169:何回目かの九層へ
ユニークアクセス二百万超ありがとうございます。
文字数がごそっと減ったのに気づかれた方もいるかもしれませんが、なろうの仕様変更で、予約投稿分はカウントされないように変わったのでそのせいです。
五時間仮眠しました。おはようございます、安村です。バーナーを表に出すと水を温めるために火をつける。マグカップ一杯ぐらいの水を熱くなる前、温いぐらいのところでタオルへ零す。
テントの中に戻ってツナギを脱ぐと、そのまだ温かいタオルで体を拭く。汗をしっかりかいた、という訳ではないが、出来るだけ身ぎれいにしておいたほうが気分が良いからな。
水をもう一杯ぐらいなら沸かせるかな。今度はコーヒーを飲む用だ。しっかりと水の温度を上げていく。そろそろいいかな?というぐらいでバーナーの燃料が切れたらしく、消えていく火。ちょい温いぐらいの温度。六十度ぐらいか? まぁこれでも飲めなくはないだろう。
インスタントコーヒーを溶かすと思い切って飲む。うん、酸っぱい。俺は酸っぱいコーヒーは苦手だ。次回はちゃんと熱くしてから淹れよう。
隣のテントをガサガサと揺すり、文月さんを起こす。中で動きがあるみたいだ。多分これで起きただろう。
「……おはようございます」
テントの中から声がする。若干眠気が混じっているが、二度寝することはないだろうと信じる。
「おはよう。午後十一時だけどね」
文月さんが首だけ外へ出して答える。
「出来のいいお子様なら今から眠りにつく時間ですよね」
「俺達は出来のいいお子様じゃないからな。今から活動する事だってある。コーヒー飲む? 」
「お願いします……ちょっと体拭いたら出ます」
その間にバーナーのタンクを新しいものに変え、新たに水を沸かす。どうせ沸かすんだったらこのコーヒーも熱いのを入れておくべきだったな。変にケチるべきじゃなかった。
酸っぱいコーヒーを飲み干すと口の中がいや~んな感じだが、それでも目は覚めた。結果オーライだ、そう納得しておく。
湯が沸いて一人分のコーヒーを淹れ終わるころに、文月さんはテントから濡れタオルを持って出てきた。そのまま濡れタオルを【水魔法】を応用した乾燥で乾かし、首の周りに巻く。俺からコーヒーを受け取ると一口飲みふぅ、と吐息を漏らす。
「やっぱり枕は譲れませんね。もう一個作ってもらっていいですか」
真剣なまなざしで文月さんがお願いしてくる。どうやら自宅用が欲しいらしかった。
「羽根は余ってるから作っておくよ。と言っても枕カバーにそのまま詰め込むだけのなんちゃって枕だけど」
「それでも構いません。この心地よい眠りが持続するならそこそこ支払えそうな気すらします」
掛け布団まで作れとは言いださないだろうが、掛け布団と枕をダーククロウで構成した睡眠セットを生み出したら一体どれほどのことになってしまうのだろうか。
ダーククロウの羽根はもっとあっても良いな。今後もちまちま集めていこう。
コーヒーを飲み終えると椅子やバーナーをテントの中に残し、それ以外の物は保管庫に入れておく。ゴミは保管庫に入れておこう。うっかり発酵を始めるようなことはないだろうが、気分的にあまり落ち着かない。
文月さんの移動準備が終わるまでに準備運動だ。背筋を伸ばして腕を上げる運動。一、二、三、四、五、六、七、八。音楽プレーヤーが無いのでラジオ体操は流せないが、それっぽい運動をしておく。
左右にそのまま体を倒して側筋を伸ばす。前屈して腹筋に力を入れ、戻すときに背筋に力を入れる。全身の力を抜いたり入れたり。その場でジャンプ。全身の力を抜いてただジャンプに使うだけの力を入れる。操り人形のように全身がバラバラに動く。
最後にアキレス腱を良く伸ばして、首を左右にコキッと鳴らせば準備運動完了だ。これでまた五時間戦える。
エアマットを凹ませずにそのまま俺のテントにぶち込んでいく文月さんの姿が見えた。まぁいいか。テントはさすがに折りたたんで入れてくれているようだ。
「準備できました。いつでも行けます」
「じゃ、いつも通り八層から九層へ行って九層でたっぷり稼ぎますか」
七層で仮眠した後は特に理由が無い限り九層へ向かう。そのほうが時間当たりの実入りが良いからだ。四層をぐるっと一時間回ると最大でゴブリン二百匹を狩ることが出来る。試算で十万ほどの稼ぎになる。
