203:小西ダンジョン七層のボア肉のアヒージョアブラスクナメ
過去にさかのぼって致命的な誤字してた……指摘ありがとうございます
七層に上がったところで自転車を確認したが、自転車は無かった。我々が九層で狩ってる間に入れ替わりに七層へ戻った人が居るらしい。
仕方が無いので二十分、シェルターまで歩く。シェルターにたどり着くと自転車はちょうど二台あった。どうやらここまで乗ってきたらしい。
とりあえずシェルターに紙皿が増えているかどうかをみて、特に増えていないことを確認すると自分のテントに戻る。何か胃に詰めたい気分だ。とりあえず、コーヒーを淹れよう。湯を沸かすとコーヒーを淹れる。一服して落ち着く。
「お腹空きましたね。何か作りますか? それともレトルトそのままチューチューしますか」
「ボア肉が一杯あるから軽く焼いて食べるか……肉だけでも良い? 」
「良いですよ。作ってもらうご飯に文句は付けません」
ボア肉を焼くことになった。そうだ、この間買ったシーズニングを使ってみよう。何にするかな。アヒージョを試してみるか。本来は煮込み料理に使うらしいが、とりあえず少量の水をスキレットに入れて軽く温めると、薄切りにしたボア肉を放り込んで少し蒸し焼きみたいにする。
その後でアヒージョシーズニングを混ぜ込む。後はしばらく一煮立ちするまで待つ。ガーリックの風味が胃を刺激する。やはりお腹は空いていたんだな。シーズニングが粉のまま残らないように適度に混ぜつつ、まんべんなくシーズニングが行きわたったところで紙皿に盛る。
さて、実食と行こうか。本来ならオリーブオイルとキノコや野菜と一緒に煮込むらしいが、オリーブオイルは持ってきていないし野菜は使ってしまった。油分が若干少ないアヒージョになったが何事もチャレンジは必要だ。試しに一口齧ってみる。
かなりガーリックの味が濃い。これは油が少なめで成功したのかもしれない。肉に香辛料の旨味が凝縮されている。これはビールに合うだろうな。黙々と胃に詰め込む。年齢のせいか胃がもたれる可能性もあるが、油が少ないおかげであまり負担にはならないだろう。
文月さんはひたすら食している。多分口臭が気になるんだろう。これだけガーリックが効いていると中々のことになりそうだ。
「ガーリックがちょっと効きすぎですね。もっと野菜とか放り込んでまとめて炒めたほうが良いかもしれません」
「う~ん、中々に難しいところだ。次回はまた違う味を試してみよう」
美味いには違いが無いので満足感はある。二人してさっさと食べきってしまった。文月さんは口直しにコーラを飲み、口の中のニンニク臭を少しでも消そうとしているようだ。
俺としてはそこそこ満足できる飯として楽しめた。一人で食べるときでもこれは有効かもしれないな。今度はオリーブオイルも持ち込んでみよう。
食べ終わってゴミを片付けると、再び仮眠の準備を始める。五時間ぐらい寝たほうが良いだろうか。テントから文月さんの私物とテントと枕を出すと隣に設置する。喉が渇いたのか、自分で【水魔法】で水を出してはしきりに飲んでいる。トイレ近くなるぞ。
俺も水を取り出して軽く口を漱いで飲み込む。しばらく胃からガーリックの臭いが上がってくるだろうが、寝ている間に収まってくれると信じたい。
自分のテントにバーナーと脂分を軽く拭きとったスキレットをしまい込むと、椅子も片づけ仮眠中の札を取り付ける。
「五時間ぐらい仮眠で良い? 起きるのは午前四時ぐらいになるけど」
「良いと思いますよ。時間が余ったら【雷魔法】の練習に使える時間が増えるじゃないですか。ゴブリンあたりを【雷魔法】だけで倒せるようになれば後は流れでなんとかなると思います」
スキル先輩が【水魔法】経験者として語る。その通りに従ってみるか。とりあえず起きたら身支度して上に戻ろう。三層ぐらいから順番に使い方を学んでいく。それでいい。それでいこう。
エアマットはそのまま放置しておいたので後は寝るだけである。とりあえず今日の強運に感謝する。ありがとうたい焼き。確かにめでたい事になったよ。
何時もの枕を頭に敷いていざ就寝だ。良い夢が見られますように。
◇◆◇◆◇◆◇
おはようございます安村です。アラームが鳴って仮眠が終わる。仮眠にしては長い時間だったが、疲れもスッキリ取れた感じがする。ありがとうダーククロウ。
さすがに疲れていたのか、汗をそれなりにかいている。パンツ一丁になるとテントの中で体を拭き、ツナギを着直す。とりあえず今の身支度はこのぐらいで良いだろう。
外に出ると相変わらず明るい。時刻は午前四時。時計を見なければ時間感覚は狂い続けるだろう。体内時計も含めて自己管理は大事だ。
