215:ピクニックの前のウキウキ感
千五百万PVありがとうございます。三章もうちょっとで終わります。
満足な昼食と楽しみな夕食を手に入れた俺はまっすぐ家に帰る……つもりだった。気が付くといつものスーパーとホームセンターの併設された場所に居る。
夕食がチョコならたい焼きも胃袋に入れても問題は無いな~などと考えていたせいだろう。そして気が付くと俺の手元にはカスタードと餡子のたい焼きが二つある。
せっかくだし夕食のお供を見繕うか。夕食がたい焼きとチョコなら塩辛いものがあったら無限に食べ続けられるな。酒は呑まないが酒のあては嫌いではない。たまにはジャンクを突き詰めた夕食を取っても良いだろう。
スーパーの中に入る前にたい焼きを車の中で保管庫にしっかりと入れ込み、今度こそ忘れないぞという気持ちを新たにして再度スーパーへ入る。
とりあえず食パン二斤と卵を補充し、野菜コーナーで刻み野菜のパックを少し多めに買っておく。後はトマトジュースのペットボトルを買っておく。夕食のバランスを無理やりとるためだ。とりあえずトマトジュース百パーセントの物を摂取しておけばビタミンは何とかなるだろうという信仰心に従う。
肉・魚類はそのまま素通り。なんせ家に帰れば生でもいける奴らが冷蔵庫に保管されている。よほど高級品を楽しみたいという理由でない限り買うつもりはないし、そもそもこの激安スーパーには高級品という概念が無い。
と、ここで突然のイレギュラーが発生。俺の目の前には豆腐のコーナーがある。お高い木綿豆腐が売っている。普段は絶対に買わないような価格帯の豆腐が並んでいる。店長は冒険したな。このお高い木綿豆腐で麻婆豆腐を作ったらどのようなものが出来るのかつい気になってしまった。
気になってしまったからには買うしかない。このまま豆腐を買わなかったことを思い出しては、悩み苦しみそして探索に支障をきたすかもしれない。それでは探索効率が下がる。探索効率が下がる事に比べればお高い豆腐の金額なんてさしたるものではない。
というわけで夕食は麻婆豆腐も追加される事になった。麻婆豆腐の素を探し求め、豆腐と共に籠に入れる。俺は只高級な豆腐が味わいたいだけであるので、麻婆豆腐が既製品の素だとしても、美味しい豆腐を使えば美味しい麻婆が出来ると思っている。後、そのまま何も付けずにちょっと味見しよう。
総菜コーナーには立ち寄る。チョコナンとたい焼きと麻婆豆腐に合う総菜という悪魔合体のためのキーフックを探してみる。ここの鶏の唐揚げはレモンがパックに一緒に入れられていないのが好ポイントだ。他の店だとだいたい一切れ封入されており、レモンの香りが沁みついてしまっていることが多い。
とりあえず唐揚げを一パック購入する事にした。後はイカリングフライがあれば揚げ物は十分だろう。揚げ物にチョコナンに麻婆豆腐の夕食。混沌として何のまとまりか解らないものが夕食になるようだ。最悪麻婆豆腐は作り置きして朝食べるか。それ以外は……なんとかすればヨシ!
後は念のために栄養ドリンクを二本買っておく。疲れた時の誤魔化し用だ。思ったより疲れる事があるかもしれないからな。
買い物を済ませてホムセンへの用事が何かないかメモ帳を取り出すも何もなく、これと言って思い浮かべる物も無いのでそのまま帰る事にする。また変なものを買い足さないように注意しなければ。
十分ほど車を走らせ家に着く。さて夕食まで何するか。夕食までまだずいぶん時間がある。なんなら明日の試験までまだ半日以上ある。仮眠をとるとしてもまだまだ時間が余る。Cランク試験に関する情報は無いのだろうか。探してみるか。
十五分ほど費やして確認してみたが、試験内容は様々だった。十一層にあえて行かせてオークを討伐しドロップ品を証として持ってくる、一定数の九層十層のモンスターの素材を手に入れてくる、試験官を無事に十一層まで連れて行く、など色々だった。その時々で試験内容は変わるらしい。
清州の十層なら小西と違って二人でもなんとかなる気がする。先日新浜さんと下見をしておくべきだったかなぁ。そうすればもっと肌で十層を感じられるところだっただろう。
清州の九層十層の地図を見る。九層は小西も清州も同じで森の反対側にあったが、十層は森を正面に見て左方向側に階段が近く配置されている。最終的に行く事になるとしてここが目的地になりそうだな。ちゃんと確認できているのは偉いぞ。
まだ時間がある。明日の装備の点検でもするか。ツナギも安全靴もいつものを使おう。新しくして違和感があるままに探索して不具合が出ると不味い。グラディウスは研ぎたてでピカピカだ。小盾も最近は出番が無いので傷も多少ついているものの耐久性に問題は無さそうだ。
やることが無くなったので、やる気のあるうちにもう夕食を作ってしまおう。このまま放っておくといざ夕飯の時に面倒くさくなってチョコナンとたい焼きだけになりかねん。
