178:行き行きて小西
みなさん毎回誤字報告ありがとうございます。
朝だ。今日も気分が良い。ダーククロウさんありがとう。元気に今日も起きれた。一昨日の鬱屈した感じは抜けてしまったようだ。
早速いつものご機嫌な朝食をとる。朝食ついでに今日ダンジョンへもっていく食品は全て詰め込んでしまおう。冷蔵庫を何度も開け閉めすると電気代の無駄だ。
トーストと卵を焼き、ついでに野菜も切り刻んでしまう。切り刻まれた野菜は密閉袋に入れて冷えたコーラや水をアイスバッグに入れて保管庫へ。
切り刻んだ残りの野菜を朝食にして食べる。端っこは硬いからね。じゃじゃっと炒めて塩胡椒してレンジでチン、マヨかけて簡単な温サラダを作る。
今日はいつもよりちょっとだけ時間をかけて調理した。その分噛みごたえはあった。もうちょっと野菜がしんなりするまでレンジかけたほうが良かったな。
さて、朝食を済ませたところで準備運動とパジャマの洗濯、そしてダンジョン行く準備だ。今日は予定は一人で潜る。一昨日の今日で心配が無いかと言われれば無い訳ではない。でもダンジョンが俺を待っていると言い換えるとなんとも頼もしい一言に聞こえるじゃないか。
今日も日銭を稼ぎにダンジョンへ行こう。昨日一昨日とゆっくり休んだおかげで体調は万全だと言っていい。が、下層へは行かずに四層でひたすらポーションを集める作業に終始しよう。ついでにゴブリンソードも拾えれば今後の武器として役立つはずだ。
後ついでにダーククロウの羽根を全部放出したので、自作枕用としていくらか確保しておきたい。よって六層へはたどり着こうと思う。
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朝一から小西に潜る。通勤ラッシュ時にツナギにヘルメット姿のおじさんが武装込みで数区間だけ人混みに混ざる。ツナギの人自体は何人か見かけるが一般人なのか、この人たちも行く方向が同じか、もしくは清州に行くんだろう。
電車で通える近所のダンジョンは小西ダンジョンと清州ダンジョンぐらいだ。後はもう六十キロメートルほど離れた所になるので車での通勤者が多い。小西ダンジョンにおいては電車バス通勤でないと来れないからな。
……小西ダンジョン専用の送迎バスとかあっても良いかもしれないな。いくつかの駅を回ってそこそこ路面状況のいい道を限界ギリギリの速さで走り抜けて小西ダンジョンへ直行するという。でも、夜間のバス置き場がないからダメか。いやバスの一台ぐらいならさすがにその辺にポイっと停めておけばいいんじゃないか? その内ギルマスに提案してみよう。
しかし、考えると探索者というのはここ三年で突然現れた職業なわけで、インドならカーストにも組み込まれていない新しい労働階級になるわけだ。ここに早くから参入していた人々は一体どういう思考回路をしていたんだろう。
案外ゲーム感覚でよっしゃダンジョン出来たぜいっちょ探索してみるか! ぐらいの勢いだったのかもしれない。いわゆる第一世代って奴だな。そうなると俺は第二世代になるのか、それともまだ第一世代に足を突っ込んでいるのか。
今度探索者の人数と引退した人数について調べてみるか。ほぼ三年という区切りが良い期間でそれで辞めていく理由とか続ける理由とか、そんなのを適当に見つけて参考に出来たら俺のモチベーションにつながるかもしれない。
何時まで探索者を続けるか……か。面白い間は続けるだろう。面白くないと感じた時、とりあえず老人になってしまってもそこそこ暮らしていける財産と今の家、それからいくばくかの健康が手元にあれば十分だろう。自分の手元に何が残っているか。その時に手に残っている物をみて、考えて、それから結論を出せばいいだろうな。
考え事をしているとバスに乗り換える駅に着いた。ここから十分ほど駅で待ってバスに乗り、それから小西ダンジョンへ向かう。定期はまだ残っている。使い切るまではできるだけ小西に通うぞ。
今日目標とするものは特にない。しいて言えばダーククロウの羽根の補充だ。羽根羽根まつりを実行しても良いが、あまり効率のいい稼ぎ方とは言えない。やるなら夜っしょ。なので六層には一度だけ顔を出して、例の茂った木までの行程を殲滅して、大体五百グラムぐらいの羽根が取れればいいと考えている。
