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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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211:四層大虐殺

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 四層に上がって五分休憩した。心拍数、問題なし。血圧、多分問題なし、体温、変に上がったりしてない。ざっくりと今の体調を整えると二時間の間四層をひたすら駆け巡ってヒールポーションとゴブリンソードを集めに走る。


 慣れた作業だ。よほどのうっかりや眩暈でも起こさない限り後手に回る事は無いだろう。出会ったら雷撃か首をはねるだけのお仕事だ。仮にソードゴブリンであってもやることに変わりはない。少々雷撃の強さを上げてやるだけで行ける。


 もし眩暈が近づいてきたり雷撃が面倒くさかったら物理で対処すればいい。どっちにしろ今更負けてやる相手ではない。存分に四層でのポーション集めを楽しもうではないか。


 歩き出すと早速ソードゴブリンとゴブリンの団体さんのエントリーだ。試しにチェインライトニングを出力高目で放ってみる。ソードゴブリンは倒れなかったが、後ろのゴブリンは黒焦げになった。さすがソードゴブリンは耐久力が高めだ。最後の一撃を加えるとソードゴブリンも黒い粒子に還る。


 戦闘時間三秒。ドロップはゴブリンの魔結晶二つ。モンスター一匹当たりの評価価格を考えると秒速五百円。絶え間なく来てくれるなら時間あたり百八十万円か。あり得ない話だが、一分に一セットずつ出て来てくれると仮定しても九万円になる。これは速足で移動しつつ出会って三秒で処理。でやっていくか。テンションが上がってきたぞ。


 早速次へ速足移動。ゴブリン三匹。チェインライトニング。ゴブリン魔結晶一つ。

 速足移動。ゴブリン二匹。チェインライトニング。ドロップ無し。

 速足移動。ソードゴブリン一匹ゴブリン三匹。チェインライトニングと一閃。ゴブリン魔結晶二つ。


 テンポがどんどん速くなる。眩暈を起こすまで試し続けてみよう。これは自分の耐久試験だ、決して無茶なまねではない。そう自分と心の中の文月さんに言い聞かせてテンポを落とさず狩りを続ける。


 十五分が過ぎたところで眩暈を感じ始めた。ここまでに処理した回数三十二回。ドロップはゴブリンの魔結晶が二十八個、ソードゴブリンの魔結晶四個、ゴブリンソード一本、ヒールポーション五つ。時間に対しての稼ぎとしては十分稼げてるな。このままヒールポーションを集めて行こう。


 ちょっとペースを落として物理オンリーに切り替えていこう。ステータスブーストで索敵し、気配を感じるほうへ移動、発見したところでこちらから開戦、そして処理。ペースは半分ぐらいに落ちるが、それでも一分に一回ぐらいは会敵できるのでそこまでペースは落ちない。十五分間物理での戦闘を試みる。


 十五分ぐらいたったところで一旦休憩。ゴブリン魔結晶十六個、ソードゴブリンの魔結晶二個、ヒールポーション三つ。ペースはほぼ半分というところか。ここから十五分、再び【雷魔法】を使いながらの戦闘をしよう。


 やはり【雷魔法】を一発撃ったほうが十五秒ほど早く戦闘を終えることが出来る。たかが十五秒だが六十回繰り返せば十五分のインターバルを丸々時間として得ることが出来る。一時間に四サイクル、物理攻撃のみの時間と【雷魔法】を混ぜた攻撃を繰り返せばより効率よく回ることが出来るな。


 また十五分経つ。ドロップはゴブリンの魔結晶が三十個、ソードゴブリンの魔結晶三個、ゴブリンソード一本、ヒールポーション四つ。良い感じだ。まだ眩暈は来ていない。だが十五分できっちり攻撃手段を交代させていこう。


 無茶をするわけじゃなく今は検証のお時間だ。四層でどれだけ稼げるかを試しているんだ。その為に四層のゴブリンが枯渇してしまっても仕方ない事にする。少なくとも後七十五分は自由にできる時間がある。最後の十五分は三層に向かっていく事にし、それ以外の時間は思う存分俺の練習台になってもらおう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 それから六十分、ひたすらに四層を巡った。最後のほうはリポップが間に合っていないんじゃないかとすら思うほどに四層を巡り尽くし、そして狩り尽くした。


 ドロップはゴブリンの魔結晶が百八個、ソードゴブリンの魔結晶が十三、ゴブリンソードが三本、ヒールポーションが十三本。ゴブリンソードは手持ちがちょうど二十本になったな。ここまで来ると鞘が邪魔だが、リストにはすべて同じものとしてカウントされているので実戦で使うまでにはなんとかしておこう。


 途中からは体も慣れてきたのか、十五分経っても眩暈を起こすことはなくなった。おそらくMP的な物の回復量が使用量を上回ったか、スキルを効率的に利用できるようになってきたかどちらかだと思われる。数値化して目視できれば色々便利なんだけどなぁ。何事もイメージで量りきるというのは中々に厳しいところがある。


 十分に稼いだ。もう十五分とは言わず、ここで上がりにしてしまおう。切り替えの良さは大事だ。ずるずると先延ばしにしてうっかり今日泊まりになっちゃったとなると、試験に悪い影響が出るかもしれない。


 今日は大人しく少し早めに帰って再びあの天国とも言える寝心地を体験するんだ。そのために、まずは帰ろう。三層の階段は運が良い事にすぐ近くにある。思ったよりは早く帰れるだろう。


 狩り尽くした結果リポップが追い付いてなかったのか、誰にも会わず三層へ上がり、そこから真っ直ぐ二層への道を急ぐ。道中に出会ったゴブリンは合計で十匹。更に魔結晶を三つお土産にくれた。いやぁ悪いねえ。


