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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第四章:中年三日通わざれば腹肉も増える

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233:食材と向き合う


 さて、今後の方針やら考えやらは後でもできる。急いで今やるべきことを先に済ませてしまおう。夕食の準備である。せっかくもらったオーク肉、無駄にしないように出来るだけ挑戦的なメニューを試みたい。


 十四層に潜る様になったらおそらく食事はボア肉かオーク肉になるだろう。せっかく通り道でくれるんだからそれを食べない手はない。この一パック何グラムか解らない肉の塊に、査定価格では五千円の価値が詰まっている。この片手で持てる量の肉でだ。


 薄切りにして野菜炒めにするのも良い。分厚く切ってステーキにするのもいい。今ここで取れる選択肢はそれほど多くは無いが、それでもタダでもらったお肉だ。出来るだけいろんな可能性を見出して食したい。


 まずは生でいただいてみる。過去の経験から言って、この手のパック肉には細菌も微生物も寄生虫も確認されていない。生食するなという話も聞いたことが無い。よって、このまま生でかぶりつくという選択肢が取れる。


 挑戦的だが豚刺しと言えるだろう。試しに端っこを切って口にすると、かなりの脂の量であることが解る。口の中が脂で一杯になり、奥歯でその甘みを感じる。端っこは脂分が多かったかな。とにかく口の中で蕩けていく。さすがに脂だらけの口の中はなんかネトネトしてツラい。冷えてない水を口にして口の中をいったんリセットしようと試みるが失敗した。


 試しに薄切りにして焼いてみよう。薄く塊を切り出すと、そのままバーナーで焼いていく。油がすぐに溶けだし、スキレットに肉がくっつくことも無くそのまま焼かれて少し小さくなっていくオーク肉。上等な肉を焼いた時の良い香りが付近を包み込む。


 田中君がもしこの階層に居たら顔を出していただろうな。居なくてよかったぜ。ちょっと焼き目をつけると塩胡椒だけでいただく。


 出来上がったオーク肉焼肉は柔らかく、味は高級っぽい豚味だ。Cランク試験の時には疲れていたからもあるが、ゆっくりと味わうことが出来なかった。今こうして味わうと、これで豚の生姜焼きを作ったら一体どれほどの味わいが生み出されるのであろうか。


 残りを分厚めに切って、塩胡椒をした上で焼く。サイコロとまでは行かないが、豚のステーキだ。一枚しか焼けないが、塩胡椒の香りが蒸発していく脂と共に七層において異様な香りを解き放つ。清州の七層に初めて降り立った時もこんな香りしてたなぁ。


 弱火にしてじっくり焼くと脂が全部流れ出てきそうなので、あえて強めに焼いて表面に焦げ目がつくかつかないかぐらいのところで火からおろす。これは食べ応えがありそうだな。早速皿に移してかぶりつく。


 真ん中あたりが若干生なおかげで噛み応えもそれなりに残しつつ、柔らかい肉の食感を十分に楽しむ。さすがにあの串焼き屋の味には勝つことは出来ないが、それでも値段分の味わいを損なってはいないと思う。美味い。美味い。


 美味いで済ませることなく、他の応用も考えよう。細切れにして、カレー粉まぶして焼くのも良いし、薄切りにしてピカタでもいい。使い道が色々と考えられる。多分中華屋の親父も同じことを考えていたりするんだろうか。


 そういえば、Cランク試験の直後に肉を持って行った後まだ通ってないな。そろそろ親父の気の利いた一品が出来上がっている頃だろうか。今日いや明日か、その帰りにでも顔を出しに行くか。


 オーク肉で色々チャレンジしたところだが、良い脂の香りのせいで余計に腹が減った。ボア肉をもう一パック、スキレットに残ったオーク肉の脂……ラードになるのかな? これで厚切りステーキにして肉欲を満たそう。


 保管庫の中のパスタは野菜炒めた後かな。他のタイミングで投入したら脂まみれになるな。とりあえずこの脂でボア肉を厚切りにして焼いて、その後野菜をカレー粉でしんなりいためて、保管庫からパスタを取り出すと余熱で温めなおして改めて食事開始だ。


 そういえばボア肉を自分で分厚いまま食べるのは初めてだな。焼き加減を好きに選べるのは悪くない。ただ、今回は明らかな失点が一つある。


 先にオーク肉を味わったおかげでボア肉のほうが劣った食感を感じてしまう。ボア肉にはボア肉の良さがあるはずなんだが、いまいち口の中がリセットできていない。


 冷えてない水で口の中をリセットし、パスタにボア肉を乗せながら食べる。やはり食べる順番が大事だったか。次回に活かそう。


 使い終わったスキレットにはちゃんと油をなじませ、しっかりと後処理をして綺麗にしておこう。でないと錆びるらしい。


 仮眠前にやる事はもう終わった。後は眠るだけだ。テントに戻り、文月さんのテントを再び立てたまま放り込み、そのまま横にどけておいて、仮眠を取るスペースを確保する。


 いつも通りエアマットを膨らませて横になりアラームをセットすると、枕を頭にセットこれでダンジョン内でも快適な仮眠をとる事が出来る。


 しばらく横になっているとまもなく眠気が襲ってくる。眠気に襲われたまま仮眠を楽しむことにしよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 アラームが鳴りバッチリと目が覚める。おはようございます、安村です。六時間ほど仮眠を取った。時刻はほぼ午前一時。夜間狩りにはいい時間だ。


