137:思ったより楽だった
本日三話目です。まだの方は二つぐらい戻ってやってください。
八百五十万PVありがとござます。
五層へ降りた。相変わらずの青空が俺を迎えてくれる。しかし、太陽も無いのにどうやって光っているんだろう。今更の疑問だが解決する方法はないし、暗いより明るいほうが良いだろう。片手塞いでランタンが必要な環境で戦闘をするよりも、明るいところで楽しくモンスター狩りとしゃれこんだほうが色々と楽だ。
視界内にワイルドボアは今のところ居ない。ダーククロウは二~四羽が空を飛んでいる状態だ。フンに気を付けて進む。五層で出来るだけ狩りをしていく事も考えるが、六層の爆走ワイルドボアで消耗することを考えると、戦闘回数は少なめのほうが良いだろう。
と、早速ワイルドボアに見つかったのか、こっちへ全力で走ってくる。周りを見渡して誰も居ないことを確認すると、パチンコ玉を射出してワイルドボアの突進の威力を落とす予定だ。ここまで人が居ないなら消音仕様じゃなくても、まぁバレないか。射出速度を上げてプシュンという音を発しながら真っ先に突っ込んできたワイルドボアに当てる。
やはり速度が速いほうが威力は上がるらしく、その場でワイルドボアは力尽きた。早速肉を落としたようだ。距離があるので拾いに行くのが少々面倒だが、ワイルドボアは他にも二匹こっちへ駆け寄ってくる。
目算で距離を測って、先に倒したワイルドボアに近い位置で再び速度の速いパチンコ玉を飛ばす。ワイルドボアはちょうど良いところでパチンコ玉と激突し、黒い粒子に変わる。
残る一匹は進行方向に居ないため、近寄ってくるのをまとう。程よい距離に近づいてきたワイルドボアは、走ってきた距離が長すぎたのか、近くまで来ると速度が落ちてくる。モンスターにもスタミナの概念があるのか。
突進を正面から受け止めてグラディウスを頭部に差し込む。うん、やっぱりこの狩り方が一番楽だな。ワイルドボアは魔結晶を落とした。三匹倒して二個ドロップが出るのは確率が良いほうだ。この肉は七層で休憩する時に俺のご飯になってもらおう。
五層をずんずん進む。ダーククロウは近寄ってきたらバードショット弾で対応する。空中で霧散するダーククロウはボトッと魔結晶を落とす。今日の目的は羽根なんだから、羽根を落としてほしかったな。まぁ、羽根は六層で嫌でも一杯取れるだろうから、ここで無理に狩りをすることはないだろう。
少々駆け足で五層を進む。ワイルドボアは主に左右から現れる。足音が聞こえたらそちらを向き、突撃に備えて構える。やっぱり突進を受け止められる以上、至近距離で仕留めるほうが効率が良い。ドロップを拾いに走る手間も省ける。これが六層だと、数が一気に倍以上に増えるので立ち位置を考える必要が出てくる。
五層を一人歩きながら、襲いくるワイルドボアを一人でこなし、木に留まったダーククロウにバードショット弾を撃ち込み、目に映るモンスターはすべてこちらに攻撃を仕掛けてくると考えていい。
ならば、先手を取って同時に何匹も相手をしない事がソロ狩りの鉄則だ。ゴブリンぐらいの弱さなら何の問題も無いが、ワイルドボアとダーククロウの集団に関しては若干手間がかかる。
ある程度パターン化されているとはいえ、完全に往なしきれているかと言われるとまだNOだ。九層のワイルドボアなら何の問題も無いのだが。さすがに十数体に対して足を止めて対処していては、足を止めてる間に次のワイルドボアが襲ってくる可能性もある。避けるときは避けて受け止めるときは受け止める。その切り替えがうまくできるかがポイントになるかな。
次のワイルドボアが来る。それぞれ別方向、別の距離から襲ってきたため、足を止めて突進を受け止める。原付をぶつけられた時の感覚と言われていたが、体を地面に固定してステータスブーストをかけることで原付から遅めの自転車にぶつかられるぐらいには軽減されている。ステータスブースト様様だな。
