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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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182:武器集め

サムイ、ダメ、ゼッタイ

 

 階段にたどり着き、四層に上った。階段を上ったところは完全にとは言わないが、安全な地帯になりやすい傾向がある。清州ダンジョンでも小西ダンジョンでも、階段を降りる直前で休憩する探索者は少なくない。これはダンジョンの癖みたいなものだろう。ここでちょっとだけ休憩する。


 ダンジョンのモンスターは自分の生きられる階層がある程度決まっている。五層以下にいるワイルドボアは四層に上がってくることは出来ないだろう。同時に、五層に存在しないゴブリンやソードゴブリンは五層へ降りる事も出来ない。これは二層三層の間でゴブリンで証明することが出来た。おそらく他のモンスターも同様だろう。


 四層と五層は完全に出てくるモンスターが違うので、それぞれを行き来するモンスターは存在しないはず。人を追いかけていった結果階層に詰まる事がない限りは階段付近に寄り付くことは無い。モンスターはどうも階段付近に寄り付くことが少ない傾向があるようだ。


 四層に居るゴブリンが三層に上がれるかどうかは未検証だが、検証するにはまた棍棒を奪ってダッシュするか。それは三層側に近い位置に来た時に考えるべきかな。カロリーバーは今日は青りんご風味にしよう。プレーンという気分ではないし、バニラはもったいない。俺は一度に二つ食べた。


 そしてカロリーバーだけだと喉が渇く。冷えたコーラを保管庫に入れてあるアイスバッグから直接取り出すと、一気に飲み干す。げぷっ。これで胃袋とカロリーは満たされた。時刻は午後二時半。上に上がるまでの時間が一時間半と仮定して、おちついて狩りに使えるのは二時間半ぐらいか。


 パチンコ玉の出力を上げてジャイアントアントを一発で倒しきるまで加速させるのもそうだが、質量兵器としても、単純な武器としても、ゴブリンソードは有用な素材だ。げぷっ。ギルドの買い取り価格が安くとも俺には使い道がある。二時間半で何本出るかは解らないが、出るなら出るだけ押さえておきたい。


 ソードゴブリンが出やすいポイントとか解ればいいんだが。地図にリポップしたポイントを書きこんでみて傾向があるかどうか調べてみるか。


 さて、げぷっ。ここから二時間半はひたすら教育的指導の時間だ。凶器を持ってダンジョンを練り歩いているクソガキどもを改心させて反省文を書かせるという探索者としてのまっとうな行為だ。


 早速昼の巡回に出かけよう。まずは本道ではなく側道からの探索だ。悪ガキどもは居ねえが~。側道に入ってすぐの曲がり道で四人発見! 即教育的指導! 一分かからず悪ガキ四人組は生徒指導室送りになる。違法な薬物や白い粉は発見できなかったが、謎の黒い結晶を持っていたので没収した。よし今日はこのノリで行こう。


 側道をそのまま歩き少し開けた十字路に出たところでヤンキー座りしている四人組を発見。一人は明らかな凶器を所持している。教育的指導! 没収! ……はできなかった。代わりに謎の黒い結晶をまた拾った。これは未成年の間で流行っているのだろうか。とにかく没収して検分するとしよう。


 そのまま左に折れると若干細い道を通って小部屋に出る。ここは未成年のたまり場として有名だ(俺の中で)。案の定八人、そのうち二人は凶器を持っていた。おそらく四層でもこれだけ溜まってる居る場所はここ以外に無いだろう。突然一対八のバトルになったが、細い道側に誘導することで一対二以上の状態に持ち込めないようにする。


 後はいつも通り教育的指導を順番に施していくだけである。教育的指導の結果、合法薬物と凶器の没収に成功した。ここまでの戦果としてはまず良しと言っていい。


 凶器の押収に成功したことで教育の成果を感じている。この調子でどんどん改心していってもらいたい。さぁ、先はまだまだ長いぞ。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 二時間にわたる巡回の末、更に凶器を一本、合法薬物を九本、黒い結晶を四十六個没収することに成功した。今日はここまでかな。テンションも落ちてきた。こういう時は真っ直ぐ帰るに限る、無理は良くない。


