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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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208/1222

208:天使の布団と快適な小西ダンジョン

前話コメント欄たちへ 勝手に終わらすな。でもここで音信が途切れるのもそれはそれで面白いと思いました。


 新しい朝が来た。希望を持って生まれた朝だ。喜びで胸が打ち震え青空を仰ぐような、とても素晴らしい朝だ。途中で起きることも無く、夢を見ることも無く、いつものアラームが俺をゆりかごからそっと起こすようなやさしい目覚めだった。


 オッサンの枯れつつある頭では表現しようのない、寝ていた事すら忘れるような、しかし疲れはどこにも無く自然に眠り自然に目覚めたような、そんな感覚だった。


 天使の布団だ。これが悪魔の布団なら、このまま起き上がることなく二度寝を慣行する事に何のためらいも無かっただろう。しかし、布団が「起きろ」と俺に命じてくる。もうこれ以上眠る必要は無い、目覚めるのですと語り掛けてくるようだった。


 肉体的な疲労は何処かへ行ってしまったようだ。この歳になると最大HPが徐々に減っていって回復する見込みがないという表現をされるが、その最大HPが回復したような感覚すら覚える。三十代前半のまだエネルギー満ち溢れた肉体に戻ったかのようだ。


 頭はしっかりと覚醒し、顔を洗っている時にみた鏡にも眠そうな自分は居ない。俺は寝て起きた。過程を省略して寝たという結果だけが出力されたような、そんな気分にすらさせられる。この布団はヤバイ。クる、いや、キマッた。もう俺はこの布団でないと永遠に眠りにつくことを拒否しそうだ。


 試しに体を動かしてみる。寝起きのストレッチなのにいつもよりしなやかに体の腱や筋肉が動く。知らない間に強張っていたのだろう、いつもよりも滑らかにかつ際どいところまで関節が動く。眠って回復するというというのはこういう事だったのか。俺はもうこれだけで十二万円以上の価値があるものだと解った。こいつは凄い逸品だ。


 朝食も心なしかいつもより美味しく感じる。今まで何かの原因でふさがっていた味蕾が花開いたかのように、いつものゴキゲンな食事を受け入れてくる。これは今なら何を食っても美味いと感じることが出来るのではないか。


 朝食を片付けるとさぁ何をしようか。ほぼ二日連続でダンジョンに潜ったので今日のところは休みにするところだが、体は絶好調だ。そのままダンジョンに日帰りで潜って文月さん用のテントとエアマットを回収しに行こう。早速ダンジョンへ行く装備を整え、昼食用のコンビニ飯を買いつつ小西ダンジョンへ行く事にする。


 明日を休みにして二日後は木曜日、Cランク試験の日だ。その為にも明日休日にして今日はダンジョンに潜る。昼食何にするかな。新しいタオルとか色々何時もの物と冷えたコーラと水を保管庫にまとめてぶち込み、いつもの確認をする。


 万能熊手二つ、ヨシ!

 マチェット、ヨシ!

 グラディウス、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 防刃ツナギ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 食料水、色々種類あって、ヨシ!

 食器その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。本当にヨシかどうか、特に保管庫の中身は注意深くチェックする。入れっぱなしの食料とか無いよな……よし、無いな。


 今日の予定は七層まで行って途中で茂君処理して七層で昼食にして戻る。戻った後は四層でいつも通り狩りをして帰る。このぐらいの予定で良いだろう。


 身体が軽い。長年ため込まれていた疲労がすべて吹き飛んだようだ。これも快眠効果か。早速近所のコンビニに立ち寄って昼食をチョイスする。今日はドリアにしようかな。エビとチキンのドリアというのが目に入った。これにしよう。コンビニで支払いをして温めてもらい、アツアツにしてもらう。


 コンビニを出ると誰も見てないことを確認しつつ保管庫に入れる。これで七層まで潜ってもそれなりの熱さを保持することが出来る。食器は家を出るときに確認してきたので素手で食べる事にはならないはずだ。


 そのままいつもの通勤ルートを使って小西ダンジョンの前に着いた。時刻は九時半。ちょうどいい感じに道が空いてるところだろう。いつもの入ダン手続きをする。


「今日はおひとりですか? 」


 受付嬢に話しかけられる。


「今日はお一人で、日帰りの予定ですよ」

「そうですか、ご安全に」


 入ダン手続きを済ませいつもの感覚を味わいながらダンジョンへ入る。平日だからか人は先日より少ないが、そこそこの人数が居ると思われる。若干駆け足で一層を抜ける。道中二、三匹のスライムが居たので運試しに潮干狩るが、ドロップは無し。まぁそんな日もあるだろう。


 二十分ほどで一層を抜けると、二層にたどりつく。二層にも人の気配がする。おそらく三層も人が侵入してる頃だろう。二層も三層へ向かう道は綺麗にモンスターが倒されているらしく、出会うモンスターは少ない。


