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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第三章:日進月歩

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136:ソロ小西 やっぱり潮干狩る

本日二話目です。もう一話あげます。


 

 小西ダンジョンへ着いた。時刻は午後六時、普通なら帰り道に差し掛かる時間だが、俺は一泊するのでこの時間からダンジョンに潜っても何ら問題は無い。小西ダンジョンから帰還する人にとっては今からダンジョンに行くなんて何を考えているんだろうという感じかもしれない。


 が、中で一泊するという選択肢が取れる俺にとってはむしろボーナスタイムがこれから始まるのだ。午後七時にダンジョンの玄関が閉まるのでちょっと急ぎ目に入ダン手続きを済ませる。


「あれ、安村さん今からですか」

「えぇ、宿泊でお願いします」

「解りました、ごゆっくりどうぞ」


 受付嬢と二つ、三つ会話を挟んでダンジョンへ進む。進んだ先にはいつもの一層の風景……よりちょっと寂しいかな。ギリギリまでスライムを狩っていた人が居るのか、狩りながら帰った人が居てそのリポップが間に合ってないのか、空いているという感覚だ。


 とりあえずソロで六層を突破するまでは寄り道せずに行こうと思う。


 ところどころぽよぽよ跳ねているスライムを目の保養にして、時々潮干狩りし、精神の安定を図りながら進んでいく。あぁ、人が居ないっていいなぁ。


 やぁこんばんは、月の綺麗な夜ですね。通りがかりに現れたスライムをナンパする。スライムはぽよぽよと跳ねながら俺の言葉を聞いてくれる。そして足元まで寄ってくるとぐにーっと伸びるようなポーズをとる。


 お、その腰つきはセクシーだね、君の核が丸見えじゃないか。腰に常備されている熊手で有り難く核を掻き出させてもらうとそのまま踏みつける。スライムは伸びをしたポーズのまま黒い粒子へ還されていった。


 よく見ると、通りがかるスライムは俺に気づくとみんな腰を伸ばして必死にアピールしてくる。なんだいなんだい、君達何が望みなんだい。もしかしてこれか? バニラバー目当てかい? まさか、スライムにバニラバーをねだるという集合無意識体でもあるって言うのかい? それはそれで面白い発見だな。それとも、どうせ潮干狩るなら痛くしないでねという降参ポーズなのか。


 どちらにせよやることは同じだ。プツッ、コロン、パン。とダンジョン内にいつものリズムが響く。たまにはバニラバーもあげてみよう。保管庫からバニラバーを取り出すと、半分目の前に出してやる。すると、スライムはセクシーな腰つきを止めてバニラバーに飛びつく。


 もしかして本当に集合無意識体なのか? それはよく解らないが、とりあえずグッ、プツッ、コロン、パン。ドロップが二つ出る。思えばこのドロップのおかげでたくさんのスライム達が昇天することになったに違いない。恨まれても仕方ないのかもしれないが、もしかしたら死ぬ前に美味しいものが食べられたと喜んでいるのかもしれない。誰かがスライムの言葉が解るようになったら是非聞こう。


 一層を駆け足で進むつもりだったが、なんだかんだで潮干がる事三十分、予定より遅れて二層への階段が見えて来た。ダンジョンに潜り始めたころは入り口から階段まで通り抜けるだけで四十分ぐらいかかっていたような気がする。移動が速ければ速いほど狩る時間が増える。十分あればスライムなら五十匹は倒せる。もう五十匹行けたな?と思わなくもないが、今日のメインはここじゃない。


 二層から先は少しペースを落として歩く。一層は走り回ってもモンスターを引き連れる心配は無いが、二層以降はそういうわけには行かない。自分に向いたヘイトは自分で処理する。探索者のルールだ。と、早速グレイウルフが三匹連れでこちらへ嬉しそうに駆け寄ってきた。とりあえず、わーいわんちゃんだ~と抱きしめた後、首の骨を折る。残る二匹は頭から尻にかけて一閃し、黒い粒子に還らせる。


 ドロップは何も落とさなかったが、ダンジョンに帰ってきたという手ごたえはあった。あったかな。ちょっとあったような気がする。


 そのままのペースで三十分、道中十数匹のグレイウルフに絡まれながらも一筋の攻撃も受けることなく、魔結晶とウルフ肉をいくつか手に入れて三層へ降りた。一層は憩いの場、二層は通り道。三層はチョットオイシイ。


