1341:ダンジョン庁情報公開
side:ダンジョン庁会見
「では、本日の会見を始めさせていただきます。まず、ダンジョンの立地についての情報から公開させていただきたく思います。本日までに合計三ヶ所、新熊本第二ダンジョンを加えれば四カ所の新しいダンジョンが開設されました。これらについてはあらかじめ他省庁との連携もあり、あらかじめこの場所にダンジョンを建設してもらう、という事前の打ち合わせの結果としてこの場所に立てた、ということになります。地主や土地の持ち主、建物の管理者等様々な人々との交渉の結果、それぞれの場所に立ててもらったということになります。つまり、お金や土地の問題は既に片が付いていると考えてもらって結構です。ですのでこれらのダンジョンについて今後問題が発生するという可能性は非常に小さいと考えてもらって結構です」
ここで一旦言葉を止める真中長官。周りを見渡し、他の記者の反応を見る。どうやら極秘でやっていたらしく、この話について口を挟めるような状態ではなかったようだ。
「それでは、お待ちかねの現状までに分かっている新しい三つのダンジョンについてですが、現在までの調査の報告をいたします。各ダンジョンは一層を除き、二層から先には宝箱が出現する可能性があることが判明いたしました。調べたところ、宝箱にトラップがある様子はなく、それぞれの階層における宝箱の中身についてはその階層で得られるドロップ品よりも少し以上良いものが出る、という法則が確認されています。つまり、これからこの三つのダンジョンではトレジャーハンティングも同時に楽しめるダンジョンとなっています。内部のモンスターについてはダンジョンにより違うものが出るかとも思いましたが、前のダンジョンと同じモンスターが出る、と思っていただいて結構です」
ここでまた一呼吸置き、真中が水を一口飲む。質問タイムはまだのため、各記者は急いで自分の質問する内容をまとめているのか必死に手を動かしていた。
「さて、お気づきの方はいらっしゃると思いますが、先日まで日本地域での手の空いた元ダンジョンマスターは二人、でした。ですが、今回立ててもらったダンジョンは現状三つとなります。つまり、どこかからダンジョンマスターを連れてこなければこの状態にはならない、ということになります。もうお分かりかと思いますが、前のダンジョン会談でお世話になったセノ氏に依頼してダンジョンを踏破されて暇そうにしているか、次のダンジョンを作りたいがどうすればいいかわからないダンジョンマスターがいたなら日本へ連れてきてこっちでダンジョンを作ってもらうように説得できないか、ということを依頼しました。結果として幾人かのダンジョンマスターをこちらへ招き入れることができました。今回の新規ダンジョン建立案の中の一つがこのダンジョンマスター招聘になります。そのおかげで後二ヶ所ほど、新規にダンジョンを立てる予定があります。どこにダンジョンが立つかは皆さん期待して待っててください。また、機会があれば再度そのようにダンジョンマスターを招聘していくことで日本国内に存在するダンジョンを増やしていけるようにダンジョンマスター側と対話の機会を増やしていきたいところです。こちらからの会見内容は以上です。以降は質疑応答に移ります」
真中の一方的な情報開示は終わった。ここからは記者による質問時間だ。
「現在までに分かっている新規ダンジョンに携わるダンジョンマスターの人数は把握されていますか? 」
「現在は、元々日本周辺でダンジョンを開いていたダンジョンマスターを含めて五名となっております。今回手伝っていただいたセノ氏も、自分のダンジョンを立てて早々と活動を再開したいとの事でしたので、外交役として手伝ってくれていた所から自分のダンジョンを作り始め、立てる手はずになっております」
「では、五ヶ所のダンジョンが立った後はしばらく他のダンジョンの立つ見込みはない、ということでしょうか」
