20:初めての二層
ダンジョンで潮干狩りを
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side:文月
おかしい。この人絶対おかしい。最弱モンスターのスライム相手に真剣に倒してる人初めて見たわ。
それに、処理するスピードもおかしい。反復横跳びしながらスライムに向かって近づいては二十秒かからずに一匹ずつ倒していく。こんな装備でこの速さ、私でなければ見逃しちゃうね。
おじさんの真似をしてみる。スライムを押さえつけて核を探すが、その間にもぞもぞと動き回られてしまって核の位置が変わってしまう。おまけに他のスライムもすり寄ってくるから鬱陶しいったらありゃしない。手際の良さに天地の差がある。ふと彼の動きを見ると、スライムをつかんだあと核の位置を見つけるのが早く、手早く核を摘出するとすぐさま踏み割っている。無駄がない。
踏みつぶしてスライムを倒すとドロップが出た。彼はそれをバックパックにさっと投げ入れるとすぐに次のスライムに取り掛かる。ただ淡々とその作業に没頭している様が心地よいのか、鼻歌まで歌い始めたよこの人。下手だけど。
時々「今お友達にあわせてあげますからね~」とか「こらこら喧嘩しちゃいけないぞ、順番にぶち殺して差し上げますからね~」とか物騒な独り言まで聞こえてくる。本当に大丈夫かこの人。
◇◆◇◆◇◆◇
グッ、プツッ、コロン、パン。
グッ、プツッ、コロン、パン。
ただただスライムを二人で処理するだけの時間が過ぎていった。どれほどの時が流れたのか、時計を見ていないからわからない。二人でスライムを潰し始めてから、時間に対する感覚は目に見えて後退していった。それはちょうど、リポップによって増殖するスライムが時間に対して抱く感情と同じようなものではなかったかという気がする。
「あ~もう無理。飽きた」
文月さんの忍耐力が限界を迎えたようだ。
「何匹倒したかわからなくなったけどドロップはまぁそこそこね」
「えっと、多分百三十匹ぐらいじゃないですか。私の三分の二ぐらいのペースで進めてたようなので」
「全部数えてるんですか!?これ」
「えぇ、始めて大体二時間半ぐらいたちましたが、私の倒したカウントが……これでちょうど二百匹になりました」
「このしゅg……作業、儲かってるんですか?」
修行?
「時給千三百円のバイトぐらいには」
「もっと夢をでっかく持ちましょうよ。一攫千金スキルオーブを狙うとか」
「スキルオーブ狙うならそれこそ数を狩るのがセオリーじゃないんですか?」
「スライムでスキルオーブ出るんですか?聞いたことないんですけど」
「出ないんですか?」
「出たって話は聞いたことありませんね」
つまり保管庫スキルをドロップしたのは例外中の例外ってことか。やばいな、俺の身の危険がまた一歩近づいてきたぞ。
◇◆◇◆◇◆◇
しばらくして「じゃあ私二層で憂さ晴らししてくるから~」と彼女は二層のほうへ向かっていった。
昨日みたいなことにならなければいいが。とりあえず俺はどうするかな。一応バールも持ってきたし、昨日グレイウルフと遭遇した事で相手の攻撃パターンみたいなものは多少知ることができた。
二層へ行ってみるのもいいかもしれないな。一層はまたいつでも来れる。
時間を確認すると丁度昼になっていたので、二層との境界へ向かい、スライムが出にくそうなところで一息ついてお昼にしようとおもう。
しまった、せっかく保管庫があるんだから何かコンビニで買い物して温めて、ホカホカのままここへ持ち込むこともできたんじゃないか?
いやでもこんなダンジョンの真ん中でアツアツのおでんを食っていたら不審者でしかない。思いつかなくてよかったと胸をなでおろしておこう。
食べなれた固形ブロックの食事を水で流し込んで少し休んだ後、二層へ突入することにした。
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