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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三十一章:年度末に向けて

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1413/1416

1413:弦間さんのダンジョン考察

 寒いので布団から出る前に暖房ではなく熱変動耐性のスイッチをオン。布団から出る瞬間寒い! と思う間もなく俺の身体の暖房のスイッチが入ったので素直に気持ちよく起きることができる。むしろ布団の中よりも更に暖かくなった気持ちさえある。


 今日も元気に布団から立ち上がり、今日ぐらいは布団を陰干ししておこうと、畳まずに裏返してそのまま放置。後はこの部屋の湿度に合わせて布団に呼吸をしてもらうことにする。そうすることで自然に乾燥していくらしいのでそのまま干すような形にしておく。


 いつものゴキゲンな朝食を食べながらニュース。いつもの弦間さんのダンジョン解説コーナーが始まった。今回はニュータウンダンジョンについての解説をするようだ。ここについてはあんまり俺は詳しくないからな。弦間さんがどれだけの情報量を持っているのかが気になる。


「このニュータウンは計画されて分譲され始めてから少子高齢化が問題になっている地域ですね。空き家もかなりの数でてきていてですね、このままだと二十年後には家屋の耐久年数も込みで完全に過疎化する可能性が指摘されている地域なんですよ。おそらくですが、ダンジョン庁とダンジョンマスターが示し合わせてですね。まあ方法は例の通訳さんを通すですとか、最下層でダンジョンマスターとコネクションがある探索者を通して場所を指示してとかですね。詳しいことまでは解りませんがここにあえてダンジョンを立てることで、どのような周辺変化を行わせることができるのか、という実験をしているのではないかと思います」


 弦間さんの発言にキャスターが問いを投げかける。


「実験ですか、具体的にはどのような実験が行われているのだと考えられるのですか? 」

「例えばですが、エレベーターが使えるようになったダンジョンの周辺地価は上昇気味になり、空きアパートや空きマンションの場所も埋まっていくし、周辺には商業施設が建ち始める、といった具合の現象が成果として目撃されています。おそらくはこのニュータウンダンジョンもですね、その一つのモデルケースとされている可能性が高いですね。他の三つのダンジョンもそれぞれ、人口や集客が離れ気味になり運営が困難であったり、インターチェンジダンジョンについては周辺に何もない広い土地をあらかじめ確保できる状態であったところからスタートしています。これは、無人の荒野にダンジョンが立ったとして、通勤路さえ問題なければ探索者が通うようになるのか? という実験なのではないでしょうか。これは……」


 ふむ、意外と弦間さんそういう話もちゃんと仕入れているのか。さすがダンジョン研究家、ダンジョン周りのことについても詳しくていらっしゃる。ダンジョン庁の思惑を大まかにだが理解しているようにも見える。


「……つまり、ダンジョンに通う探索者を中心とした経済圏を作ることにより人口が東京に一極集中することを防ぎつつも、それぞれのダンジョンにおいて利便性と経済性を兼ね備えた便利なシステムづくりにダンジョンが利用できないか、ということではないでしょうか。今後もダンジョンの踏破や統廃合が進んでいく中で、我々から通いやすく、運送コストや人員輸送コストを出来るだけ少なく出来る中でどれだけのダンジョンを希望通りのところに作ってもらえるのか、また、宝箱のようなダンジョンに備わったシステムによって我々を楽しませてくれるようになるのか、という所に期待したいところですね。後は新しいドロップ品もそうです。エレベーターが日常化した以上、何処の階層でもどんなドロップが出ても持ち帰りやすくなっていますから、新熊本第二ダンジョンのように食品をメインにドロップしていって、ダンジョンの横にダンジョン産食品の直売所が作られて仕入れられ次第販売されていくような未来も見ることができるでしょう。楽しみでなりませんね」


 今日の弦間さんは舌の滑りも絶好調。自分の妄想を織り交ぜつつ、現在までの出来上がっている状態を察しておそらくそういうことなのではないか、というところまで予想を実態に近いところまで組み立てている。ダンジョン庁から情報貰って喋ってる、という陰の噂が本当になっているかのようだ。