それが終わったら四層でヒールポーション集めだ。一度お世話になったが、あの治り方とあの味を思い出すとこれを他人に試さずにいられない。ドロップしてギルドに卸して、そこから幾人もの手に渡り、最終的に何処かの誰かが俺と同じ目にあう。とても楽しみだ。
っと、バスが来たな。考え事をしてる間に発車してしまわないよう、考え事は中でやろう。バス待ちの列は十人ぐらい。俺と同じ方向に行きそうな人は確実にダンジョン装備をキメている二人と、その二人と喋っている更に二人。おそらくレンタルロッカーを使うんだろう。
せめて駐輪場があればなぁ。自転車漕いでやってくる探索者も一人二人は増えるだろうに。七層みたいに勝手に増やしたら怒られそうだし、なんかうまいことやる手はないんだろうか。
バスを降り、いつもの見慣れた小西ダンジョンのプレハブ仕立ての建屋が目に入る。今のところダンジョンが呼んでいる……!? みたいな感覚は無い。どうやら地上までは電波が入らないらしい。電波なのかどうかは知らんが。
いや実際にそう言ってたら電波呼ばわりされるのは確実だな。もれなく心療内科を勧められるだろう。だが残念なのか幸運なのか、そういう感じは今のところない。なのでいつも通りダンジョンに潜ろうと思う。
入ダン手続きを済ませいつものつぷんとした感触と共にダンジョンへ入る。入口はやはり先に入った人たちが掃除していったのだろう、スライムは見当たらない。綺麗なもんだ。とりあえず二層への階段へ赴く……つもりだったのだが、いつもの小部屋へ来ていた。
スライムはいつも通り百匹ぐらいが群れを成してその部屋に生息している。深呼吸してスライムの息遣いを感じる。呼吸はしてるのかどうかわからないので、今度文月さんに水で囲んでもらって窒息死するかどうか試してもらおっと。
腰の熊手に手をかけると、気まぐれにバニラバーを与えながらプツプツと一匹ずつ丁寧に素早く潮干狩りしていく。いつものテンポを忘れない。
グップッコロンパン。グップッコロンパン。
グップッコロンパン。グップッコロンパン。
三十分ぐらいして、部屋は綺麗になった。仕事したなぁという達成感であふれると同時に、今日の目的を思い出す。そうだった、今日は一日スライム狩りに来たわけじゃないんだった。だが精神的安定は保たれたのでこれで良い事とする。
二層三層四層は全力でスルーだ。出会った奴だけを狩っていくランニングスタイルで一気に五層まで降りる。二層三層の途中のグレイウルフでへそくり肉を作っておくことも忘れない。これが有ると色々食生活が捗るんだ、許してほしい。グレイウルフも、文月さんも。
三層では通り道でヒールポーションが一本出たのでこれ以上は用は無い、とっとと駆け抜けよう。十分な美味しさは得た。魔結晶も何個かは手に入れたが、通り抜けるだけでヒールポーションが得られたのは稼ぎとして美味しい。移動中も利益を得ることは時間効率の問題に直結する。
短時間で高密度な狩りをしたければ、一匹当たりの見込み収入数とリポップ速度と自分が狩れる速さと投入する時間を掛けていく事で大まかな予定金額を見込める。もっとも自分の予想通りにリポップしてくれるという保証は無いのであくまで皮算用になるが。
その点で言えば四層と九層は一時間当たりで計算すると比較的高い効率を叩き出してくれる。四層は一時間で運が良ければ五~八万円の収入を見込める。
九層なら同じ速さで十万円ほどだ。もちろん九層は一人で回るのは危険度が跳ね上がる。常に酸に注意しながら戦闘を行わなければならないので集中力も要求される。
安全にかつ確実に収入を得るなら四層が安定する。ただ、移動時間を加味しない場合最も高効率収入なのは六層のダーククロウの茂ってる木、略して茂君だ。
茂君を十秒ほどで殲滅できるなら一万五千円ほどの収入になる。羽根を売らない場合でも六千円ほど手に入れられるので手を出さない理由は疲れているか、面倒くさいと感じるか、周りに他人が居る場合のみである。
茂君は清州ダンジョンにも生息している。だが清州ダンジョンで六層で人に出会わないことは稀であるので、小西ダンジョンだけで倒せるものだと言える。ある意味七層まででのボスキャラだな。
今日は茂君を倒しに来た。是非綺麗に倒されて欲しいもんだ。
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