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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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144:通常勤務 1/4



 朝だ。ダーククロウの枕を詰め替えたおかげか、調子が良いぞ。やはり新しい枕という物は寝心地が良いものだ。ありがとうダーククロウ。金も貯まってきたし、自前のじゃなくて本格的なメーカー製品の枕を購入することも辞さない覚悟だ。


 いつも通りのトースト二枚に目玉焼きの朝食を食べると、羽毛枕のお値段を検索し始める。


 ダーククロウ、羽毛、枕……うん、三万円するのか。出せない金額じゃないが、きっと経費では落ちないだろうな。経費で落ちない三万円か、経費で落とせないこともない自作か。これはしばらく自作して、ヘタッたら交換する、で解決だな。


 自分で使い倒していくとなれば、自宅用と外泊用の二つ作っておくと便利だな。とりあえず枕カバーをもう二つ用意しようと俺は心に刻んだ。多分今日が終わるまでに忘れるだろうからメモっておこう。


 昨日のスレは大いに盛り上がり、オフ会兼検証会をどこかですることで確定のようだ。検証者達は全国に散らばってるだろうから、交通の便が悪すぎる小西は周りに宿泊施設もないし選択肢には入らないだろうな。まぁ選択肢に入ったところで何人集まるのかは知ったことではないが。


 さて、今日は朝から普通に潜ろうと思う。定期が切れるまでは出来るだけ小西で戦っていたい。一日十万そこら稼げるのに月間二万もしないような定期券に執着するのかと言われそうだが、二万円を笑う者は二万円に泣く事も有るのだ。使えるうちは使ってしまいたい。


「今日来る? 」 レインで確認を取る。

「講義。明日は一晩大丈夫」 返事を確認する。


 やはり相棒が来るかどうかは大きな戦力増強になる。四層で二時間狩りをするよりも九層を雑談しながら軽やかに一時間狩りをしたほうが儲けも大きい。精神的にも楽だ。


 今日は軽めに潜るか。枕もう二つ分の羽根を獲得したら四層に潜るかな。つまり七層へ向かわずに六層の二番目の木にタッチして帰ってくる感じか。それでいこう。武器の在庫も増えるしな。


 よーし頑張って稼ぐぞ。さっさと着替えて装備を確認し、荷物をできるだけ軽くすると意気揚々と家から出陣する。今日は昼食をコンビニで調達していこうか。


 家からすぐのコンビニに寄る。前にペペロンチーノを買って結局食わずに帰った事がある。あの二の舞にはなるまい。出来るだけ手軽に食えて塩分を補給出来て味のするもの……塩むすびか。


 銀シャリ好きにはたまらん一品だが、ダンジョン飯としては少々味気ない気もする。まぁとりあえず候補に入れておく。冷めても美味しいしな。


 後はゴミにならないようにと考えると、おにぎりがやはり筆頭か。次がサラダチキンなんかの小さくて栄養価の高い奴だ。しかし、サラダチキンを齧るのとカロリーバーを齧るのとあまり違いがないように思える。


 やっぱりパスタに落ち着くな。カルボナーラをチョイスするか。フォークと袋は付けてもらおう。コンビニのレンジでアチアチに温めると、コンビニを出てコッソリ保管庫にしまい込む。これで準備は良いだろう。


 電車に乗る。サラリーマンに紛れてツナギのまま出勤するおじさんに化ける事になるが、今日はスーツ姿が少ない。その分私服の若者や高齢者が多い。


 こちとら毎日が休日出勤なのであまり心に響かないし、日曜日の夕方のアニメを見る事もないので月曜日が億劫になることもない。その分毎日が夏休み最終日の気分ではあるが。


 バスに乗り換え、揺られて行く。探索者らしきパーティーが同乗している。彼らは何層まで潜るのだろう。荷物の少なさから、少なくとも七層までは来ないんだろうなという予想をする。小西ダンジョン前バス停に着いた。みんな降りた。


 早速ダンジョン前の受付に行く。今日は朝一でダンジョン開場を待ってる人はそこそこいる。余裕を持って狩りを楽しめそうだ。そのまま入ダン手続きを済ませる。


「今日中に戻る予定です」

「解りました。お気をつけてどうぞ」


 一層のスライムと戯れたい気持ちを抑えに抑えて苦しみながら二層へ向かう。真っ直ぐ速足で駆けていくと二十分で階段にたどり着く。


 二層から三層へは道中のグレイウルフを狩りながら進む。その分遅くなるのだが、タイムアタックをしているわけではないので気にせずに出てくる先から一掃していく。ドロップはきっちりと拾っていく。


 三十分ほどで三層の階段にたどり着く。ドロップは肉と魔結晶が少々。保管庫に入れておく。数が溜まったら中華屋に卸しに行くか。


 行きの三層も駆け抜けていく。昨日みたいにゴブリンと戯れる時間は今は取らない。真っ直ぐ通り抜けつつ、道中に現れたゴブリンはきっちり処理していく。ヒールポーションが出たら美味しいからな。