「ただ、ニュータウンに居住する人々のほとんどは六十歳以上の高齢者ですから、彼らの納得するだけの説得材料をダンジョン庁が持っているかどうかは疑問ですね。ダンジョンが来ることにより食品や雑貨といった生活必需品を取り扱う施設が近くに移転してきてくれるのか。それを理由にしてダンジョン探索をする人も使うから仲良く利用できるようにしたい、等といった要望。それから、ダンジョンに危険性はないことを改めて説明するとともに、多少物騒に見えるかもしれないが空き巣や強盗のような犯罪が起きる可能性は人の目が増える以上かえって少なくなるのではないか、という根拠と数字を持ち合わせているかどうかはきちんと数字で示して協力を仰がなければいけないところでしょうね」


 現地説得はダンジョンが立ってから行うことになるのか。自治体の長にはあらかじめ話はこっそり回ってはいそうだが、周辺住民全員の合意というのは取れないだろうし、ダンジョンの入り口が実は気軽に動かせる、ということは真中長官すら知らない話なので立った以上しょうがないので探索者を送り込んで安全と経済活動を確保します、という内容で押し通すことになるんだろう。


 前に調べたところ、築年数こそ古いものの物件自体はそこそこあるので探索者がさあ移住作業だ!として住処が見つからないという可能性は低い。流石に大量に押し寄せたらその限りではないが、交通アクセスも自家用車で来ない限りはそこそこの便数を確保できているし、武装してて物騒という以外は問題にはならなさそうである。オープンしてからの続報に期待しよう。


 さて、今日の昼食は何にしようかな……久々に回鍋肉作るか。肉は何にしようかな。余り気味のボア肉でササっと作ってしまうか。ボア肉も毎日茂君に通うだけで二桁ずつ増えていくので、一日限定でボア肉のステーキ屋さんをやっても在庫がまだ余る程度に抱え込んでいる。保管庫に入れてあるし安心パッケージのおかげで賞味期限も気にしなくていい。


 頑張って……今日は肉多めにしていくか。辛みも追加しておこう。ピリ辛の回鍋肉を作ると二人して喉が渇くような形で七十三層以降に行きたくはないのだが、今日は一人だし七十二層までしか行かないし、ちょうどいいな。


 キャベツが一で肉が四。そんな回鍋肉もたまにはいいだろう。ご飯をつけて後は野菜ジュースのパックさえついてれば栄養バランスは多分大丈夫。お手軽飯を作り終えたところで、ニュースに夢中になっていた時間分だけを短縮して結局いつもの時間になった。


 柄、ヨシ!

 圧切、ヨシ!

 ヘルメット、ヨシ!

 スーツ、ヨシ!

 安全靴、ヨシ!

 手袋、ヨシ!

 籠手、ヨシ!

 飯の準備、ヨシ!

 嗜好品、ナシ! 行きに買っていくか。

 車、ヨシ!

 保管庫の中身……ヨシ!

 その他いろいろ、ヨシ!


 指さし確認は大事である。ミルコのおやつだけ行きのコンビニで買い求めていこう。今月限定スイーツか何かがあれば渡したいところだな。こんな寒い日々だが、冷え冷えのスイーツを渡して精々楽しんでもらうことにしよう。たまにはチルド品の納品も悪くないよな。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 いつもの電車、いつものバス。日々移り変わるのは季節と皆の服装。今年はまだ寒くて厚着のままだが、後一カ月もすれば春が近づき徐々に春らしい服装に変わっていくことだろう。


 俺はいつものスーツ姿なのでもちろん変化がないほうに入る。ダンジョン探索者にとっては日々の服装よりもダンジョンの中の気温や湿度のほうが大事だ。


 通勤退勤で多少の寒さに耐えながらも、ダンジョンに入れば一部を除いては基本的に気温は高めの傾向にある。雪原マップぐらいか、寒いのは。でも、雪原マップも外気温からすれば風が吹かないだけ暖かく感じる所もあるので、やはりダンジョン内部のほうが温かい環境で過ごせると言えなくもない。


 やっぱりダンジョンが一番だよ、うん。そう考えながらバスに座り、ダンジョンに到着するのを待つ。今日は一人なので回鍋肉を独り占めできるが、もう一品作る時間があったら何を作っていただろうか。やはり春雨を酢で軽く味付けしてツルっと啜れるものがあっても良かったな。中華合わせの食事の時に考えておこう。


