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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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198/1248

198:茂君再再び

発表されましたしもう目にしてる方もいらっしゃるでしょうが、電子書籍化、コミカライズ化が決定しました。皆さんの応援といいねと誤字修正のおかげです。ありがとうございます。

 

 六層に入るといつもの暴走族。散々見慣れた光景だ。


「さぁいつも通り検問から始めましょうかね。ご協力お願いしまーす」

「お願いしまーす」


 こっちが検問を開始すると検問を突破しようと暴走族たちはこっちへ突撃してくる。スピードを緩めることは無いらしい。逃げずに検問を突破しようとするのは暴走族としてとても誇らしいのだろう。


「せっかく一列に並んでくれるのだからこちらも丁寧に検挙しよう」

「了解! 逮捕だ逮捕ー」


 一匹ずつ順番に検挙されて行くワイルドボア。次々と装飾である魔結晶と合法肉物を置いていく。お、革張りのシートがある。これも没収だ没収。検挙されたワイルドボアは十一台。押収した魔結晶三つ、肉四つ、革一つ。まずまずの収穫だ。ノルマには及ばないがこうやって点数を稼いで行こう。


 一本目の木には七羽ほどのダーククロウ。射程距離に入ったところで今度は俺の番だ。バードショット弾ですべて叩き落す。うん、これで布団一枚分ぐらいはたまったな。さて、お次はもう一回検問を挟んでお待ちかねの茂君だ。


 茂君に向かう前に二回目の検問を実施。さっそく検問を突破しようと合計十三台のワイルドボアが突撃してくる。検挙だ検挙。次々と検挙されて行く暴走族たち。魔結晶三つと肉四つに革が一枚押収された。数のわりに中々の戦果にはなった。


「収穫は上々ですねー」

「今日は暴走族多めだなー。これならレトルトにボア肉のっけてもおつりが来るな」

「後は茂君が……茂ってますね」

「茂ってるな」


 今日も茂君は元気に茂っていた。元気で何よりだ。ふと、バードショットの残弾を確認するがまだ千発以上残っている。今月分ぐらいはもちそうだな。


「さて茂君討伐行きますか……よし、視界内に人影なしと」

「今のうちにササっとやっておしまいなさい」

「アイ、アイ、マム」


 茂君の数は四十三匹。多くはないが少なくもない。この木では平均レベルの茂り具合だ。相手の胴体に狙いを決めて……シュート! 超エキサイティング!!


 茂君は一匹残らず討伐された。早速木の根元に行って収納し、戦果を確認する。羽根八百グラム、魔結晶十三個。この瞬間だけでギルド換算で一万四千円分を稼いだことになる。やはり茂君は美味しい。


「今日はテンション高めですね。何かいいことでもありましたか」

「地上に戻ってスマホを確認したら留守電が入ってて、布団取りに来てくださいと伝言が残ってる事を想像したらテンション上がってきた」

「現金ですね。布団はともかく枕は持ち歩くおつもりで? 」

「枕は持ち歩こうかな。さすがに布団は家に置いとくけど」


 枕の使い心地を毎回楽しむには保管庫に入れて持ち歩くに限る。今使ってる奴は……七層にでも置いとくか。誰か使うだろう。後は布団を直置きしないためのビニールシートでも敷いておけば汚らしさは抑えられるだろう。


 そのまま三本目の茂らない木を目指す。今日も茂ってないな。三本目の木はどうしてこうも茂らないのか。ミノキシジルが足りないのか。


 三度目の検問が始まる。これまでで一番多い十四台の検挙になるだろう。おっと、二台はこちらに気づいていないようだ。一旦先に来た十二台を検挙し、その後で個別訪問することにしよう。結果魔結晶四つと肉四つを押収した。今回は革張りのシートは装着していなかったらしい。


 茂らない木に用はない。横を素通りして階段へ向かう。ふと後ろを振り向くと、茂君は既に茂りを取り戻しつつあった。これ、五層と六層の階段を往復するだけで茂君退治が捗るのではないか。全部撃ち落とす「まともな」手段さえあればここでひたすら羽根を集め続けることが出来るだろう。


 もしくは、まだ見たことがないだけで六層にはもっとすごい茂君が存在するのかもしれない。そう考えるとワクワクするな。まだ見ぬ世界が割と手元にある。そのうち気が向いたら六層の地図もちょっとずつ描き加えてみるか。


 最後の検問は四匹しかいなかった。数が少ないとテンションが下がるな。暴走族の検問はそれなりに危険と言えば危険だ。気を抜くとポーンと吹っ飛ばされる可能性がある。だが二人がかりなので同時に三匹以上来ない限り安全ではある。


 四匹を倒し終わると本日の検問作業終わり。お疲れっした! 六層でそこそこの収入を得た。九層で計算するところの十分ぐらい戦った量になる。やはり九層は効率が違うな。狩りをするなら九層だ。


 六層を駆け抜け七層に入る。自転車は……お、ちょうど二台あるな。


「ラッキーですね、二台ありますよ。乗ってちゃっちゃと行きましょう」


 文月さんは真っ先に自転車にまたがるとシェルターのほうへ走っていった。俺も行くか。自転車にまたがってゆっくり追いかけていく。そのまま五、六分ほどでシェルターまでたどり着く。シェルターにはちょうど三台すべての自転車がそろっていた。タイミングが良いな、今のうちに距離計を付けてしまおう。


