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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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179:茂君討伐



 真っ直ぐ五層まで降り立った。四層では七回ほど接敵したが、さすがにゴブリンソードをくれるほど俺のドロップテーブルは生易しくなかった。後でゆっくり回るからその時に回収するようにしよう。十層で使い倒す予定だからな。ここらでしっかり確保しておこう。何よりタダだし。


 ゴブリンソードが買い取りゼロ円な事も有ってソードゴブリンの一人当たりの価値は低い。へたするとワイルドボアより苦戦する相手なのに安いのはちょっと可哀想だが現実は非情である。


 いつも通りワイルドボアが二、三匹に固まった集団がいくつか。移動目標の木にはダーククロウが何羽か止まっているのが遠目ながら見える。


 ワイルドボアに近寄ってこちらから攻撃を仕掛ける。お肉を集めておいてへそくりを貯めておく。多すぎればもちろんギルドに卸すんだが、今日はそんなにワイルドボアを狩る予定はない。なので六層に行くまでに出来るだけ接触する機会を設け、肉を回収するのだ。


 ワイルドボアもこちらへ向かって突撃してくる。お決まりの突撃を無理やり武器で受け止めるパターンで順番に処理していく。三匹ぐらいならバラバラで向かってくるので順番に対応する事が可能だ。三匹仕留めたところで肉が一個落ちる。肉一パックで千円。ワイルドボアは革も落とすので、一匹当たりの期待値は八百円後半というところか。


 やはりワイルドボアの魅力は肉だ。美味しいものを狩って帰って家族で食べるご家庭も有るんだろう。比較的見通しが良すぎるせいでリポップに難があるが、時給的にはそこまで悪くない。何よりお肉だ。魔結晶も革も落ちるが、革は買い取り値段のわりに嵩張るのであまりうれしくないドロップ品ではある。それでも納品はするのだが。


 一本目の木にはいつも通り十羽ほどのダーククロウが止まっていた。周囲を見渡して人が居ないことを確認するといつも通り全部ロックオンし、バードショット弾を射出する。無事全弾命中し、はらはらと羽根が舞い落ち、ぼとぼとと魔結晶が落ちる。木に近づいて範囲収納でまとめて回収する。


 羽根は二百グラムほどを確保できたようだ。魔結晶は四個。買い取り価格見込みで五百五十円ほどなので実収入は二千円ほどだ。瞬間的収入としてはそんなに悪くない。続いて二本目の木に向かう。ここも十羽ほどがいつも茂っているが、今日は空を飛びたい気分らしい。


 空中に待機しているダーククロウは始末に悪い。フンを飛ばしてストレスを感じさせるとともに、くちばしで突撃してくる。突撃自体は大したことなく、相手の軌道を読んでそこに武器を構えているだけで自分から斬られに来てくれる。ただフンは肉眼で確認してから回避しなければならないので手間が増える。


 空中をゆっくり旋回しているダーククロウの先を読みバードショット弾を撃ち込んでみる。見事命中し、そのまま空中で黒い粒子になって消える。ドロップしたのであろう羽根がはらはらと落ちてくる。


 羽根は良いんだが、魔結晶がボトっと落ちてくるのは頭に当たりそうで怖い。できるだけ飛んでいるのは相手にしたくないな。同時にワイルドボアの相手もしなければいけないため手間が多い。こっちは美味しいお肉なので喜び勇んで倒しに行くんだが、その間にフンが落ちてくるのだけは注意しないといけないな。


 改めて二本目の木に向かうと、五匹が休んでいる。これならすぐに倒せるだろう。五匹をターゲッティングすると射出。全弾命中しドロップを範囲指定で拾う。ここまでは順調だな。三本目の木にも茂っているのを遠目に確認すると、嬉々として寄っていく。


 ワイルドボア肉、ワイルドボア、ワイルドボア肉。五層でも順調にドロップが増えていく。六層で査定にかける分も含めてこのまま順調に行きたいところだ。木と木を巡る間に平均五匹のワイルドボアを相手にしていく。


 お肉が落ちる確率が三割、魔結晶が落ちる確率が二割、革が落ちる確率は一割。十匹倒せば三、二、一出る期待値だ。その通りに出てくるわけではないんだが、同時に出る可能性もあるので一概に信じきれないとは言えない。


 さて、三本目の木に来た。ここも十羽ぐらいだ。なんかいつも通りで安心する。落ち着いて全ダーククロウに集中すると射出。が、一羽だけ外した。どうやら当たる直前に身じろぎしたらしい。


 まぁそういう事も有るさ。びっくりして空中にとんだダーククロウをもう一度視界にとらえ、移動の速さとこっちの飛ぶ速さを見極めて再び射出する。今度は無事に当たる。


 外した一匹からのドロップが無くてほっとする。取りに行くの面倒だったんだよね。やはり範囲収納は便利な機能だな。収納自体が格別に便利な機能ではあるけどもさ。


 六層まであとワイルドボア四匹を倒せばたどり着けるだろう。しっかりとした足取りでワイルドボアに近づいていく。こっちに気づいたワイルドボアは加速しながらこちらへ突っ込んでくる。


 しかしこちらも慣れたもので、相手のトップスピードに合わせるつもりはなく、加速しながら近づき突進の威力が出ないあたりで頭を縦にカチ割る。相対スピードも相まって綺麗に頭骨を割られたワイルドボアはそのまま黒い粒子へ還りながら後ろへ流れていく。


 残りの三匹も似たような作業で倒しきるとドロップを拾い、歩いていくとようやく六層側の階段へ着いた。ちょっと休憩するかな。その場に座り込むとカロリーバープレーン味を、やはりバニラが一番だよなと思いながら胃に入れる。良い感じに疲れていたのか、胃袋が脈動を始め糖分が脳に染み渡っていく。


