201:話数のキリの良さと内容は大体関係ない
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ダンジョンで潮干狩りを
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八層へ着いた。ワイルドボアが六匹と奥にある木。上空にダーククロウは居ない。さっさと通り抜けたいマップであることは確かだ。ここで時間を取っても美味しい事はない。
「さっさと通り抜けてしまいましょう。密度の濃い九層が我々を待っているのです」
文月さんも同意見らしい。かといって走り抜けるつもりもないので急ぎ過ぎず、ゆっくり過ぎず、いつもより少しだけ早い歩行速度で木に向かって歩いていく。ここから見る限り茂り具合はいまいちらしい。
こっちに反応したワイルドボアに正面からぶつかってさっさと魔結晶かお肉に変えてしまうと、あとはひたすら歩くだけだ。
「しかし、九層といい六層といい十層といい、モンスターの濃淡が極端だな、小西ダンジョンは」
「それだけ人の出入りがまだ少ないという事では? 清州の九層はどんな感じだったんですか」
そういえば清州ダンジョンでエンジョイしてましたよね、という感じの質問を投げかけられる。
「九層の通路で戦闘するぐらいの密度が、森の出入り口ぐらいの密度。なので清州ダンジョンの倍ぐらい濃い事になるかな」
「じゃあ我々は自然にハードモードを選択していたという事になりますか。難儀ですね」
「清州ダンジョンの十層と小西ダンジョン九層の内側が同じぐらいの密度なんじゃないかなと予想している。十一層潜るなら清州ダンジョンで潜ったほうが安全なのは間違いないと思う」
顎を掻きながらモンスター密度を思い出して結論付ける。実際他人が活動していれば最悪の場合ヘルプを呼ぶことだってできる。
「無理に小西ダンジョンでの十一層にこだわる必要はないと? 小西ダンジョンでは九層で狩りを楽しんで実力試しに十層に潜り、十一層以降に潜りたいときは清州ダンジョンへ行くという可能性も考えたほうが良さそうですね」
「だが、清州ダンジョンではドラえもんを呼べない」
実際悩みどころではある。保管庫を封じて清州ダンジョンで狩りをするのとスキルをフルに使ってきつい小西ダンジョンで狩りをするのとどっちがお得なのか。
「儲けるなら小西ダンジョン、オーク肉を自分で取って食べたいなら清州ダンジョン、という感じになるかな」
オーク肉を小西ダンジョンで取る、という限定ミッションは自分たちに課してなかったはずだ。小西ダンジョンにこだわる理由は俺の個人的な理屈であり、まだ定期が切れていないからというのと、九層で狩り放題を楽しめるという二点だけしかない。
「私からすればどちらでもいいんですけど。ただ清州ダンジョンだと保管庫が使えないという不便だけが気になりますね」
俺が文月さん的にはどうか、と聞く前に答えが返ってきた。結局のところそこに尽きる。二人で運べる荷物の重さなんて知れてくるのだ。特に清州ダンジョンは階層ごとの移動に時間がかかるのでその分エンカウントも回数が増えるが、密度が薄いので結局混んでない限り小西ダンジョンとそう変わらないとも言える。
エンカウントが増えればその分ドロップも増える。ドロップが増えればその分荷物が重くなる。帰り道で大変な目にあいそうなのは目に見えている。
「七層から戻る時は俺は荷物持ち以外の何物にもなれない、けど他にも人は居るからエンカウントを考える可能性は少ない。だから深い階層でこっそり保管庫を使う分には問題は起きにくいと考える事も出来る」
木に到着した。ダーククロウ六羽をさっさと羽根に変えてしまうと、収納して階段へ向かう。ワイルドボアはまた六匹ほど居た。勢子のようにワイルドボアの注意をこっちに寄せて一気に殲滅してしまう。ササっとドロップを拾い、階段へ向かう。
「こっそり使う分にはバッグ経由で使えるので、狩り中の荷物増加はあまり考えなくても良いと? 」
文月さんが折衷案を出してくる。大体そんな所かな。
「さすがに一々相手の行動を見て注意してくるような探索者は居ないと信じたい。お互い秘密の一個や百個はあるだろうし。俺がメインで荷物を持っているようなそぶりを見せていればポーターとして見られるのが関の山だろう。文月さんが【水魔法】を使っていればこっちは荷物持ちで引き連れているだけなんだな、と俺を見せかける事も出来る」
「そこまで自分を低く見せつける必要もないとは思うんですが」
「そのぐらい人を欺けるつもりでいれば怪しまれないと思うからさ。スキルが露見することに比べたらなんてことはない」
そう結論付ける。高く見積もってしっぺ返しに痛い目に合う事に比べたら慎重すぎるぐらいでちょうどいいんだ。
「どうせCランクになる時は清州に行かなきゃならないんだ。その時のための予行演習とでも思っておけばいいよ」
「そういえばCランク登録は清州まで行かないといけないんでしたね。小西ダンジョンで出来ない理由は何でしょう?」
「試験があるとか……ギルドがランクを付けるんだから、ギルドの専属探索者を試験官として連れて行って特定の行動をしてこいとか、そういうのがあるんだろうか」