ワイルドボアの肉と魔結晶を回収しつつ、六層への階段へ進んでいく。途中の木にはダーククロウが数羽止まっている。再度周りを確認して人が居ないことを確認すると、止まっているダーククロウをすべてバードショット弾で撃ち落とす。はらはらと羽根が舞い落ちる。そしてボトボトと魔結晶が落ちる。今日の目的はこれを枕一つ分、可能なら敷布団一枚分の量を確保することだ。
さすがに五層の密度ではそれだけの量を集めるのは難しい。やはりメインダーククロウは六層に居るアレだ。バードショットの弾の在庫は十分だ。俺は可能な限り羽根を拾うと……あ、これも収納でうまく収納できないかな。イメージする範囲を指定して手をかざし、「収納」と頭の中に念じる。
どうやら範囲はそれほど広くはないが、魔結晶と羽根をうまく手に入れられたようだ。ついでにバードショット弾もいくつか確保できた。保管庫にグラム表示と共に羽根が収納されたのを確認できる。どうやら木そのものを収納することは出来ないらしい。これもダンジョンの仕様だと、そっちについては諦める事にした。
これで六層で大量にダーククロウを倒すことになっても楽が出来るな。アイテムを拾うにも中腰で一々拾う手間が省けるというものだ。より腰が楽になった俺は歩みを進めながら六層の階段へ歩き出す。
三本ある木の内、ダーククロウが止まっていた木は二本だけだった。二本の木に対してバードショット弾を羽数分きっちりと撃ち込み、ダーククロウの集団を一気に倒していく。羽根の回収も楽になったし、俺はスキルをより便利に使う事を覚えられた。
唯一ダーククロウの止まっていなかった三本目の木を通り過ぎた後ワイルドボアの襲撃を受けつつ通り抜け、六層への階段へたどり着いた。ここで小休止を取るのが毎回の事になる。周りを見て敵も味方も居ないことを確認すると、保管庫から冷えたコーラとカロリーゼリーを取り出し胃に入れる。カロリーゼリーは冷やしておいたほうが胃に入った気持ちになれるな。
暫くボーっとする。次は六層だ。六層は特にソロで潜ると激戦だ。数は脅威だ。いくら楽に倒す手段があるとしても、同時に来られると対処が非常に面倒になる。単位時間当たりの体力・行動力がごっそりと削られるので、一緒に七層に行く友が欲しいところだ。小西では贅沢な悩みである。
まぁ、ここまできて独り言を並べ立てても仕方がない、一人で来ちゃったものは来ちゃったのだ。諦めて暴走と生い茂った木のある六層へ降りよう。
知ってる天井だ。天井は無いが、突き抜けたいつもの青空だ。そして一斉にこちらを向くワイルドボア達。サイン会の最後尾はあちらです、順番に列を作ってどうぞ。
どうやらワイルドボアには日本語が通じないらしい。バラバラにこちらへ向かってくる。バラバラなら都合がいい。同時に来られるよりはるかにマシだ。ステータスブーストの籠められた体で一匹ずつグラディウスで突進を受けとめる。ワイルドボアは体当たりするたびに俺の目の前で黒い粒子に還っていく。足元にはドロップ品がぼとぼとと落ちる。ワイルドボアはドロップ率が割と高くて助かるよ。
突進してくるワイルドボアを受け止める事十三回。さすがに腕が痛くなってきた。しばらくは安心して行動できるな。ドロップは肉が三つに魔結晶が三つ。革が出なかったのは嬉しくもあり、悔しくもあり。革だけは出た時に持ち歩かないと怪しまれるからな。魔結晶や肉はナチュラルにバッグに入れたふりして保管庫に入れている。
七層へ向かって歩く。一本目の木は見えている。ほのかに葉の繁りが見えている。きっちり駆除していこう。木まで近づき、ダーククロウの警戒範囲に入ると、さっきまでギャーギャー騒いでいたダーククロウがぴたりと鳴き声を止める。こっちに気を使ってくれている証拠だ。お礼に一撃で仕留めてあげよう。
いつも通り周りを確認し、誰も見てないことを確認する。数はざっと十羽だ、限界まで力を使う必要はない。確実に仕留めるようにイメージを十分割する。