 バスが【小西ダンジョン前】バス停に着き、どやどやと乗客が降り始める。俺も日々の移ろいごとにかまけてないで降りないとな。急げ急げ。


 ギルドに到着しいつも通り入ダン手続きを開始する。いつもの受付嬢におはようございます、ご安全にを復唱した後、リヤカーを引き一層から七層まで手持ちのこまごまとした魔結晶で燃料を支払い、七層へたどり着くと……つまり、いつもの手順だ。


 そこからダッシュして七十層まで下りてきて、後は午前中目一杯七十一層で探索をし、七十層で休憩を取り、午後からは七十二層にかけて更に儲かる場所を探って探索していく。


 七十一層では時々結衣さん達や高橋さん達とバッティングすることこそあるものの、お互い違う方面へ移動することで得られるべき利益を損なわないように注意を払いながら進む。今日も結衣さん達とすれ違いそうになり、お互い九十度曲がって進行ルートを変更、時間当たりの利益を損なわないように動く。


 なんだか慣れてきた……いや、飽きてきた、というほうが正しいだろう。飽きるような仕事をして給料をもらうのが楽しいのか? と言われると、楽しい。いつも同じ作業同じ手順同じコース……これは日によって変わるか。同じようなことをしてあれだけの給料がもらえるならば非常に楽でいい。


 高度にシステム化された作業は単純作業と見分けがつかない。このモンスターが出た、雷撃して倒した、ドロップ拾った、次へ行く、という作業も、それぞれの裏打ちされた強さと努力の結晶であり、単純作業であるようにまで成熟させたのはおそらく俺の努力の結果なのであろう。


 今でこそ気楽に倒しているが、戦い始めた当初は頭をフル回転させてどこにどういう風に雷撃を当てれば一撃で倒すに足りうる威力を与えることができるか……なんてことを考えていたはずだ。はずだ。


 今日も規定時間分の作業を終えて七十層に戻る。そろそろお昼ご飯の時間だ。七十層に戻ろうと階段のところを見ると、いつもなら待機していてくれるサメの姿がない。これは結衣さん達が先に上がっていったのかな? まあ、いないならそれでいい。階段を上がってその場で机を広げ、早速飯の準備をする。


 今日のお昼は肉マシマシボア肉の回鍋肉だ。たまにはこうしてたんぱく質の暴力で体を覆い尽くして、その分しっかり運動して筋肉をつけるように体に働きかけるのも大事。そういう年齢にもなってきた。こっちからうまくアプローチしてやらないと中々筋肉がつかない年齢になりつつあるのでそこはしっかりと体に語り掛けていきたい。


 たっぷりの名古屋味噌と少量の豆板醤で味付けされたちょいピリ辛なその味を確かに感じながら、じんわりと舌に残る痛み。本来ならここに辛みの分だけの汗がプラスされるところなんだろうが、熱変動耐性のおかげか、汗をかくことはなかった。こんな所でも働くとは勤勉なスキルであるな。


 程よく気持ちよい汗をかくのが本来だろうが……うん、汗拭くの面倒だしこのまま汗をかかずにピリ辛を味わっていくことにしよう。辛い物を食べて汗をかかないというのは逆に体に悪い影響がありそうな気はするが、そこまで労わってやらないといけないならこのスキルには難ありということにもなるから注意しないといけないかもしれないな。一応頭の端に留めておこう。


 しかし、回鍋肉以外にもう一品何か作ればよかったな。流石に口の中が味噌と肉一色で少しだけ飽きが来ているし、顎が疲れてきた。やはり春雨サラダ的なものを添えておくべきだったなと、口の中の肉の脂を洗い流すように野菜ジュースを飲むと、ミルコにお供え。


「このお菓子は冷えてるからぬるくなると美味しくないぞ。早めに食べてくれ」


 唱えてからパンパン。お菓子とコーラとミントタブレットは消えた。さて、午後の作業の合間にちょっと世の中の様子でも覗いておくか。スマホを保管庫から取り出し、何か情報を……と、真中長官からレインが入っていた。何かあったのだろうか?

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
弦間さん、目の付け所がいいですねえ 次に会う機会があったらその辺り聞かれるかな?
>武装してて物騒 さりげなく放り込まれる仕込み オレでなきゃ見逃しちゃうね
( ◠‿◠ )
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