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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第四章:中年三日通わざれば腹肉も増える

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274:お好み焼きと考え事と



 まずは飯だ。スキルを色々弄っていたら眩暈やだるさが襲ってくる前に腹が減ってしまった。夕食を食べよう。今日の夕食はお好み焼きと肉じゃが、それにパックライスだ。お好み焼き定食はこの地方だと普通に食されている。よく炭水化物の権化だとも言われるが、お好み焼きのメイン具材は大盛のキャベツであり、これは野菜に相当するものだという意見を俺は支持する。


 パックライスと肉じゃがを温めると、保管庫からまだホカホカのお好み焼きを取り出す。いただきます。やはり、お好み焼きは出来立てが良い。キャベツのシャキシャキ感がまだ残っていてソースの香りがその食欲を掻き立てる。肉じゃがも汁が良い感じに染み渡っていてご飯がとても進む。


 ここのお好み焼きは麺が入っていないが卵が入っているタイプだ。広島風か大阪風か、俺にはよく解らないがとりあえずお好み焼きであることは間違いないと思う。美味いし。


 肉じゃがもただ汁と一緒に煮込んだ、という訳でなくしっかりと味が沁み込むまで調理されている。春雨も汁を吸って太くなっていて、ツルツル感がいい。食が進む。気が付けばあっという間にすべてを平らげてしまっていた。最近のスーパーの総菜も中々やるな。


 胃袋六分目ぐらいまで満たし、冷蔵庫の牛乳を飲み干す……前に賞味期限を確認。まだ間に合う。安心して飲み干す。とりあえず今日はもうやる事も思い付かないので、早めに風呂に入ってしまおう。早速風呂を沸かして服を洗濯し、全裸で湯が溜まるのを待つ。服洗うの早かったかな。でも風呂にゆっくり入っている間に洗濯が終わるとタイミング的に丁度いいからな。


 湯を張り終わったら早速風呂だ。ダンジョンで蓄えた汚れを綺麗に洗い流していこう。風呂場にある鏡を見つめる。仕事を辞めた当初抜け落ちていた髪の毛達も生えそろいつつある。頭皮の健康も問題ないようだ。加齢臭は……多分まだセーフ。


 念のため体を洗う前に耳の後ろをこすって匂いを確認。枯草のようなニオイもしない、俺の普通の体臭の香りがする。これが加齢臭だったら加齢臭用のボディソープを買いに走るしかないな。


 ふと、鏡に映る自分を見る。仕事を辞めた当初に比べれば体は痩せたし、腕の太さは変わらないが脂肪と筋肉が入れ替わった感がある。このままダンジョン探索者を続けて行けばもうちょっと見れる見た目になるだろう。ウェストが無かったのもウェストが見え始めて来たし、ベルトの穴も一つ変わった。良い傾向だ。


 全身についた汗や垢を洗い流しゆっくりと湯船に浸かる。ふぅ……落ち着く。さて、いつもの考え事タイムだ。時間はいっぱいある、体がふやけるまで考え事が出来るぞ。


 十三層か……純粋に歩くだけでも六時間はかかるんだよな。その間に十層を抜けなければならないし、七層・九層・十一層休憩を挟みながらになる。正直、十二層よりも十層のほうが精神的にも肉体的にも負荷は高い。もっと気楽に抜けるためには【雷魔法】をより使いこなせるようになるのが大事だろう。


 その為には四層で訓練してるように使い続けても眩暈が訪れるまでの時間が長くなるようにコントロールと使用回数・使用時間の訓練が必要だ。四層をグルグル回るのも良いが、これを九層でチャレンジしてみようか。九層の崖側を回るだけなら今の俺なら何とかなるだろう。


 あ、その前に新しく買った直刀の使い心地と体に慣らす時間が必要だ。やはり一回は四層で振り回しておく必要があるな。いきなり九層で試して上手く動かせませんではダメだ。


 慎重に行こう、慎重に。いつまでに攻略しないとダンジョンが無くなるとか、ダンジョンからモンスターがあふれ出すとかそういう期限が切られている訳ではない。俺は俺のペースで探索をして金を稼いで社会へ金を回す。そういう意味では金は貯めておくだけではなく適度にばら撒かなければいけないのか。


 俺一人が豪遊したところで金額が知れてるし、そもそも豪遊と言っても具体的に何をすればいいんだろう。酒を飲めないから高いワインを開けることも無いし、暴食……はいろんな理由、そういろんな理由でしない事にしている。


 やはりいつもの中華屋で飯食ったりスーパーで何時もよりお高い回ってないお刺身を買ったり、そういう所から徐々に生活スタイルを上げて行っても良いんじゃないか。


 いやしかし、最短二年残り二十五年、探索者生活を続けるとして何処かで引退する必要は出てくるだろう。その時に一定の資産を持っていないとその後の生活が辛くなるな。


 年々体にもガタがき始めるだろうし、そうなれば医療費もかかる。やはりどこかのタイミングで企業に専属探索者として雇われるという道も考えの一つに入れておいて良いのではないか。


 国民年金だけではこの先年老いた時に生活できる自信がない。その分の貯蓄が二千万円だと言われているが、それは厚生年金をフルに支払い続けた年収が四~五百万円ぐらいの人を対象に考えられているだろう。


