162:後片付けと買い物と
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支払いカウンターで全額を実弾でもらう。財布の中身は大量の万札で埋め尽くされる事になった。これでしばらく現金に困る事はないだろう。
今度口座の中身のほうもチェックしないといけないな。またの日にでも通帳持って記帳しておくか。どれだけ増えているかお楽しみだ。でもここから税金差っ引かれることも考えないといけない。考えることはそれなりに多いな。
さて、バスの時間は……時刻表を見る限り今ちょうど駅とここの中間地点ぐらいだな。自転車で帰るか。ギルドの駐輪場へ行くと誰も居ないことを確認して自転車を出す。
無事その場で出された自転車に乗り込むと、鼻歌交じりに駅へと走らせる。文月さんが俺に気づいて手を振っている。手を振り返すと一人先に駅へ向かう。悪いな、この自転車は一人用なんだ。
「お、兄ちゃん朝帰りか? 」
中華屋の前を通りかかると爺さんが表に水をまいていたが、俺の顔を見ると声をかけてきた。爺さん結構朝早……そういえば九時過ぎてるんだったな。
「えぇ、中で一泊、夜中に狩って今帰りですよ」
「肉の在庫はあるか? ある程度なら買い取りするぞ」
「ウルフ肉とボア肉が五パックずつぐらいなら」
「もらってもいいかい? 」
「いいですよ、自分で調理する分はまた別にあるんで」
「よし、ちょっとまってろ。今金持ってくるからな」
表で二、三分待つ。七千五百円持ってきた爺さんに肉を渡す。
「うん、確かに。これでまたうまいの作ってやるから今度寄れや」
「そうさせてもらいます。では」
臨時収入が手に入った。更に財布はパンパンだぜ。これは間違いなく自転車代に回そう。再びペダルを漕ぎ出し今度こそ真っ直ぐ駅に向かう。寝坊したのか朝一限が自習なのか、学校へ向かっている様子の高校生とすれ違う。のんびりしてるなぁ、人のことは言えないけど。
駅に着くと誰もこっちを見てない間に自転車を収納する。大分こっそりやる作業にもこなれてきたぞ。この調子でどんどん小狡く控えめにかつ便利になるように使っていこう。
電車で最寄り駅に着くとまっすぐ徒歩で帰宅し、いつものご機嫌な朝食を……もう昼近いからブランチでいいな。とりあえず胃に詰め込む。
宿泊セットを水洗いしツナギとタオルを洗濯し、ゴミを選り分けると、ネットで自転車台を検索する。安いのでいいから九台分発注する。三台用というのがあったのでそれを選んだ。台はこれでOKだな。後は自転車だ。早速車で近所のホームセンターへ走った。
今回はホームセンターを三軒ほどはしごする必要がある。移動が多いぞ。一か所で三台も自転車をまとめて買うのは足が付くし同時に三台運ぶような車を所持していない。昔は軽トラがあったが今は手放してしまっている。
ホームセンターに着いた。いつもの行きつけじゃない所だ。なじみのホームセンターは足が付く可能性が高いからな。そして出来るだけ同じメーカーの同じ種類で安いものを探そう。大きさや形にこだわるつもりはない。乗れるならそれでOKという中で、一番安いのを見繕う。
ふむ……安くて二万円弱というところか。三台で六万。出せない出費ではないが……何か他に方法は無いだろうか。
中古……中古か。中古でも状態が悪ければ中で修理するわけにもいかないし、それこそ本当に打ち捨てられた自転車という感じがする。それはそれで寂しいし自分が使う時にも違和感があるだろう。やはり新品でごまかしてしまうほうが良いな。都合のいい事に、今の車は後部座席を倒せば自転車一台を積み込むことが出来る。
それぞれの店で一台ずつ買って、保管庫に順番に放り込んでしまおう。そう決めると、シティサイクルで一番安く売っていて即日納品ものをチョイス。まず一台お買い上げだ。
自転車の盗難登録をするかどうか聞かれたが、盗難の心配はある意味無いので大丈夫だろう。むしろ足が付く分しないほうが得だ。
