213:休日、と言われても何するか決まってない事はままある
安村は快適な目覚めを得た! 最大HPが十回復した! そんな感じの朝だ。目覚めの気持ちよさを表現する感情は初日で出しきってしまったらしい。まるでグリーグ作曲の朝が聞こえてくるようだ、ぐらいしか思い浮かばない。
昨日一日の疲れは全てとれ、それを上回って過回復したような感覚を覚える。日々快調になりつつある体を起こし、今日も一日を張り切って生きよう。ダーククロウありがとう。
まずは朝食だ。昨日残しておいたサラダチキンと刻み野菜のパックをごまドレッシングではなくごまだれで和える。それといつものトースト二枚と目玉焼きを作る。今日の黄身は二個入っていた。これも布団の効果だろうか、ありがとうダーククロウ。
サラダと目玉焼きをトーストにはさみもしゃもしゃと咀嚼しながらコーヒーで流し込む。うん、美味しい。ごまだれは万能調味料だな。今度ダンジョンにも持っていこう。
お腹が膨れたところで朝食の片づけと軽いストレッチをする。うん、やはり体の関節が良く回るし、ポキポキという限界が来そうな音も聞こえてこない。ずいぶんリラックスした睡眠をとれたことは間違いない。
明日は試験日なので今日は一日オフにして、ダンジョンへ向かうために保管庫の整理とバレないようにする細工を厳重にする。ともかく一晩干しておいたテントとエアマットを回収し、自分のテントと共にバッグに詰め込んでいく。水も二人分必要なので四リットルは出しておかないとな。枕は諦める。
食べ物は……あんまり目立たないようにしたいのでカロリーバーで我慢してもらうか。試験の日ぐらいは許されるだろう。バーナーとスキレットはどうしようかな……マグカップとセットにして持っていくだけ持っていくか。使う機会が無かったらそっと保管庫に押し戻しておくことにしよう。
さて、一日休みだ。洗濯……するものはパジャマぐらいか。掃除……はこの間やったな大規模に。庭の手入れ……するほど汚れてない。いかんやる事が思い浮かばないぞ。とりあえず保管庫の確認から始めるか。
保管庫の確認をしようとすると、思いつくものが徐々に増えていく。やる事が増えて良い事だ。
まずはゴブリンソードの確認からだな。全てのゴブリンソードを取り出し、すべての鞘を外して抜き身で格納する。ここ数日で一気に増えたからな、ちゃんと鞘を外しておけば鞘ごとぶん投げてどういう事よ!? ってならなくて済む。
最近出番が無いパチンコ玉は千発以上まだ残っている。これは補充しなくていいだろう。バードショット弾も同じく二千発以上ある。そのままそっと保管庫に忍ばせておこう。
手持ちの武器は万能熊手・グラディウス・マチェット・バール・バードショット弾・パチンコ玉・中玉・大玉・棒手裏剣・ゴブリンソード。中玉と大玉と棒手裏剣は全く使ってないな。大玉については出番すらないし弾数も無い。ゴブリンソードが手元に数が集まってきた以上、もう使わないんじゃないかとも思っている。なのでそのまま保管庫でサビさせていく事にしよう。
小盾も最近出番は少ない。ワイルドボアの突撃止めたりジャイアントアントにシールドバッシュしたりはしているが、防御に身を置くよりも回避して素早く攻撃するほうにスタイルが向いているのでグラディウスほど酷使していない。そういえばグラディウスもそろそろ研ぎに出したほうが良いか。今日の内に鬼ころしへ行こう。
思わぬところで午後の予定が埋まった。やはり日々の整理整頓は大事だ、古事記にもそう書いてある。次はへそくりを整理しよう。中に入れてあるウルフ肉とボア肉を冷蔵庫に入れて保管しておく。
いくら無菌真空パックだと言っても冷暗所に入れておくのがベストであるのは確かだろうし、気分的にも生肉を常温保存しておく勇気は無い。冷やしておいていつかの昼食夕食用に保管しておこう。
ヒールポーションとキュアポーションはそのまま非常用医薬品として保管庫に入れておく。これでちょっと保管庫のリストが綺麗になったな。
粉ジュースの様々な種類を取り出し、とりあえずサイダー味とイチゴ味、それにスポーツドリンクの粉以外は需要が無いようなのでどけておく。更にリストが綺麗になったな。
保管庫のリストもちょっとずつスリムになってきた。カロリーバーは取り出すのが面倒くさいのでそのまま味ごとに保存させておこう。
飲みかけの水があったので取り出して……捨ててしまおう。気分的な問題だが、保管庫の整理の為でもあるし、思い出そうとしてもこれがいつ口を付けたものかが思い出せない。細菌の繁殖も百分の一になっているだろうが、それでも気になる時は気になる。
他にもいろいろ保管庫のリストをスマートにするために色々と頑張ってみた。タオルもある程度統一したメーカーの物で揃えてしまったほうが良いかもしれないな。