 それよりもっと少なかったちょっと前までの俺と、これから国民年金と払った厚生年金で支払われる額を考えると、倍ぐらいは欲しいところだ。この際【火魔法】の臨時収入は考えずに計算しよう。生活するのに年三百万円税込みで必要だとして……あぁ、さすがにそこまで金額を計算することはできないな。風呂から上がったらちゃんと計算するか。きっと後日の為になるだろう。


 文月さんも同じぐらいの収入を得ているんだよな。あの歳でざっくり……一千万ぐらいは稼いでいるか? そんなに収入を得てしまって金銭感覚が狂ったりしてないだろうか。もしかしたら俺はとんでもない道に進ませてしまっているんじゃないだろうかと不安になってきた。


 でもその辺俺よりちゃんとしてそうだからな。収入は収入、生活費は生活費、と割り切って活動しているかもしれない。


 そういえば出会ってほぼ二か月だが、俺はダンジョン以外で文月さんがどういう生活をしているか全然知らないな。お互い知らないからこそこの関係を続けていられるのかもしれないが、少し心配ではある。


 いきなりホスト通いになって有り金むしり取られるとか無いだろうか。ブランド物を買いあさって錦三丁目あたりをぶらついてたりしないだろうか。おじさん心配だわ。


 う~ん、なんか考えてる事が親御さんみたいだな。保護者か。たまに保護されてる側に回っている気がしないでもないけど、大事な相棒が道を踏み外さないか心配するのも過保護になるんだろうか。


 彼女の両親は俺の事をどこまでご存じなのだろうか。年齢からして、俺より数歳から十歳ほど年上の相手と御面会するような事態が発生するのはそう遠くないと思う。


 自分が親だとして、あまり自分と年齢も変わらないような男とキャンプとはいえ一泊旅行じみたものをしている、と聞かされたら親としては心配するのは当然だろう。あれ、俺結構危ない橋を渡っていた?


 なんだか急に罪悪感が湧いてきたぞ、とはいえこの関係を崩すことはダンジョン的な意味で難しい。いざパーティーを解散して他のパーティーに混ざり込んだとして、今俺と居る事で楽をしている部分で苦労しないだろうか。暖かい飯とか汗拭いた後のタオルとか、そういうものもバッグに詰め込んで出かけなければいけないんだぞ。


 それもお互いの選択としては将来的にあるのかもしれない。とりあえず今は……今は今だ、棚上げしてしまおう。そうなる選択肢はあるが今悩む事じゃない。いずれ時間が解決する事を今考えて対策を立てたって、その時には状況が変わっているだろうし気持ちの変化もあるかもしれない。


 さぁ、そろそろ上がろうか。指先がふやけてきた。体の水分を拭いたら湯を抜き浴槽を掃除し、ついでに壁も掃除してしまおう。最近の洗剤はこすらなくても良いから便利だな。撫でるだけでだいたい落ちる。五分ほどでバスルームを撫であげると全体を水で流して、排水溝のゴミ取って、掃除終わり! 解散!


 一足二足早い寝巻に着替えると、今までに稼いだ金額のレシートを保管庫から取り出すと一つずつ手入力で表計算ソフトに入力していく。最初の頃の三千円しか稼げなかったのが懐かしい。今では二百倍ぐらい稼げるようになっている。


 年月順に金額とダンジョンの場所、備考を入力していく。結構な回数潜ってるな。そして七層をまたいで九層に潜り始めたあたりから急激に収入が増加している。やはり九層は稼ぎ場所として優秀なんだな。ここがファン層の壁と言われるのも納得できる。


 総額を入力した結果、ざっくり千三百万円という金額が出てきた。更に経費として今日買った直刀を含めたテント用品やらなにやらを合計すると四十万ほどの経費がかかっている事になる。これを個人事業主手取り早見表というサイトでざっくり計算すると八百四十万の手取りという計算結果が出てきた。


 【火魔法】分を省いてもほぼ四百万円がダンジョンで得られた手取りだ。月額二百万円。これから深いところへ潜っていく分だけ収入もより増えていくだろう。収入に関してはあまり心配しなくて良さそうだな。


 中期的目標は立てられた。今後短期的に何を目指していくか。ソロで十層……は無謀が過ぎる。まだまだ俺には実力不足だ。ステータスブースト全開で【雷魔法】を使い続けて三十分戦い続けるのは不可能に近い。もっと研鑽を積まねばなるまい。なら明日は朝からダンジョン通いで、早速九層へ向かってみるとしよう。


 明日の予定も立った。調べ物は後日にしよう。そうと決まれば快眠の時間だ。明日が楽しみで眠れないという事もなく、この布団は俺を快楽の園にいざなっていく。この布団、打ち直しってどのくらいの期間でやればいいんだろうな。いずれこの気持ちよさも薄れていく事になるんだろう。そうなった時俺は打ち直しが終わるまでの間どうやって眠ればいいんだ。


 そんな悩みもまとめて布団は優しく俺を包み込み、睡眠の中へいざなっていった。


作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 長いことワープアだと個人年金や生命保険で控除増やす、って考えに至らないあたりが地味にリアル(´・ω・`)
[一言] 作者は東西のお好み焼き業界に喧嘩を売りました!。 ○○風ってなに?。
[気になる点] 中部地方の肉じゃがって春雨なんですか? [一言] 経費と思われるレシートや領収書を細かく分けて取ってあるのは、流石社会人(笑)けど、かなり細かくなりそうだし、数字に強くないならここ…
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