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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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192:清州より帰りたる


 

 まだ眠い、しかしアラームは鳴った。おはようございます、安村です。そろそろこのダーククロウの枕も詰め替え時か。それとも二時間仮眠ではやはり睡眠は十分ではなかったか、体にだるさがまだ残っている。


 現在午後五時。あと六時間以内に清州ダンジョンから脱出しなければ今日中にお家に帰ることは出来ない。余裕があると言えばあるがこの賑わい様だ。査定カウンターで予想外の時間を取られる可能性を見越して早めに出立する必要がある。


 とりあえずテントの中を片付けて、こっそり保管庫に放り込んでいたドロップ品を出して、逆にテント以外の物を保管庫に仕舞っておく。これで少しは荷物が軽くなった……いや、ドロップの分だけ重くなったな。バニラバーを齧り良く味わう。その後水分を補給し、残った水分でタオルを濡らして顔と体を軽く拭く。使ったタオルは保管庫に。


 テントの外へ出て、軽く柔軟体操をする。仮眠とはいえ二時間体を動かさなかった分若干硬くなっている。十分に解しておこう。やりすぎて困ることはないからな。


 隣の新浜パーティーのテントを見ると「会議で外出中」と貼り紙がしてある。そういえばなんか横のつながりで会議が有ると言っていたっけ。それに顔を出してるんだな。


「帰ります。ありがとうございました 安村」と、メモを残していく。十分に体をほぐし、体操を終えるとテントを片付ける。


 さぁ、帰るか。六層へ向けて歩き出す。人通りは来た時よりも増えている。それとも午後休取って早めに来たのだろうか、それともアフターファイブは清州ダンジョンで、みたいな人が多いのだろうか。


 真相はさておき、今からくる人には悪いが俺は今から帰るぜ。どうやら同じことを考えている人たちは居るらしく、帰る方向に向かう人が。この人についていくか。


 六層側の階段へ向かおうとすると、良い匂いがする。この匂いはきっと、立ち寄ったウルフ串の屋台だろう。やたらいい匂いが漂い、ついつい購入しそうになってしまう。いかんいかん、今から俺は帰るのだ。こんな所で立ち止まっていては終電に間に合わなくなってしまう。















 ワイルドボアの串焼きを片手に六層を五層に向けて歩く。美味しいなぁこれ。値段分の価値はあるわ。俺の前を歩く人が居るおかげで安心して歩きながら肉を食える。心配事は後ろからワイルドボアが来ることと、俺の飯をダーククロウに奪われないか? という懸念だけである。


 しかし、俺の前後を歩く人のおかげで中間に居る俺は戦う可能性がほぼゼロだ。安心して上空警戒だけしていられる。楽チンな六層だ。


 串焼きを食べ終えると真面目に前へ向かって歩く。前の人が取りこぼしたワイルドボアが居ればそれを狩って新しくへそくりを作ろう。そうしよう。


 しかし前を歩く人は確実にワイルドボアに止めを刺してはドロップを拾っていく。俺は指をくわえてみている事しかできない。歯がゆい。一匹ぐらい逃しても良いのよ。


 まだかまだかと待ってるうちにダーククロウが下降してくる。珍しいな。ダーククロウの通ってきそうなところを開けてグラディウスを置く。ダーククロウが自ら切られて行き黒い粒子に還る。魔結晶が出た。これは無いよりマシって奴だな。


 大人しくテクテク歩いて四十分。途中二回ほどダーククロウに襲われたが何事も起きることはなく、何も落ちることはなく。五層への階段に着いた。ここから四層までは非常に短い。見えてる階段に向かって走る。背中の荷物が少し重いが、ステータスブーストを使えば重さの感覚は無いに等しい。


 前に居た人を追い越す勢いで速足で五層を抜ける。滞空しているダーククロウはこちらに意識を向けるそぶりはない。これならすぐに走り終わるな。


 予想通り何事も無く十分ほどで五層を走り終わり、今回は何もしなかったなぁという感想だけを残して五層を去る。本当に何もなかった。


 四層に戻ると、人の気配がだんだん増えてくる。清州の四層だとやはり徘徊してる探索者も多く、ここで一時間粘ったところで大した収穫も無いだろう、その分家に帰って寝たほうがまだ建設的だと考える。やはり週末のダンジョンは稼ぎには向かない。大人しく三層へ向かって歩き始める。


