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ダンジョンで潮干狩りを  作者: 大正
第二十九章:ダンジョン探索旅情編 ~旅先で色々と~

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1358/1380

1358:旅行開始~阿蘇

 アラームが鳴り、七時を告げてくれる。食堂の朝ご飯は七時半かららしいので、その前に目が覚めたのは僥倖。いつもの布団と枕のおかげで疲れはほとんど残っていない。というか、すごくお腹が空いた。早く朝食カレーを食べてチェックアウトをして、目的地へ向かいたい心境で一杯だ。


 芽生さんも一足先に起きていたようで、朝シャワーを終えてホカホカの芽生さんが風呂から上がってくる。


「お、起きてきましたね」

「寝坊ではないぞ、アラームでちゃんと起きたし。ダンジョン内で仮眠をとってたかどうかで少しリズムがずれたんじゃないかな」

「グッスリでしたね。寝言やいびきもなかったですし、しっかりと眠れてたようで何よりです」

「それよりお腹空いた……ちょっと水飲んで時間まで待つかな」


 そう、昨日の夜はバニラバー二本で済ませたため、局地的にものすごい胃のアイドリング音がしているのだ。このまま朝飯抜きで早速旅行と言われたら、いやがおうでもコンビニで朝食を調達して食べてからの出立ということにさせてもらう。


「まず、シャワー浴びてきたらどうです。せっかく使えるものなんですし、これからまた汗かいたりあちこち回ることになりますからサッパリして朝食もより美味しく食べられるかもしれませんよ」

「そうだな……寝汗はウォッシュで落とせるとしても一応入っておくか」


 芽生さんと交代でシャワーを浴び、部屋でガタガタ膝を鳴らしていたら七時半になったので、早速朝カレーを食べに食堂へ向かう。待ってたぜ、一食ぶりの食事。動けなくなるほど食べるつもりはないが、昨日の夕飯を取り損ねた分の回収はしないといけない。


 日々カロリー消費と戦っているのだから今日ぐらいはチートデイ……いや、この旅行中は出来るだけ食べて遊んでうろついて、チートデイズとしておこう。まずは腹ごしらえとカレーを食べ、一緒に飲み放題のスープとポテトサラダを更に追加して胃袋をしっかり満たしておく。これから腹に入れる分は後で体と相談しよう。


 芽生さんもやはりお腹が空いていたのか、しっかりとご飯を大盛にしてカレーをたっぷりかけ、サラダと一緒に緩やかに見せつつ素早く食事をしている。


「芽生さんもやっぱりお腹空いてたんじゃん」

「それはそうですよ。もし十四層で帰れることになっていたら行ってみたい店もあったんですが、今回の旅では行かない、ということにしました。今後地元にチェーン店が出来たら食べに行く、ということにしておきます」


 芽生さんにそこまで言わせる飯屋もちょっと気になるが、素直に損切りできる程度には期待値の高い店ではなかったらしい。まあ、また行きたいときに行ければいいし、何なら俺から熊本第二ダンジョンに呼ばれてるので相棒貸してもらっていいですか? とダンジョン庁に働きかけて出張扱いで出かけるという手口も使えるようになる。


 む、頭を動かしていて手を動かしてなかった。とりあえず目の前の食事を平らげ、まず食欲を満足させることに集中するか。


 もくもくと二人、朝カレーを食べ、スープもお代わりする。やはりコーンスープがあるのが大きいが、ホテルによっては味噌汁が付いているかどうかでそのホテルの本気度を測る、という儀式があるらしいということを、仕事時代に営業から聞かされた覚えがあるな。


 どこの地方の誰が飲んでも美味しいと言えるような味噌汁を提供できるということは、それだけでも朝食ビュッフェの実力が知れるということらしい。なるほどそういう考え方もあるのか、と感心したことを思い出した。ここのホテルにも味噌汁は……あるな、試しにいっとくか。


 ふむ、ここの味噌汁は少し甘い気がする。どんな味噌を使ってどのように調理しているのだろう。流石に地元の味噌を使っているのだろうけれど、味噌以外の味付けで甘くなっている気がするな。豆腐と揚げとわかめの入った味噌汁だが、自然と温かさが感じられる中々飲みごたえのある味噌汁だ。


 そういえば、みそ汁なんて飲んだのは何年ぶりだろうか。両親が死んでから味噌汁というものにはとくと縁が無くなったように感じる。おふくろの味はもう覚えていないが、ふとあの時代の生活を懐かしく感じてきた。