 三層へ降り立つと、仄かなゴブリンスメルがする。ゴブリンの気配をあちこちに感じた。ここはちょっと時間かかりそうだな。少し歩くと、小学生ぐらいの緑色の皮膚をしたガキどもが出始める。こんな時間にダンジョンに居たら危ないじゃないか、早くお家へお帰り、と素早く駆け寄るとグラディウスを思い切り叩き込み、お家へ帰してあげる。


 進んでいくと、次から次へ凶器の棍棒を持ったゴブリンが現れてくるではないか。ここは不良少年のたまり場だったか。全員病院送りにしてさしあげたほうが世の中の治安のためだ。俺は笑顔でグラディウスを振り回すと不良少年の塊に向けて突撃を始める。


「ギギ!? 」と悲鳴を上げながら次々に黒い粒子の形をした救急車で運ばれて行く。後にはカツアゲした魔結晶が点々と残されているので、有り難く戦利品として頂戴していく。おっと、合法薬物ヒールポーションを所持していたゴブリンが居たらしい。これも没収だ、没収。


 次に野良犬か、それとも不良少年の飼い犬か。グレイウルフの団体さんのお出ましだ。確か犬はリードが繋いでなかったら即保健所通報で良かったはずだな。じゃあ俺が保健所の代わりに殺処分しておこう。更に魔結晶を没収しながら道なりに進んでいく。もうこの辺の道もすっかり覚えてしまったな。地図を確認せずとも階段の方向が解る。


 それでも三十分ほどすると不良少年はストリートから一掃されたのか、三層の治安は多少良くなった。日が日ならそのまま少年課のお手伝いとして三層に滞留するのだが、今の目的は五、六層だ。警ら巡回はまたの機会にしよう。


 四層への階段の手前で小休止を取る。と言っても水を取り出して一口飲むだけだ。休まず一時間半動いた後の冷えた水は美味しい。これがもう少し先でもまだ冷えたままという事実がより美味しさを加速させてくれる。保管庫スキル様様だな。


 身体の各所をチェックして、身体機能に異常が無いことを確認する。知らないうちに肩の調子が悪いとか腰が痛いとか、そういう部分が無いかどうかだ。この先は少しだけ手ごわくなる。その前に調子を見ておくのだ。


 どうやら異常はないらしい。安心すると四層の階段を降り、より治安の悪い場所へ出る。ここの不良少年は刃物で武装している上に集団行動をしている。これまでで一番危険度の高いエリアだ。野犬が発生する二層三層のほうが治安的にあぶないのでは? とも思うが、どちらにせよ言葉が通じないので同じである。


 四層へ降りるとゴブリンスメルが少し強くなった。ここからはステータスブーストも緩急をつけて使っていく。まだ四層だからと油断して怪我をするのは探索者としてあってはならない。


 暫く五層への道を歩くと、刃物で武装した四人ほどの不良少年の一団が現れた。刃物を持っているという事はこちらに危害を加える気があるという事だ。これはなにがあっても正当防衛だな。刃物を向けてこちらへ向かってくる非行少年に対し、大人の対応をする。


 小盾で刃物を受け流すと両腕をグラディウスで跳ね飛ばして攻撃手段を失わせる。そして最後に首をはね、大人の対応をさっと終わらせる。残りの三人はリーダー格の少年が一瞬で倒されたことに驚きを感じ「ギギギ!?」と叫ぶ。が、叫んでいる暇があったら逃げる準備をしておくべきだったな。


 俺の近くにいるものから順番に補導(物理)していく。棍棒を振りかぶって応戦しようとしてくるものも居たが、振りかぶってる間は首と半身がお留守だ。そこを狙ってグラディウスを捻じ込んでいくと次々に補導(物理)されて行く少年たち。一人で四人も同時に補導するのは結構骨だな。この階層を抜けるまではずっとこんな感じだろう。


 楽をすることは諦めて通り道に居る非行少年たちの補導に精を出す。昼間巡回するお巡りさんが居なかったのか、結構な数の未成年を補導する羽目になった。その分没収された魔結晶やポーションはそれなりの数になったので、収支としては美味しいものになったが。


 入口から数えて約三時間ほどかけて五層への階段にたどり着いた。ここからが本来の目的だ。大分逸脱してしまった感はあるが、精神的には癒されたのでまぁ良いだろう。



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続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1人の安村、やはりサイコパスすぎる。
[良い点] この回は主人公の頭おかしい感じがよく描かれてて好き
[一言] おじさんがゴブリン殺しに抵抗ないのは死体残らないせいもあるのでは… 血みどろでスプラッタな死体見たらいい歳の男性でもそれなりにクるものがあるかも
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