこまでしなくてもいいのに……さて、今日はこれで終わりだ。後の休み何するかな。


作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 次回で、300話達成おめザンす 良作だから、これからも読ませてくれると有り難いっすw
[一言] ほほぅ、折れたり濡れたりすると…… # 睡眠充実度検証班が必要
[一言] 布団屋さん、本当は羽根を定期的に入荷して欲しそう。 他の人だと、多くが折れ曲がったり、汚れたりしてたんだろうな。(愚痴が出るぐらいだから)
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