 ここも駆け抜けてしまうか。道中出てきたグレイウルフは辻斬りしていく。ドロップは肉が二つと魔結晶が二つ。通り道のドロップは有り難くいただいていく。二層も二十分ほどで駆け抜ける。


 三層はゆったりと狩りを楽しめるエリアだ。ここからはいつものペースで歩いていこう。ゴブリンからはヒールポーションが落ちるからそれなりの収入になる。今日は収入に固執せず純粋に探索と虐殺を楽しむだけの予定だ。ダーククロウの羽根も全部卸してしまったし、また貯めていかないといけない。


 やることはそれなりに多いな。あまり深く考えずに探索を楽しもう。と、早速ゴブリン三匹のお出ましだ。瞬時に近づいて順番に首をはねていく。首狩り安村と呼ばれる日も近いかもしれない。実際、相手が棍棒を振りかぶっている時は首がお留守なので狙いやすいという理由もある。ゴブリンは魔結晶を一つ落とした。


 このペースでどんどん行こう。それなりに側道から出てくるゴブリンとグレイウルフのパーティーを一分かからず殲滅していく。【雷魔法】の実験もしつつ、飛距離は百メートルぐらいなら問題なく届かせることが出来るようになったし、威力も大まかにだが調整できるようになった。


 ゴブリンを黒焦げにしたり首をはねたりしながら四層への階段へ向かう。【雷魔法】で焼きすぎない事がコツだ。一回焼きすぎてドロップもろとも焼き切ったことがあったが、それ以後は調節が出来ていると思う。


 攻撃・防御手段が増えたことで非常に楽に戦闘が出来るようになったが、その分ドロップを拾いに行く手間が増えた。この辺の階層では近接で【雷魔法】を使うのがベターな選択肢のように思える。


 なんだかんだでドロップを増やしながら四層への階段へ着いた。ウルフ肉が三、ウルフ魔結晶が四、ゴブリン魔結晶が八、ヒールポーションが一つ手に入った。通り抜けるだけにしてはそれなりの稼ぎになった。四層はもっと稼げると良いのだが。


 四層に着いた。どうやら四層でもモンスター狩りをしている人が増え始めたようだ。探索者の成長は好ましい反面俺の取り分が減るという痛し痒しである所だが、人は人、俺は俺だ。自分のペースで狩りをしていく事にしよう。


 四層に入って三分ぐらいたったところでソードゴブリンとゴブリン四匹のパーティーと出会った。早速チェインライトニングを試す。一匹目に雷撃が当たったところで雷撃のイメージを変更。当たった雷撃をそのまま次のゴブリンへ伝達するイメージを掴む。今回は上手くいったようで、一発で五匹とも打ち抜くことに成功した。


 ソードゴブリンを確殺できるようになったという事はワイルドボアに対しても有効打になりえる事が解った。六層で面倒くさくなったらもういっちょやろう。使用制限というか、眩暈に関しては今のところ覚える様子は無い。使い慣れてきたことで使える上限が上がったのだろうか。


 スキルもまだまだ未知数なところが多い。また探索者関係の専門誌を買って学ぶことが必要になるだろう。今日の帰りにでもコンビニで探してみよう。


 その後も度々ゴブリンの集団に出会う事があるが、やはり近接して一発ずつ殴って黒い粒子に還らせるほうが今の自分にとっては楽らしい。【雷魔法】は適度に使ってその熟練度を高めていこう。別に隠すスキルでもないのだから大っぴらに使っていっても良いのは俺にとっては開放感が感じられる。


 割と長い間保管庫スキルを隠しながらこっそり使ってきたので、その鬱憤をここで晴らしているといった具合だ。四層をそのままのノリで出会うたびに二秒で黒焦げ、もしくは首刎ねで対応していく。


 おそらく【雷魔法】にはまだ俺の妄想では使いきれない部分があるに違いない。が、それは文月さんが居るときに試そう。四層とはいえ、うっかり気を抜くと手痛いしっぺ返しを受ける事は注意していかなければならない。三十分ほど四層を回ったところでゴブリン魔結晶十、ヒールポーション一、ソードゴブリン魔結晶を四つ手に入れた。


 残念ながらゴブリンソードは無かったが、まぁ帰りにでも狙ってみるか。今は七層まで降りていく事が先決だ。五層への階段へたどり着いたところで少し休憩を取る。冷えた水に粉ジュースをまぜて、久しぶりにわざとらしいストロベリー味を堪能する。今日は昼飯を用意してきたが七層までお預けだ。カロリーバー一本でスキルを使った分のカロリーを補充しておく。さぁ、メインディッシュへ向かうとしよう。



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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最近は ラジオ体操の歌よりもガンツのイメージの方が強い。
[一言] ラジオ体操の歌だ... すっきり目覚め大事
[良い点] 山盛りのキャベツ 山盛りのキャベツ 山盛りのキャベツ 山盛りのキャベツ 山盛りのキャベツ ご機嫌な朝食だ…
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