152:【水魔法】を使ってみる 実践編
さて、三層である。出てくるゴブリンとグレイウルフを物理的にひたすら殴り続け、四層の階段まで歩ききる事にする。スキルの実践もしないのでいつも通りの狩り、という感じだ。
文月さんも【水魔法】の訓練から解放された気分なのか、のびのびとゴブリンの頭を思い切り殴っている。ストレス解消に役立っている事だろう。
「あー普通に殴るほうがやっぱり楽だわ」
やはり使い慣れた槍を振り回すほうが楽らしい。攻撃スタイルはやっぱり近接戦闘がメインか。だとすると補助でどこまでスキルを使えるようになるかだな。
槍を左右にクルクルと器用に回しながら現れたゴブリンに向かって殴りつける。すると、狙ってない二匹目に対してウォーターカッターを射出しだした。致命傷にはならないがゴブリンの体を切りつけ、それなりのダメージを受けているようだ。
「なるほど、こういう感じで牽制できるのね」
「練習は終わりじゃなかったっけ」
「練習は終わり。無理しない実践してるところ」
左様か。まぁ無理に使わないなら問題ないだろう。しかし、俺のやることがあんまりないな。カバーに回るか。
なんだかんだで練習延長戦が開始されたが、こっちの手数が増えただけでやってる事とやってるペースはいつも通りなのでまぁ問題ないな。
四層の階段に向かいつつ、ゴブリンを片っ端から倒していくいつも七層へ行くときの戦い方だ。今日はそれに一手間加えてより無駄な動きを減らしたスタイルで行く。
ゴブリンが三体襲ってきても一体相手にしながら二体に牽制を入れることで次の動作に移りやすくなっている。こなれてきたな。後はフレンドリーファイヤーにだけ気を付けなければいけないが。
「それ、俺に当たってもダメージになるかもしれないからそれだけお願いね」
「できるだけ遠くの奴を狙うようにしてみる」
ゴブリンの間ぐらいなら大丈夫だろう。これがワイルドボアみたいに距離が更に開く相手だとダメージはまだ期待できないかもしれないな。
四層への階段へはスムーズに通り抜けることが出来た。会議と練習でゆっくり来たため、普段なら六層へ潜っている時間だが、正午になった。
「これは四層行って五層に入る前に小休止入れようか」
「そうしますか」
そのまま四層へ突入する。四層にお客さんは……二パーティーほど居るような気がする。なら五層へ真っ直ぐ行けそうだな。
「そういえばソードゴブリンとゴブリンって違いは武器だけなんですかね」
「体格は一回り大きいからそういう訳でもないんじゃないか? こっちだと攻撃過多というか、とにかく殴られないことを優先してたからどのくらい力を抜いて攻撃すればいいかなんて試したことないや」
「やってみますか」
そういえばパチンコ玉飛ばした時も一発では吹き飛ばなかった覚えがある。実際にどのくらいの差があるのか。ちょっとだけ興味がわいてきた。ソードゴブリンとゴブリン、耐久力にどれだけの差があるのか。まず、ソードゴブリンの団体を探すところからだな。とりあえず階段への道に沿って真っすぐ歩くと、ゴブリンだけの集団と出会った。
「すまん、君らじゃない」
一言謝ると素早く処理してしまう。時間を取る時はちゃんと取り、じっくりやる時はじっくりと。疲れずにモンスター退治をする時はそれが大事だ。うっかり前後で挟まれてしまう事も有るからな。
「でませんねソードゴブリン」
「普段ならそろそろ三匹ぐらい出てもいいのに」
雑談しながらも気配を察知しながら歩く。気配のするほうに顔を向けてみるが、やはりゴブリンの集団しかいない。ぐぬぬ、どうしてこういう時に限って出て来てくれないんだ。
更に十五分ほど歩きまわってみたが、見事にゴブリンばかり。段々文月さんも苛立ってきたのか、ゴブリンがウォーターカッターで一撃で切断されて行く。怒りゲージと共に威力が増している気すらする。
ソードゴブリンが現れたのはそこから更に五分経ってからの事だった。
「やっとでた! 覚悟! 」
