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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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141/1245

141:まっすぐおうちかえるつもりだった。


 時間が来た。開場時間だ。今から一時間ぐらいでこの三層にも人が来るだろう。大人しく明け渡したほうがここはお互いのためだ。


 真っ直ぐ階段へ向かい、二層へ上がる。二層から一層へ一直線に戻る。道中のグレイウルフはまぁおつまみみたいなものだ。必要な分だけつまんでいこう。進行方向からドヤドヤと歩いてくる人の音が聞こえてくる。


 そろそろドロップ品をバッグに詰め込んでおくか。今回はダーククロウの羽根は持ち帰って枕に詰めなおすので取り出す必要は無い。それ以外をバッグに詰め込む。中々の重さになったな。


 一層の階段まで来ると人と入れ違いになる。すれ違う人はみんな不思議そうな顔をする。中で一泊して朝一で帰るのはやはりここでは珍しいらしい。もうちょっと中で狩りしてても良かったのかもしれないな。


 ここまで上がってきてしまった以上引き返して再度狩りに走るのもなんか違う気がする。ここはスマートに外へ出てしまおう。


 一層は階段付近を除けばまだまだ一杯スライムがいる気がする。ちょっと潮干がっていくか。いつも行く一番奥のスライム溜まりに向かって進む。


 やはりここはスライムの生産工場でもあるのか、朝一にくると床一面にびっしりスライムが待機していてくれている。まるで俺の到着を待っていてくれていたようだ。総員の歓迎に熊手でもってお答えする事にする。


 グッ、プツッ、コロン、パン。

 グッ、プツッ、コロン、パン。


 何時もの調子で潮干狩りを始める。耳をよく澄まさない限り周りの音が入りにくい構造のこの部屋は、ただひたすらにスライムを潮干狩る命の四拍子を繰り返し演奏する。他には何も聞こえない、ただしんと静まり返った部屋に生命が失われて行くリズムを響き渡らせる。


 グッ、プツッ、コロン、パン。

 グッ、プツッ、コロン、パン。


 はぁ……心が落ち着いていく。染み渡るこのリズムにおれはうっとりとしながら、帰ったら何をするか考えていた。いつも通りエアマットを干し、体を拭いたタオルとツナギを洗濯し、ゆっくりと昼食を取って、仮眠する。


 グッ、プツッ、コロン、パン。

 グッ、プツッ、コロン、パン。


 今日の稼ぎは……ヒールポーションが結構出たからな。ソロとしては格別に売り上げを上げたはずだ。今日の主な収入はヒールポーションにゴブリンの魔結晶とダーククロウの魔結晶、それにボア肉だな。幾らになるか楽しみだぜ。


 グッ、プツッ、コロン、パン。

 グッ、プツッ、コロン、パン。


 ネットで調べる事がそういえばあったな。そうだ、ポーションだ。ヒールポーションランク2は何階層でドロップすることが出来るのか。それを調べよう。それからダンジョン関連のニュースを読み、夕食の買い出しに出かけるのだ。


 グッ、プツッ、コロン、パン。

 グッ、プツッ、コロン、パン。


 それと十層を突破するような人が書いてるブログとかがあったらそれを参考にして、今後の予定を立てていこう。それから、次のダンジョン探索の準備だ。


 グッ、プツッ、コロン、パン。

 グッ、プツッ、コロン、パン。


 コーラの追加の買い出しもついでにしないといけないな。あれ、今家に在庫何本あったっけな。帰ったら確認だな。水は十分な在庫がある、こっちはいいだろう。カロリーゼリーは飲み切った。食事をちょっとでもマシにするなら補充するべきだな。


 グッ、プツッ、コロン、パン。

 グッ、プツッ、コロン、パン。


 食品はどうだろう。家でしっかり温めてから保管庫に入れ、まっすぐ七層に向かえば六時間もかからない。保管庫内なら三分ちょいしか経ってない事になる。まだまだ美味しく食べられる範囲だ。タッパーか何かに入れておけば食事が豪華になるだろう。


 グッ、プツッ、コロン、パン。

 グッ、プツッ、コロン、パン。


 ゴブリンソードは今日は二本出た。後で鞘から出して抜き身のまま保管庫に入れておこう。抜き身にせずとも鞘から抜き出して射出は出来る。しかし、気分的に鞘が無いほうがそれっぽく使えるし、緊急時に鞘から出してそれから……と考える余裕がなくなっている可能性のほうが高い。


 グッ、プツッ、コロン、パン。

 グッ、プツッ、コロン、パン。


 よし、綺麗になったな。部屋中のスライムを全て片付けた。それ以外の部分は他の誰かがやるだろう。来る時もだが、ついスライム潮干狩りに精を出してしまうな。これも日課みたいなものなので仕方ないだろう。


