21:新しいモンスターと会った
ダンジョンで潮干狩りを
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二層の見た目は一層と変わらず洞窟っぽいデザインだ。壁や床や天井が薄暗くも光っていて、明かりを持つ必要は無い。しいて言えばスライムが居そうな気配が薄いぐらいだろうか。
万能熊手をバッグに入れるふりして保管庫に収納した俺は、代わりにバールを取り出すと二層の地図を見つつ一歩ずつ奥へと行くことにした。
天井までの高さは三メートルぐらいだろうか。長物を振り回すと当たってしまうぐらいだ。俺も腕を精一杯伸ばして振りかぶってしまうと当たってしまうだろう。
もう少し短い奴にすればよかったか、それともシンプルに刃物にするべきだったかな。そうするともう片方の手が空いてくる。腕に着けるタイプの小盾をオプションで付けるとより安全な策が取れそうだ。
いろいろ考えながら少し進むと第一村人のグレイウルフが一匹で座り込んでいるのを目視できた。こちらには……まだ気づいてないな。俺はバールを短槍のように持ち換えると一歩ずつ近づいていく。
あと八メートル、七メートル、六メートル……気づいたらしい。こっちに振り返ると四つ足を開いて口を開き威嚇してくる。俺は一旦足を止めこちらもすぐに走り出せるように足に力をためる。
グレイウルフが動いた。真っ直ぐこちらへ向かってくると頭から突っ込んできた。これは噛みつきパターンだな。俺はとっさにバールを短めに握りなおすと、相手の右側面をすり抜けるようにして一気に近づく。そして相手の口めがけて思い切りスイングした。
ドシッ、とした感触が手に伝わる。どうやら相手の顎の下を抜けて前足の付け根を殴ったようだ。体重差もあって、グレイウルフは後ろへ飛ばされる。体勢を崩したまま横たわるが、すぐに立ち上がった。すぐさまこちらに向けてまた仕掛けてくるが、前足にダメージが残っているのかさっきより遅い。
また噛みつきで来るだろうとあたりをつけた俺は中段の構えを取る。もし爪で攻撃してきたとしても、反対側へ薙ぎ払えるようにだ。しかしこちらの予想通り噛みつきにきたので、そのまま相手の口の中を狙って一気にバールをねじ込む。
バールは相手の喉の奥を正確に突くことができ、その衝撃で突進は止まる。チャンスだ。俺はすぐさまバールを引き抜くと、上段の構えから思い切り頸部へ振り下ろした。
ゴキッという音とともにグレイウルフの首が折れたのか、動かなくなってしまった。しばらくすると黒い粒子に変わっていく。
一分にも満たない時間だったが俺は緊張のせいかそれが数分にすら感じた。腰への負担は……ないな。
前回戦った時は万能熊手だったので必死の戦いだったが、バトルらしいバトルは今回が初めてと言っていい。冷静さを欠くことなく戦えたかな。
さすがにいきなり何かアイテムが落ちるという幸運こそなかったものの、被害ゼロで初戦を戦えたのは十分な戦果だったんじゃないかな。次行ってみよう。
◇◆◇◆◇◆◇
一人での探索は危険が大きい。常に一対一の状況に持ち込める技能があればいいが、相手が二体以上になると途端に自分の使える選択肢が狭まる事になる。
また、パーティーを組めばそれだけ目の数が増えることになるので奇襲されることが少なくなる。斥候役が居ればなおのことだ。その点で俺は一人で行動しており、また戦い方も一撃確殺とは言えない。それを頭に入れながらの探索は結構神経を使うということを再認識させられている。
文月さんはよくここをソロで探索しているなぁと思う。やはり武器の違いか。刃物か、刃物がええんか。添わせるだけでダメージを与えられる刃物はうっかりすると自分にも傷を負わせるデメリットがあるが、それ以上に相手のどこにあてても傷を与えられる利点は大きい。
バールじゃなくてマチェットにすればよかったかぁ……
一層に戻ろうかな……と思ってる矢先に二匹連れのグレイウルフに出会ってしまった。まずいな、いきなり一対二の状況になってしまった。これは立ち位置が肝心だぞ。うまい具合に順番に襲ってくるようなパターンに持ち込まないと。
一匹目を上手く往なして二匹目にダメージを与えていくような形であれば両方の攻撃を同時に受けることが少なくできるだろう。俺はそう考えて常に相手側と直線になれるようにする方法を考えながら周囲を見る。
すると、十メートルほど先に細い道があることに気づく。たしかプロボクサーが言っていた。一対多の喧嘩を始めてしまった時は、細い路地に逃げ込んで追いかけてきたやつを一人ずつ殴り倒すのが最も危険が少ないと。
俺は全力でそちらへ走るとすぐに振り返り、グレイウルフの様子を見る。二匹ともこっちへ向かってきているが、道幅からして同時に襲い掛かってくることはないはずだ。これで勝率が上がったぞ。
さっきと同じ手順だ。噛みついてきたら顎を殴り、爪で引き裂こうとしたら弾いて突く。左右同時に引っ掻きに来たらその時はバックステップで避けて上段から頭を叩き割る。
頭をやられたのが致命傷になったのか、一匹目はすぐに黒い粒子になって消えた。上手くこちらの手に乗ってくれたおかげで無傷で仕留めることができたぞ。しかし、二匹目が間髪を容れずに噛みついてきたため体勢を崩し、足に噛みつくことを許してしまった。
痛い、が肉を抉られるような痛みではなく、尖ったもので突いたような痛みだ。噛みついてる割にはなんだか浅いな?という感想が浮かぶほどには余裕だ。
噛みついてくれている間に俺は背骨を思いっきり叩く。ギャインという悲鳴とともに噛みつきをやめ、後ろによろめいてくれた。俺はもう一度バールを振りかぶると頭がい骨目掛けて叩き込んだ。バールはそのままの形で頭がい骨にめり込み、グレイウルフはピクピクと震えた後動きを止め、黒い粒子となって消えた。
そしてグレイウルフの跡には魔結晶が残されていた。スライムのものより少し大きい。たしか、スライムは固定価格だけどそれ以外は量り売りだったな。とりあえず百円より安いってこたぁないだろう。
しかし、スライムよりも命がけの戦闘をして千円にもならなさそうってのはちょっと割に合わない。やはり装備をそろえてそつ無くこなせるようにしたほうがいいだろう。今日の帰りにでもまたホームセンターによるか。ここんとこ毎日行ってる気がするが。
俺はドロップ品を拾いつつ、さっき噛まれたところの傷を確認する。ツナギはグレイウルフの牙に貫通され穴が開いていたが、皮一枚あたりのところで傷は止まっているようだ。あまり痛みを感じなかったのはそのせいか。後で消毒しとこう。
一層へ戻りながら考える。
しかし妙だな。そんなに顎の力が弱いわけでもないだろうに傷が浅すぎる……あれか、ステータスみたいなものが本当に存在して、俺のステータスとグレイウルフの攻撃力とで相殺された結果のダメージみたいなそんな感じか。
アルテリオス計算式だった場合計算が簡単でいいんだろうけど、そもそもステータスがあったとして計測する方法がないんじゃ意味ないな。とりあえず、多少噛みつかれたぐらいじゃ問題ない強さを俺は持ってる。それで良しとしとこう。
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