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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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205/1221

205:【雷魔法】の練習




 五層の階段をのぼると同じサバンナマップが広がる。暴走族は鳴りを潜め、三匹かそこらがうろうろしているだけだ。ここでふと気づく。


「【雷魔法】を覚えたからにはもうゴブリンソードとか要らないんじゃないか……? 」

「物理攻撃しか効きづらいモンスターとか出てきたらその時に使えばいいのでは? 」

「なるほど、そういう可能性もあるか。でも出番はさらに少なくなったことに間違いは無いな」

「うまく使い分けていきましょう。【雷魔法】は音が出ますし、射出は音を出さずに暗殺したいような場面が出てきた時に使えばいいじゃないですか」


 なるほど、暗殺か。暗殺……暗殺し放題なのか、今の俺は。


「危険人物度が跳ね上がった気がする」

「今更でしょう。私だってほら、こんな風に」


 丁度突撃してきたワイルドボアが文月さんのウォーターカッターで正面から真っ二つにされる。ドロップに革をくれたようだ。


「こんな感じで多少の距離があってもワイルドボアぐらいなら一撃です。もうちょっと硬い相手でも行けそうな感じがします」

「物騒なパーティーになってしまったな」

「今更ですねー。安村さんだって歩く武器庫みたいなもんじゃないですか」


 保管庫にため込んであるパチンコ玉も段々出番が無くなっていくのかな。せっかく買い込んだのにもったいないな。


「どうしよう、保管庫の中の弾たち。結構な数あるけど」

「別に邪魔じゃなければそのまま突っ込んでおいて良いと思いますよ。意外なところで出番があるかもしれませんし。それにまだ、射出するほうが【雷魔法】のイメージを練り上げるより手早くできるでしょう? イメージが上手く固まるまではそっちをメインにしておいて良いのでは」


 なるほど、そういうことなら出番が無くなるということは無さそうだな。もう暫く共にダンジョンを歩もうではないか。目の前まで走り込んできていたワイルドボアを一閃。ドロップは無かったが安心を得たのでそれでよしとする。


 三本目の木まで歩いて近づく。あぁ、こういう細かい時間を短縮して戦闘する時間を増やしたい。もっと色々試したい。【雷魔法】で何処までのものを練り上げることが出来るのか。してみたいいたずらが一杯出てくる。前向きに物事を考えられるのは良い事のはずだ。


「またいたずらをしようと考えている? しょうも無い事でしょうけど」

「市販の電気と同じクオリティを生み出せたら電気代が安くつくかもしれないとか、そういう方向から攻めようと考えている」


 三本目の木には五羽のダーククロウが止まっている。五匹ならすぐいける。保管庫からバードショットを弾いて五羽すぐに落とす。


「やっぱりまだこっちのほうが楽だな。慣れるまでは双方適度に使っていこう」

「【雷魔法】は人が居るとき、保管庫のほうは人が居ない時ですか」


 僅かなドロップを範囲で収納して次の木へ行く。道中には珍しくワイルドボアの姿は無かった。


「それでもいいけど徐々に【雷魔法】の比率を上げて行こうと思う。もともと保管庫から射出するのは保管庫のスキルとしてはバグ利用みたいなもんじゃないかと思うんだよね」

「本来は射出するようなもんではない、と? 」


 本来なら保管庫から取り出すときの速さよりも中に保管できるかどうかが大事のはずだ。取り出すときの速度を任意に決められなければ、その場にポンッと出るだけだったに違いない。ところが相対速度を参照するのか絶対速度を参照するのかを決める際に相対速度のほうが不都合が無い、という風に考えられ作られた。


 その相対速度を自分より速く設定することで無理やり打ち出している、というのが俺の推測だ。なので本来の使い方はやはり物を出し入れする、保管しておく、この二点についてだけ考えられて設計されているんだろう。


 そのため、相対速度を速く設定することで武器として利用する、というのはおそらく設計段階で考えられなかった想定外の現象だと考える。


「なんにせよずいぶん助けられてるな。現に今両手を空けて探索にだけ集中できるのも保管庫のおかげだ。普通なら両手と背中にめいっぱいの荷物を背負って帰っている最中のはずだからな」


 二本目の木に着くとやはりダーククロウが六羽ほど居た。今度は【雷魔法】で撃ち落とす。さっきのほっそい雷を数珠つなぎになる様なイメージで雷撃を撃つ。上手く伝播したようで、綺麗に処理することが出来た。


 段々コツをつかんできたぞ、と自分をほめながらドロップを拾いに行く。文月さんはこの十分ぐらい結構暇そうにしている。まぁ本当に歩くだけって時間は割と苦痛だよな。


「さて、問題は一本目の木だが……」

「まだ再生されてませんね」


 行きがけの駄賃に文月さんが切り落としたそのままになっている。上のほうがきれいに切り取られ、いつもに比べ短い。かろうじて見えているところを見ると、順路案内に問題は無い程度らしい。


