19:仲間が増えたよ!やったね安村君
ダンジョンで潮干狩りを
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いつもの風景だ。二層まで直行する道はスライムが少ない。昨日ネットで調べたんだが、人の視線があるとモンスターはポップしない傾向があるらしい。
二層へのメインストリートへ行かずに道から外れた場所を目指すのは、そこにスライムの密度が高い事もある。それに保管庫スキルを使うことができる俺は、使っていることをできるだけ見られないようにする必要がある。
二つの利点から俺はダンジョンでは滅多に人に会わない。仮に人がいたとしてもこちらは黙々と作業をしているだけであり、関係ないのだが。
二層への道から外れること十五分ほど歩いただろうか。少し広い場所に出た。俺の勘が示した通り、壁一面を埋め尽くすほどスライムが繁茂していた。これは記録更新ができるかもしれない。俺の心は再びスライムを狩るだけのマシーンと化した。
「さぁみんな、兄弟たちのところへ連れてってあげるからね」
おれはバックパックから保管庫を使い万能熊手を取り出すと、また黙々とスライムをつかんでは千切り、核を踏みつけ、ドロップがあったら拾う、という単純作業に繰り出した。
時々二、三匹に囲まれてしまう局面があったが、どうやらスライムを倒している間に俺も強くなっており、強くバスケットボールを投げられた感触ではなく、バレーボールをぶつけられたぐらいの感触にスケールダウンしていた。
「ステータスってちゃんと成長するんだなぁ」
スライムを千匹以上屠ってきた分、俺は強くなっているらしいな。強くなっているという実感は今までなかったが、こうなると入れ食いみたいなもんだ。
グッ、プツッ、コロン、パン。
グッ、プツッ、コロン、パン。
今日も同じ音が響く。少し面倒くさくなってきた俺は二時間置きにスライムを倒した数をカウントするようになっていた。保管庫スキルのおかげでドロップ品の数を数えなくても良くなってしまったのも、さらなる効率化に貢献していた。
ふと、人の足音が聞こえる。誰か来たのかな?
「あ、やっぱり居ましたね」
昨日共闘した女の子だった。名前は……そういえば聞いてなかった。
「昨日ぶりですね、えっと……」
「文月です。文月芽生」
「文月さんとおっしゃるのですね。私は安村洋一と言います」
「安村さん、今日も潮干g……スライム退治ですか」
「えぇ、パターンを確立したのでひたすら作業するだけなので楽ですよ?」
「そ、そうですか。スライムって切っただけでは死なないので私はどちらかというと苦手なんですが」
核を狙って槍で殴るというのはそれなりに熟練した技が必要なのだろう。やはり武器には向き不向きがあるな。
「万能熊手いいですよ、便利で。よかったら一緒にやりますか?予備持ってるんでお試しで参加してみます?」
「そうですね……昨日グレイウルフにちょっとやられたのでまだ体力が回復してないんですよ」
「大丈夫です、とても簡単ですから」
俺は彼女に万能熊手と予備の手袋を渡すと簡単なレクチャーを始めた。
「スライムは意図的に襲ってくることはないので、近寄るのは簡単です。だからそっと近づいて……こうガッと掴んでください」
「ガッとですか。まずスライムをつかむという動作がよくわからないんですが」
「スライムって外側はぷにぷにでつかむと弾力があるんで、手袋を装備してればまずこっちがケガする可能性がとても低いようなんです。で、スライムをつかんだら、核がある位置に素早く万能熊手で核を引っ張り出してください」
「核を引っ張り出す……」
「上手く引っ張り出せたらコロンと核だけ出てくるんで、これを足で踏みつぶします。これでスライムは倒せます」
試しにスライムを処理する流れを見せながら説明する。
「そんな簡単な攻略法が……」
「簡単ですけど、掴んでから核を取り出すのに時間をかけていると、スライムがこちらを溶かそうとしてくるので、そのための手袋なんですよ」
「なるほど、どう見ても潮干狩りしてるようにしか見えなかったんですが、合理的な理由があったんですね」
「えぇ、しかもここはスライムが密集してるんで、手早く倒せるなら見えてるスライムが全部簡単に倒せる相手ってことになるんです。頑張れば一時間で百匹ぐらいいけると思いますよ」
「百匹って……それ一分に二匹ぐらい倒してますよね」
「数狩れば狩るほど収入も増えるので、私の主戦場はここなんです。過疎で人がこない、スライムが一杯湧いてる。天国みたいなもんです」
「う~ん、じゃぁ試しにやってみることにします。もし囲まれたら助けてくださいね」
「解りました。お互い頑張ってみましょう! 」
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