 汗もかいてないから身支度はそのままでいいだろう。人が誰も来ていなければ、一層は程よくスライムがリポップしている時間帯だ。ここからまず四層に行って三時間ほど寝起きの運動。その後一層にたどり着くには四時間。


 それからスライムを開場まで狩り続ければ良い時間になるだろう。七層には戻ってくる予定は無いので、エアマットも萎ませて保管庫へ。そのほかの荷物も全部仕舞いこんでいく。さぁ久しぶりのスライム狩りだ。心が躍る。


 収入的には少ない事になるが、心の平穏を保つためにも、初心を忘れないためにも、スライム狩りは重要だ。俺のダンジョン探索の基礎にしていつまでも忘れられない感謝の行為だ。


 さて、狩りに出かけよう。出かける前にシェルターへ寄っていく。設置したノートにはまだ誰も書き込みをしていない。今日は七層には俺しか居ないようだった。


 まぁ、次に来た時には何らかの記載がされている事だろう。それに期待しておくか。八層九層へ行くという行動も選択肢にはあるが、九層を一人で攻略できるかはまだちょっと自信が無い。


 一対三ぐらいまでなら何とかなるんだろうけど、効率的には四層を最高速度で回り続けるほうがおそらく早く確実に収入を得られるし肩慣らしという点ではちょうど良いだろうと思う。


 そうなると収入の効率を目指して四層で狩り続けるか、一層へ直行してスライムをひたすら狩り続けるかの選択肢を選ぶことになる。ならば両方取りに行こう。二時間の間四層で普段通りの狩りをし続け、その後で一層スライム狩りに勤しむのが良いだろう。


 精神的な落ち着きは大事だ。それに五時間も仮眠していて誰も七層に居ない事を考えると、六層はまたハグ会場になるだろうし、茂君もリポップしているだろう。道中に事故や自惚れ、油断は無いと信じたい。


 先ほど自分が停めた自転車にさっそうとまたがり、六層の階段を目指す。やはり自転車は楽だな。五分ほどで六層の階段にたどり着き、丁寧に駐輪所に自転車を停めると六層に上がる。


 六層では相変わらず暴走族が走り回っている。見えている木にはやはりダーククロウは茂っていない。その分茂君にはたくさんリポップしている事を願っている。


 そのまま茂らない君を通り抜けつつ、合計二十近いワイルドボアにハグを繰り返していく。やはり肉が落ちる。魔結晶もそれなりだ。革がドロップしなかったのは幸運であり不運でもあった。あれはあれでそこそこの収入になるのだ。出ないよりは出たほうが良い。


 そして本日……いや日付変わったから昨日か。昨日に引き続き茂君を討伐する。やり方は同じ。雷でできた投網を放り投げて一網打尽。木の根元に落ちたドロップを範囲収納。プチボスとしても収入源としても時間効率も優秀だ。


 もし六層の木全てが茂君だったら、俺は毎回布団屋に羽根の納品に行く事になるだろう。さすがに仕入れすぎとなって困るかもしれない。高級布団なんてそうポンポンと購入されて行くものでもないだろうし、いつも通り五キロぐらい溜まったら持っていく、ぐらいのペースで良いと思う。


 もし足りなくて困る時は向こうから連絡をつけてくれるだろうし、需要と供給のバランスの取れたところでうまくやっていきたいと思っている。


 六層の残りのハグ会と木の剪定作業も終わり、五層へ上がる。やはり夜間だからか、五層の湧き具合は元に戻っている。俺がここに入ってから七時間近く経過したことになるので、この階層としては目一杯湧いている事になるのだろうか。


 木と木の間に三匹ほどの集団が二組ずつポップしている。六層とは違って同時に来ることも無いだろう。来たところでどうとでもなるしな。


 しかし、六層と比べてハグの回数も少なくダーククロウの木を剪定作業をする羽数も少ない。どうせなら清州の五層みたいに階段までほぼ見えているような光景で、階段以外の場所が栄えているようなほうが人気がでそうなものだ。


 まあ少ないなら少ないでランニングが捗る。移動時間が少なければその分狩りが出来る時間が増える。その分収入も増える。四層でゴブリン狩りに徹したほうが時給の面では圧倒的に高い。ここはさっさと立ち去っていくのがベターだな。


 五層をランニングすることで徒歩四十分かかる所を十五分で駆け抜ける。これで二十五分狩りの時間が増えた。時間の余裕が増えた分は四層で費やして小遣いにしよう。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 文月さんのテント一式、Cランク試験の時に畳んで持ち出したのでは? 試験終了で解散したときに、どうしたんでしたっけ? 保管庫に預かった? はて?
[気になる点] 231で枕は保管庫に入れてますよね?
[良い点] >無駄にしないように出来るだけ挑戦的なメニューを試みたい。 この辺が潮おじの常識的に見えてちょっとおかしい片鱗
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