さて、リストの整理も終わったし、昼食を取るのも含めて早めに出て鬼ころしへ向かうというのも有りだな。昼食と言えば……あのカレー屋にリベンジしたい。ちょうど通り道にもなるしそうするか、腹もそれが良いと俺に語り掛けてくる。
となれば先に鬼ころしへ行こうと車を出すことにした。今から行けば開店時間にちょうどいい感じだ。早速出かけよう、善は急げだ。
平日の通勤時間も一区切りついた空き気味の道を走らせる。空き気味という事は周りの車が速度を上げて走るという事であり、制限速度をきっちり守って走ると七割方煽られる事になる。制限速度を守るか自分の命を守るか、中々難しい選択を迫られる。
後ろから煽られない程度に車の速度を上げ流れに乗る。ただしオービス付近では皆きっちり速度を守り通行しているあたり、周りの車もそこは解ってる感がある。そこまで行かずだけども出来るだけ速度を上げていく、という風だ。一般道でこれなのだから高速道路は一体どうなってしまっているんだろう。
おかげで普段より少しだけ早く名古屋周辺へたどり着き、ぶつかる事も煽られることも無く安全に鬼ころし周辺へたどり着くことが出来た。安全運転万歳。
鬼ころしへ着くと、早速武器カウンターへ行きグラディウスの調子を見てもらう。多分以前研いでもらった店員と同じ人だと思う。
「う~ん……まだ使えると思います。普段何層で使用されてます? 」
武器担当の店員に尋ねられる。これ一本しか使ってないからな、素直に白状しよう。
「大体四層から九層ぐらいですかね。というかこれしか使ってないですね」
「状態を見る限りまだ使える状態ではあります。研ぎ直しますが、次は買い替えのタイミングかもしれません。その時は是非ごひいきにお願いします」
商売っ気を出しつつ、研いでくれるようだ。開店すぐに駆けこんだからか、あまり時間を待たずに終わりそうだ。
その間に色々店内を物色する。今必要な物……といってもパっと思いつくようなものは無いが、とりあえず店内を見て回ることにした。何かインスピレーションが得られるかもしれないからだ。
しかし今のところ特にめぼしい商品は見つからない。大剣振り回したり槍に持ち替えたりとかはしない予定だしな。歩く武器庫になるつもりは……もうなっているな。剣を二十本見えないバッグに抱えたまま探索をしている。
飛び道具は十分にそろっていると言っていいだろう。ゴブリンソード投げつけて倒せない相手は物理攻撃が通用しない相手だろうし、普通に一キログラム近い刃物ぶん投げて通じない相手には現状逃げるのが一番良さそうだ。
防具を新しくしてみるか。手袋はそろそろ新しいものにしても良い気がする。靴もだいぶすり減ってきた。予備を持っておいて損は無いだろう。足のサイズに合った靴と嵌め心地の良く違和感の少ない手袋を一セット購入しておく。手袋は使っている間に馴染んでいくものだ、適度に使っていこう。
キャンプ用品をここでは扱っていないし、これと言って不満や不便は思い浮かばない。つまり現状で満足した探索が出来ると言えるだろう。しいて言えば汗を拭くときのデオドラント系のシートぐらいがあればいいな~ぐらいだろうか。
暫くすると研ぎが終わったようで、研ぎ代を支払うとピカピカに磨かれたグラディウスが手元に戻ってきた。もう暫く相棒で居てくれよ、お前に俺の稼ぎが懸かっているからな。
雑貨品コーナーのほうへ行ってみる。レトルトのボア肉カレーがあるが普通に千円を超えている。う~ん贅沢。ボア肉千円と言われると、毎回二千円以上使って食事して潜ってる事になるわけだ。結構な贅沢をしているな。とりあえず二人分買っておこう。
三勢食品バニラバーはここでも販売している。時間的に入荷したばかりなのかたまたま在庫があるようだが、販売本数は一人当たり一箱二十本までとなっているようだ。しかし、一箱分だけでも千円ほどの確実な収入増になるわけで買えば買うほどお得になる。なんだか不思議な商品になってしまったな。
さて、用事は済んだし帰りがてらあのカレー屋に寄ろう。再び車に乗り込むと、家と鬼ころしのほぼ中間点に位置する、前回立ち寄ったカレー屋にリベンジマッチを挑む。ランチの時間帯に入り込むことになるので混んでいるかもしれないな。
昼時だからか、道は少し混み始めている。少し遅れる事になりそうだが、待ち合わせをしているわけではないので落ち着いて運転しよう。そのまま行き急いでカレー屋に車で突っ込んでお持ち帰りを注文するようなことは避けなければならない。
こういう時に限って信号で赤を引き続ける。そこまで俺の腹を満たす邪魔をするのか。イライラが高まる。ダンジョンでモンスターと一切エンカウントしない時ぐらいのストレスを感じている。やはり腹が減るとストレスが溜まっていかんな。
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