 四層から三層へ、三層から二層へ、何事もなく道中のモンスターをぶん殴りながら帰る。いくらやる気が落ち込んだとは言え、道中のモンスターをトレインしながら帰るわけにもいかないからな。実際ソードゴブリンを除けば後ろからぶん殴られながら帰り道を歩いて行ってもダメージは無い程度のステータスはあると思う。


 しかしそれはそれで見かけた人に余計な心配をかける事になる。それは非常に宜しくない。なので面倒くさいと感じながらも一匹ずつ雑に処理していく事にしよう。速足加減で各層を二十分ほどで駆け抜けていくことになったが、道中にはそれなりのモンスターが居たので駆逐していく。


 またウルフ肉が溜まる。これはへそくりだな、何かの時に食べよう。今のところへそくり肉はウルフ肉が四つにボア肉が四つだ。これだけあれば何か作る時に実験に使えるし、夕食を豪華にするためにも使える。使い時は今のところ考えてないが思い出したように使いたくなるかもしれないので貯めておこう。


 二層から一層へ上がる。ここから先は安全圏だ。スライムしかいない一層をスライムを道中プツプツと潰しながら出入り口へ向かう。十八時半にはたどり着けるかな。スライムは極稀にヒールポーションを落とすのでそのワンチャンスに賭けて狩っても良いし、賭けなくても狩っても良い。


 出入り口に向かい始めたのか、他の探索者の姿も見えてきた。これは他の探索者に任せて俺はただ歩いて付いていく事にしよう。


 出口について退ダン処理をする。今日はなんだかんだでソロではそこそこの収入を得られたと思う。ボア肉四つとウルフ肉四つを除いてバッグの中に詰め込む。今日の成果はギリギリ入った。


 査定カウンターに素材を提出すると、査定が終わるまで待つ。どうやら小西ダンジョンも人が増えたおかげで目の前できっちり査定するという行為を止めたらしく、番号札を使い始めた。その間に冷水器から冷えた水を飲む。どこどこの天然水を利用しているらしく、水道水に比べたら美味しいと感じる。


 ダンジョン外なのでステータスブーストは使えないが、もしかしたらミネラルウォーターも中では美味しく感じていたのかもしれない。今度ゆっくりと味わってみるか。


 五分ほどで査定が終わった。今日の収入は十六万六百七十二円。いつもの稼ぎと同じぐらいだ。七層に潜らなければもう少し多かっただろうし、ダーククロウの羽根を査定にかけていたらもう二、三万の収入は得られたかもしれない。


 だが羽根は今や俺の大事な収入源だ。迂闊に査定に出して快眠効果が薄れた時に代わりの羽根を使えないのはきっと体調に問題が出てくるだろう。三日後の布団納品が楽しみだ。


 支払いカウンターで支払いを受け取ると、財布に入れる。財布がお札でパンパンになりつつある。十万ぐらいは銀行に預けておくか。自転車購入した分手持ちの現金が心許ない事になっているからな。


 帰りのバスにはギリギリ間に合わなかったので自転車で帰る。久々に中華屋によって夕食にするかな。自転車で五分の距離だ。店の駐車場に自転車を置くとのれんをくぐる。


「こんばんはー。飯食いに来たよ」

「おう兄ちゃん、今日は買い取りはあるか」


 爺さんが元気に返事を返してくる。


「いや、今日は全部査定に出してしまった。買い取りは無いよ」

「そうか、まぁ在庫はある。リクエストはあるか? 」

「メニュー見てから決めるよ」


 適当な席に座るとメニューとにらめっこを始める。メニューは壁にも張られている。今まで頼んだもので済ませてしまうか、それとも新しいものにチャレンジしてみるか。ここで食ったものを思い出す。鶏の唐揚げ、中華丼、餃子、天津飯、五目あんかけそば、後なんかあったかな。メニューを見渡す。


