2:探索者を勧められる
ダンジョンで潮干狩りを
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「え、今からでも入れるダンジョンがあるんですか?」
「探索者って、あれは完全に若者向けの職業だと思っていたのですが」
「そう思われる方も多いんですが、今の二十代の人ってリスク回避傾向が強くてですね、仮に儲かるとしても危険な作業や疲れる作業はできるだけ避けようとする方がとても多いんですよ」
そういえばそんなニュースを聞いた覚えがある。おかげで一部の業界の賃金は高いのに人が集まらないとか。
「ですので、探索者で稼いでおられる方はそう多くなくてですね。安村さん、ライン工だったという事は肉体労働をされていたのでしょう?ならこちらも肉体労働という事で一応候補に入れてみても良いのではないでしょうか」
探索者か……この年でも大丈夫なんだろうか。
彼女はちょっと不安げにしながらも、探索者に関する書類を提示してくれた。「探索者応援制度」というらしい。
「質問なんですが、四十過ぎてからダンジョンに潜る人って居られるのでしょうか?」
「そうですね……ダンジョンができた当初は探索者になろうと意気込んでた方も多いんですが、若い人に比べれば体力的にも精力的にも劣りますので長続きする方は少ないですね」
やっぱそうだよね。体力仕事だもんね。
「今では講習会だけ受けにきて実際に潜られる方は少数ですね。基本出来高制ですので、やはり収入面でも厳しい方が多いかと思いますが……何もしない期間がずっと続くよりも、繋ぎ程度にチャレンジしてみるのもお財布的にありだと思います」
要するにバイト感覚で短期で働いてみないか?という事らしい。
「それにですね、ダンジョンができてからいろんな情報が集積されつつあります。攻略情報がある今のほうが、ダンジョンが出現して以来最前線を走り続けた人たちよりもより効率的に働くことができると思いませんか?」
「なんか推しが強くありませんか!? そんなに探索者の需要があるんですか? 」
「ここに限って言えばとてもあります! ぶっちゃけここ都市部から離れた田舎なので、若い人も探索者も足りてないんです! それに人型のモンスター退治に抵抗があるという方も居ますので、いまならモンスター狩り放題ですよ!」
探索者応援制度についでの書類に目を通す。要するにダンジョンに入ってそこで何らかの物資を調達してきてその物資を売却することで所得を得ろ、みたいな話だ。
「なんかゲームみたいですね」
「ゲーム感覚だからこそ、痛い目見て帰ってきてもうダンジョンには潜らないといった人は少なくないわけでして」
「なるほど……ところで」
俺は大事なことを切り出すことにした。
「ダンジョン探索者になったら……失業保険って途中で打ち切られます?」
「あ、その点は大丈夫です。探索者応援制度の中の仕組みとして、探索者として活動されている間は職業に就いてないとみなされるんです。ですので、探索者活動を続けたまま失業保険を受けられることは法的に問題ないという事になってます」
探索者という職業に就くのに無職? という疑問はあるが、求職中でも問題なく活動できるようにさせるためなんだろうか。
「そんな制度が作られてたんですね。でしたら探索者というのをやってみようかと思います」
失業保険という固定収入がある間は何でも挑戦できるというのは有り難いことだ。
「探索者になられる場合、各ダンジョンに併設されている探索者ギルドのほうへ向かってもらうことになりますがそれでよろしいですか?」
「ギルドがあるんですか?」
「詳しいことは探索者ギルドのほうで講習を受けて頂くことになりますが、探索者は最初ルールというかローカルルールみたいなもので構成されていたんです。ですが探索者の増加によって統括する組織が必要という事に最終的になりまして、探索者ギルドというのがダンジョン庁管轄で講習会や探索に必要な知識や装備の斡旋、戦利品の買い取り等探索に関するルールとか取り決めを仕切っているんです」
ダンジョン庁、探索者ギルド、色々覚えることがあるな。メモっておいて帰った後にまとめて検索するか。
「その戦利品が主な収入源、と考えてよろしいのですか?」
「そうですね。基本ダンジョンでの戦利品は探索者ギルドが買い取るか、専門の研究組織に自分で納品することになっておりますので、お好きなほうを選んでいただくことになりますね」
専門の研究組織……そんな伝手は無い。ギルドに買い取ってもらうことになるだろうな。
「大体わかりました。では探索者ギルドという所に向かってみようと思います。何か必要な書類とか準備はあったりしますか?」
「その辺はダンジョン庁が開設している探索者向けの講習会がありますので、そちらを受講される必要があります。受講したことを条件に探索者のライセンスが発行される流れになります」
ライセンスが必要……と。取得にどのくらいかかるんだろう。
「ギルドって一番近いのはどこですか」
「小西ダンジョンというところが最寄ダンジョンになります。地図は……こちらですね。その他の内容に関しては現地へ直接行っていただくか、電話等でそちらへ相談されると良いと思います」
「わかりました。長々とお時間をいただきましてありがとうございました」
「いえ、これも仕事ですので。いい結果をお祈りしています」
そういう彼女は少しだけ嬉しそうだった。
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