 五分ほどボーっと眺めている間、視界内はリポップしない。この後来るだろう探索者にとっては迷惑かもしれないが、目をつぶっていて目の前にリポップされても困るからな、そこは勘弁してもらいたい。


 程よく疲れを癒すと、六層への階段を下りる。ここからが正念場……という訳ではないが、今日の第一目標だ。潮干狩りした時間を含めてここまで三時間。時間は午後〇時半を少し過ぎたあたりだ。このまま真っ直ぐ七層前で突っ切って七層で昼食にすることもできる。


 そういえば、当初予定だと昼をいつとるか全く考えてなかったな。ここは予定変更して昼食を七層でゆっくりとって、帰り道に四層でひたすら狩りという事にするか。


 六層に降りると早速ワイルドボアの集団がこっちを見つける。こっちを見てリンクしたのは七匹かな。俺は逃げないから前からかかってこい。後ろからはやめてね。


 ワイルドボアの突進を足を止めて、ステータスブーストをかけて、確実にグラディウスで受け止める。そういえば最近盾使う機会が無いな。念のために持ってはいるんだが、両手でグラディウスを扱うほうが機会が多い。こうやって突進を受け止めるときとか。


 六体連続でグラディウスで受け止めて倒すと、さすがに手が痛くなってくる。盾で受け止めてその間に刺す、でもいいんだがなまじ肉厚で頑丈にできてるおかげで頼り切ってしまっている。と、ふと思い立って武器をチェンジする。ゴブリンソードで同じことが出来るのかどうかだ。


 グラディウスとほぼ同形だがゴブリンソードのほうが若干剣幅が広く長く、その分少しだけ薄くできている。最後の一体をゴブリンソードで受け止める。ミシッとかピキッとかそういう音を聞くことなく、無事にワイルドボアを受け止めきることが出来た。これ、いざという時の代わりにも使えるな、タダだし。


 グラディウスも元は十分に取っているが、ゼロ円から無限に利益を生み出すことが出来るのならそれに越したことはない。たまにはこっちも武器として使おう、主に投げる用だけど。


 一塊のワイルドボアの殲滅を終えてドロップを拾い終えると七層方向へ行く。目指すは一本目の木。ダーククロウは茂り方からみて十羽前後。その手前にワイルドボアがもう六匹。


 ワイルドボアに向かって歩いていくと、ワイルドボアはこっちに気づき走り込んでくる。ちょうど迎え入れる形で迎撃し、一匹ずつ確実に止めを刺していく。ゴブリンソードも中々使えるじゃないか。しばらく慣らしてみよう。


 まだ手首がこなれて来ていないのか、それともしっかりフィットしていないのか、多少違和感があるがワイルドボアの突撃にも耐える。もしかして、これを一本拾ってから五層へ向かっていくのがダンジョンの攻略法なのか?


 疑問を浮かべつつ一本目の木にたどり着く。茂君はここからも良く見えている。今日も茂り具合がいいね。一本目の木のダーククロウをサクッと片付けるとドロップを回収して二本目の木に向かう。


 茂君と俺の間にワイルドボアが割り込んでくる。邪魔をしないで欲しい。しいて言うならドロップだけ置いてどっか行って欲しい。そのほうが茂君との対話に集中できるじゃないか。こっちの集中を乱す悪いワイルドボアを順番に切り刻んでいく。ドロップを落とす。ドロップを落とすワイルドボアは良いワイルドボアだ。今日のところはさし許す。


 ボア肉も十パックを超えるようになってきた。一パックぐらい休憩がてら食べても問題あるまい。七層に戻った時が楽しみだぜ。どう料理してやろうか。


 そしてお待ちかねの茂君との対峙の時がやってきた。茂君に集っているダーククロウの数を数えながら、一匹一匹確実に視野に捕らえていく。今日の成果は四十八羽になりそうだ。


 一歩踏み出すとそこがダーククロウの警戒線だと言わんばかりに、さっきまで毛づくろいやつつきあいをしていたダーククロウ達がピタッと止まり、すべてがこちらを向く。ホラーゲームならびっくりポイントだ。


 いつも通りすべてにターゲットマークを付けるイメージを作ると、バードショット弾で一斉に狙い撃つ。狙いたがわず飛んで行ったバードショット弾は確実にダーククロウの胴体を射抜き、その全てを地面へと落としていく。今日は上手くいったな。


 四十八羽分のドロップが木の根元に溜まる。まとめて範囲回収して成果を見る。羽根が九百グラム、魔結晶が十個。大体割合通りだな。


 枕三つ分ぐらいは確保できたな。これでしばらくは枕の詰め替えには困らないはずだ。そのままの勢いで三本目の木へ向かう間のワイルドボアを殲滅しつつ、三本目の木を通り越す。三本目の木には今日も誰も居なかった。


 なんでここはいないんだろう。二本目の木と半々ぐらいに茂ってても良いと思うんだが。この木だけリポップがうまく機能していないのだろうか。


 とりあえず今は解らない。二十四の不思議に入れるかどうかも微妙なところだ。放置しておこう。先に見えるはワイルドボア三匹と七層への階段。若干駆け足気味に、けれどもワイルドボアは確実に仕留めてドロップを……ドロップが無かった。奴らは悪いワイルドボアだった。


 七層への階段へたどり着くと無事、前半戦の終了だ。休憩してお昼にしよう。


作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴブリンソードが0円なら直前に他の人が倒した道とかだと捨てられてるんじゃ無いか。 案外拾えそう。
[一言] 茂君でTOKIOの城島社長を思い出したw
[気になる点] 心は冒険者継続に傾いているんでしょうかね?
2022/12/26 09:28 退会済み
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