まずネギを取り出し小口切りにして豆腐を水切りしてサイコロ状に切る。豆腐としてそのまま食べる分は脇にどけておく。麻婆豆腐の素の作り方の通りにとろみ液を作るとネギと豆腐と水をまず一緒に投入、しばらく煮立たせる。とろみ液を少しずつ混ぜ入れ、一煮立ちしたら出来上がりだ。お手軽で良いね。出来上がった麻婆豆腐は皿に盛り、保管庫に入れて保温しておく。
どけておいた豆腐を試食する。大豆味が濃い。そして程よい硬さが口の中で転がる。これ何も付けなくても美味しく食べれる奴だな。麻婆豆腐でなくても冷奴単品でも良かったぐらいだ。次回食べたくなったら麺つゆで冷奴といこう。
小腹を満たしたところで優雅に風呂に入る。まだ早いのは解っているが、本格的にやる事が無いのだ。早く寝てたっぷりと睡眠をとる事も大切だと、ここ二日間俺は布団に叩き込まれている。ゆっくり風呂につかり、芯からの疲れを取る。
試験前にやる詰め込み勉強などすることは無い。少年院と同じで筆記試験が無い、あるのは実技だけだ。実技に備えてゆっくりするのが今日の予定だったのだが、結局本当にゆっくりしてしまった。こんなにゆっくり休日を楽しんで良いのだろうか。
Cランクに成れたらどうするかを考える。まず、十一層に潜ってオーク肉を入手することはCランクになったらやりたい第一目標だ。その次は十五層に居るというボスにも出会ってみたい。勝てるかどうかは解らないが、それまでの敵の強さでおおよそ量ることは出来るんじゃないか。
そういえばボスについてあまり情報も得ていないな。どんな攻撃をしてくるのか、お供は連れているのか。それを自分の手で手探りで探索するか、事前情報を調べて対策をしていくかはまだ決めていない。
さすがに一回で潜ってボスを倒して帰ってくるという事は無いだろう。何回かトライするはずだ。急いで行く必要は無い、じっくりで良いのだ。
風呂で軽く考え事を終えてパジャマに着替えたら、お待ちかねの夕食の時間だ。保管庫からチョコナンと麻婆豆腐、たい焼きを取り出す。う~ん、組み合わせがバラバラ。
麻婆豆腐から食してみる。豆腐の食感がしっかりとあり、噛み応えのある豆腐だ。お高いと自分で崩れていく事は無いんだな。麻婆の素の味に負けずに大豆の風味を損なっていない。やはりお高い豆腐はお高いだけあって食している、という感じを演出してくれるな。
そしてお待ちかねのチョコナンだ。チーズナンと同じ円形をしている。包みのアルミホイルを開くと、チョコチップをふんだんに使ったフカフカのナンだった。ここは予想が当たっていたな。チョコレートのせいで主食というよりおやつだ。麻婆豆腐の仄かな辛さとチョコナンの甘さが交互に口の中を刺激するおかげでいくらでも入っていく。
チョコも程よく溶けている部分と再び固まり始めた部分がそれぞれ食感のアクセントを残していてとてもうまい。おやつにはちょっと多いけどいいなこれ。また頼もう。今度はカレーと合わせて食べてみるのも良いかもしれない。
揚げ物もレンジで温めたが、これは出番は無いな。明日の朝に回そう。朝食でしっかりとカロリーを取り入れていく事にする。もしかしたら休憩なしの長丁場になるかもしれない。明日の朝とこの夕食でしっかりカーボンドーピングしておくぞ。
そこへ更におやつのたい焼きを胃に詰める。正直もうそろそろ胃袋が限界を訴えては来そうだが、油ものほど胃には圧力をかけてこない。しっかり食べて明日に備えよう。血糖値大丈夫かな。
気が付けばほぼすべてを完食していた。食べ合わせはあまりいいとは言えない結果になったが、しっかりと腹は満ちた。やはりあそこのナンは食べ応えがある。良い店を見つけたなと再確認する。他のインドカレー店と比べてみるのも良いかもしれない。しばらく外食はカレーになりそうな予感がする。
今からネットサーフィンをするという選択肢も有りだが、長い時間布団に入ってその睡眠をじっくり味わうのもいい。今日は大人しく寝よう。まだ寝るには早い時間だがこの布団の事だ、すぐに眠りに陥らせてくることだろう。
全ての身支度を整えたはずなので明日は完璧な状態で試験に挑むことになるな。今日やることはやり終えたと思う。ならばあとは眠りに身を任せよう。枕と布団の間に潜り込み、快眠ライフをエンジョイするのだ。
布団にすっと入り込む。枕をそっと引き寄せ、その香りを十分に楽しむ。やがて眼を閉じると全身が布団になったような感覚に陥る。ふかふかの羽毛布団だが、その柔らかさが体を包み隠し、ここだけ別空間のように感じる。やがていつもの眠気が俺を支配し始める。それにあらがうことなく静かに眠りについたようだ。
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