 深く潜るためには移動中の戦闘が発生しないよう人が多いほうが有利だが、稼ぐためには人が少ないほうが有利だ。そこの中間で人が居ても美味しく稼げるエリアが今ちょうど九層~十二層あたりにあるんじゃないかと思う。


 つまり早くCランクになれば美味しい狩場でハリホー出来るという算段だ。はやくCランク更新の連絡来ないかなぁ。まだCランクレベルには達していないという事か。もっと研鑽を積まなければいけないな。少なくとも小西の十層に突入してある程度の時間戦い続けるだけの戦力を蓄えなければいけないのか。


 新浜さんたちはパーティーメンバーの多さも有ってのCランクなのだろうか。やはり二人では厳しいのかな。かといってメンバー募集するのもなぁ。当てがないからなぁ。とりあえず通い続けるしかないか。


 仕方ない、今日のところは大人しく帰って今後小西で稼ごう。稼げば稼ぐほどCランクに近づくはずだ。よし頑張るぞ。お、こんなところにソードゴブリンが居る。処そう。何も落とさなかったが、気分紛れにはなったはずだ。


 四層ではその一戦しかモンスターと出会わなかった。やはり清州は平均戦力が高いのか時々探索者とすれ違う。こちらがダンジョンから帰る気であるという雰囲気を出しているのか、お互い頭を下げて通り過ぎる。


 三層に入ると段々すれ違う探索者が増えてきた。これから下へ潜るのか、それともここで少ない資源の奪い合いを始めるのかは解らない。ぜひとも頑張って週末の稼ぎを持って帰ってほしいものだ。


 三層を二層へ向けて練り歩くが、スライム一匹とも出会わない。それはそれで寂しいが、帰り道が楽なのは良い事だ。サクサクと進める。段々歩みを早くしていく。六層で俺より先を歩いていた人は四層でもう追い越してしまっている。ただ反対側から来る探索者の多さによって、視界が完全に確保されているらしい。モンスターがリポップする様子はないようだ。


 二層へ着いた。探索者は三層と同じぐらいの密度だと思われる。初心者の壁が三層だと言われているので、ランクの低い探索者はここらで稼いでDランクへ昇格する道を一つ一つこなしていっているんだろう。その点俺は小西をホームグラウンドにしていたのは運が良かったのかもしれない。


 あの頃は本当に人が居なかった。一層ですらスライムが好き放題ポップしていたぐらいだ。二層でも同じように湧き放題だった。その間に地道に稼ぎを査定にかけられたことは幸運だったと言っても良いと思う。


 そう考えると俺は運がいいほうなのか? そもそもスキルを手に入れた時点で超幸運だったことは言うまでもないが、それでもひたすら戦い続けられていたのは小西の探索者の少なさに起因するものだろう。


 今の小西はスライムドロップ確定作業のおかげで一層二層の探索者はずいぶん増えた。その頃には俺はスライム狩りを卒業し、グレイウルフも卒業し、ゴブリンを好きなだけ狩れる作業に移行出来ていたのも幸運だったと言える。


 思い返せば幸運だらけだな。スライム狩りを始めてタイミングよくスライムが大発生し、タイミングよくステータスブーストを見つけて、タイミングよくゴブリンを狩り始め、その後ちょっと苦戦もしてくじけそうにもなったが、無事に四層でも一人で気楽に狩りを楽しむことが出来るようになっている。


 上手く世の中の隙間を潜り抜けて探索者を続けられている。そして今まで被弾したことも一回しかない。これが幸運なのか実力が伴ってくれたのは俺の努力か、それともタイミングが良かったのか。


 いずれにせよ、とんとん拍子でここまで来れた訳だ。この辺で進捗が滞ってしまっているとしてもそれまでの幸運に感謝をしなければならないな。


 考え事をしてる間に一層にたどり着いた。時刻は午後九時。ダンジョンを出るのは午後十時ごろになるだろうか。少し早足になってスライムが本来生息していたであろう道を真っ直ぐに出入り口に向かう。


 一層を抜けていく道中にはなにも無かった。スライムは完全に駆除されていて、スライムを見つけたと思った瞬間には他の探索者がバニラバーの儀式をして確実にドロップを拾う作業に入っている。


 三勢食品の生産体制はまだ続いているんだろうか。そういえば三勢食品でなければドロップが確定しないという事は、製造工程かそれとも材料の配分具合なのか。そこまで突き詰めていくには、三勢食品側でレシピを変えたり製造工程を変えたりで、ベストな状態で生産を続けることに心血を注いでいるんだろうな。