隣のテントをガサガサと揺さぶり、文月さんを起こす。中で動きがあったようなので起きただろう。コーヒーを淹れる準備を始める。二人分の湯が沸くまでに仮眠明けの柔軟運動を始める。
コーヒーが出来上がってしばらく経つと文月さんがテントから出てきた。目はバッチリ覚めているらしい。
「おはようございます。やっぱりこの枕で五時間仮眠取ると疲れが飛びますね。仮眠というより睡眠に近いですが」
「疲れを取ることが第一だし、この後まだ狩る時間があるので十分休めたなら何より」
文月さんがコーヒーを手に取り飲み始める。ちょうど飲み頃の温度だったらしい。タオルと枕を受け取ると枕の感じを確かめる。
「枕はしばらくそのままでいい感じ? 俺のお手製だから色々と手を加えてない所があるから使っているうちに寝心地が悪くなっていくと思うけど」
「う~ん、今のところはぐっすり眠れてるかな。あれですか、私用によりゴージャスな枕を用意してくれるとかですか? 」
「だったら、布団受け取りに行くときに付いてくる? 運が良ければ今日上がってすぐ、悪くとも二日後ぐらいには仕上がってると思うけど」
「そこまでのものではないですからいいです。そうですね……枕も一緒に注文したんでしたっけ。なら是非一回枕貸してください」
「解った。布団も持ってくることは出来るけどさすがに怪しまれるから、枕ぐらいなら」
枕を貸すことになった。元々枕だけは持ち運びする予定で作ってもらったものだし、貸してみるのも良いだろう。それでダーククロウをスマートに倒す気になればそれはそれでモチベーションのアップにつながるので良い事だと思う。
「テントどうする? 持って帰る? それとも置いとく? 」
「そうですね、清州へ行く予定も無いですし安村さんのテントに放り込んでおいていいですか」
「解った、そうする」
コーヒーを飲み終わり、柔軟運動を終え、出立の準備をする。置いていくものは俺のテントへ放り込み、持ち帰るものは持ち帰る。念のために水だけは一箱分置いていこうかな。テントの中の四隅に二リットル分ずつぐらい置いとけば重し代わりにもなるだろう。
テントの中でドロップ品の整理をする。背中のバッグに少々の余裕を設けて、残りはエコバッグに詰め替えて再び保管庫の中に入れておく。
忘れ物は無いかな。エアマットは保管庫に放り込んだ、バーナーケトルマグカップ……よし、保管庫にあるな。椅子は……椅子もここに置いたままでいいか。外出中の札を貼って……よし、テントの中は水と椅子だけだ。
文月さんと顔を見合わせ頷きあうと、まずシェルターに顔を出し、紙皿の整理を始める。
「九層~十二層中央了解。行かないようにします」
「行くのダメって言われるとかえって気になりますよね 田中」
「結局自転車は誰が置いてくれたんでしょうね 小寺」
「布団洗濯しておきました」
そういえば帰りは布団洗濯していかないみたいだけど良いんだろうか。まぁ本人が納得してるなら良いか。出発しよう。
時刻は午前四時半。まっすぐ上がってもまだ一時間以上余裕があることになる。自転車は……一台も無いな。小寺さんたちが乗っていった可能性は高い。また大木さんは歩きなんだろうか。もう一台都合するのもいいかもしれないな。
歩きながらその間に【雷魔法】を色々と試してみよう。右手と左手のあいだでビリビリと雷撃を発生させてみる。俺自身にダメージは無いようだ。とりあえず手持ちの武器に帯電させても自分までダメージを負う事は無いらしいということは既に解っている。つまり自分が敵だと認識する相手には雷撃を与えることは出来るらしい。
試しに文月さんの了解を得て、両肩に触れて弱く弱ーく雷撃を流してみる。
「お、お、お、なんか肩がほぐれていくような感覚がします。これで電気治療で飯食っていけますね」
「なんか使用するスケールが一気にダウンしたな。……はっ、これ自分の腹筋に向けて撃てばもしかして」
「そんな腹筋鍛える機械みたいなことできるんですかね。そもそも、自分にダメージが無いなら自分で自分の腹筋を鍛えることは不可能では」
「……確かに、何も反応が無い」
試しに自分の腹に向かって両手で電気を流してみたが、ピクリとも腹筋は動かない。脂肪が厚くて電気が届いてない説もあるが、イメージする出力を上げてみても同じなので自分に効果は及ばないようだ。自殺防止にもなるしそれはそれでいいんだが、腹筋ムキムキはやって見たかった気がする。
だが、指先から雷撃を出せることは解った。これをどのくらいの距離でどのくらいの威力で出せるかどうかが【雷魔法】の使いどころだと言えるかもしれない。よし、頑張って妄想していこう。
そう心に誓いながら六層への階段を上った。
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