 安いながらもなんとか就職をもぎ取って、初給料ですき焼き食べに行ったことを覚えている。あれからもう二十年。すき焼きはいくらでも食べられるし毎食すき焼きにすることもできる。そして、一緒に食べてくれる人は両親の代わりに今目の前でお代わりのカレーを必死に詰め込んでいる。


 人生何があるかわかったもんじゃないなあ……そう考えながら芽生さんを見つめていると、気づかれたのか芽生さんの目線もこっちに。


「お代わりなら自分で取りに行ってくださいね」

「いや、この後どこに連れて行ってくれるのかなと期待してるんだよ」

「そうですね、では簡単なレクチャーを食べ終わったらすることにしましょう」


 ◇◆◇◆◇◆◇


 ほどほどに腹がふくれたところで食堂から出て一旦部屋に戻る。入室した際の荷物を再び取り出して、それ以外の荷物は保管庫に仕舞う。


「荷物要らないなら全部保管庫に入れるけどどうする? 」

「そうですねえ……手元の小さいバッグだけ残して後はお願いしてしまいましょうかねえ」

「ほいきた」


 大荷物を全部保管庫に収納すると、ボディバッグにスーツ姿の俺と私服に着替え終わった芽生さんがそれぞれ忘れ物がないか確認をする。


 忘れ物……ナシ!

 保管庫の中身、色々……ヨシ!

 芽生さん、ヨシ!


 指さし確認は大事である。もし忘れ物があったら後日宅配してくれるだろうし、こっちの住所は把握済みのはずなので連絡が来るはずだ。後は荷物の重さと世の中を忘れて一日か二日の間遊びまわるとしよう。こうして遊びまわるのも久々だな。


 いかに日々ダンジョンにしか通ってないかがよく解る。今日からしばらくはダンジョンのことを忘れて色々見回って楽しむことにしよう。楽しいかどうかは芽生さんの旅行プランニングにかかっているぞ。確か内風呂で二人で入れる旅館があればいいとか言っていた気がするので、お高いけどそれだけの施設のある旅館には到着できるのだろう。楽しみである。


「はい……はい……予定通りに進みますので、その時間にお迎えお願いします。はい、よろしくお願いします。では」


 芽生さんは何処かに電話をかけている。どうやら事前予約が必要だった話の予約確認の電話だろうか。電話が終わると、芽生さんはこちらに向きなおり、スマホでデータを提示する。


「一応の時刻表です。今が午前八時ですから、ここからスタートします。熊本駅で豊肥本線に乗り換えて阿蘇駅まで行きます。その後阿蘇周辺でぶらぶらします。お昼もぶらぶらしてる間に済ませてしまいましょう。良い店があったらそこで、ということにします。その後は十四時に黒川温泉行のバスに乗って到着後、旅館の人に迎えに来てもらう手はずになってますから、そこから旅館へチェックインしてお夕食とお風呂を楽しみます。お風呂ではとにかくボーっとしましょう。昨日一昨日の疲れを一気に吹き飛ばすつもりで思い切り楽しみましょうね」


 ざっくり言うとそういうことになるらしい。温泉旅館か、さぞ高かったんだろうが、俺と芽生さんの収入と昨日一昨日の収入を合わせれば安いものだ。精々おだいじんを気取って盛大に買い物とお楽しみをすることにしよう。


「じゃあ、駅へ出かける前にちょっとコンビニへ寄ってもいいかな」

「そのぐらいの時間の余裕はありますので大丈夫ですよ。大事なのは十四時のバスに乗り遅れないことぐらいですから」


 じゃあちょっと今のうちに行ってくる、と言って先にコンビニへ出かけ、タンスのアレとおやつと、ガンテツに渡して置いていったコーラを補充。全部置いてきたから、なんか手元にないと落ち着かないんだよね。少しばかりだが喉が渇いたときに飲めるようにと水のペットボトルも追加。最悪【水魔法】で出せばいいんだが、味気がないのが逆に喉が渇きそうなので手元に持っておく。


 買い物を済ませてホテルの部屋に戻り、もう用事はないことを確認するとチェックアウト。駅前すぐのホテルなので新幹線駅は目の前。ダイヤを調べて乗車券を購入。次の駅なのでそれほど急ぐ必要もないが豊肥本線でゆっくり電車の旅をするためにあえてここは素早く行動する。


 熊本駅ですぐ乗り換えて豊肥本線で、今度は阿蘇駅まで特急電車の旅。一時間半ほどで到着するらしい。


 芽生さんと二人肩を抱き合いながら風景を眺めて……居る間にまた軽く寝落ちしそうになるかもしれないので、七十分ほどでアラームが鳴るようにセット。もし寝なかった場合はアラームが鳴る前に切ればそれでいい。