 麻婆豆腐丼というのが目に入る。これは食べたことがないな。今日はここを攻めてみよう。付け合わせは鶏の唐揚げだな。ちょっと量が多い可能性があるが、まぁ何とかなるだろう。


「爺さん、麻婆豆腐丼と鶏の唐揚げで」

「あいよ、ちょっと待ってな。辛めがいいかい?」

「甘めで頼むよ。辛いのを食べたいというテンションじゃない」

「そうか、解った」


 爺さんがキリっと仕事の顔になる。注文が通ったところで冷えた水を自分で取りに行き、ひとまず水分を補給する。麻婆豆腐丼か、楽しみだな。出されたおしぼりで顔を拭くと、サッパリした気分で暇つぶしにメニューを眺めてみる。


 爺さん一人で営業している割にレパートリーが多い事に気づく。おそらく長年やってきたおかげでメニューも徐々に増えて行ったんだろう。町の中華屋にはよくあることだ。


 十分ほどして、まず鶏の唐揚げが運ばれてくる。やはり中華と言えば鶏の唐揚げは外せない。早速カリカリに上がった鶏の唐揚げにかぶりつく。相変わらず中まで油が沁み込んでいて、奥歯を喜ばせる。


 自分で作ると揚げすぎて焦げたり、少し生の部分が残ってしまったり、油加減が俺には難しい。さすがプロという所だろう。大事なのは温度なのだろうか、それとも下味の付け方なんだろうか。家で真似するという訳ではないが、まともなものを食いたかったらここに来るのが間違いないだろうな。


 鶏の唐揚げを半分ぐらい味わったところで麻婆豆腐丼が届く。あんかけがしっかりと豆腐になじまされていて、いい塩梅に見える。まずはレンゲですくって第一食感を楽しむ。


 少し熱いが程よい辛みと豆腐の柔らかさが口の中を落ち着かせてくれている。ホッとする一品だ。麻婆・鶏唐・麻婆・鶏唐と交互に味わっていく。幸せな時間を満喫する。途中で水が無くなったので自分で汲みに行く。


 あっという間に平らげてしまった。少しだけ休憩した後店を出る。千三百円なり。夕食としてはそこそこのお値段だが、満足度は高かった。また来よう。


 食事をしてる間にバスの時間は中途半端になってしまったので自転車の出番だ。そのままキコキコ駅に向かって漕ぎだす。腹が満ちているので多少スピードは落ちるが、バス待ちをしているよりは早く駅に着けるし、何より腹ごなしの運動にはなる。


 二十分ほど自転車を走らせて駅に着く。駅に人はまばらだ。見られないように自転車置き場の隅っこに駐輪すると収納で片づけてしまう。ちょうどいい感じで電車が来る時間に来れたようだ。そのまま乗って帰ろう。


 電車に揺られてメモ帳をチェックする。自転車の距離計、バーナーの燃料の予備を買いに行かないといけないな。帰ったら車出していつものホームセンターにいくか。予算は一万も有れば足りるだろう。


 最近財布の中身を正確に把握する事が難しくなってきた。預金口座のほうもそうだが、収入と支出が激しく入れ替わるので、そのうちどこかのタイミングでこっちの整理も必要だな。



作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >凶器を持ってダンジョンを練り歩いているクソガキども ブーメラン(笑) 凶器持った中年愚連隊は良いのかwww 女子大生も槍持ってるし…。
[気になる点] 中華屋に入る前にバスに間に合わなかったと書いているのを田舎暮らしの視点だと終バスが出ちゃったのかと思ってしまった。中華屋出てからまたバスのと言ってるということは終バスじゃなかったという…
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