26:ハンターズハイ
五万PV&日間七位、ありがとうございます。
ダンジョンで潮干狩りを
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電車とバスを乗り継いでいくのも慣れた。自家用車で来ることもできるんだが、駐車場が狭すぎて俺より早くたどり着いた探索者で大体埋まってしまっている。近くに有料の駐車場があるが、駐車場需要を見越しているのか軒並み高料金で運営されている。
運が良ければ無料の駐車場に止められるらしいんだが、止められなかった場合の費用が嵩むため、一日の収入がそれだけ減少してしまう。仮にも仕事として探索を行っているんだから、出費は少ないに越したことはない。
たとえば高輪ゲートウェイ官民総合利用ダンジョンだと入場料に五百円ほど取られるらしいが、それだけでも結構な収入をダンジョンギルドは得ているようだ。盛況なダンジョンで人口密度も高い。対応する職員も多いはずだ。彼らの収入を安定させるためにも必要な措置なんだろう。
過疎ダンジョンで良かったというべきか、稼ぐ気がないのか、それは俺の知るところじゃない。中にいる職員さんは俺が出会った中では四名ほどだが、それで何とか維持できているんだろう。
とはいえ、ダンジョンを潜るための装備としてそれなりの出費はしてしまっているんだよなぁ。とりあえずしばらくは安定して稼げる路線を確立したい。
二層でグレイウルフ相手に稼ぎ続けるのとスライムを狩り続けるの、どちらのほうがより稼げるかを検証しなくてはいけない。俺はメモ帳を腰からぶら下げると、ダンジョンに入場していった。ダンジョン使用料が取られないのは良心的であることを感謝しなくてはな。
入口でいつもの挨拶と記帳を済ませるとダンジョンへ入っていく。この入った瞬間のピリッとした感覚にも慣れた。むしろ高揚感すら覚える。
午前中の予定はスライムと決めた。ならば一番多そうなところ、つまり人通りが少ないところにスライムは密集している可能性が高いわけで、行き止まりかつほかの道へ行きやすいようなところにあたりをつけると、一直線に向かった。ただし道中のスライム、てめーはダメだ。俺の収入元になってもらう。
万能熊手をバッグから取り出し(てるように見せかけて保管庫から出し)て装備すると、俺は一人の修羅となる。スライムと会えばスライムを狩り、人と会ったら会釈する。
尤も、人の居ない道を進んで歩いているのだから人が居ることはまず無いのだが。
◇◆◇◆◇◆◇
スライムはなぜ生まれ、死ぬのだろうか。
モンスターはどこからやって来て、どこに向かうのか。
善きスライムと悪きスライムはあるのだろうか。
強いて言えばどれも価値は皆同じであり、俺の前に現れるかどうかですべてが決まる。わが前に出しスライムは処され、塵となり、我が糧となり、そしてそこに利益が生まれる。
利益を生むスライムは俺にとっては良きスライムであり、俺の前に出ないスライムは悪しきスライムである。スライムに意思が見られることは以前の観察で分かった。感情はどうだろう?
そういえば前にスライムに仲間意識があるかどうか考えた。一瞬手を止める。このスライムに仲間意識があったとしてその感情は歓喜か、嫌悪か、絶望か。死の瞬間にそれを感じるのか。音も無く消え去る彼らにその叫びを上げることはできないが、そこに感情があったとして俺はそれ以降手を止めるだろうか。止めないだろう。
ゴブリンには感情と意思があることは解っている。しかし、探索者たちはそれを承知でモンスター退治に出かけるのだ。人を殺すことと何が違うのか。そう考え始めてしまう人はきっとゴブリンを殺められないだろう。そこに意思疎通の可能性を見出してしまうからだ。
しかし、我々は探索者だ。ダンジョン攻略だけでなくモンスター退治を行うことを生業とするものだ。レジャー気分で参加しているものももちろん居る。しかし、レジャーでフィッシングやハンティングを楽しむのと何が違うのか?同じではないか?
ならば私は自分の意志でもってそれを行おう。好奇心や探求心や向上心や正義感ではなく、明日のご飯のために俺は今スライムをプチプチ潰している。
スライムにもし仲間意識や共通認識、念話みたいなものがあるなら、こんなに必死に同族を狩り続ける人間に対して逃げ出したり逆上して襲い掛かってきたり、もっとこうなんかイベント的なものが発生してもいいはずだが、そうなったことは一度も無い。
こう、なんだかプログラム的な行動しか取らないという感覚がある。何かを検知したところで増殖し、ダンジョン以外の物質が存在すればそれを体内に取り込み消化し、己の糧としている。
振り返ったらスライムがポップしていた、という現象が起きるように、ダンジョン外の生物の視線の範囲内ではポップしない等の条件があるらしいが、俺の目の前で増殖したことは一度しかない。
それが起きた時俺の視線はどこにあっただろうか。たしかシステム的に手元にだけ視線を送っていたからそれがトリガーになっていたんじゃないかと思う。
むしろ、俺が気づいてないだけでこのあたりでも相当数がリポップを行っている?つまりダンジョンは俺の視線を確認したうえでスライムをポップさせているという事になるんじゃないか。
すべてはダンジョンが決める。ダンジョンのみが知るのです。すべてはダンジョンの御心のまま。
なるほど、斥候という役目がいかに重要かが解るな。パーティー含め周辺全体へ常に意識的に視線を送り続けることですぐ近くへのリポップを阻止する役目をしている。ソロで活動する場合これが非常に難しい。
敵と相対していれば自然とそちらへ集中することになるし、その間に大量リポップすることがあればスライム相手でない限り苦戦を強いられるだろう。二層、三層と深く潜れば潜るほど敵は多く強くなり、探索は困難になるだろうから、自然とパーティーでの役割分担が必要になるわけだな。
そう独り言を言ってる間にもスライムは俺というベルトコンベアの前に並べられ、自動的に核を引き抜かれ、靴で踏みつけられその役目を終えていく。
以前食品会社で働いていた奴から聞いたことがあるが、ラインの仕事は慣れると目と手だけそこに残して幽体離脱して外に遊びに行けるらしい。そういえば俺の前職もそんな感じだった。今の俺もそんな感じじゃないかな。うん、何も変わってないな。
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