一方九層なら、ワイルドボアとジャイアントアントで同じ数を狩ることが出来るようになっている。その場合の試算は十六万ほどになる。六万の差は大きいし、キュアポーションが出るかどうかで上振れたりする。
同じだけのタスクをこなすなら、単価が高いほうがより儲けが出るという自明の理だ。
シェルターに着くと、自転車は一台しかなかった。寝てる間に誰かが使っていったらしい。田中君だろうか。ソロキャンパーを彼しか知らないから他に思い浮かばないだけなんだが。
「歩いていきますか。二人乗りするとさすがにタイヤが悲鳴を上げそうだし」
「私そんなに重くないですよ? 」
文月さんからブーイングが飛んでくる。
「文月さんが軽くても俺が重いの。この腹の肉が落ち切った頃になら二人乗りでも良いかもしれないが」
「そういう事なら仕方ありませんね。まぁ荷物の分もありますし無理に乗って壊すのも悪いですしね」
自転車が壊れた場合修理するのはきっと俺になるだろう。なのであまり自転車に無理をさせたくないというのが本音だ。
結局八層まで歩くことになり、自転車を入れた成果は今のところあまり芳しくない。まぁそういうもんだろうという事にしておく。便利に使えるときに便利に使えればそれで良いのだ。
八層まで歩く間に自転車でこっちへくる田中君とすれ違う。やっぱり使ってたのは彼だったか。手を挙げてすれ違うと、ハイタッチしてそのまま駆け抜けていった。どうやらキッチリ成果を得られたらしいな。
八層側の自転車台には自転車はなかった。つまり六層側には一台あるって事だな。そのままノンストップで八層へ降りる。
田中君が狩りした直後だからか、八層は敵の姿が少ない。湧くのを待つのも時間が勿体無いので時間が短縮できると思ってそのまま進む事にする。
八層は木が一本しかないのでとても分かりやすい。そこに向かって進んでいけばやがて階段が見えてくる。小西で一番親切設計なマップと言える。これでもう少し階段までが近ければ言う事はないんだが。
木を見ると十羽ほどダーククロウが止まっているのは見える。アレを食べて腹ごなしの運動とするか。道中三匹ほどワイルドボアがリポップしたので美味しくいただいていく。美味しくいただきたかったが、ドロップは落とさなかった。そんな日もあるさ。
「どっちがやる? あれ」
ダーククロウのほうを指さし文月さんに尋ねる。
「じゃぁ私が。練習も兼ねて一発で落として見せます」
やる気に満ち溢れている。多分任せて大丈夫だろうが、一応カバーの体勢に入る。文月さんは数秒ダーククロウをにらみつけると、一気に羽数分の水の刃を射出し、全てを撃ち落としていった。
「お見事にございまする」
「お粗末様でござる」
ドロップを範囲回収する。羽根がまた増えたな。さすがに木から階段までの間はワイルドボアが六匹ぐらいうろうろしている。そういえば最近パチンコ玉の出番が無いな。偶には使ってやるか。
こっちへ向かってくるワイルドボアに対してパチンコ玉を射出する。上手い事内臓まで入り込んだワイルドボアはその場で黒い粒子に変わり、あたりの悪かったワイルドボアもダメージを受けたのか、よろよろと向かってくるスピードが落ちる。
足元までたどり着いたワイルドボアを一閃して六匹討伐終了だ。
「なんか久しぶりに使いません? それ」
文月さんがそういえば、という顔で尋ねてくる。
「うん、最近使ってないなと思って。これ、引き付けて射出速度上げればワイルドボアまでなら一発で倒せるみたい」
「それはそれは、楽が出来ていいですね」
「ただ、ドロップ拾いに行くのが面倒かな。そこはどうしようもない」
ワイルドボアが消えた地点まで歩いていくとドロップを確認する。肉が二個でた。後で食べるにも売るにも使える万能素材だな、ボア肉。
途中後ろのリポップにも対応しながら九層の階段までたどり着き、九層へ降りる。自転車の数で考えた具合だと九層に降りているパーティーは居ない。つまり狩り放題という事だな。今日も一杯稼がせてもらおう。
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