「そうなります。ただ、他の国から流入してくるということは否定できません。以前セノ氏の言っていた、通訳を務めてくれていた男性についているマーカーを目指して他の国からダンジョンマスターが立ち寄ってくれる可能性もあるためですね。その際は彼から情報を上げてくれるように頼んでありますので手続き上はそれで問題はないはずです」
記者が質問を終わる。続いていくつかの手が上がり、一人が指名された。
「探索・オブ・ザ・イヤーの橋本です。宝箱から出るアイテムは、以前小西ダンジョンで行われたのと同じようにスキルオーブからモンスターのドロップ品まで様々なものが出るとは推測できますが、それ以外に珍しいドロップ品などは現在までに発見されているのでしょうか」
「現在のところまでで限定して言いますと、今のところ発見されておりません。ですが今後はまだ解らない、と言うところでしょう。もしかしたらダンジョンマスターが気を利かせて、ここでしかドロップしない一品物のドロップをする、という可能性もあります。その場合おそらく【鑑定】のスキルの出番になるのでしょうが、ダンジョンマスター達との打ち合わせを行っていくに伴って一つ、【鑑定】のスキルを託されています。現在ダンジョン庁の職員がその【鑑定】のスキルを取得し、十全に使えるように特訓中ではあります。貴重な情報なので職員の個人情報までは言えませんが、ダンジョン庁としても口を出した分、協力をしてくれた分の努力はするよう努めていく所存であります」
【鑑定】とはっきり口に出したことで記者の間からどよめきが走る。やはりレアスキル所持者の省庁でのスキル確保は大きかったんだな、と真中は安心していた。
「海外から招聘した三人のダンジョンマスターについて質問します。それぞれがどの地域からこちらに来てくれたか、というのは把握されているのでしょうか」
「彼らが何処でダンジョンを立てていたかについては聞いていません。最悪外交問題に発展する可能性もあるという認識はしているからです。これは私自身も知らないことですし、おそらく彼ら自身もどこにダンジョンを立てていたか、については認識が薄いと思われます。なので前にどこでダンジョンを立てていたかは……おそらく通訳をしていた、セノ氏の次に協力してくれていた彼自身も問うてはいないのではないでしょうか」
実際前に何処のダンジョンにいたかよりもこれから何をしてくれるかが重要であり、その点においては真中も同意見だった。また、出来るだけ波風を立たせないようにするのも重要である。その為真中は、他国から来たダンジョンマスターについて、個人名や情報などをここまで開示せずに会見を開いている。
次の質問者が当てられた。
「今後も同様に海外のダンジョンマスターを日本に誘致して活動をしてもらうという流れは続いていくんでしょうか」
「セノ氏が一通りのダンジョンマスターとの話をした、という話は聞いておりますので、現状では難しいのではないか、とも思いますが、もしもダンジョンマスターが思い直してダンジョンを立てようと気持ちを新たにした場合、前の場所に作るのかそれともこちらへ来てもらって場所を提供するように仕向けるのかはそれぞれのダンジョンマスターの考える所ではあると思います。こちらとしてはしばらく待ちの姿勢、ということになりますね」
◇◆◇◆◇◆◇
「……はい、ダンジョン庁の会見を見ていただきました。弦間さん、どう思われますか」
スタジオにカメラが戻ってくる。スタジオにはいつものダンジョン研究家、弦間さんがいる。
「そうですね、楽しいことになってきた、というのが第一の感想ではありますね。今までのダンジョンとは違う部分が何ヶ所もある、という部分についてもそうですが、ダンジョンはまた一つ新しい局面を迎えた、ということになるでしょう。今後日本周辺でのダンジョン活動が活発になり、探索者の移動や周辺地域での消費の活発化、生活必需品を求める店の展開等、社会的にもそれなりに大きな貢献が生まれる可能性があります。それらを見越しての今回のダンジョンの立地の考えだったんじゃないでしょうか」