 緊急用のヒールポーションの在庫は十分だ。今日出た分は全部査定に回してしまおう。先頭を走っているからか、ゴブリンと出会う回数はそこそこ多い。魔結晶が溜まっていくのでこれも立派な報酬としてきっちり拾っていく。


 ほぼひき逃げのような恰好でゴブリンを出会うごとに葬り去っていく。ひき逃げされたほうは堪ったものではないだろう。ひき逃げを三十分ほど進めていくと次の階段が見えてきた。四層の階段だ。


 後ろは引き離したな、そろそろ普通の移動速度に戻そう。ここからは儲けられるエリアだ、急ぐ必要はない。早速ソードゴブリンとゴブリンの団体様のお出ましだ。丁重にお出迎えせねばならぬ。


 そういえばソードゴブリンから剣だけ奪って逃げたらどうなるのかね。やっぱり扱いがゴブリン未満になるのだろうか。ソードゴブリンにとっても剣は誉の象徴かもしれん。今度気が向いたときに試そう。


 こちらの清廉な思念を読んだのか、ソードゴブリンが一歩後ずさる。そこまで嫌がることもないだろうに。ささっと近寄ると思い切り剣を振りかぶってきた。が、剣が振り下ろされる前に俺がグラディウスで貫くほうが速かった。抜いたのはそちらが先だ、文句は言うまいな。


 あっという間にソードゴブリンが黒い粒子に返還されて行く。続いてお付きのゴブリンも順番に丁寧に、かつ確実に仕留めていく。相手が攻撃モーションに入りきる前に懐に潜り込むのがポイントだな。素早さがあればだれでもできる。


 出たてほやほやのゴブリンの魔結晶を拾いつつ、五層の階段へゆったりと向かう。焦る必要も急ぐ必要もない。まだ朝の十時だ。七層で一泊しているかもしれない連中は知らないが、朝一番に四層へ来る人間はそう多くない。小西の密度で言えばまず居ないと言っていい。


 つまりこっから先出会ったモンスターは俺の物だと主張できるという事だ。美味しさが溢れるぜ。道中をうろついているソードゴブリンの集団を物の数とも思わず一方的に叩き潰しながら五層の階段を目指す。


 ゴブリンソードかヒールポーションの一本でも出ないかなぁなどとぼやき、魔結晶を拾いながらの一人ダンジョン旅行だ。旅行という割には通いなれた道で、今更曲がり角を間違えたり道を外れたりはしない。行く道を正しく記憶していくのも探索者に必要な要素の一つだ。


 まぁ最悪地図と照らし合わせながら進めばいいわけで、迷っても六層への到着が遅れるだけでロスにはならない。どうせ後でここで狩りをするんだ、タイミングが早いか遅いかの違いだけだろう。


 四層でゴブリンの集団と戦いつつちょうど三十匹目でヒールポーションが落ちる。よし九千円の利益が出たぞ。これだけでコンビニバイト十時間分だ。美味しい商売だぜ探索者ってのはよぉ。


 命を張ってるからその代金分が違うと言いたいが、コンビニ強盗なんてこともあるからあまり変わりはしないのかもしれない。そうなるとコンビニ店員の給料が安すぎるのか。客対応レジ打ち品出し発注収納宅配便受付揚げ物製造と幅広い仕事量を求められる。これはあれだな、時給千五百円ぐらいでも問題なさそうだな。


 自分の仕事を時給換算すると移動時間こそあるものの、集中して戦えば時給六万円ぐらいの稼ぎを出すことは出来る。前の職場の給料と拘束時間を思い返すと、良い職場だなここは。モンスターとのふれあいや癒しもある。気分が乗らなければ途中で帰っても良い。なんてすばらしい職場なんだ。


 歓喜に打ち震えながら目の前にいたゴブリンを真っ二つにする。ゴブリンは左右に分かれた後、黒い粒子と化す。後にはヒールポーションが残されていた。これで二本目か、中々テンポ良いな。


 その後も四層で幾度かの戦闘を繰り返しつつ階段へ向かった。さすがに三本目が落ちることはなかったが、ソードゴブリンの魔結晶三個とゴブリンの魔結晶十二個をドロップとして手元に加えた。


 贅沢を言えばゴブリンソードが欲しかったな。四層へ戻ってきた後で回収がんばりますか。とりあえずメインミッションであるダーククロウの羽根を集めるべく、五層へ降りた。



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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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[一言] 商店街とかにあるふとん屋さんに材料持ち込みで リメイク・打ち直しの依頼をすれば安く済みそう? 多めにもっていって残りはギルド通さず買い取ってもらえるかも?
[気になる点] 「今日来る? 」 「講義。明日は一晩大丈夫」 付き合ってる二人みたい……いや、まさか不倫カップル?(笑) 同じような感想があって笑った。
[気になる点] 〉経費で落ちない三万円か、 だめかぁ〜。ドロップ品の市場調査とか、ダンジョン宿泊用備品とか。 でも使用済みも混ぜて売っぱらうなら市販より自作か。 [一言] 〉「今日来る? 」 レインで…
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