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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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168/1224

168:小西ダンジョン七層のワイルドボア肉生姜焼きとパックライス

千百万PVありがとうございます。昨日ワクチン打ってきましたが朝の段階ではあんまり症状出てないですね。

 

 さて、自分の新しいテントに帰ってきたぞ。


「前の倍ぐらい広いですね。高かったんでは? 」


 文月さんが素直な感想を口にする。


「そうでもないよ、小さい奴の二倍ぐらい。ここはそんなに過酷な環境じゃないから安い奴を選んだ。一時間九層に居れば十分補える価格だし、何より経費で落ちる」

「私も大きいの買おうかなぁ」

「これ立てっぱなしにしておく奴だから大きくても良いと思って買ったんだけど、文月さんも田中君みたいにここに住むの? 」

「う~ん、私はそこまではちょっと。やっぱり今のままでいいかな」

「立ててみてから思ったがこれちょっとシェルターに近すぎるな。立てっぱなしにしておくものだし、もう少し離しておこうかな」


 テントの中身を保管庫に仕舞うと、テントをよいしょっと持ち上げて二十メートルほど離れた位置に置きなおす。支柱を折らないかちょっと心配だったが問題なかったようだ。


「大きさのわりに軽いんですね。やっぱりちょっと欲しい」

「組み立てにちょっとコツがいるし、支柱折らないようにしなきゃいけないし、携帯には向かないから今のままで良いんじゃないかな」

「そうですか……そうですね。不必要な贅沢はしないことにします」


 いや、でも……と、文月さんは結構悩んでいるようだ。それを横目に俺はさっさと夕食の準備にかかることにした。


 今日のメニューは決まっている。ボア肉の生姜焼きだ。その為にわざわざ家で調味液を作って持ってきたぐらいだ。


 肉の在庫は十分にある。肉を入れすぎて薄味にならないようにだけ注意しなければな。一応ボア肉四パック分ぐらいの量は作ってきた。ライスも有る、生野菜も有る。足りないものは……俺じゃなければ酒という所だろう。文月さんはどうか解らないな。俺はバランスよく食事が出来ていると思い込むことにした。


 机とバーナーとスキレットを準備すると、早速調理に入る。


 手順は簡単だ。調味は終わっている。後はボア肉を薄切りにし、一枚だけ先に低温で焼いて脂を出しておく。脂が十分出切ったら薄切りにしたボア肉に薄力粉を付けて焼き、焼き色が付いたところですこしずつ調味液と混ぜていく。


 生姜と醤油の焼けた臭いが付近を漂う。軽く飯テロだなこれは。周りで腹を減らしてる人が居たらすまん、でも俺もお腹が空いているんだ。


 スキレットが小さめなので少しずつ焼くことになるがそれはまぁ良いだろう。となりで文月さんがまだかまだかと催促している。猫耳を持っていたらそっと乗せていただろう。ちょっとかわいい。


 紙皿の上に生野菜を盛り付けておき、肉が焼け次第紙皿の上に載せていく。


「ご飯は温かいほうが良い? それとも冷めてても良い? 」

「是非温かいほうで! 」

「なら先に温めておけばよかったかな。一旦肉焼くのやめて先にご飯温めるか。汁吸って美味しいのが出来るぞ」

「それはまた食が進みそうですね。楽しみです」


 マイ箸を持ちながら机の前で待てされている文月さんを横目に、一旦火からすべての肉を下ろすと、汁そのままにパックライスを投入する。一パックあれば足りるだろう。


 フライパンの熱でじんわりと温められていくパックライス。米が次第に醤油を吸い、脂を吸い、生姜の香りを吸い、色が薄く茶色に染まっていく。湯気が立ち上り始めたところで少し摘まむ。うん、十分温まっていると思う。味も濃すぎずちょうどいい感じだ。


 パックライスが入っていた容器に入れなおし、文月さんの前へ。文月さんの顔色が一気に明るくなる。


「冷める前に食べてていいよ」

「いただきます! 」


 断ることも無しに早速飯を掻きこみに入った。多分用事を終わらせてそのまま急いできたんだろう。わっしわっしと米を口に入れていく。それから生姜焼きを口に入れ、口の中で米と共に咀嚼していく。


 俺は俺の分を作るか。俺も米温めよう。自分の分の生姜焼きを作った後、残った調味液をぶちまけて濃い味のパックライスを作る。スキレット上に残る脂と汁が残っているのを全て米に吸わせることで後の掃除も簡単にしてしまうのだ。


 お焦げが軽くできるまでしっかり焼いた後、自分の米が出来上がった。さて、食べよう。


「むぅ、お焦げライスも捨てがたいですね」

「一口分だけあげるから我慢しなさい」


 これは調理者特権だ、そうそう簡単に渡してなるものか。


 さて、ウルフ肉の生姜焼きは中華屋で食ったことがあるが、ボア肉の生姜焼きは初体験のはずだ。忘れてなければだが。


 爺さんの味に達するにはまだまだ修行が足りないだろうし調味液の作り方から学びなおす必要があるだろう。しかし、キャンプ飯で初めて作ったものとしてはこれで十分だと考える。