Dランクまではギルドマスター権限で自由にできると小西のギルマスは言っていた。そしてCランクからは清州へ行かないとできないと言っていた。つまり、小西のギルマスからCランク昇進試験を受ける承認が必要という事になるな。基準はギルドで決まっているんだろうけど、清州で行う理由……
「官民共同ダンジョンじゃないとできない理由があるとか。思いつくのはそんな所かな。後は人が多いので単純に試験として安全な状況を作り出しやすい、みたいな」
「なるほど。同じ環境同じ状況を作りやすいなら、試験として十分通用しますね」
九層への階段に着いた。ここからが狩りの見せ所。濃密な狩りをするのだ。三時間ぐらい集中できると良いな。
「さぁ本番行ってみようか」
階段を降り森マップへ足を踏み入れる。体感する湿度が急に上がり蒸し暑いとまでは行かないがそれなりの湿気を感じる。戦場の空気だ。
「ここで、踏みつけられた後の草があるじゃない? この辺でエンカウントする密度が清州九層の森側の狩りの密度ぐらいになる」
「ということはそこそこ稼いできましたね? 予想では二十万ぐらい」
金額に聡いな。さすが金にうるさい女、その嗅覚は見習いたい。
「清州の広さだと半周で一時間かかるんだ。一周すれば二時間。で一周したからまぁそんなもん」
「で、今日の目標額は? どのぐらい頑張って見ますか」
「金額で一くくりにはできないが、三時間は頑張りたいね。と、早速お出ましだ」
親指、三、二。ジャイアントアント三匹、内二匹は俺がやる。いつものサインを出して了解を受けると、早速そちらへ向かって攻撃を始める。ジャイアントアントは三匹バラバラで近寄ってくる。後ろの一匹に酸を出されないように早めに一匹目に駆け寄る。
ジャイアントアントは味方が密接しているとフレンドリーファイアを避けるために酸を出してこない。これはとても役に立つ情報だった。ただし倒した瞬間、黒い粒子に変わりきる前に味方が居なくなった判断をするらしく、黒い粒子に還るのを確認している間に酸を出されていることがある。それには注意しなければならない。
目の前のジャイアントアントを切り落とすと同時にその場をバックステップで回避する。案の定酸が飛んできていた。酸だけは食らいたくない。一応酸を保管庫に収納して投げ返すという事も出来るんだが、倒す速さがワンテンポ遅れる事になるので多用はしないでおく。でも保管庫に収納して貯めておくという手も有るか。今後考えよう。
酸を吐き出す姿勢からこちらへ向かってくる姿勢に戻しつつあるジャイアントアントに肉薄し、そのまま縦に真っ二つに割る。大分攻撃力も上がってきた感じがある。この調子なら本当に十層にも突入できそうだ。
こちらが二匹斬り飛ばす間に文月さんは一匹の処理を終え、ドロップを拾っていた。ドロップを受け取るとお互い目線で行く方向を確認し、そちらへ歩き出しながら一応確認しておく。
「狩りの密度はもうちょい濃いほうがお好み? 」
「濃いのでもいいかも。ちょっと最近動ける範囲が上がったというか、レベルが一つ上がったような感じがする」
以前俺が感じたレベルアップみたいな感覚、スキル的な表現をすれば【身体強化】のレベルが一つ上がったようだ。
「俺もそれを感じたことがある。それから明らかに動ける速度や力の入れ具合に変化があった」
「じゃあジャイアントアントを一発で殴り殺せるかもしれないですね」
「次でやってみよう。上手くいくなら戦闘に余裕が出てくるはずだ。そうなったらもう一段階密度の濃いところへ行ってみよう」
前を向いて歩きだし、敵がこないかどうか気配察知の感度を上げながら進む。ちょうどいい感じに四匹来たみたいだ。
親指、四、二。合図をもらう。二人で二匹ずつ、試しに最速を目指して行動だ。三歩で敵に近づき、思い切りグラディウスを振るう。ジャイアントアントは頭から真っ二つになる。攻撃力は確実に上がっている。こいつに出会った当初は頭蓋に防がれて貫通することは無かったはずだ。
そのままドロップが出るのを見てドロップを収納、すぐさま次のジャイアントアントに向かう。体を槍に見立てて一直線に突っ込んでいく。ジャイアントアントの頭に体ごと刺さりに行く。グラディウスは根元までジャイアントアントの頭に刺さり、黒い粒子に還す。牙が出た、良いテンポだ。
文月さんを見ると、二匹とも倒してもうドロップを拾い終えていた。ドロップを受け取る。
「早いじゃん。確かに更に強くなったっぽい」
「でしょー。これで十層突破にもう一歩近づいたでしょ」
確かに。保管庫をフル使用しなくてもこの腕なら行けるかもしれないな。この動きなら清州の十層でも満足な行動がとれる可能性が高い。一歩前進したな。
「じゃあ何時ものRTA始めますか。二時間ぐらい行けそう? 」
「よーしやったろうじゃんか。二時間集中し続けてみるわ。密度はいつものところで」
「OK、水分取ったらいこうか。ほい冷えたコーラ」
とりあえず水分を補給すると軽く体を捩り、準備運動だ。さぁやるぞ。
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