とりあえず一台を手に入れ、車に無理やり詰め込む。とりあえず積んだままにしておいて一旦家に帰る。家で包装や説明書を全部外して今すぐ乗れる状態にする。ちゃんと油もさしておこう。最近の自転車はハブ毛ついてないんだな。
試しに百メートルほど乗ってみるが、問題ないようだ。これで一台目はOKだな。後はカギを保管庫の力で外せば準備完了だ。次を買いに行こう。二軒目は隣町の同じ系列の店だ。多分同じ形の自転車が安価品として置いてあるはずだ。
車を飛ばして隣町のホームセンターへ向かう。目論見通り、同じ型の物があった。少し色合いの違うものを購入する。値段は同じだった。同じ価格で同じものを購入し、同じ説明を受ける。初めて聞くようにしながら既に意識は三軒目をどこにするかで悩んでいた。
家から近い順に一、二、三と選んでいれば、そのほぼ中央にある俺の家のある地域が特定されやすくなる。ここはさらに隣町へ向かっていくほうが良いな。
系列のホームセンターはこの辺にしかないが店舗は何か所かある。片道一時間圏内に六店舗もあるのでランダムに選べば特定はされにくいだろう。あえて直線形に店を選んでいこうかな。
自転車を積み込むと、もう一度家に帰る。さっきと同じ手順で同じことをし、同じように動作チェック。よし、動くな。当たり前か。保管庫に二台目を収納した。
自転車 x 二
自転車 x 一
この別になっている自転車は今朝乗っていた、俺が時々外に出して使っている自転車だ。メーカーも型番も違うので別物として認識してくれている。二台のほうは色は違うが全く同じ型式の自転車なので同じだと認識してくれている。よきかな。しいて問題があるとすれば、この自転車代は経費で落ちないだろうなぁということぐらいか。
さて、三台目を買いに走るか。時間はまだ余裕がある。一番遠い所へ行って帰ってきてみても大丈夫だろう。
車を走らせること四十五分、家からそこそこ遠い位置にある同系列ホームセンターへやってきた。同型式の自転車を三度購入する。三回目の説明も飽きてきた。スキップ機能が欲しい。ついでに空気入れも買う事にした。中で空気が抜けると大変だからな。
自動車に詰め込むのも三回目だ、車の天井に軽くハンドルの跡がついてしまっている。元に戻るかな……戻ると良いが。
ついでに他の買い物もしよう。たしか排泄用品がそろそろ底をつきかけ始めて……うん、保管庫のリストで確認したが確かにそろそろ買い足してしまったほうが良さそうだ。他に足りなくなってるものはないかな。紙皿と割りばしを補充しておく。特に紙皿は食器としてもメモ書きとしても使える万能素材だ。
先日買い物行ったばかりだから足りないものは……メモ帳を見直すと、机という記述を見かける。思い出した。一人用でいいので机が欲しいんだった。良いサイズのミニチュア机を探そう。早速キャンプコーナーに出かける。
机と言っても大きさはいろいろだ。ファミリー向けのビーチテーブルみたいなものから、簀の子に足をつけただけみたいな簡素なものまである。ここは椅子に高さを合わせて、簡素な簀の子タイプを使ってみようと思う。
机か……俺はふと、布団置き場に散乱していた紙皿を思い出す。あそこに机があればみんな机の上に整列させて紙皿を置くようにするのではないか? 小西ダンジョンは妙に治安が良いというかまともな人が多いように感じられる。
あそこに机一つ置いておけば、大事な要綱は机に並べられ、感想などは縦積みにして管理されるのではないか。大きさは……この際大きさは無視で良いか。すると目の前に丁度よい高さに調節できる三つ折り式の机があった。
これ、使えるな。これも買おう。机二つで一万三千円ほどだ。これならいいだろう、経費にもできそうだ。買ってしまう事にする。
そして机で思い出したんだが、小西ダンジョン据え置き用の大き目のテントを用意するんだったな。ちょうどいいサイズで自立式の物はあるだろうか。