 熊本駅を離れると、都市部から準都市部へ、そしてだんだんと畑や家だけの風景になっていき、やがて畑だらけの中を走る一本の線路となった。


「のどかですねえ」

「田舎だからなあ。三十年前は小西ダンジョンまでの道のりもこんな感じだったらしいぞ」

「今では準準都市部ぐらいにまで発展してしまいましたからね。かえってこの景色は貴重かもしれません」

「確かこの路線だったかな。海外の企業の工場が建つのを考えて複線化したり駅舎を直そうとか言う話をしているのは」

「確かに、最近熊本には半導体工場がいくつか建つという話でしたし、今でも既に何社かありますしね。利用者の増加を見込めるのかもしれません」


 今でこそのんびりとしている乗車率だが、出勤時間ともなればかなり混雑していたのかもしれない。良い具合の時間に乗れた、ということだろう。もしくは出勤者は特急を使わないか、だな。


「こんな所をこんな時期に旅行できているのも探索者だからだな。良い職業に就いたもんだ」

「現地に着いたらもっとのんびりしましょう。しっかりと休んで来年への抱負と英気の養いに使うんです」


 本当にのんびりできるかどうかはともかく、温泉は楽しみだし、家族風呂もあるというから芽生さんと二人きりで広めの湯船でゆっくりできるのは間違いない。念のためしっぽりできるように準備もしてきたし、後はこの先次第ってことだな。


 結局二人で景色を楽しみながら何気ないおしゃべりをしていると、一時間はあっという間に過ぎた。ここから寝落ちする可能性はないだろうと、アラームを切っておく。他の乗客の迷惑にもなるだろうし、事前に気づいて切れたのはいいことだな。


 阿蘇駅に到着してまずはうーんと伸びをする。実質一時間半とはいえ、電車に揺られ続けるのも中々に疲れるもの。探索者という仕事の都合上、下手に休みっぱなしよりも歩きとおしてるほうが体に健康であるかもしれないとすら思う。


「しかし……どこにでもいるなくまモンは」

「新幹線降りた場所にも居ましたし、本当にどこにでもいますね」

「九州で唯一生き残った熊がくまモンになるとすると、蟲毒のようなものなのかもしれないな」


 くまモン……恐ろしい子。それはさておき、ここからしばらくは色々と自由時間になるらしいので、とりあえずすぐ近くにある道の駅にやってきた。ここでは色々食事ができる以外にも、地元産の食品を並べているらしい。ここで昼食をとる感じなのかな。


 おっと、ダンジョン産食品のコーナーもある。米とブルーべリーが展示されていた。それぞれ一袋価格と、一個ずつの個別販売だがそこそこの値段で販売されている。査定金額からすると、そこそこの利益は上げている、という感じだ。多分商売っ気はここ以外の部分で出すようにしているんだろうな。


 地元食材と言えばこれもそうなるんだろう。八代からここまで運んでくるのも費用がかかるし、その配送料を考えればこの値段には納得できるし、インパクトとしてもなかなかのものではある。


 後ろに飾ってあったくまモンの人形の口のところにそっとブルーベリーを供えて、写真を撮る。こういう楽しみ方をするのも有りだよな。芽生さんもそれにはにっこり。何枚か連写していたので気に入ったシチュエーションだったのだろう。


 せっかくネタに使わせてもらったので、自前で取るよりお高いがその使用したブルーベリーを購入。それ以外にはとりあえず今すぐに買わなければいけないもの、というものは見当たらなかったので今は置いておく。


 しばらく店内を見回ったが、帰りでもいいだろうということで買い物はそこまでにしておく。正月の準備が近いのか、あちこちでしめ縄っぽいものが準備され始めている。そうか、もう年末か……年が明けたら確定申告に向けて色々と仕事をしなければならないな。さて、そんなことは年明けから考えればいい。今は年末のこの貴重な休暇を楽しもう。

作者からのお願い


皆さんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどから燃料があふれ出てきます。

続きを頑張って書くためにも皆さん評価よろしくお願いします。

後毎度の誤字修正、感謝しております。

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― 新着の感想 ―
くまモンはほんと何処にでも居るからな… 多分分裂して増えてるダンジョンから出てきたモンスターだと思う ドロップ品は熊の手
> チートデイズ」 略してチーズだと言うおじさん > 腹ごしらえとカレー」 カレーは前菜 > みそ汁なんて飲んだのは何年ぶり」 ご無沙汰なおじさん > 食べ終わったらする」 まずは食えと言う芽生…
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