 これで根元からぽっきりと逝っていた時は一体どうなってしまっていたのだろうか。とりあえず一本目の木との間に生息するワイルドボア四匹を処理しながら色々と思案する。


 今、一本目の木に止まっているダーククロウは居ない。周りに人も居ない。ワイルドボアを処理し終えドロップを拾ったところで決めた。


「よし、木を元通りにしていこう」

「元通りとは? 」

「こういうこと」


 と、出来るだけ木に近づくと保管庫からサバンナの木を取り出し、方向と位置を調節してそっと乗せておく。


「これで傍から見れば問題ないだろうと思う」

「ダーククロウが止まった重みで取れたりしませんか」

「その時はその時だし、正しくリポップして押しのけられた時はスライムが処理してくれるだろう。もしかしたら早速スライムが駆け寄って処理しに来ているかもしれない」


 とりあえず周りを見渡すがスライムは同化しているのか居ないのか、ぱっと見では見当たらない。きっとこちらが見てない間に発生してはゴミと判断されたオブジェクトを消化吸収しているのだろう。


 正しい位置に戻した木をダンジョンオブジェクトと認識するかどうかは解らないが、スライムが寄ってたかって溶かしている光景が誰かに見られるかもしれない。それはそれで中々見どころがあるかもしれないな。


「とりあえずさっさと四層に上がって、それから何するか考えようか」

「まだ午前六時ですからね。まっすぐ帰っても一時間スライム狩りすることになりますよ」

「それは魅力的な提案だな。ぜひそうしよう、すぐ行こう」

「私が飽きるので却下で。四層を大人しく回りましょう」


 仕方ない。スライムと遊ぶのは今度一人で来た時にしよう。スライムと戯れられない悲しさをワイルドボアにぶつけつつ大人しく四層への階段へ向かう。ワイルドボアはまたお肉を落としていった。中華屋に一回持っていくか。その分をいくつにするかな。


 階段を上りたどり着いた四層に人影は無い。そりゃそうだ。七層に一泊してわざわざ四層で狩りをするという手段は九層に潜れるならあまり考えない手段だ。田中君が小遣い稼ぎに潜るかもしれない、ぐらいの地位だ。


 その田中君も本業の肉集めに行くなら四層ではなく二層か三層に行くはずで、その場合四層は通り道ぐらいにしか考えないだろう。


 さて、一時間ほど【雷魔法】の使い方について色々考えながら的を探す。二分もしない間に的を発見。ソードゴブリンとゴブリン三匹の団体さんだ。ソードゴブリンの攻撃をあえて受け、その受けた盾を通して雷撃を送ってみる。上手く雷撃が到達したのか、威力が強すぎたのか、ボッという音と共にソードゴブリンが黒い粒子に還る。


「うん、防御にも使えるな。自分が帯電してればそのまま通るようだ」

「絶縁体とか装備してたら通じないんじゃないですか」

「攻防両面に使える事が解った。上手く使っていこう」

「とりあえず威力調整からですかね? いわゆるMPを上手く消費せずに最大限の効果を得られるように妄想を調整しないと」


 文月さんがゴブリンを殴りつつ先輩風を吹かせながら次の課題を教えに来る。実際妄想の領域では先輩であるから素直に従う事にする。


 次は近接攻撃を試してみよう。ゴブリンが来たら体に雷撃をまとわせて素手で殴るのだ。素手でもどのくらい通じるかどうか試してみたい。


 丁度曲がり角を曲がったところでゴブリン三匹が出てきたので、瞬時に右手に雷をまとわせて殴る。バツッという音と共に全身に雷撃が走ったらしく、間もなく黒い粒子に還る。


「素手でも行ける。武器でも行ける。防御にも使える。高いだけあって色々使えるな」

「これでお湯を沸かせたら完璧ですね。電池代わりになるかどうかやって見ますか? 」

「それは追々。とりあえずイメージ固めを完璧にできるように努力する」


 次から次へ現れるゴブリンたちをほどほどの数が出てほどほどに弱いのを良い事に、実験体として有り難く利用させてもらう。次はなにしよう。


 剣みたいなものをイメージしてみる。モデルはロボットアニメのあれだ。手元で雷撃をとどめておくイメージからそれを長くしていく。が、うまくいかない。五センチぐらいしか伸びない。これは妄想力不足だな、もっと妄想力を高めよう。


 とりあえず今はグラディウスに雷をまとわせておく。これをちょっとずつ伸ばしていくイメージをまず作ろう、そこからだな。グラディウス全体に雷を纏わせることはできている。それを全身に纏うと、体当たりでもダメージを与えることが出来るだろう。もうワイルドボアの突進も怖くないな。


 この状態の問題点を上げれば、この状態で文月さんにうっかり触ると、多分文月さんにダメージが入ってしまうので注意が必要な気がすることと、眩しい事だ。俺が常に発光している。


「今の俺……光ってるよね? 」

「サングラスが必要ですね」


 今の俺はゲキマブということになる。これはこれで困るので普段は抑えていて、被弾を覚悟する時にだけゲキマブな俺になることにしよう。俺は適度に点滅しながら四層を蹂躙していった。



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[一言] 俺のこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶ!
[良い点] 光ってる! [気になる点] 点滅! クセに成りそう! [一言] オレに任せろ! ビリビリ〜〜!
[一言] 超電●砲というヒロインがこんにちはしてきそうな雷魔法ですね(´・ω・`) 射出できるパチンコ玉に付加できるならまさにそれは・・・・これ以上は怒られるな(;´∀`)
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