 今の小西ダンジョンで二層以上でモンスターに出会う可能性は非常に低い。月曜日だというのに探索者はそれなりの数うろついていて、それこそ二層から三層に通じる道は常に狩られ尽くされている。スライムにも出会えないのは非常に、非常に残念だが、ここで寄り道をするぐらいなら一層で寄り道をしたほうが良いだろう。


 一層でなら最悪午後六時半になってしまってもギリギリ門限に間に合う、今の時刻は十七時。二時間ある。一時間スライムに費やす事も出来なくはないが、今日は素直に帰る。試験のために我慢だ。ぐぬぬ。


 一層に上がる。結構な人数の探索者とすれ違う。この場合の「結構」は小西ダンジョン比であって、清州ダンジョン比ではない。清州ダンジョンなら数十人単位とすれ違う事も有るからだ。だが栄えても小西は小西、七人とすれ違えばそれはもう結構な人数である。


 これだけ居ればスライムの狩り忘れは無いだろう。今日の不運を天に向かって嘆きながら帰り道を歩く。すると帰り道に……居た! スライム! バッグからバニラバーを取り出すと半分に割り、喜んでスライムに差し出す。スライムは嬉しそうにバニラバーを頬張り始める。うんうん、美味しそうでいいねぇ。それじゃあね。


 いつも腰につけている熊手を片手にスライムの核を掻き出すと靴の裏で踏む。スライムはドロップを残し消える。このドロップは記念品として家に持ち帰ろう。


 気分を持ち直した俺はルンルン気分で退ダン手続きをしてダンジョンを出る。今日の稼ぎはいつもより多い。笑顔で査定を受けることは出来そうだ。早速査定カウンターに並ぶ。


「今日はお一人なんですね。稼げましたか? 」

「新しい戦い方を身に付けまして。この通りしっかり稼ぎました」


 戦利品を広げながらちょっと自慢気に見せる。物量は多いはずだ。


「大きさからしてゴブリンたくさん狩ったみたいですね。あとは……七層行って帰ってきた感じですか」

「大体そんな感じです」

「ちょっと待っててくださいね」


 査定に五分ほどかかり、金額が出てくる。三十四万三千七百三十二円。ソロ活動としては最高額じゃなかろうか。早速支払いカウンターに行き振り込みにしてもらう。


 さて、後は途中のコンビニで飯を買って帰るか。今日は何にしようかな。とんかつ弁当とか良いかもしれないな。今日一生懸命働いたので明日は一日オフにしよう。一日しっかり休んで翌々日の試験に備えるのだ。


「テントとエアマット回収しといた。試験の日に水と一緒に渡す」文月さんにレインで確認しておく。

「ありがとう、当日よろしく。布団の寝心地はどうだった」返事はすぐ届いた。

「今まで俺の取っていた睡眠は逆立ちをしながらだった」これで大体伝わるだろう。


 バスの車窓を眺めながら、もうすでにCランク試験のことで頭が一杯だ。一日気が早いとは思っているものの、気になるものは仕方がない。一体どんな試験が課される事になるのか。


 当日になるまで解らないのだから考えても仕方ないか。思考を切る事にする。それよりも腹が減った。コンビニにとんかつ弁当はあるだろうか。食欲のほうに意識を集中する。


 電車に乗り換え最寄り駅に着くと、駅近くのコンビニで弁当を探す。とんかつ弁当は残り一個だった。ラッキー。急いで籠に入れると後はサラダチキンとパックの刻み野菜を買って栄養は十分だ。買いたいものが買えてウキウキのまま家に帰る。


 家に着いたのでまずいつものルーティンだ。テントとエアマットを水洗いして干し、ゴミの分別とツナギの洗濯、それと風呂を沸かすのを並行して行う。風呂が沸くまでに夕食を済ませてしまう。


 とんかつ弁当と刻み野菜が今日の夕飯だ。サラダチキンは今のうちに細かく切ってしまって、明日の朝食に回そう。ささっと夕食を済ませて、ツナギを洗濯して風呂にも入ってしまおう。まだ午後九時だが、極上の睡眠がこの後待っているかと思うと楽しみで仕方がない。


 風呂の掃除もついでにやっておくか。多少体が冷えるがなんとなく今やりたくなってきた。この後の楽しみに比べれば風呂掃除ぐらいなんのことはない。隅々まで綺麗にするよう心掛ける。


 パジャマに着替えると後はもうやることがない。いつもならネットを適当に見て情報を集めての睡眠だが、それすらもうやらなくていいだろうと思えるほど眠りを心待ちにしている。


 早速布団に潜り込む……と、そういえばレインで感想をくれと布団屋が言っていたのを思い出す。


「真の睡眠というものを知りました。生まれ変わった気分になれました」


 これでいいだろうさぁ今度こそベッドインだ。ダーククロウの香りが全身を包んでいく。足先からぞわぞわとした感覚が頭まで駆け抜けていき、ふっと力が抜ける。全身に力を入れようとするが入らない。金縛りではなく、もう力を入れる必要は無いのですよ、と布団が語り掛けてくるかのようだ。


そのまま全て身を任せよう。そして瞼をそっと閉じ、後のことは……



作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] そこまで実感が持てるほど違うと三桁万円で普通に金持ち間で取引されてそう ほんとの金持ちなら睡眠の質が根本から変わるなら四桁万円でも安いだろうし
[良い点] この布団欲しい… [気になる点] あれ?このお話って布団推しの話だったっけ?? [一言] 掛け布団と枕ときたら、次はマットレス… スライムジェルのマットレス??
[一言] 布団に使用感、 「毎日生まれ変わったかの気分です。」
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