 速度と距離が出れば十分なんだが、他にもいろいろ機能が付いている。GPSはダンジョンでは使い物にならないのでGPSを使用して距離を計算する距離計は使わず、スポークに磁石付けてタイヤの外周を量ってそこから距離を計算してくれるものにした。


 三台すべてに距離計を付けて試運転をする。ちゃんとスピードと距離は計算されているようだ。これなら七層でも問題なく使えるだろう。これで七層の地図を完成させることが出来る。


 文月さんはその間に俺のテントから自分のテントを引っ張り出して仮眠する準備を先に終えていた。準備万端という姿勢で俺が帰ってくるのを待っていたようだ。


 早速バーナーとスキレットを取り出すと二人分のレトルト食品、今日は鶏の炭火焼きだったな。保管庫に入れる前にアツアツにしておいたおかげでまだそこまで冷めてはいないんだが、それを温める準備をする。まず先にパックライスから温めよう。温めるのは米のほうが時間がかかるはずだからな。


 スキレットに少し油を引いてパックライスを二パック分ぶち込んで軽くかき混ぜながら温める。時々つまみ食いしつつ温まり具合を確認する。……これ、事前に温めて保管庫に放り込んでおけばよかったんじゃ。


 何なら水筒に熱湯を入れてここまで持ってくるのも有りだったな。いやどっちにしろ温めることになるんだから持ってきたところで同じか。とりあえず米を温めたところで小鍋一杯分の水を沸かすことにする。


「本当にレトルトだ。珍しい。いつものボア肉はどうしたんですか」

「ボア肉追加で欲しいなら焼くぞ? とりあえずほれ、鶏の炭火焼き丼」


 まず温めた一人分を紙皿にのっけてやる。文月さんはいただきますをした後もっきゅもっきゅ食べ始めた。俺も自分の分をササっと作るといただきますをする。足りなかったら追加で何か作ろう。


 炭火焼き……うん、炭の香りがする。確かに炭火焼き風だ。鶏の炭火焼きだと言われたら確かにそうだという感じがする。味も悪くない。ちょっと濃いめでたれも美味しい。ただ、野菜不足感が否めないな。


 野菜炒めを追加で作るか。どうせならボア肉も付けよう。結局いつもの肉野菜炒めだな。まぁとりあえず作っておこう。飯の途中だが追加で作りたくなってしまったのだから仕方ない。


「そういえばごそごそなにやってたの? 自転車になにかいたずらしてたように見えたけど」

「前に言ってた距離計を付けた。これで七層の広さとマップが作れる」

「いつやるんですそれ? 今からとかはさすがに言い出しませんよね」

「う~ん、少なくとも今すぐじゃないな。それに自転車占有しちゃうことになるから人が居るときはやりづらい。平日の何事も起きなさそうな日が有ったらその時かな」


 今日は休日であり、文月さんにとっては大事な休みのはずだ。それをオッサンの気まぐれと自己都合で潰すのはちょっともったいないというか何というか。来たからには成果を持って帰りたいだろうし。


「手伝いは必要ですか、何なら南北と東西? であってるのかな、手分けすれば短い時間で済みそうですが」

「居たら頼むわ。とりあえず今日は狩りをしよう。せっかく休日使ってきてるんだし成果がないと面白くなかろう? 」

「それもそうですね。じゃあ今日はやらないという事で」

「そうしよう。ほい追加注文」


 出来立ての肉野菜炒めを空いた紙皿に盛る。結局いつもの物を作ってしまったな。


「食べたら食休みして九層行こうか。それとも長めに休憩してから行く? 」

「う~ん、三時間ぐらいですかね。そのぐらい休憩すれば十分かと」

「じゃあそれで。起きたら午後四時半ぐらいになるかな」

「そうしましょう。とりあえず食べるもの食べて片づける物片づけて、それから寝ましょう」


 急ぐことはないのでゆっくり食事を楽しみ、その後片付けをする。紙皿はラップを外して再利用、マジックで「仮眠中 安村」のいつもの札を作ってテントに貼っておく。


 バーナー・机・椅子をそのままテントに放り込む。やっぱりスペースが広いのは手間が省けて色々と楽だな。小鍋に沸かしたお湯は今のうちにタオルに染み込ませておき、保管庫へ。寝て起きた後に顔を拭く時にちょうどいい温度になっているだろう。一応二人分用意しておく。


文月さんは後片付けを済ませると布団を探しに行き、無いのを確認すると早々に眠りに入ったらしい。布団が残ってたら洗濯して使うつもりだったのだろう。


 アラームを三時間後に設定して枕を出すとひと眠りする。もうすぐこの枕ともお別れか。そう思うと寂しい気持ちになる。きっと新しい枕が来たらそんなことはすぐ忘れてしまうだろう。新しい彼氏が出来たらすぐさま乗り換えるというのはこういう状況を指すに違いない。枕だけに。



作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] すっかりダンジョンデート(物理)にもなれましたね 文月は保管個抜きにしても主人公にかなり甘えてんね 材料は持ってきてもらったとしても食事順番に作るとか、食料他共用費はちゃんと出すとか色々PT…
[良い点] おめでとうございます! 淡々としたところが好きな作品だけど、書籍となったら1巻の間にやおいが来るように加筆があるのかな? 正直無くても買うけど、新規にも向けた書籍となると必要なのかね でも…
[一言] おめでとうございます 問題はちゃんとおっさんをそれなりのおっさんとして描いてくれるかどうか、かな おっさん物語なのに大学生みたく若く描く作品多いし(編集側の意向だろうけど
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