やる気がみなぎっている文月さんからウォーターカッターが出力される。高圧の刃に押されてソードゴブリンの首が半分ほど切れる。ゴブリンの時は完全にスッパリといっていたから、やはりソードゴブリンのほうが少し強い、とみなすことは出来そうだ。
「やっぱりソードゴブリンのほうがちょい強めなんだなぁ」
「そうみたいですね」
残りのゴブリンを処理しながら、やっと落ち着きを取り戻した文月さんと二人結果について考える。次もう一回来てくれたら、同じ威力で同時に二匹に飛ばして威力のほどを確かめるのが確実性が増すのだが。
次のグループに期待しよう。またすたすたと歩き回ると、今度はそう間隔を開けずにソードゴブリンご一行様が現れてくれた。
「できるだけ同じ威力をイメージして打とうか」
「おっけー……そいや」
二枚の水の刃が同時にゴブリンたちを襲う。スピードを上げているのか、ぼんやりしてると見切れないぐらいの速度だった。ゴブリンのほうは即死して黒い粒子に還ったが、ソードゴブリンのほうは致命傷ながらもまだかろうじて生きている。
「これもスキル後学のため……恨んでくれるなよ」
「恨んでなかったらなんで襲ってくるんでしょうね、本能? 」
「かもしれん」
死にかけのソードゴブリンを蹴り飛ばすと、その威力でもって首が完全にちぎれ、ソードゴブリンは黒い粒子に還った。残りは文月さんが普通に槍で対処している。
「うーん、まだスキルに使われてるって感じはしないですね。やっぱりぶん殴ったほうが早い」
「なら、伸びしろはあるな」
どこまで今の攻撃で対応しきることが出来るかちょっと楽しみである。そして五層への階段に着いた。小休止の時間だ。
階段を背にして二人腰を下ろす。さっき休憩してから一時間ぐらいしか経ってないが、休めるときに休むのは大事だ。
「どう、スキル楽しい? 」
「楽しい! でもお腹空きますね」
「それはスキルの使用料金みたいなものじゃないかな」
そういえば、六層でダーククロウをまとめて狩った後の七層で食べるご飯も美味しい気がする。キャンプ特有の美味しそうではなく、これもカロリー不足を体が伝えてくれていたのかもしれない。
「スキルの使用料金ですか。そういえば保管庫スキルは常時使用してますけど、常にお腹空いてたりします? 」
「しない。これは俺の想像だけど、中での時間経過で消費・もしくは移動されるべきエネルギーあるじゃない。冷めていく弁当とか温くなっていくコーラとか。その熱エネルギーの差とかが使用料金として天使の分け前みたいに消費されてるんじゃないかなーと」
そうじゃないと、温くなっていくコーラの説明がつかない。保管庫内部でそれぞれが冷え合ったり温め合ったりしないのなら、内部で消費されて行く熱エネルギーや蒸発していく水は何処に行くのか。その消費・補充されるエネルギーが保管庫の維持費になっていんじゃないか? というのが今のところの俺の予想だ。
「まぁ、でも射出する際は俺の何らかのパラメータを消費してる事に間違いはない。出し入れは別枠ってことじゃないかな」
「へー……水を生成するエネルギーってどのくらいなんでしょう? 」
「計算したことないから解んないし、多分誰かに計算してもらっても理解できないと思う。とりあえずそういう仕組みになってます、でいいんじゃない」
スキルにおける消費される何らかの物質についてとか、それだけで論文になりそうだが、仮定として存在するエネルギーがまず証明できないからなぁ。
「前にモンスターが黒い粒子に変わる時、あの黒い粒子を体で吸収してるんじゃないか、みたいな話したじゃん。あれを消費して使っている、という仮説はどうだろう」
「なら、よりモンスターたくさん倒してる人のほうがより強いスキルを使える事になる、と。それは信憑性が高そうですね」
文月さんは今適当に考えた話に納得する。実際のところはどうなんだろうな。
作者からのお願い
皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。
続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。





