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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第四章:中年三日通わざれば腹肉も増える

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261:回 1/3


 十二層を階段を探しながらゆっくり回る。メインミッションは十三層への階段の捜索だ。急いで回って狩りに勤しむことは二番目なので、スキルを十全に使いつつも消耗しすぎないように行動する事に決めた。


 ここで汗を流しつつオークと戯れることは大事だが、帰り分の体力・精神力は残しておきたい。十層を再突破する事を考えると猶更だ。だが十二層は十層に比べて厄介さは低い。オークと一対一で戦うためにどう戦場を作り上げるかが作戦の肝になる。


 四体来る場合、二体を雷撃で動けなくしてる間に残りを一対一にすることは出来る。もう一つか二つぐらい何か戦法が欲しい。


「文月さん、【水魔法】であいつの足止めできるかな? 」

「足切り落とすとか? 三匹の時にやって見てうまくいったらそれは一つの手段になるかもしれませんね」

「同時に二体三体相手にしなくて良い事を優先して考えるとして、他にどんな手段があるだろう? 」

「物理的に足止めするなら手足を切り落としてしまうか、安村さんみたいに痺れさせるか、後は……氷漬けとかは多分【水魔法】の範疇外な気がするんですよね。多分温度変化は別のスキルになると思います」

「なるほど。じゃあ試しに手足から行ってみようか」


 するとちょうど三体のオークがやってくる。なんて都合がいいんだ、まるであらかじめ用意してもらったかのようじゃないか。早速実験台にさせてもらおう。


 文月さんに合図し、文月さんがウォーターカッターで牽制とばかりに足元を狙う。一発目のウォーターカッターはオークの足を少し傷付けるだけで終わった。文月さんの顔が少しゆがむ。


 覚悟を決めて二射目を撃つ。おそらく一射目で力の入れどころを確認したのだろう。二射目は足首あたりを完全に切り落とすことに成功していた。突然足を無くしたオークが地面に倒れる。


 文月さんは小さくガッツポーズ。どうやら威力の具合が決まったらしい。これで持ち駒が一つ増えたな。


 安心してオークと一対一に持ち込むと棍棒の動きに合わせて近寄り、グラディウスを差し込むと雷撃で心臓マッサージを行う。マッサージの結果無事心臓の動きは止まったらしい。オークは黒い粒子に変わっていく。


 足を切り落とされてその場で立ち上がれないオークの首筋を狙って近寄り首を切り落と……せない。それには脂肪が分厚すぎた。首が半分ぐらい繋がっているが死亡判定には入ったらしい。念のためもう一度切っておこうとするが、それよりも先に黒い粒子に変わったため空振りに終わった。三体の結果肉が一つ。悪くはない。


「どうよ、後はギリギリを攻めるかどうかだけど」

「これで動きが大分楽になるかな。四体来てもそれぞれ一体ずつ足止めすればまた一対一で相手に出来る」

「五体来たらその時は? 」

「その時考えよう。とりあえず四体までは問題ないと考える」


 五体来たら……俺が二体沈黙させるか。とりあえず何回か戦ってみてベターな方法を模索していこう。そのまま階段を探しながら三体から四体のオークと戦いつつ進む。ジャイアントアントも時々来た。


 今のところ三体なら俺が、四体なら二人が一体ずつ足止めをしつつ戦うというやり方でうまくいっている。運が良いのかポジションが良いのか、五体出てくることは無い。


 出てくる頻度も十一層とはそう変わらない。おそらくこっちも三分に一度ぐらいの速度だろう。およそ六回ほど戦闘をしたところでマップの角に来た。どうやら、こっちの辺には階段は無いらしい。


 とすると、神様の言う通りが正しいなら次の辺まで、大体ここから二十分以内の距離にあると考えるべきだろう。でなきゃ神様が意地悪したか、一周して地図を完全に埋めろという啓示だろう。


 どちらにせよ来てほしいところには来なかった。それだけで十分だ。メモ帳に一辺追加すると戦闘時間を差っ引いておおよその時間的距離を書き記しておく。


「ありませんでしたね、階段」

「まだ解らん、ここからもう一度角に行くまでに階段があればいい」

「無かったら結局一周する事になりますね。どっちにしろお肉がまだ溜まっていませんからどうという事はありませんが」

「まあ元々信じてない神様の言うとおりにしたんだ。このぐらいのペースでのモンスター狩りなら試練にもならんさ」


 角を曲がり、まっすぐ進む。親指四、二。ここはジャイアントアントも少なめだな。やりやすくて良い。雷撃で一発で落としてサイドへ避ける。このパターンは酸が来る。予想通り。相手が姿勢を直す前に近づいて一閃。クリア。ドロップ魔結晶二。あっちも魔結晶一。