 早速生姜焼きを味わう。肉をしっかり焼いたにも関わらず柔らかさをまだ保持し続けている。生姜がちょいと多すぎたかな?と思わなくもないが、これはこれで肉に負けない味わいをもたらしてくれている。醤油の風味もきちんと鼻を抜けていく。


 米も味わう。しっかりと脂と汁を吸ったパックライスは口の中をパラパラのチャーハンのように駆け巡り、奥歯の奥まで味わいを届けてくれる。


 付け合わせの生野菜で舌をリセットしながら、生姜焼き、米、生野菜、生姜焼き、米、生野菜とどんどん食が進む。やはりこうでなくてはな。


 これは醤油以外も試してみたくなるな? 味噌とかでも良いかもしれん。むしろ味噌こそしっかり焼いて焼き味噌の香りが付くことでよりキャンプらしさを楽しむことが出来る気がする。


 次回は味噌も試してみる。メモ帳に書いておこう。


 文月さんは終始味わう事に夢中のようで、こっちで何かしていても気づかないぐらいに食事に集中している。幸せそうなのでそのまま放っておこう。


 ふと視線を感じる。田中君がテントから首を出しているのを見つけた。どうやら臭いに誘われて穴倉から這い出してきたらしい。


 ちょいちょい、と手招きをすると、紙皿に野菜と生姜焼きを盛ってそっと差し出す。


「いいんですか? 」

「いいよ、ちょっと量を作りすぎたぐらいなんだ。素人味で申し訳ないがこれでよかったらお裾分けだ」

「ありがとうございます。催促したみたいで申し訳ないです」


 田中君は何度もお礼を言いながら自分のテントに帰っていった。彼は食肉専門の探索者だ。きっと食肉はノルマとして提出するので自分で食べるという経験が少ないのかもしれない。


 自分が取ってる肉はこれだけ美味しいんだぞ、という自信の一つになってくれると嬉しい。そうすれば彼の探索に対する意気込みもまた一段と強くなるだろう。


「ふー、ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」


 先に文月さんが食事を終える。ゴミ用の袋を出すと、紙皿からラップをはがし、パックライスのパックも含めて中に詰めてくれている。後片付けできて偉い。


 俺はもう少し自分の料理の出来を味わおう。田中君に多少分けてあげたが俺の分はまだある。じっくりと口の中でボア肉の噛み応えと脂と刻み生姜と醤油の香りを同時に咀嚼する。


 米を一粒残らずかみ砕き、紙皿のラップを舐めるような勢いで腹を満たすと、俺も片づけを始める。パックライスのパックを重ねてラップを取り外し、ゴミ袋に入れる。


「文月さん、ちょっと水出して。スキレット洗う」

「コップ半分ぐらいでいい? はい」


 細々としたことに【水魔法】は便利だ。顔を洗うにも歯を磨くにも、そしてそもそもとして水分は必要だ。それを精神力の許す限り出すことが出来る。【水魔法】と精神力の変換比率はどうなっているかは解らないが、ダンジョン内においてはそこまで効率の悪い魔法ではなさそうだ。


 スキレットを熱し水に軽くくぐらせて、キッチンペーパーでふき取る。本格的に洗浄するのは家に帰ってからだが、今ならこれで十分だろう。軽く洗って掃除はおしまいだ。文月さんに枕とテントを渡す。いそいそと設営を開始したようだ。


 火を消してバーナーの燃料を軽く振る。そろそろ交換時期かな。再度火をつけるとコーヒーを一杯分だけ入れるつもりで湯を沸かす。文月さんは仮眠取る前にコーヒーは飲まないと言っていた覚えがあるから、俺の分だけで良いな。


 コーヒーを淹れ終わったら机とバーナーを折りたたんで片付ける。燃料のスペアは購入してあるので問題ないだろう。バーナーと共にテントの中に片づける。


 椅子に座ってコーヒーをゆっくりと楽しむ。さて、この後は仮眠して九層だな。いつもの流れだ。後これを何回繰り返せばランクアップの基準に達するかは解らないが、上がるにせよ上がらないにせよ、生活費を稼ぐために今日もダンジョンに潜る。


 コーヒーを味わい終わったので俺も眠る準備をしよう。「仮眠中 安村」のいつもの札を両方のテントの前に張り付けると、エアマットを膨らませその上にゆっくりと横になる。アラームを五時間後にセットすると、枕を取り出し一つ二つ深呼吸する。ダーククロウの羽根の香りらしきものが鼻腔をくすぐる。さぁ、今からもしっかり働くために休憩しよう。



作者からのお願い


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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 某グルメ番組のようなタイトルにニヤリ
[一言] 寒い日々が続いてますね。ひょっとした事から寝袋って−25度まで大丈夫って凄いなぁとか見てて。羽毛1.9キロ畳めばこんなな小さく軽い。 安村さん向きでは?ダーククロウの羽を足すもしくは詰め替え…
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