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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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183:肝心なことは何にも解ってない



 家に着いた。ホームセンターに行くついでに隣のスーパーにも寄るのでついでの買い物のリストを作る。食パンと卵は必須だな。後は野菜だ。今日消費した分を補充しよう。次は何を作ろうか。たしかあのスーパーにはレシピも何種類か無料配布していたはずだ。それっぽいのを探してみよう。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 ホームセンターにまず寄ろう。こっちが本命だからうっかり買い忘れが無いようにしないとな。バーナーの燃料を多目に三つぐらい補充しておこう。保管庫の片隅に置いておけばいいから場所を取らない。いざという時に空っけつになるぐらいなら余分に持っておいたほうが良い、そう高い買い物でもないしな。


 後は距離計だ。取り付け方は大体どれも同じで、機能で差をつけるような感じだろう。三千円から九千円ぐらいまで幅がある。ここは距離が計れてリセット機能が付いていればそれ以上の機能は要らない。安いので十分だ。無事に予算以内に収まったな。これも経費にはならないだろうな。レシートを別にしてもらおう。


 次にスーパーで買い物をする。食料品と生活雑貨品を色々と買い込み、ついでに無料レシピを色々見てみるが、いまいちピンとこない。ここは料理本を一冊買ってみるとするか。夕食のレパートリーも増えてちょうど良いかもしれん。


 雑誌コーナーに並んでいる本をいくつかパラパラと眺め、良さそうなレシピが載っている本をいくつかチョイスする。この中から一冊か二冊選んでみよう。いやいっその事二冊選ぶか。ザクッとしか見てないが豚肉をメインにした料理本ではずれは来ないはずだ。


 出来れば下準備を家で済ませて、七層では焼くだけ、煮るだけで済むようなそういう料理がどれだけあるか。それを頭に入れながら二冊ほど買う事にした。豚肉レシピばかりになってしまうのは仕方がないが、毎回肉野菜炒めでは文月さんに飽きがくるかもしれない。


 今回はキノコを仕入れよう。マイタケかエリンギか椎茸か、その辺のキノコを適当に見繕ってはポンポンとカートに入れていく。これで香りにバリエーションが増えるだろう。


 焼肉のたれは失敗だったから、調味済みのシーズニングパウダーのようなものがあればいいんだが。多分調味料のコーナーなんかに置いてあるんじゃないかと探してみたら、一応十種類ぐらい想定内の物があった。ひとまず全種類二個ずつ買ってみよう。肉用・サラダの物でアウトドアっぽさを演出してくれればそれでいい。


 使わなかったら使わなかったで自宅で別の料理に使えばいいし、もったいないと思うほどそう高いものでもない。選択肢は用意しておくことに意味がある。時にはハーブの香る爽やかな料理を楽しみたい事も有れば、スパイスの効いた胃にガッツリと溜まるような料理をただ只管に掻きこみたい事も有るだろう。


 どっちが来ても対応できるようにしたほうが良いのは間違いない。これで食事のレパートリーがさらに増えたな。良い事だ。しかし、最近は便利になったもんだな。材料にシーズニングパウダー一つ入れるだけでそれなりに本格的っぽいものを作れるようになった。そう考えるのはおっさん化している証拠か。


 さて、今日の夕食には早速シーズニングパウダーの実力を見せてもらう事にしよう。ウルフ肉の香草焼きとしゃれこむんだ。後は米と野菜があれば十分だろう。せっかく炊飯器をきれいに掃除したんだから米でも炊こうかとも考えたが、長続きする可能性は低い。


 パックライスでも良いが……と、米コーナーを回ってみると二合分だけのお米というのが売られている。こういうのがあれば楽が出来るんだ。単価は高くつくし時間はかかるが炊き立ての米を味わうにはこれぐらいがちょうどいい。これを買っていこう。


 なんだかんだでそこそこの買い物をし、全部で二万円ほどの出費になったが今日の収入からざっくり税金を引いてもまだまだ使える。結構贅沢な悩みだな。


 車を転がし家へ帰る。まず最初に米を炊く準備だ。時間がかかるからこれは真っ先にやっておくべきだ。無洗米なので洗わずそのまま米を内窯に入れ、二合分の水を入れると炊飯器にセットして炊飯スイッチを押す。後は出来上がるのを待つだけだ。その間に今日買ったものを整理する。


 距離計・シーズニングパウダー・バーナーボンベ等は保管庫へ。食品もろもろは貯蔵庫冷蔵庫へ。夕飯は米が炊きあがってから作り出しても遅くはない。米が炊き上がる時間をじっくりと待とう。そのほうが胃袋へのプレッシャーも高まり、より美味しく食べることが出来るはずだ。


 さて、三十分ほど暇になったのでニュースでも見る。


 魔結晶からの電力取り出し実験が研究所レベルで成功したとのニュースを放映していた。まだ採算がとれるレベルの物ではないが、技術をより進歩させていく事で石油エネルギーより安く、しかもクリーンなエネルギーとして利用されることを期待している、とのこと。今後実験炉の建設をして商用向け電力発電の試験をしていくらしい。急ピッチで建設するようで、来年までには完成させる予定だそうだ。


 実用化に目途が付き始めたのだろう。机の上に置いてあるスライムの魔結晶を指先で転がす。


「おいお前、使い道出来て良かったな。これでようやく日の目を見られるぞ」


 魔結晶に声をかける。今まで使用用途がエネルギー研究以外に知らないが、いずれ他の用途として使われる事も有るかもしれない。そうなった時、魔結晶の買い取り相場がどれほどのものになるかは解らない。安くなるのか、高くなるのか。