 また歩き出すとオークがやってくる、四体。文月さんとそれぞれ一体ずつ動けなくしてその場にお座りしてもらう。もうちょっと待っててくれよ、すぐ楽にしてやるからな。


 離れている一体に対してすぐに駆け寄り相手の攻撃体勢が整う前に懐に入り刺さる所までグラディウスを差し入れる。そのままグラディウスを通して雷撃を通すとすぐに黒い粒子に変わった。二人して後ろへ向きなおし、お座りして動けないオークに楽になってもらう。


 またてくてくと次の角に向いて歩きだす。さすがに見落としてないよな? と時々後ろを振り返るが、その様子は今のところ無さそうだ。やはり行く先に階段はあるのだろう。そう信じよう、うん。


 ジャイアントアントとオークを相手にしつつまた二十分ほど歩く。その間に特に問題は無く、ドロップも順調に出た。特にヒールポーションランク2が二本出たのは収穫だろう。これだけで八万円だ。


 しかし、ヒールポーションはいいとしてランク1とかランク2なのが正式名称なのはどうなんだろう。ハイヒールポーションとかエクスヒールポーションでもよかったんじゃないか。誰だろう最初に適当に名前決めた奴は。


 俺が最初に手に入れた時にそういう名前だったという事は、最初にヒールポーションランク2を拾った奴が居て、そいつが適当に名前を付けたせいでこうなってるんじゃないだろうか。


 それとも俺が知らないだけで実際にはハイヒールポーションとかエクスヒールポーションだったりするんだろうか。いやそれは無いな。そうなら……せめてランク一ランク二とかにならなかったんだろうか。どう言う事なんだ保管庫。何とか返事しろ。


 保管庫の代わりに俺の腹が鳴った。そろそろ胃の補給のしどころか。文月さんにも聞こえたらしく、クスっと笑っている。と、向こうからやまびこのように腹の音が聞こえてくる。文月さんが固まる。


「休憩のしどころだな。ちょっと休むか」

「そうしますか」


 お互いに腹の探り合いは止めよう、お腹が減るだけだ。カロリーバーを二人むしゃむしゃしてまだ冷えているコーラを飲む。カロリーについてはこれでしばらく持つだろう。


「やっぱり探索活動はお腹が空くな。カロリーを良く消費している証拠だ」

「果たして探索者はブルーカラーに入るんでしょうか」

「インドでどういう結論がでるかを見てから考えよう」


 ITほどの規模には無いにしろ、問題にはなっていくはずだ。そこでどういう落としどころを見つけてくるかはある程度世界の定規の一つとして見られるだろう。


「しかし、雇い主の居ないブルーカラーというのも変な話だな」

「実質ギルドが雇い主みたいなもんですからね。年金も保険も国民ですけど」

「俺が心配する事ではないとは思うけど、その辺をカバーしていく会社も増えていくんかねえ」

「契約探索者って奴ですか。需要によるんじゃないですかねえ。この先魔結晶がどう社会システムに組み込まれて行くのか、その他のドロップはどうなるのか」

「肉はともかくとして革は……アパレル関係か。羽根は布団やぬいぐるみやらに詰め込めるけど、そこまで大口って程じゃないなぁ今のところ。ただ需要は多いらしいぞ」


 実際その辺の布団屋で自家で作ってる店なんかでは仕入れられないってあの布団屋も言ってたし。


「羽根は採取に手間がかかりますからね。それこそスキル持ちの小遣い稼ぎってイメージになりそうです」

「それは主に俺のせいだろうな。実際いい小遣いになってくれている。そういえばそろそろ連絡して買い取れるかどうか交渉に行かないとな」


 帰り道に取るであろう量を考えると八キログラム分ぐらいの羽根がある。重いとか邪魔だとかそう言う事は全くないが、あまり量が多いとなんだか部屋の棚が整理されてない感じというか、自分の使う領域に使わない物が増え始めているというか、そんな感覚を味わう。


 何となくすわりが悪いのである。所詮持ち物リストのうち一つを占めるだけなんだが、なんなんだろうね、この感覚は。


「さて、そろそろ階段探しに戻りますか」

「そうだな、そろそろ行くか」



作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 持ち駒とは、将棋における相手から取った駒を、自分のものとしていつでも使うことができるルール、またはその駒のことである。 手駒(てごま)とも言う。 多分、『手札』と言いたかったのでしょ…
[一言] >「文月さん、【水魔法】であいつの足止めできるかな? 」 >「同時に二体三体相手にしなくて良い事を優先して考えるとして、他にどんな手段があるだろう? 」  足下を程よく湿らせるのも効果的。…
[一言] 1,2…とあると10までなのか100までなのかどうかとか気になったりするw ver 2.3882829みたいな名前じゃないだけましかもしれんw
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