すべてのダーククロウに射線とイメージが通ったところで一羽に一発ずつ狙いを定めてバードショット弾を射出する。すべてのバードショット弾がすべてのダーククロウを貫く。貫かれたダーククロウは黒い粒子とドロップ品に変化し、羽根はハラハラと舞い散り、魔結晶はボトボトと落ちる。羽根が舞い散る様は見ていて美しいが、魔結晶が落ちる音が台無しにしている。
全ての羽根が落ちるのを確認すると木の根元へ行き、木の根元周辺にまとめて【収納】をかける。木そのものや地面は非破壊オブジェクトなので収納できない。俺の保管庫には倒した分の魔結晶と羽根だけが収納された。いやー便利になったなこの機能。
今のところ羽根の量は枕二個分ぐらいという所か。後二本の木で布団一個分ぐらいにはできそうだな。さぁ続いて二本目の木の葉掃除に行こう。二本目の木を目印に歩いていく。
ここは階段を起点に考えると左右方向に二本の木があるが、左側の木を目指すのが七層への道だ。そしてその左側の木にはダーククロウがたくさん止まっている。現に、目の前には良く生い茂った木が見えている。もしド近眼だったら黒々とした葉っぱが生えているだけに見えるだろう。
近寄る間にワイルドボアが合計六匹、こちらに向かってきたがいつものやり方で止めを刺す。倒すための選択肢はいくつかあるんだが、結局グラディウスで受け止めてしまうのが最も楽に倒すことが出来ると感じている。楽に倒せるという事は体にも心にもストレスがかからないという事だ。人が見ていないなら猶更だ。
二本目の木には一本目の木よりも更に多い、およそだが五十前後のダーククロウが居る。これだけ倒せば布団の一枚ぐらいは作れる量が取れるだろう。俺基準で計算すると、一匹当たり二十グラムほどの羽根が取れる計算になる。
「さて、ざっと一キログラムってとこかな。美味しくいただきますか」
バードショット弾をダーククロウに向かって総展開する。おそらく数発は外すだろう。その場合第二射で確実に仕留める。できるだけ多数の目標に向かってロックオンするイメージを展開する。二十……三十……四十……五十。このぐらいで良いだろう。残りは第二射で仕留める。
射出イメージを固めると一斉に射出した。狙いを定めたダーククロウの胴体を貫き、その場で黒い粒子に還る。当たらなかったダーククロウは周りの異常に気付いて上空に飛ぶ。残りは……ざっと九羽。一羽ずつ丁寧に処理していく。無事に全部処理し終わったのでドロップを回収し始める。
ドロップを回収する時にワイルドボアが顔を見せる事があるが、それも丁寧に処理していく。保管庫の中の羽根の量は現在約千二百グラム。羽毛布団一枚分ぐらいだ。予測通りだな。さぁ、さっさと七層へ行って一息入れよう。三本目の木に向かう。
三本目の木にはダーククロウは止まっていなかった。これは楽をさせてもらってると思っていいのかな。足音が聞こえたら後ろを振り返り、ワイルドボアが来ていないかを確認する。足音がする時は大抵視界外からの襲撃だ。予想通り後ろにリポップしていたか。いつも通りの御対応で退場して頂く。
それを最後に六層でのモンスター対応は終わった。七層に誰かいるのかな? ワイルドボアの量がいつもより少ない。俺より少し先に七層へ潜った人が居るのかもしれない。三本目の木にカラスが一羽も居なかったのを考えると可能性は高いかもな。
なんだかんだで目標アイテムを手に入れつつ、無事一人で六層を通り抜けることが出来た。一人でもこのぐらいはできるようになったか。自分の成長を感じるな。
作者からのお願い
皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。
続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。