 一層を出口に向かって戻る。他に探索者が居るので戻る途中のスライムはほぼ居ない。おそらく全部狩られた後なのだろう。


 まだバニラバースライムの儀式は続いているようだ、バニラバーを片手にうろうろしている探索者を見かける。よく購入できたな。


 再び増えたスライムのドロップ品と共に今度こそダンジョンから出る。退ダン手続きを済ませ「よく眠れましたか? 」とあいさつをされる。


「昨夜はよく眠れました」と返すと、その足でギルドの建物に入り査定カウンターでいつも通り査定をお願いする。


 今回査定してもらわないのはダーククロウの羽根三百グラムとウルフ肉二パック、ボア肉二パック、それにヒールポーションが四本だ。それらは保管庫に入れてあるので間違って出す心配は無い。


 やはり朝一は暇なのか、それともここ最近のスライム騒ぎで更に手際が良くなったのか、手早く査定を行ってくれる。五分かからず査定は終わり、十七万千二百七十円になったらしい。


 財布の中には数万ほど現金が入れてあるのでこれ以上持ち歩くのは問題だ。支払いカウンターで振り込みにしてもらう。振り込みが出来ることを知って銀行へ行く回数が減った分、日常に使える時間がちょっとだけ増えたのはいいことだ。


 帰りのバスで軽い眠気を催す。四時間仮眠では短かったかな? でもあの敷き布団は悪くない寝心地だった。今日は持って帰らなかったが、後日持ち帰って洗濯しよう。持ち帰ろうとして使用中だったらその時はその時だ。


 結局バスで軽く寝て、終点で運転手に起こされるといういつもの作法を終えると、今度は電車で自宅最寄り駅まで乗る。今度は立っていよう、座るとまた寝るかもしれん。


 フラフラと電車に揺られている間に、明日の事を考える。今日は夜勤のスケジュール通りに、帰る、服を洗濯して干す、昼食、仮眠、買い出し、夕食、ネット漁り、寝る、という順番でいこう。その後起きたら朝食の後どうするかだな。


 買い出しする際に朝食の付け合わせも一緒に購入してしまうか、夕食後に一食分何か作ってしまうかだ。手元にはウルフ肉とボア肉が二パックずつある。簡単なものを作って朝食べようか。それも良いな。


 考え事のし過ぎで電車の乗り過ごしのないように、案内音声は聞き逃さないようにする。さて、モンスター肉……と言うと途端にグロく聞こえるが、ドロップ肉と言うと美味しそうに聞こえるな。


 ドロップ肉で何を作るか。ボア肉の唐揚げとかどうだろう。昼食食べるついでにたれに付け込んでおいて、夕食時に揚げてしまうか。それにしよう。夕食のメニューは決まった。家に着いたら冷蔵庫の中身と相談してから買い出しに出かけるとしよう。


 買い出しするものをメモに取っていく。トイレットペーパー、ティッシュペーパー、足りない野菜、数が無ければコーラ、カロリーゼリーを箱で、後は思い付いたものを適当にだな。おっと、降りる駅に着いたぞ。


 無事に電車から降りることが出来たので帰り道のコンビニで昼食を漁る。野菜は夕食で取るから総菜パンで良いか。雑誌を立ち読みしようとすると、一冊の本が目に入った。最近は探索者専門誌なんてものがあるんだな。興味本位で買ってみるか。パンを二つ三つ適当に選び、目に付いたお菓子と一緒に会計に行く。


 さくさくと歩いて家に着く。さて、手順通りにまずエアマットに水をかけて洗って陰干ししておく。服を部屋着に着替えるとツナギと保管庫の中の使ったタオルを洗濯機にポイして洗う。


 その間に早めの昼食を食べよう。総菜パンもたまに食えば美味しいものだ。飲み物は今日の飲みかけのコーラ。まだちょっと冷えてるな、飲めない温さというほどではない。昼食を三分ほどでさっさと片付けると、唐揚げの下準備に入る。


 しょうゆ・酒・しょうが・にんにく・塩コショウを適当に好きな配合で混ぜ込むと、一口大に細かくしたボア肉を突っ込んで良く揉む。揉んだら冷蔵庫に入れて夕食まで寝かせておく。後は油を用意して揚げれば完成だ。洗濯が終わったようなので洗濯物を干しておく。


 さて、やることは大体終わった。俺も布団で夕食手前まで寝かせておこう。味がじっくり染み込むはずだ。枕の中身を詰め替えると、俺は横になる。



 おやすみ。


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[良い点] 死体を貪り食ってる!って言うと感じ悪いけど、新鮮でジューシーなお肉を頬張っている!と書くと美味しそうに見える言葉マジックみたいなもの [一言] つまりゾンビパンデミック作品なんかは、スーパ…
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