「なるほど、高速やショッピングモールに関しても、客層が離れていったところやあえて何もない所を選んだのも、そこから人口移動がどのように移り変わっていくかを考えて、それからダンジョンの影響力がどのように及んでいくのかを考えてのこと、ということでしょうか」
「おそらくはそうなっていると思います。何にしろ今後が楽しみではありますね」
「ここまで、ダンジョン庁の会見をお送りしました。では次のニュースです……」
記者会見が終わりテレビを消す。ネアレス、ユミル、サムエの三名に関しては俺にとっても何処のダンジョンから来たか、という情報は手元にはない。いずれは判明していくのだろうが、今のところはぼかしておいたほうが外交問題にならないと考えているんだろう。
そしてまだダンジョンは二つほど出現の見込みがあり、その正確な場所は俺とダンジョン庁の関係者しか知らないことだ。多分今日も今日とて、いつ出現するかわからない該当地区の見回りをさせられているんだろう。
残り二ヶ所、温泉地とニュータウン。いつできるかは解らないが、他の三ヶ所が出来上がっている都合上、そう時間はかからない可能性は高い。早めにダンジョンを立てても実際に探索者が潜り始める前には時間がかかるだろうし、早めに立ててもらってその間に頑張って深く作る、という方向性でも良いんだ。
とりあえず、ダンジョンが立ったことで俺のやれるべきことは全部やったと思っている。さっきの会見でも言われていたが、次俺がダンジョン庁がらみの仕事をする、というケースはやはり国外からのダンジョンマスターの「やっぱりこっちで立てさせてもらっていいですかね? 」という問い合わせが来る時ぐらいしかないだろう。
しばらくは……というかもう今年も残り少ないが、金を貯めるだけ貯めて来年からまた何か始まるかもしれないし、来年は……千億稼げると良いが、流石にその前にポーションや魔結晶の値下がりが始まるだろうし、そうなったら今ほどの収入は見込めなくなるだろう。そうなった場合の収入のあてについては今のうちに稼いでおけ、というところだろうな。
さて、今日も少し遅くなったが探索に行くとしよう。昼食は何を作ろうかな。あっさりと短い時間で作れるタンドリー……最近タンドリーは作ったから別のものにしよう。レモンバジルでサッパリとした肉を味わうのも悪くないな。炊飯器の用意だけはしてあるので米の心配はしなくていい。
後は何肉で作るかだが、やはり数の貯まり始めてきたボア肉を消費していくことにするか。サラダも用意して、レモンバジルのシーズニングを一口大にしたボア肉に絡めて、しっかり揉みこんで焼く。焼き目が付いたところでフライパンから上げて今日の昼食の準備はヨシ、だ。
さあ、今日も探索に出かけよう。今年一年の収入は既に四百億を超えた。このうち七割は税金だが、法人化することで税金を安くすることはできるらしい。だが、財布が二つに増えるということと、個人的な買い物ができる幅が狭まるのはちょっと何だか尻の座りが悪い気がする。それに税金とはいえ死ぬお金ではない。巡り巡って誰かの財布に戻っていく金だ。
銀行も、預けてある金で投資やローンなんかの原資に使っているはずなので完全に死んだお金というわけでもなくなるようだし、あまり深いことは考えなくていいようにしておこう。
柄、ヨシ!
圧切、ヨシ!
ヘルメット、ヨシ!
スーツ、ヨシ!
安全靴、ヨシ!
手袋、ヨシ!
籠手、ヨシ!
飯の準備、ヨシ!
嗜好品、ヨシ!
車、ヨシ!
保管庫の中身……ヨシ!
その他いろいろ、ヨシ!
指さし確認は大事である。さあ、今日も一人で七十一層の旅だ。そろそろスキルオーブも出るかもしれないし、出たら何が出ても覚えるぐらいの気持ちでいようと思う。望み通りのものが出るのか、それとも未知のオーブが出るかまでは解らないがまだまだダンジョンには解らないことが多い。それを解明していくのが来年の目標ってところだろうな。
お疲れ様でした。次回、明日に続く。
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