二万円ぐらいでちょうど良さそうなサイズなものを見繕った。ペグを打たないで四人用というのはそこそこお値段が張るのではないかと覚悟していたが、そうでもないらしい。天井の低さは少し気になるが、スペースは広い。
テントの真ん中でグルグル回っても十分なスペースがある。四人用なので多少の無理は利くし、立てっぱなしにしておくならこれで十分じゃないかな。
思い出した。文月さんに洗剤を頼まれていたんだった。液体タイプのほうが良いかな? 粉のほうが良いかな? 無香料の物を両方買っておこう。後は金だらいか。あるかな……あった。直径六十センチもあればいいだろう。
後は……うん、必要な物はそろってる気がする。メモ帳とにらめっこしながら買うものリストと保管庫の中身とカートの中身を見比べる。
合計で四万円ほどの雑貨品を買い込むと三軒目のホームセンターを後にする。買い物は終わった。ここの系列のホームセンターは必ず隣に同系列のスーパーが建設されている。夕飯はここで見繕うか、それとも適当な店に入るか。
ふと、目の前にインド・ネパールカレーの文字が目に入る。カレーか。そういえば最近食べてないな。今日はここにするかな。持ち帰りもできるらしい。出来立てに比べれば旬を過ぎてしまうが、保管庫がある以上ほぼ出来立てで食える。買って家に帰って食べよう。
扉を開けるとカランカラーンというよく聞く鐘が鳴る。
「すいません、持ち帰りできますか」
「モチカエリ、デキルヨ。ナニニシマスカ」
ネパール人……だろうな、店員さんが対応してくれる。
「メニューください」
「メニュードウゾ。アト水ドウゾ」
メニューを開いて持ち帰りの出来るカレーとナンを選ぶ。今俺の胃袋はナンナンだろう。お決まりのプレーンナンか、ハニーナンか、チーズナンか。チーズナンは少し甘みの加えてある奴だろうか。これにしよう。
ランチセットの持ち帰りもできるようだが、夕飯はガッツリ食べても良いだろう。あえて単品でそれぞれを注文する。
次はカレーだ。マトン・サーグ・チキン・キーマ・ダール……いろいろ選べるな。これは二つ注文して余ったらご飯と合わせて食べるのがいいな。
「持ち帰りで。チーズナン、マトンカレー、チキンカレーを一つずつ。辛さは普通で」
「ワカリマシタ。オマチクダサイ」
待ってる間に冷えた水を飲む。頭の上のモニタにはボリウッドめいたダンス動画が流れている。どこかの動画サイトならナンにでも合うとタグが付いてそうなダンスだ。踊りは解るが何を歌っているのかは解らない。が、つい熱中してしまう。
気が付けば数分ほどして、注文のカレーセットが出来上がったらしい。ビニール袋にはアルミホイルに巻かれたナンとプラスチック容器に入ったカレーが二つ入っていた。
「オキャクサンイッパイタベソウ。ナンサービスシテオクヨ」
「あぁ……ありがとうございます」
サービス満点のようだ。有り難く食べさせてもらう事にしよう。車に戻って、冷めないうちに保管庫に収納しておく。
チーズナン x二
マトンカレー x一
チキンカレー x一
……ナンサービスしすぎでは? おれは訝しんだ。ナンをサービスすると言われたら普通はプレーンナンではないのだろうか。経営大丈夫か。
まぁ、貰ったものは有り難くもらって有り難く食べさせてもらおう。チーズナンは大きさからみるにピザのSサイズぐらいのものだ。ピザSサイズを二個か。食べきれるかな。昼を早く食べたから大丈夫かな?いざ夕飯になったら解るし、食べきれなかったら明日の朝に回そう。
車を走らせ自宅に戻る。自宅に戻ったらまた自転車のセッティングを終えて保管庫に入れる作業が待っている。それが終わるころにはお腹もすくだろう。ちょうどいい感じにほぼ出来立てのカレーが食える。結構幸せな時間を過ごせそうだ。
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