 大口で有用な活用法、例えば電池の代わりに魔結晶を放り込んでおくだけで発電可能な持ち運び発電機なんかが開発されたりしたらより幅広いジャンルに対して有用な触媒として利用されるようになるだろう。


 魔結晶か……これ、実際のところ何で出来てるんだろうな。少し調べてみるか。とりあえず既存の化学成分では説明が出来ない構造をしていることは確かだ。そもそも構造物が既存の元素として存在しているかどうかが怪しい。既存の物なら魔結晶という言い方はされずに、何々化合物という感じの名称がつけられると考えられるからだ。そして調べた範囲で何の化合物か、という話はない。


 ということはエネルギーで取り出す場合も、現実の発電の理論に組み込まれる形で発電を行うのか、ダンジョンの俺様ルールに基づいた論理で発電によく似た別の何かを構築されるのか。今回は見た限りだと電力という現実にある形に落とし込んだらしい。


 後者は例えば「光あれ! 」とか念じて魔結晶を握ることで光るとかそんな感じだろう。そんなことが出来るならもう誰かとっくに出来ているだろうし、出来るとしても何らかのフックが必要なことには変わりないだろう。


 何にせよ、魔結晶が電力としてエネルギーを生み出すことが可能になったって事は、これはファンタジーと現実の融合だ。とてもワクワクする。ファンタジーに体半分突っ込んでしまっている俺が言うのもなんだが。


 三年経てばファンタジーも現実に馴染んでいくものなのか、それとも我々がファンタジー側に寄っていっているのか、それは判断がつけられない。少なくとも俺はファンタジーに寄って行っている側だろう。魔結晶を保管庫に出し入れして遊びながら考え事をさらに進める。


 ダンジョンが魔結晶を排出する意図は何だろう。魔結晶などという全モンスター共通かつあいまいなモノ? 結晶? それとも実態は他の何かかもしれないが、それを現実に対して供給する。供給することでどんなメリットが得られるのか。


 例えば魔結晶が……例えばだが、これが黒い粒子の高圧体だとすると、現実世界でそれが消費される事によりダンジョン内部と現実世界との黒い粒子の濃度差が縮まっていく。濃度が均一になった時点で何かのアクションが引き起こされるかもしれない。


 だとすればこれはこっちの事情に身を任せた非常にゆっくりとした現実侵略になる。いずれ黒い粒子の濃度が一定になった時、スライムが大増殖してミチミチに詰まってる事はなく、ダンジョンの外へ漏れ出してくることだろう。そうなったら大災害もいいところだ。


 他にも、魔結晶がファンタジー的な能力を使う媒体になってるという可能性だが、この可能性は低いな。現に俺は魔結晶を持っていなくても保管庫スキルを利用する事が出来ている。そして魔結晶がそのエネルギー保持に利用されているなら、俺の保管庫の中の魔結晶は知らない間に消費されているはずだが、そんな事は無いはずだ。はずだ。……はずだよな?


 このケースは金さえあれば否定する材料は用意できる。探索したことがない奴にスキルを覚えさせることが出来るかどうかを試すことで解決できるはずだ。しかし、探索者じゃない者はスキルオーブを使えないという話は……そういえば調べたことはないな。その線は調べる価値があるかもしれない。


 でも世の中には危険なことはしたくないけどスキルを使ってみたいからパパあれ欲しい~みたいな子供が居てもおかしくはない。いや、実際居るはずだ。


 そして金持ちの子供がスキルを悪用して大事件に発展する。その可能性は非常に高いはずだ。でも実際にそういう事件は聞いたことがないし、そのせいで探索者が白い目で見られたり、ダンジョン各地で抗議行動が行われるとかそういう話も聞かない。


 つまり、システムとして探索者にならないと原則としてスキルは覚えられないということで良いのだろうか。ということはキーアイテムは探索者証か。そういえばこれも謎が多い。おそらく最初に血を取られた時に何らかの行為でそれを探索者証にDNA的なものをコピーし、それが生命活動を感知している事になる。


 だからダンジョン内で死んだとき、ギルドに預けた探索者証は赤くなる。ということはダンジョン庁とダンジョンはなんらかの利害関係で一致して一緒になって動いていると見ていいのか。怪しいな。


 ……と、米が炊けたらしい。夕食の準備をしよう。香草焼きパウダーとウルフ肉を片手に夕食を手早く作ってしまう。ついでに風呂も今のうちに湯を溜めておこう。


 ウルフ肉を薄めに切ってパウダーをかけて焼くだけであら不思議、香草をふんだんに使った美味しい料理が目の前に。そして炊き立てのご飯。後は刻んで塩もみしたキャベツ。これだけあれば十分ご機嫌な夕食ではないか。


 サッパリとしたウルフ肉から香るニンニクとその他いろんなハーブの香り。口に含むとその味わいが鼻に広がる。これは良い買い物をしたな。シーズニングパウダーは探索者の味方だ。


 そして炊き立てご飯が進みに進む。二合炊きでちょうどよかった。一合だと足りなかったかもしれない。合間にキャベツを挟んで舌をリセットしつつ、すべての食材が無くなるまで卓上にある料理を存分に楽しんだ。



作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
小西のギルドマスターが、 火魔法スキルの買い取りに立ち会った際に スキルオーブの確認をしてましたよね? Y/N表示が出たからこそ確認出来たのでは?
[良い点] ご飯の話が多い所 米ばかりだけど、甘辛く炒めた肉に味噌系のインスタントラーメンとか鍋とか焼きそば焼きうどんも、アヒージョとパンもキャンプ飯で食べたい 保管庫使えばハンバーガーや牛丼でも良い…
[一言] いつも更新ありがとうございます。 面白いです。 料理が作りたくなる小説です。 今日は香草パウダー調べました。 スーパーに行って香草パウダー買いたくなりました。
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