15:スキル
ダンジョンで潮干狩りを
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外に出ると、もう日が暮れ始めていた。手早く受付を終わらせるとお互い頭を下げて彼女とは別れた。
「パーティー組まれたんですか?」
出口受付嬢がそう尋ねてきたが「たまたま一緒に出ただけですよ」とごまかしておいた。大学生とこんなおじさんがいきなりパーティーを組むなんて事はあり得ないだろう。だからこそ聞いたのかもしれないが。
査定カウンターに今日の戦果をどちゃどちゃと渡す。早速目の前で数え始める査定担当の職員さん。
昨日と同じぐらいだからあまり時間はかからないだろうと思っている。
三分ほどで数え終わると、またレシートを発行してくれた。
「もうすぐ閉めちゃう時間なので急いで換金してくださいねー」
早く帰りたいのだろう、急かされてしまった。
支払いカウンターでさっきの女性とすれ違う。心なしかホクホクとした表情をしていた。稼ぎが良かったんだろうな。
「支払いお願いしまーす」
「はい、承ります。今日もスライムですか?」
「ええ、今日もスライムです」
「お疲れさまでした。またどうぞー」
帰り道。今日も良く働いた気分だ。今日は夕飯何喰おうかな、とバッグをごそごそしているときに気が付いた。
あー、オーブのことすっかり忘れてた。
◇◆◇◆◇◆◇
家に帰ってからバッグからオーブを取り出す。手に持つとまた声が聞こえた。
『【保管庫】スキルを習得しますか?? Y/N 残り二千五百七十二』
手に入れた時と言ってる内容が異なっている。残り二千五百七十二とは何だろう。
しばらく考えた後、もう一度手に取ってみる。
『【保管庫】スキルを習得しますか?? Y/N 残り二千五百七十〇』
残りという項目が減少している。これは使うまでの残り時間という事だろうか。俺は急いでネットでスキルについて検索した。
検索の結果わかったのだが、スキルオーブはドロップしてから四十八時間の使用猶予時間があり、その時間が経過すると自然に消滅すること。つまりこのカウントダウンは残り何分か、ということだな。
【保管庫】に類するアイテムボックスやストレージ、インベントリ等に代表される持ち物を異次元に仕舞いこむ系のスキルオーブはあるだろうと予測されているが、まだ使用した/所持しているという報告が無い。
もし存在するのならその価値はいくらになるかわからないこと。俺はものすごい確率ですごいものを手に入れたんじゃないか。
そして、スキルオーブのまま売却する方法はないかと探してみたが、安全そうなスキルオーブの取引サイトは事前登録として身分証明書と資産審査が必要らしく、今の俺の手持ちの金では売りようがないことが判明した。
疑問点は三つだ。
一、ダンジョンができてから三年経つが、三年もあればスライムは何十万匹、何百万匹と狩られてきたはずだ。そのスライムが今までドロップをしたことがないというのはあまりにも確率が偏っている。
二、意図的にドロップ情報を伏せられている可能性のほうが高いのではないか。
三、【保管庫】スキルがダンジョン外でも使用できるスキルの場合、スキル所有者の利用価値は無限大になる可能性があるのではないか。
一については出てしまった以上しょうがないという事にしておく。むしろ疑問の解答に近いのは二のほうで、【保管庫】スキルが想定以上に利用価値の高いスキルと思われる。
【保管庫】という名前から察するに、四次元ポケットみたいなものを扱えるのではないかと考える。
その上で三について冷静に考えると、中身を好きなように出し入れできるならば運送コストを限りなく安くすることができる。人が移動するだけで物も移動できるのだ。トラックや船なんて必要がなくなってしまう。物流革命どころじゃない。
それどころか、海外で金を買ってきて国内に持ち込むだけで消費税分の脱税が出来てしまうことになる。犯罪組織が囲い込みに走り、よくて奴隷扱いになる。
事前にこういう細かい所も調べておくべきだったが、まさかスキルオーブがドロップするとは思わなかったし、こんな貴重なものが出てくるなんて誰が予想できようか。
自分で使う場合のメリット・デメリットを考えると、一番いいのは「こっそり使う」という選択肢を選ぶのがベストだと思われる。覚悟を決めよう。
俺はオーブを三度手に取る。
『【保管庫】スキルを習得しますか? Y/N 残り二千五百六十』
「イエスだ!」
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