 もしレシピが原因でこの状態になっているのなら、レシピを販売することで三勢食品は儲ける事も可能になっているのではないか。何にせよこの状況は最悪ダンジョンが無くなるまで続くことになる。


 どこかのタイミングで抜本的な生産体制の変更が必要になるだろう。海外でも効果があるらしいし、海外資本にレシピを売却することでかなりの収入を手に入れることが出来るのかもしれない。もし株式上場するような機会が有ったら一枚かませてもらいたいものだ。


 出入り口が見えてきた。時刻は午後十時。大体予定通りの移動行程でここまで来ることが出来た。後は退ダン処理をして査定カウンターに持って行って、支払いを受けたらまっすぐ帰ろう。さすがにお腹が空いてきた。遅めの夕食を食べたら今日は帰って寝るつもりだ。


 いつもよりきつめの行軍予定で進んできたせいでやたらお腹が空いてきた。ギルドの建物に戻ったらちょっと腹に何か入れよう。それが夕食という訳ではないが、夕食はいつものコンビニで買って食べるかな。


 出入り口に着いた。退ダン手続きをしてダンジョンギルドの建物に向かう。帰る探索者はそれほど少なくない。査定にはちょっと時間がかかるだろうな。早めにダンジョンを出てきて正解だったかもしれない。


 ギルドの建物に入ると早速査定カウンターに並ぶ。俺の前で査定を待っている人は三人ぐらいだ。これなら早く順番が巡ってくるだろう。


 五分ほどして俺の番になった。バッグからザラザラとドロップ品を取り出す。更に五分ほど待って結果がレシートで出てきた。二十三万百三十円。ソロとしては中々の収入になったと思う。


 支払いカウンターで振り込みをお願いする。これもいつもの流れだ。


 さぁ、今日のダンジョン探索はこれで終了だ。何処のダンジョンにも置いてある冷水器の水を飲むと、一気に疲れが押し寄せてくる。カロリーバーを一つ口にして、早々とダンジョンを後にして駅に戻る。


 疲労感も押しよせてきた。座席には座らないようにしよう。名古屋駅で乗り換え自宅の最寄り駅へ急ぐ。急ぐと言っても電車は定時運行なので急ぎようはないのだが。電車に揺られる事数十分。ようやく最寄り駅に着いた。これでほぼ自宅に帰ったと同じだ。


 いつものコンビニで夕食と翌朝の朝食の付け合わせを適当に見繕うとさっさと家に帰る。もう深夜に近いがテントを洗って干し、洗濯物と風呂を沸かすと夕食タイムだ。今日はカルボナーラのパスタさんに決めた。体がパスタを求めていたんだ。それにここのコンビニチェーンは量が多めなのが売りだ。


 モリモリとパスタを口に掻きこみ、一気に食事を終わらせると片づけをし、ゴミを分別してゴミ箱に放り込む。使ったもののチェックをしつつ、風呂が沸くのを待つ。


 ふとスマホを見ると文月さんからレインが来ていた。

「混んでた? 」やはり週末は混むことを知っていたのか。帰ってから読むのを見越したのか、結構早めの時間に送ってきてくれたようだ。

「混んでたけどしっかり稼げた」今帰った体で返事をしておく。


 風呂が沸いたようだ。洗濯物を洗濯機に放り込んで全裸になると、体を丁寧に洗ってからゆっくり浸かる。今日は色々あったが、一番の収穫は「小西ダンジョンは難易度が高い」という情報を得られたことだろう。Cランクに昇格したとして、十一層以下に潜る時はやはり清州で潜ったほうが安全かもしれない。


 でも、小西で十層を突破するのは目標としてとても解りやすいものだ。あの物量を二人で追い返す。自分の力を確認できる意味でも有用かもしれない。


 後は、九層十層の中央部はモンスターが多いだけで何もないことを確認できたことは収穫か。おかげで無茶な戦闘をする必要が無くなった。いつも通り森の端っこでジャイアントアントとワイルドボアを相手するだけで十分な収入を確保することが出来る。後は時間との勝負だな。さてまとまったところで風呂を出よう。


 風呂を出てパジャマに着替える。今日は調べ物は無しだ。眠気がかなり襲ってきている。こういう時は欲望にすべてを任せてただ眠ろう。朝にはスッキリ目覚めることが出来るはずだ。



作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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